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4章 ファイナルライブ
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「舞、大丈夫だって」
誰かと連絡をとっていた類の一言に
2人してホッとする。
「とりあえずよかったね」
「うん、どこにいるかわからなくて
探し回った原因を作った誰かさんより
よっぽどいいよ」
「あ、あの件は本当に」
からかっている類と
あたふたしている雪希。
退院してから聞いたが俺も驚いた。
雪希って大胆になると恐ろしいと
思った日。
翌朝俺が起きて一階に降りた時、
舞はキッチンに立っていた。
「あ、おはよう」
その目は少し泳いでいた。
「おはよう、舞」
「後少しだからもうちょっと待ってて」
「あ、うん」
数分後、たまごサンドとツナサンド、
生姜焼きサンドに
フルーツクリームサンドがテーブルに
並ぶ。
「舞、何時に帰ってきたの?」
時計の針は6時48分を指している。
「5時の電車に乗ってきたよ」
「はやっ!」
「12時すぎに寝たんだけど、
落ち着かなくて4時に起きちゃったから、じっとしてられなくて。
友達とは私が実家出る時に別れたんだ」
雪希と類が起きてくるまでの沈黙が
初めて気まずく感じる。
(どうしよう、謝るならみんなが揃って
からって決めてたのに。)
俯いて悶々としていると、
「舞、」
「ん、むぐ、」
呼ばれて顔を上げると唇に何かあたり
反射で口を開ける。
感触で付け合わせのプチトマトだと
わかった。
一度咥えてヘタを取ってから咀嚼する。
飲み込んでから
「なにするの」
そう抗議すると、蓮は
パンの耳で作った小さなラスクを
摘んで食べる。
「俯いてたから」
「え、」
「気にしてるんでしょ、
出て行ったこと。
でも俺的には戻ってきてくれたから
もういいんだけど。
それに舞の中で決心がついたんだろ。
なら俺はなにも言わない。
どうせこのサンドイッチたちも
お詫びに作ったんでしょ」
もういい。
本当に蓮は何も気にしていないようだ。
「・・・よくわかったね。
決心のことも。サンドイッチのことも」
でも、
「舞の気が済まないんでしょ」
「蓮は人の心が読めるの?」
「残念ながら、そんな能力は
持ち合わせてないよ」
しばらくして類と雪希が起きてきて、
類が隣に、雪希が斜め前に座る。
私がいることに驚いていたが
席に着くように促した。
「食べながらでいいから
聞いてほしいことがあるの」
最初に手を伸ばしたのは雪希。
ツナサンドを選んだ。
「昨日はごめんなさい」
舞は頭を下げた。
出て行ったこと、いなければと
言って傷つけたこと。
そして、新たな夢のこと。
顔を上げた舞の目に迷いはなかった。
「私はSTEPでさえ見たことがない
景色を見たい。もっとたくさんの人に
知ってもらって見てもらいたい。
私たちを。
帰ってきて急に何言ってるのって言いたいのは分かってる。ただ私の新しい夢を聞いてもらいたかった。
他の誰でもない、この4人でもっと
先に行きたい」
(もう挑戦状のことはいいのかな)
「舞、それは挑戦状のことは諦めたってこと?」
それを聞いたのは類。
僕が聞く前に言ってくれた。
「うん、夢は一つじゃない。
ゴールなんてない。
私はもう後ろ向きになるのはやめた」
舞が帰ってきて、夢を聞いて、
覚悟がわかって一安心。
・・・そう思っていた。
誰かと連絡をとっていた類の一言に
2人してホッとする。
「とりあえずよかったね」
「うん、どこにいるかわからなくて
探し回った原因を作った誰かさんより
よっぽどいいよ」
「あ、あの件は本当に」
からかっている類と
あたふたしている雪希。
退院してから聞いたが俺も驚いた。
雪希って大胆になると恐ろしいと
思った日。
翌朝俺が起きて一階に降りた時、
舞はキッチンに立っていた。
「あ、おはよう」
その目は少し泳いでいた。
「おはよう、舞」
「後少しだからもうちょっと待ってて」
「あ、うん」
数分後、たまごサンドとツナサンド、
生姜焼きサンドに
フルーツクリームサンドがテーブルに
並ぶ。
「舞、何時に帰ってきたの?」
時計の針は6時48分を指している。
「5時の電車に乗ってきたよ」
「はやっ!」
「12時すぎに寝たんだけど、
落ち着かなくて4時に起きちゃったから、じっとしてられなくて。
友達とは私が実家出る時に別れたんだ」
雪希と類が起きてくるまでの沈黙が
初めて気まずく感じる。
(どうしよう、謝るならみんなが揃って
からって決めてたのに。)
俯いて悶々としていると、
「舞、」
「ん、むぐ、」
呼ばれて顔を上げると唇に何かあたり
反射で口を開ける。
感触で付け合わせのプチトマトだと
わかった。
一度咥えてヘタを取ってから咀嚼する。
飲み込んでから
「なにするの」
そう抗議すると、蓮は
パンの耳で作った小さなラスクを
摘んで食べる。
「俯いてたから」
「え、」
「気にしてるんでしょ、
出て行ったこと。
でも俺的には戻ってきてくれたから
もういいんだけど。
それに舞の中で決心がついたんだろ。
なら俺はなにも言わない。
どうせこのサンドイッチたちも
お詫びに作ったんでしょ」
もういい。
本当に蓮は何も気にしていないようだ。
「・・・よくわかったね。
決心のことも。サンドイッチのことも」
でも、
「舞の気が済まないんでしょ」
「蓮は人の心が読めるの?」
「残念ながら、そんな能力は
持ち合わせてないよ」
しばらくして類と雪希が起きてきて、
類が隣に、雪希が斜め前に座る。
私がいることに驚いていたが
席に着くように促した。
「食べながらでいいから
聞いてほしいことがあるの」
最初に手を伸ばしたのは雪希。
ツナサンドを選んだ。
「昨日はごめんなさい」
舞は頭を下げた。
出て行ったこと、いなければと
言って傷つけたこと。
そして、新たな夢のこと。
顔を上げた舞の目に迷いはなかった。
「私はSTEPでさえ見たことがない
景色を見たい。もっとたくさんの人に
知ってもらって見てもらいたい。
私たちを。
帰ってきて急に何言ってるのって言いたいのは分かってる。ただ私の新しい夢を聞いてもらいたかった。
他の誰でもない、この4人でもっと
先に行きたい」
(もう挑戦状のことはいいのかな)
「舞、それは挑戦状のことは諦めたってこと?」
それを聞いたのは類。
僕が聞く前に言ってくれた。
「うん、夢は一つじゃない。
ゴールなんてない。
私はもう後ろ向きになるのはやめた」
舞が帰ってきて、夢を聞いて、
覚悟がわかって一安心。
・・・そう思っていた。
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