1 / 31
1.落ちこぼれ聖女
しおりを挟む
ダルカン共和国の首都アクアメア。
その中心に位置する王宮の隣に立っている大聖堂の礼拝堂で、秘密の除名式が行われていた。大司祭とそれから数名の司祭、そして――、一人の少女が膝をついている。
美しいステンドグラスの窓からはきらきらと輝く陽の光が差し込んでいるが、礼拝堂を覆うのは物々しい雰囲気だ。ぴんと張りつめた空気の中、大司祭が俯いたままの少女に向かって、声をあげる。
「クレメンタイン=ナーディア、そなたには力の発現が見られなかったため、聖女候補から外すことが決定した」
クレメンタインがびくっと震えると、ハニーブロンドの前髪が揺れる。
「申し訳ないと詫びるくらいはできないのか、この能なしが。聖女候補として恥ずかしいと思え」
司祭たちの誰かが呟いた。
この国では【聖女】と呼ばれる予言者が若干名存在する。
文字通り、未来を予言する国の行く末を握る重要人物だ。
どのように予言するかは聖女それぞれで、水鏡を視るものも、星を詠むものもいる。
この礼拝堂で行われる神託で名前を読み上げられる、聖女候補と呼ばれるその令嬢たちは大聖堂にて共同生活をして、はっきりとした力の発現を待つ。
クレメンタインは十歳の時に神託が下り、聖女候補として引き取られたが、それから十年が経っても何の力の発現も見られなかった。
文字通り、何の力の発現も、である。
前代未聞のことで、クレメンタインは普通の少女のままだった。
「クレメンタイン、顔をあげろ」
大司祭が促す。
ようやくゆっくりと視線をあげたクレメンタインの瞳は、ちょっと見ないほどの澄んだグリーンアイだ。化粧っ気もなく、またアクセサリーの類もしていないが、その瞳はまるで宝石のように輝いている。
貴族ではないがゆえに、司祭たちにとって何の価値もない。
「神託が下りお前を迎い入れたものの、力が発現しなかった。これはひとえにお前の信心不足によるもの。もともと養護院にいたお前を引き取ってやったことへの恩を忘れるな。あのまま養護院にいたら到底叶わなかった待遇を得られたことに未来永劫感謝しろ」
クレメンタインが頷けば、大司祭の顔が侮蔑で歪む。
「口に出せ。つくづく最後まで落第者だな、お前は」
その低い声がいかにも平民くさくて聞き苦しいから喋るな、と昨日まで言われていたのだが――。
「申し訳ございません」
かすれるような声でクレメンタインが答えると、大司祭が続けた。
「この落ちこぼれ聖女が。恥を知れ、平民風情が」
クレメンタインは再び俯く。
こんな罵詈雑言は、日常茶飯事だった。大司祭に限らず、司祭たちも、他の聖女候補たちも、平民出身であるクレメンタインを蔑む。
そもそも引き取られた時点からその傾向はあったが、クレメンタインが何の力も発現しないことが明らかになりつつあると、年々扱いは雑になっていった。
最初は言い返していたクレメンタインに『この平民風情が』と罵る。だんだんクレメンタインは口をつぐむようになり、最終的にはほとんど使用人と変わらない扱いだった。
「幸い、我が国には優秀な聖女候補が何人もいる。卑しい平民なのはお前だけだった。仕方なく、クレメンタイン=ナーディアという名を与えたが、それは聖女候補だったからこそ。二度と名乗ることは許されない。もちろん、聖女候補だったことも口にしてはならない」
いつものようにクレメンタインは頷きかけ、口に出して答えろと言われたのを思い出して、呟いた。
「心得ました」
「ふん、ようやくだな。見苦しいからさっさとここから出ていって、そして二度と顔を見せるな」
クレメンタインが床を見つめている間に、大司祭たちは礼拝堂を振り返ることなく後にした。
◇◇◇
クレメンタインに与えられた餞別の品などごく限られたものだった。
数枚の洋服と数日分の路銀だけ渡され、厄介払いだと言わんばかりに、着の身着のまま放り出される。見送りもなく、大聖堂の入口に立ったクレメンタインは二歩、三歩前に進む。
ようやく大聖堂が見えなくなる角に至って、クレメンタインは後ろを振り返った。
(ここまできたら、もう我慢しなくていいかな)
それまで無表情だったクレメンタインの顔に、みるみるうちに笑みが浮かぶ。
彼女は両腕をぐーんと上にあげて、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。
「あーーーー! やっと、出られたああ!!」
喜びのあまり、思っていたより声が大きくなってしまった。
(式の間中、笑顔になるのを我慢してて、辛かった~~!)
