虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

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1章 ファーストライブ

60話 ついてきなさい

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夜は類特製のハンバーグ。
あの時を思い出してクスリと笑ってしまう。
「どうした?舞」
「初めてチームになった夕食もハンバーグだったなって。」
「そうだな。ところでこの2ヶ月、俺が調理担当だったんだよね」
「え?」
類は悪い顔をした。
(あ、これは)

「明日から2ヶ月、舞が調理担当に
なってくれない?」
(なにかお願いされるとは思ってたけど)
「2ヶ月!?」
「うん。俺は2ヶ月ずっとやってたんだ。
年越し蕎麦を作って、お雑煮作ったり。
レッスンでクタクタになっても欠かさず。
それに比べたら、行事の少ない2ヶ月なんて、楽なも、」
「分かった、分かったから」
有無を言わせない、言葉の圧に負けすぐに
白旗を上げた。

「分かった。2ヶ月私が続けるよ」
「楽しそうだね」
「雪希、」
にこにこの類に対して私は、ものすごく
ひどい顔をしてるんだろうな。
「どこをどう見て楽しそうだって?」
「だってあの類が泣い」
クスクス笑いながら雪希がそこまでいうと、ものすごい速さで類は雪希の口に手を当てる

「余計な、ことは、言わなくていい」
類の顔は真っ赤だった。
恥ずかしいのが見てわかる。
(類でも泣くことあるんだ)
どこか嬉しくて、2人にバレないように静かに喜ぼうと思ったのに
「舞、なにニヤついてるんだ」
睨んでいるが、顔が赤いため怖さは
全く感じられない。

「なんでもないよ、そろそろ食べないと
冷めちゃう」
私の声に腑に落ちないと言わんばかりに
不機嫌な類。
雪希と顔を見合わせクスクス笑い席に着く。
「今日はみんな同じなんだね」
「なにがご不満?」
「いいえ、滅相もございません」

次の日
それぞれ学校に向かう。
「おはよう、紗南」
「おはよう、舞」
「私、思い出したよ、全部。」
鞄から教科書を出していた紗南の手が止まる
「本当?」
「うん、全部思い出したよ。
Rainbow Roseのことも。仲間のことも」
はっきりそういうと、紗南は探るように聞く

「舞、思い出して辛くない?苦しくない?」
「大丈夫、むしろ蟠りが取れてスッキリしてる。ありがとう、紗南、協力してくれて」
まじまじと私を見て、
「そう、なんだ。力になれたならよかった」
と笑顔で言い、また教科書を出し始める。

あっという間に放課後になり、私は
レッスン場へ。

中に入ると杏奈さんたちが笑顔で私を迎えてくれた。が、
(なんだろう、背景にどす黒いオーラを感じるすごく怖い、でも)
「杏奈さん、杏子さん。2ヶ月もレッスンを休んですみませんでした。空いた2ヶ月の間、類たちにすぐに追いつけるとは思っていません。ですが、」
「舞、もういいよ。」
そこまでいうと、杏奈さんに止められた。

「無駄な弁明は聞かない。始めるわよ」
(杏子さん、失望されちゃったかな。でも)
「少しでも追いつけるように、1秒だって無駄にしない。舞、久しぶりのレッスンだからって甘やかすつもりはない、全力でついてきなさい」
静かな声で杏子さんはそう言った

「はい!!」
「舞、腕を伸ばしきれていない。
ステップが遅れてる、振りを忘れた訳じゃないでしょう?」
「はい!」
(やっぱり2ヶ月の差は大きいな。
少しでも追いつかないと)

1時間後、
「それじゃあ、そろそろ休憩にしようか。」
杏奈さんの声で、休憩に入る。
「どう、久しぶりのレッスンは?」
お茶を飲んでいると雪希が話しかけてきた
「雪希、やっぱり体が鈍ってるのが
よくわかるよ。」
「だよね、たかが2ヶ月、されど2ヶ月。
簡単に追いつかれたら、
こっちが参っちゃう」
ふと笑う雪希を見る。

(雪希、身長伸びた?前は私と同じくらいだったのに少し目線が変わった気がする)
「どうかした?舞」
「いや、なんでもないよ」
(私、成長できてるのかな)
「2人とも、ちょっといい?」
立ち上がり、類と雪希に自主練を手伝ってもらうことに。
やっぱりところどころ若干遅れているのが
わかる。
(頑張らないと)
練習後。

「ねぇ、2人とも夕飯なにがいい?」
「ポトフ/ロールキャベツ」
「うわ、同時。でも雪希ごめん。ロール
キャベツは時間かかるからまた今度ね」
あからさまにしょんぼりする雪希。
「でも、作るときは言って、僕も手伝う」 
と元気に言った。
「ありがとう」
(弟がいたらこんな感じなのかな)
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