上 下
7 / 100

7話 恐怖

しおりを挟む
「ねぇロク?私のせい・・・制服!昨日着物の前に着てた服、知らない?」
着付けをしてくれているロクに聞く。「すみません。俺はわからないです。
カズハ様が部屋を出て行った時、箪笥にしまったんですが、そのあとは」
リボンだけならまだしもブレザーやスカートなど一式ないのだ。不思議というか少し怖い。
「終わりましたよ。」
「ありがとう。」
昨日の他にまだ覚えなくてはいせないことが沢山ある。頑張らなければ。
それからはミズキさんに色々教わる日々を過ごした。私もだんだんスムーズに動けるようになってきた。
「今日は一人でお客様の接待や給仕、してみる?」
「はい。精一杯頑張ります」
今、思えばこの判断が間違っていたのだろう。
1人の若い男性のお客様のようだ。
「ようこそ、おいでくださいました。
お荷物お持ちします。」
「お食事は○○時になっております。
こちらのお部屋にお持ちしますのでそれまでどうぞおくつろぎ下さい。」
ここまではよかった。
「ねぇ君、人間?」
「?はい、私は人間で妖ではございません」
「ねぇ、俺今鬱憤が溜まってるんだよ。それを晴らすのも給仕じゃない?」
一瞬もしないうちに、私は押し倒され
ていた。お客様は馬乗り状態だった。
片手で両腕の動きを封じられていた。
「お客様、何をなさっているのです?」
乾いた声で聞く。脳が警鐘を鳴らしているが、動けない。怖くて涙が溢れる。帯が解かれ、襦袢が露わになる。嫌だ、
助けて、ロク・・・
勢いよく襖が音を立てて、開く。
「なにを、なさっているのです?お客様」
「ロク、ミズキさん」
男性と私の間にロクが割って入る。私はミズキさんに支えられながら部屋を出る。
「ごめんなさい。アタシが1人でやってみるなんて聞くから」
「いえ、ミズキさんのせいじゃ、私に危機感がなかったから・・・」
ナグモさんが現れ、頭に手を置く。
「カズハ、貴女、今日はもう上がりなさい。」
「ナグモさん」
「ここからは、経営者である私の仕事だ」

部屋に戻ると制服一式がちらばっていた
片付け、着物を脱いでいたらノックされた。
「カズハ様、ロクです」
「・・・入って」
「ロク、あの人は?」
 「あの人は出禁になりました。この街は、合意なしに女性に手を出そうとすると追放されるんです。二度とこの街には来れません。」
「そう、なんだ。」
「・・・俺は、怖くないんですか?」
「え?」
「いえ、なんでもありません。忘れてください。」
「私は、私なりにあなたのこと信頼しているよ。」
「そうですか。」
「では、俺はこれで失礼します。」
立ち上がるロクに私は
袖を掴み引き留める
「もう少しだけ、そばにいて」

カズハ様は俺を引き留める。
弱々しい声で。
俺は座り直し、尻尾をカズハ様の方に寄せる。
カズハ様から溢れる涙を俺は見ない
フリをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

D×DStrike〜俺と悪魔の反乱物語〜

藤沢 世界
ファンタジー
あなたの大切な人は誰ですか__ 現代を舞台に繰り広げられるファンタジー これは、心狂わせられた人々の物語。

のぞまぬ転生 暴国のパンドラ

夏カボチャ
ファンタジー
逆恨みから1000回目の転生に繋がる異世界転生、全ての世界の経験が1人の元少女を強くする!

ひまじん
恋愛

転移失敗!!此処は何処?僕は誰?

I&Rin
ファンタジー
 世界最強と誰もが認めるスキルの持ち主である父を持つ息子のリンはその血筋を色濃く受け継ぐ超エリートの能力者ではあるが、年齢幼く自己中心的な性格によって周りからの評判は最悪! そんな彼が限界突破を目指して月へと転移しようと試みるがその結果、失敗して別の惑星に転移してしまう そこから始まるリンの新たな世界を描いています。   1話あたり1000文字位にしています  基本的に金土日の3日間の正午にアップしていますので、よろしくお願い致します  68話からヒロイン的な存在のエルフ登場!  モチベーションが続く限りアップして行きますので、誤字脱字にいろいろなご意見と御指摘お願い致しますm(_ _)m

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里
恋愛
祖父の借金を背負ったガルティア男爵家。現当主の娘エレオノーラは、たった一度、2歳の時にお城のパーティーに招かれた(らしい)その時第二王子のアレクシス様に見初められたが、本人は覚えのないまま年月は流れる。そしてある日突然王室から縁談が舞い込んだ。アレクシス様?私、全然覚えが無いのですが。恋愛・冒険・魔法・その他いろいろごった煮定食てんこ盛り。

処理中です...