近くを歩いていた商人らしき男が、突然彼女が大声を出したことに、ぎょっとしたように二度見してくる。
(あああもうほんっと、長かった、長かったああ!! 十年よ、十年。陰険で陰湿で、意地悪で、特権主義のあいつら、ほんっとだいっきらい! なぁにが見苦しいから出ていけ、顔を二度と見せるな、よ! それはこっちの台詞だっての! ずっとこき使っていたくせにっ!!)
ぷんすかしながらクレメンタインは、道をまっすぐ歩いていく。
(なぁにが、名前を捨てろ、よ。私の名前はクレメンタインなんかじゃないのに、貴族っぽいからってつけたのあんたらでしょ! 信じられないっ!!)
彼女はそこで持っている袋に手を突っ込むと、古ぼけた金の指輪を取り出した。そのシンプルな指輪には【可愛い娘フィオナへ】と彫ってある。
これは病弱な母が、父がくれたものだといって大事にしていた指輪だ。母は優しくたおやかな美貌の人だったが、いかんせん身体が弱かった。父は隣国の貴族だったとだけ聞いている。確かにこれは金の指輪で、それなりに高価そうだったから嘘ではないかもしれない。だが家紋のひとつも入っていないから、父が貴族だったという確証はない。
『理由があって一緒にはなれなかったけれど、貴女が生まれた時は本当に喜んでくださったの』
母は本当に父を慕っていたのだろう。
その証拠に、父を悪く言っているのを一度も聞いたことがない。
その母は平民で、家族とは縁遠かった。
母と娘は二人で、貧民街でひっそりと暮らしていた。だが大好きな母と暮らしている時は、貧しくとも幸せだった。そして五歳の時にその母が亡くなり、養護院に引き取られてからはこの指輪を両親の形見として大事にしてきた。
平和な暮らしだった。
けれど突然『お前を聖女候補として引き取りに来た』と慇懃無礼な神官たちが現れたのだ。
(私にはちゃんとフィオナって名前があるのに)
平民の香りがする、といってフィオナと呼ばれることはついぞなかった。
間違いなく、ただの嫌がらせだと思う。
大司祭が適当につけた名前――クレメンタインは小さなミカンという意味があるが、何しろその時目の前にミカンがあったから名づけられただけで――で呼ばれ続け、尊厳という尊厳を傷つけられてきた。
高等教育を与えたともったいぶっていたが、他の聖女候補たちに比べてどれだけよい成績を修めようとも、教師たちは平民である彼女を見ないふりをした。礼儀作法も厳しく躾けられ、必要がないところまで叱責された。
何をしても罵られるばかりで、褒められることはついぞなかった。
(もううんざりだわ。この国から出ていく!)
十八歳まで我慢して、それから自分の父がいるらしい、隣国へ向かう。
それだけをよすがに、なんとか今までひたすら耐えてきたのだ。
どのみち、聖女候補になるまでの養護院には年齢の関係もあって戻れない。
待っている家族も、いない。
この国にはもう未練はない。
クレメンタイン――もとい、フィオナは顔をあげた。
(力が発現しなかった、ですって……? 当たり前じゃないの、誰があんたたちのために……っ!)
