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10 覚悟-Side 雄大
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優実の家の近くのコインパーキングに車を停めて、徒歩で彼女の家に一緒に向かった。
彼女が住んでいたのは2階建ての小さなアパートの2階の角部屋で、オートロックなどもなく、こんなに可愛い優実が一人で住むにはストーカー対策とか大丈夫なんだろうかと、途端にセキュリティが心配になってしまった。聞いたら大学時代から住んでいるとかで、今まで何事もなかったんだろうから考えすぎか。勿論、自分が口を出すことではないのはよく分かっている。
こじんまりとした1LDKのアパートだが、整理整頓がされていて、掃除もよく行き届いていた。居間は木目調の家具が基調で、ところどころに観葉植物がおかれているのが優実のイメージにぴったりだった。奥にある扉の先がベッドルームなのだろう。
「準備するから、座って待っててくれる?」
木目の色が綺麗なローテーブルと白のソファの間にあぐらをかくと、とりあえず麦茶でいいかな?と冷たいお茶の入ったガラスコップを差し出されたので、ありがたく頂く。
「今日はもともと、肉じゃがにしようかと思ってたんだけど、それでいい?」
「肉じゃがは好きだ」
「よかった。出来るまでテレビ好きなように見てていいよ」
言われるがまま、テレビをつけて、適当なチャンネルに合わせる。
優実はてきぱきと料理を作り始め、その様子を後ろから眺めていると、その手慣れた様子から普段から自炊をしていることが分かった。仕事の時と同じ、無駄がなく見ているのが心地よい。ふと昨日会ったあの男も、大学時代の…彼氏なら、きっとこの部屋に来たんだろうな…という考えが頭をかすめた。こうやって座って、優実が料理をするのを眺めていたんだろうか。彼氏なら楽しく会話しながら隣に立って優美が作るのを眺めていたのかも。時々気持ちが昂ぶったら、彼女を抱き寄せたのかも。むくむくと嫉妬心が湧いて、そしてそんな資格が自分にないことが辛すぎる。
(…俺、本当に好きなんだな、田中のこと)
分かってはいたことだが、こうして休日を一緒に過ごして思いはますます強くなった。問題は、恋愛初心者の自分がどうやってそれを彼女に伝えるか、だ。
(突然好きだと言って怯えさせるのがオチかも…)
ありえそうな未来に暗澹たる気持ちになり、頭をぐしゃぐしゃにかきまわした。
(でも素直に言うしかない…)
今まで十分悩むだけ悩んで、結局不確定な未来に勝手に怖気づいて何一つ言い出せなかったのだから、これ以上どう考えても堂々めぐりするだけだ。同期で、隣の席で、もしフラれたら彼女を諦めるまでの長い間、相当キツイ思いをするのは目に見えているが、でもきっと自分が好きになった優実は、雄大が必要以上に気を遣わないように心を配ってくれる気がしている。そしてそんな人だから好きになったんだ。
心が決まると、今まで荒れ狂っていた胸の内があっという間に収まり、麦茶を一口ごくりと飲んだ。
☆
優実が 1時間もしないうちに、肉じゃが、小松菜のおひたし、空芯菜とツナのサラダ、豆腐とわかめの味噌汁、きゅうりと大根の浅漬けに、炊き立てのご飯を食卓代わりのローテーブルに並べてくれて、あまりの手際の良さに感激した。
「すごいな、魔法みたいだ」
思ったままを言っただけだが、優実はちょっと顔を赤らめて
「肉じゃがと味噌汁以外は常備菜だから…」
とあくまでもたいしたことをないように装うが、自分も小さい頃から家事をしないといけない環境だったため、大変さは少しは分かるつもりだ。両手を合わせて感謝した後、一口味噌汁をまず啜ると、自分が作るのとは違う優しい味がした。お世辞でもなんでもなく美味い。
「美味い」
「いやいや…普通だよ」
「本当に」
思わず、続けてしまった。
「人が作ったものを食べるのが、…ほとんどなかったから」