フィオナはきゅっと口を引き締める。
『フィオナ』
死の床についた母の言葉が脳裏をよぎる。
『貴女にはもしかしたら不思議な力が眠っているかもしれないの』
『ちから?』
やせ細った母が、笑顔になる。
『そう。ママの家系には、たまにそういう人がいるの……。もしかしたら初潮を迎えたら、目覚めるかもしれない。だけどね、その力については、決して人に言ってはいけないわ』
『そうなの?』
『ええ。でも大人になって必要に迫られたらいいわ。そして、どうか自分のためにだけではなく、人のために使ってね』
それは母の遺言だった。
ゆっくりと何度も母が頭を撫でてくれたのを思い出す。
フィオナは手の中にある指輪をぎゅっと握りしめる。
(ママ、会いたいな)
彼女は瞼をごしごしとやや乱暴にこすると、再び毅然と歩き始める。
(私、大人になったわ)
そう。
フィオナは、昨日成人したところだった。だからこそ、大司祭たちは彼女を放逐することを決めたのだ。
(見ていて、ママ。私……自分ひとりでもちゃんと生きてみせるから)
その中心に位置する王宮の隣に立っている大聖堂の礼拝堂で、秘密の除名式が行われていた。大司祭とそれから数名の司祭、そして――、一人の少女が膝をついている。
美しいステンドグラスの窓からはきらきらと輝く陽の光が差し込んでいるが、礼拝堂を覆うのは物々しい雰囲気だ。ぴんと張りつめた空気の中、大司祭が俯いたままの少女に向かって、声をあげる。
「クレメンタイン=ナーディア、そなたには力の発現が見られなかったため、聖女候補から外すことが決定した」
クレメンタインがびくっと震えると、ハニーブロンドの前髪が揺れる。
「申し訳ないと詫びるくらいはできないのか、この能なしが。聖女候補として恥ずかしいと思え」
司祭たちの誰かが呟いた。
この国では【聖女】と呼ばれる予言者が若干名存在する。
文字通り、未来を予言する国の行く末を握る重要人物だ。
どのように予言するかは聖女それぞれで、水鏡を視るものも、星を詠むものもいる。
この礼拝堂で行われる神託で名前を読み上げられる、聖女候補と呼ばれるその令嬢たちは大聖堂にて共同生活をして、はっきりとした力の発現を待つ。
クレメンタインは十歳の時に神託が下り、聖女候補として引き取られたが、それから十年が経っても何の力の発現も見られなかった。
文字通り、何の力の発現も、である。
前代未聞のことで、クレメンタインは普通の少女のままだった。
「クレメンタイン、顔をあげろ」
大司祭が促す。
ようやくゆっくりと視線をあげたクレメンタインの瞳は、ちょっと見ないほどの澄んだグリーンアイだ。化粧っ気もなく、またアクセサリーの類もしていないが、その瞳はまるで宝石のように輝いている。
貴族ではないがゆえに、司祭たちにとって何の価値もない。
「神託が下りお前を迎い入れたものの、力が発現しなかった。これはひとえにお前の信心不足によるもの。もともと養護院にいたお前を引き取ってやったことへの恩を忘れるな。あのまま養護院にいたら到底叶わなかった待遇を得られたことに未来永劫感謝しろ」
クレメンタインが頷けば、大司祭の顔が侮蔑で歪む。
「口に出せ。つくづく最後まで落第者だな、お前は」
その低い声がいかにも平民くさくて聞き苦しいから喋るな、と昨日まで言われていたのだが――。
「申し訳ございません」
かすれるような声でクレメンタインが答えると、大司祭が続けた。
「この落ちこぼれ聖女が。恥を知れ、平民風情が」
クレメンタインは再び俯く。
こんな罵詈雑言は、日常茶飯事だった。大司祭に限らず、司祭たちも、他の聖女候補たちも、平民出身であるクレメンタインを蔑む。
そもそも引き取られた時点からその傾向はあったが、クレメンタインが何の力も発現しないことが明らかになりつつあると、年々扱いは雑になっていった。
最初は言い返していたクレメンタインに『この平民風情が』と罵る。だんだんクレメンタインは口をつぐむようになり、最終的にはほとんど使用人と変わらない扱いだった。
「幸い、我が国には優秀な聖女候補が何人もいる。卑しい平民なのはお前だけだった。仕方なく、クレメンタイン=ナーディアという名を与えたが、それは聖女候補だったからこそ。二度と名乗ることは許されない。もちろん、聖女候補だったことも口にしてはならない」
いつものようにクレメンタインは頷きかけ、口に出して答えろと言われたのを思い出して、呟いた。
「心得ました」
「ふん、ようやくだな。見苦しいからさっさとここから出ていって、そして二度と顔を見せるな」
クレメンタインが床を見つめている間に、大司祭たちは礼拝堂を振り返ることなく後にした。
◇◇◇
クレメンタインに与えられた餞別の品などごく限られたものだった。
数枚の洋服と数日分の路銀だけ渡され、厄介払いだと言わんばかりに、着の身着のまま放り出される。見送りもなく、大聖堂の入口に立ったクレメンタインは二歩、三歩前に進む。
ようやく大聖堂が見えなくなる角に至って、クレメンタインは後ろを振り返った。
(ここまできたら、もう我慢しなくていいかな)
それまで無表情だったクレメンタインの顔に、みるみるうちに笑みが浮かぶ。
彼女は両腕をぐーんと上にあげて、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込んだ。
「あーーーー! やっと、出られたああ!!」
喜びのあまり、思っていたより声が大きくなってしまった。
(式の間中、笑顔になるのを我慢してて、辛かった~~!)