彼女が住んでいたのは2階建ての小さなアパートの2階の角部屋で、オートロックなどもなく、こんなに可愛い優実が一人で住むにはストーカー対策とか大丈夫なんだろうかと、途端にセキュリティが心配になってしまった。聞いたら大学時代から住んでいるとかで、今まで何事もなかったんだろうから考えすぎか。勿論、自分が口を出すことではないのはよく分かっている。
こじんまりとした1LDKのアパートだが、整理整頓がされていて、掃除もよく行き届いていた。居間は木目調の家具が基調で、ところどころに観葉植物がおかれているのが優実のイメージにぴったりだった。奥にある扉の先がベッドルームなのだろう。
「準備するから、座って待っててくれる?」
木目の色が綺麗なローテーブルと白のソファの間にあぐらをかくと、とりあえず麦茶でいいかな?と冷たいお茶の入ったガラスコップを差し出されたので、ありがたく頂く。
「今日はもともと、肉じゃがにしようかと思ってたんだけど、それでいい?」
「肉じゃがは好きだ」
「よかった。出来るまでテレビ好きなように見てていいよ」
言われるがまま、テレビをつけて、適当なチャンネルに合わせる。
優実はてきぱきと料理を作り始め、その様子を後ろから眺めていると、その手慣れた様子から普段から自炊をしていることが分かった。仕事の時と同じ、無駄がなく見ているのが心地よい。ふと昨日会ったあの男も、大学時代の…彼氏なら、きっとこの部屋に来たんだろうな…という考えが頭をかすめた。こうやって座って、優実が料理をするのを眺めていたんだろうか。彼氏なら楽しく会話しながら隣に立って優美が作るのを眺めていたのかも。時々気持ちが昂ぶったら、彼女を抱き寄せたのかも。むくむくと嫉妬心が湧いて、そしてそんな資格が自分にないことが辛すぎる。
(…俺、本当に好きなんだな、田中のこと)
分かってはいたことだが、こうして休日を一緒に過ごして思いはますます強くなった。問題は、恋愛初心者の自分がどうやってそれを彼女に伝えるか、だ。
(突然好きだと言って怯えさせるのがオチかも…)
ありえそうな未来に暗澹たる気持ちになり、頭をぐしゃぐしゃにかきまわした。
(でも素直に言うしかない…)
今まで十分悩むだけ悩んで、結局不確定な未来に勝手に怖気づいて何一つ言い出せなかったのだから、これ以上どう考えても堂々めぐりするだけだ。同期で、隣の席で、もしフラれたら彼女を諦めるまでの長い間、相当キツイ思いをするのは目に見えているが、でもきっと自分が好きになった優実は、雄大が必要以上に気を遣わないように心を配ってくれる気がしている。そしてそんな人だから好きになったんだ。
心が決まると、今まで荒れ狂っていた胸の内があっという間に収まり、麦茶を一口ごくりと飲んだ。
☆
優実が 1時間もしないうちに、肉じゃが、小松菜のおひたし、空芯菜とツナのサラダ、豆腐とわかめの味噌汁、きゅうりと大根の浅漬けに、炊き立てのご飯を食卓代わりのローテーブルに並べてくれて、あまりの手際の良さに感激した。
「すごいな、魔法みたいだ」
思ったままを言っただけだが、優実はちょっと顔を赤らめて
「肉じゃがと味噌汁以外は常備菜だから…」
とあくまでもたいしたことをないように装うが、自分も小さい頃から家事をしないといけない環境だったため、大変さは少しは分かるつもりだ。両手を合わせて感謝した後、一口味噌汁をまず啜ると、自分が作るのとは違う優しい味がした。お世辞でもなんでもなく美味い。
「美味い」
「いやいや…普通だよ」
「本当に」
思わず、続けてしまった。
「人が作ったものを食べるのが、…ほとんどなかったから」
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(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
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2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
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