近くを歩いていた商人らしき男が、突然彼女が大声を出したことに、ぎょっとしたように二度見してくる。
(あああもうほんっと、長かった、長かったああ!! 十年よ、十年。陰険で陰湿で、意地悪で、特権主義のあいつら、ほんっとだいっきらい! なぁにが見苦しいから出ていけ、顔を二度と見せるな、よ! それはこっちの台詞だっての! ずっとこき使っていたくせにっ!!)
ぷんすかしながらクレメンタインは、道をまっすぐ歩いていく。
(なぁにが、名前を捨てろ、よ。私の名前はクレメンタインなんかじゃないのに、貴族っぽいからってつけたのあんたらでしょ! 信じられないっ!!)
彼女はそこで持っている袋に手を突っ込むと、古ぼけた金の指輪を取り出した。そのシンプルな指輪には【可愛い娘フィオナへ】と彫ってある。
これは病弱な母が、父がくれたものだといって大事にしていた指輪だ。母は優しくたおやかな美貌の人だったが、いかんせん身体が弱かった。父は隣国の貴族だったとだけ聞いている。確かにこれは金の指輪で、それなりに高価そうだったから嘘ではないかもしれない。だが家紋のひとつも入っていないから、父が貴族だったという確証はない。
『理由があって一緒にはなれなかったけれど、貴女が生まれた時は本当に喜んでくださったの』
母は本当に父を慕っていたのだろう。
その証拠に、父を悪く言っているのを一度も聞いたことがない。
その母は平民で、家族とは縁遠かった。
母と娘は二人で、貧民街でひっそりと暮らしていた。だが大好きな母と暮らしている時は、貧しくとも幸せだった。そして五歳の時にその母が亡くなり、養護院に引き取られてからはこの指輪を両親の形見として大事にしてきた。
平和な暮らしだった。
けれど突然『お前を聖女候補として引き取りに来た』と慇懃無礼な神官たちが現れたのだ。
(私にはちゃんとフィオナって名前があるのに)
平民の香りがする、といってフィオナと呼ばれることはついぞなかった。
間違いなく、ただの嫌がらせだと思う。
大司祭が適当につけた名前――クレメンタインは小さなミカンという意味があるが、何しろその時目の前にミカンがあったから名づけられただけで――で呼ばれ続け、尊厳という尊厳を傷つけられてきた。
高等教育を与えたともったいぶっていたが、他の聖女候補たちに比べてどれだけよい成績を修めようとも、教師たちは平民である彼女を見ないふりをした。礼儀作法も厳しく躾けられ、必要がないところまで叱責された。
何をしても罵られるばかりで、褒められることはついぞなかった。
(もううんざりだわ。この国から出ていく!)
十八歳まで我慢して、それから自分の父がいるらしい、隣国へ向かう。
それだけをよすがに、なんとか今までひたすら耐えてきたのだ。
どのみち、聖女候補になるまでの養護院には年齢の関係もあって戻れない。
待っている家族も、いない。
この国にはもう未練はない。
クレメンタイン――もとい、フィオナは顔をあげた。
(力が発現しなかった、ですって……? 当たり前じゃないの、誰があんたたちのために……っ!)
フィオナはきゅっと口を引き締める。
『フィオナ』
死の床についた母の言葉が脳裏をよぎる。
『貴女にはもしかしたら不思議な力が眠っているかもしれないの』
『ちから?』
やせ細った母が、笑顔になる。
『そう。ママの家系には、たまにそういう人がいるの……。もしかしたら初潮を迎えたら、目覚めるかもしれない。だけどね、その力については、決して人に言ってはいけないわ』
『そうなの?』
『ええ。でも大人になって必要に迫られたらいいわ。そして、どうか自分のためにだけではなく、人のために使ってね』
それは母の遺言だった。
ゆっくりと何度も母が頭を撫でてくれたのを思い出す。
フィオナは手の中にある指輪をぎゅっと握りしめる。
(ママ、会いたいな)
彼女は瞼をごしごしとやや乱暴にこすると、再び毅然と歩き始める。
(私、大人になったわ)
そう。
フィオナは、昨日成人したところだった。だからこそ、大司祭たちは彼女を放逐することを決めたのだ。
(見ていて、ママ。私……自分ひとりでもちゃんと生きてみせるから)
97
お気に入りに追加
456
あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる