17 / 20
思いの綴り
決闘
しおりを挟む
開けて翌日、この日は朝から大盛況だった、1学年のトップエースの1人で札付きの問題児である“アスビョルン・ヨハンソン”と転入早々ランボルギーニをぶちのめしてシェリルと熱い抱擁を交わし、一躍時の人となった“タクミ・ハヤサカ”との決闘が行われる為である。
ちなみに巧が調べた所、この“決闘”と言うのは定期的に行われており、それはつまりはそれだけこの学院に於いて起こる問題が多いことを意味していた。
「タクミ、頑張ってね!!?」
高等部と中等部の校舎のちょうど中央部分に位置している闘技場へと続く長い階段の中ほどに存在していた、出場者の控え室の一つで巧のセコンドを買って出てくれたシェリルが縋り付くような眼差しを送りながら彼氏にそう訴える。
「お願いだから無事でいて。そして勝って?私はアスビョルンのモノなんかになるのは嫌・・・!!!」
「当たり前じゃないか!!!」
そんな恋人からの励ましと切なる願いとに、“決闘者の服”に着替えて家から持ってきた守り刀の太刀を腰に差した巧は力強く応じて見せた。
「絶対に勝つよ、例え何があったとしてもね。大丈夫だよ、僕はちゃんと修業をして来たんだから!!!」
そう言って彼は一瞬だけ、神々や両親達にしごかれ続けて来た鍛錬の日々を思い出していた、昨日感じた事が正しければ決して油断のならない相手ではあるけれども、それでもアスビョルンは巧の敵では無い。
その証拠にあっさりと“支配の能力”に屈してしまっており、つまりはそれだけ両者の間に実力差がある事が伺えたが、さて。
「・・・時間だな、じゃあ行って来るよ!!!」
「本当に気を付けてね!!?」
“必ず勝って”、“無事に帰って来てね!!?”と言うシェリルの声援を受けながらも、巧が一歩ずつ闘技場へと続く階段を踏み締めながら昇っていくとー。
頂上に出た瞬間、強い日差しに包まれた外界へと彼は至り、そこでは大勢の生徒からの歓声に包まれる事となった、席は埋まっていない所の方が多いがこれは帰省中の生徒が多い為であり、夏期休暇中も寮に残っている高等部の生徒達の大多数がこの場に集まっている様子である。
「・・・・・」
(聞いた所によれば、この“決闘”と言うのは凄い人気のあるエンターテインメントらしいからな。こっちは命と誇りと大切なモノを賭けてこの場に来ている、と言うのにみんないい気なもんだ・・・!!!)
巧が周囲を見渡しながら、そんな事を考えているとー。
「良く来たな、タクミ・・・!!!」
彼とは反対側の出入り口から入場して来たアスビョルンが巧へと近付いて来る。
「良く逃げなかったじゃないか、その度胸は認めてやるよ!!!」
「・・・・・」
「今日でシェリルは俺のもんだ、お前はむしろその切っ掛けを与えてくれたのだから感謝してる位だぜ?」
「お前がシェリルに触れられる日は永遠に来ない。良い機会だからお前は徹底的に今日、ここで俺が叩き潰してやるよ」
「・・・ああん?」
「断っておくが。俺が勝ったらシェリルには金輪際二度と近付くなよ、解ったな?アスビョルン・・・!!!」
「・・・くっ、くっくっくっくっ。はっはっはっはっ!!!なんだよお前、マジで俺に勝つ気でいやがるのか?」
「・・・・・」
「良いぜ?別に。その条件飲んでやるよ、俺が負けたら二度とシェリルには近付かねえから」
そう言うとアスビョルンは巧のセコンドとして、彼と同じ出入り口を使って後から入場して来た灼熱煌姫を遠目に見た、“良い女だ”とアスビョルンは呟いた、ああ言う女はこの俺にこそ相応しい、と。
「お前をボロ雑巾のようにして、シェリルに突き付けてやるぜ。そうすりゃアイツだって考えが変わるだろうぜ?」
「地べたに這い蹲るのはお前の方だ。第一お前は既に俺に1回、負けているじゃないか・・・」
「あんなの勝負の内に入らねぇっ。ちょっと油断しただけだっ!!!」
昨日の教室での一件を蒸し返されてアスビョルンは恥ずかしいと思うと同時に腹立たしくなり、ムキになって否定するが、どうやらかなりの動揺を誘う事が出来た様子でありその分だけ巧に取っては戦う前から優勢さを勝ち取る事が出来た模様である。
「両者、そろそろ準備は良いか?それではこれより、タクミ・ハヤサカ対アスビョルン・ヨハンソンの決闘を執り行う。ルールと騎士道精神に基づいて正々堂々、決着を着けること。それでは始めっ!!!」
「ぬおうりゃっ!!!」
審判の教師の掛け声と同時にアスビョルンが気合いを込めて、体内で密かに練り上げていたオーラを全身へと伝達させるが、するとその途端に。
何と彼の体と四肢の筋肉がムキムキに膨れ上がって行き、服の上からでもハッキリと解る程にまで増強されていった。
身長は一回りは大きくなって放たれる攻撃的意志もより一層、分厚くて濃密なモノとなるが、その直後。
「そりゃあああああっ!!!」
一気呵成に巧へと向けて飛び掛かって来るモノの、それを巧は軽々と躱して宙に逃げ、彼の攻撃の特性とその威力とを見極める事としたのだが、直後に。
ドゴオオオォォォォンッ!!!!!と言う強烈な衝撃音が周囲に響き渡り、頑丈に造られている筈の闘技場の地面が大きくへこんで巨大な罅が走っていた。
「・・・・・」
(肉体を増強させての突進。からの衝撃波を身に纏っての攻撃か・・・!!!)
油断無く相手を分析しつつも巧が着地して体勢を整えると、次の瞬間アスビョルンは再び太くなった腕を振り上げつつも突撃をかまして来た。
「うおりゃあああああっ!!!」
「・・・・・」
それも宙に飛んで巧は躱すが、するとその直後には、彼の元居た場所は大きく抉れて歪み、そこには無数の罅が走っていたのだ。
「・・・・・」
「くそぅっ、このっ。ちょこまかと!!!」
せっかくの渾身の一撃を二度までも躱されて悔しがるアスビョルンに対して“掛かって来いよ、このノロマ!!!”と巧はわざと挑発を行った、今のままでもアスビョルンを撃破する手を持ってはいるが、彼は敢えて1番地味で楽な手を使って勝ち越そうと考えていたのである。
それは。
「ぬっぐぐぐぐっ。コイツがあああぁぁぁぁぁっ!!!」
アスビョルンの頭に血を昇らせて自分に対しての攻撃を連発させ、体力を早く消耗させた後で止めの一撃を彼に与える、そう言う作戦である。
「死ねええぇぇぇっ。死ね死ね死ね死ね死ね死ねえええーーーっっっ!!!!!」
ドスドスドスドスドスッ!!!と言う振動と共にアスビョルンが大地を駆けて巧に肉薄して来るモノの、対照的に巧は全く慌てる気配が無い。
今までの二連撃でアスビョルンの動きやその癖等を充分に見切っていた巧は至って冷静に繰り出される彼の攻撃に対処していった。
「チェストオオオォォォォォーーーッッッ!!!!!」
そう叫び様に己へと向けて振り下ろされる拳の連打を、巧はギリギリで、しかし苦もなく躱して捌き、いなしていった、単に相手の衝撃力を受け流すだけでは無くて身を捩り、軌道をずらし、終いにはアスビョルンの巨大化した太腿や肩等を蹴って飛んだり、高速で自分の立ち位置を入れ換えたりする。
「はあはあ、はあはあ・・・っ!!!」
(はあはあ・・・っ。ク、クソッ。コイツ、ちょこまかと・・・っ!!!)
ハイパワーのパンチを遮二無二繰り出し続けるアスビョルンだったが巧にはかすり傷一つでも負わせる事が出来ず、それ以前に彼の動きを捉える事が出来ずにいた、“当たった”と思った途端に巧はもう、その場所にはおらず回避の体勢に入ってしまっている。
まるで一瞬早くに未来を予知しているかのような、そんな体の動かし方だがアスビョルンはそれと気付かず悪戯に力を浪費する愚行をいつまでもいつまでも繰り返していった。
「はぁーっ、はぁーっ。はあはあ、はあはあ・・・っ!!!」
(ぐっ、ぐ・・・っ。コイツ、早えぇっ。なんて身のこなしをしてやがるんだ、まるで纏わり付いた猿みたいな動きをしやがる・・・!!!)
中々にダメージを与えられないアスビョルンには次第に焦りが出て来ていた、決闘が開始されてからおよそ30分、通常の状態ならばともかく、不用意に膨れ上がった筋肉は彼から容赦なく体力と気力とを削り取っていったのである。
体中からは大粒の汗が溢れ出して来て容赦なく服を濡らした、四肢が重くて立っている事さえ億劫になって来てしまっていたのだ。
一方で。
「・・・・・」
その様子を間近で見ていた巧は“そろそろかな・・・?”と思い立ち、次のアスビョルンの動作を待った、狙っていたのは攻撃の瞬間であり、その時にカウンターで鳩尾に“発勁”を打ち込もうとしていたのだ、果たして。
「クソがあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
狙い通り、とでも言うべきか、アスビョルンが自身の憤怒を乗せたパンチを巧へと打ち込もうとした刹那、巧の方が素早く動いて練り上げた波動球を拳に纏わせ、彼の急所に正確に打ち込んだのだ。
その瞬間、鋭い衝撃エネルギーの奔流が筋肉の鎧を貫通して行き、アスビョルンの内臓に直にダメージを与えていった、それは真っ直ぐ彼の体を抜けて向こう側に出るとそのまま直進して行き、闘技場の壁に大穴を開けて四散していった。
「グホアガァ・・・ッ!!?」
「・・・・・」
(かなり手加減したんだけどな・・・!!!)
“いけない、いけない”と巧は思った、対戦者同士は勿論、万が一にも観客に死者や重傷者を出した場合は彼等に申し訳無いし、何より反則負けとなってしまうルールである、気を付けなくてはならなかった。
(威力の調節は、今後の課題としようか。だけど・・・)
“取り敢えずは勝ったな・・・”と感じて巧が、それでも油断をせずに“残心”を取りつつ様子を見ていると。
口から唾液ともども多量の胃液までをも噴出させたアスビョルンが立ったまま白眼を向いてその場にドウッと崩れ落ちた、それだけ巧によってもたらされたダメージは大きくて、また確かなるモノだったのである。
「そこまでだ!!!」
倒れ伏したアスビョルンに駆け寄って容態を見た教師の制止で巧は一旦、それ以上の追撃を止めた。
「アスビョルンはもうこれ以上は戦闘を継続出来る状況にないな。この勝負はタクミ・ハヤサカの勝ちとする!!!」
その判定と同時に生徒達から“ワアアァァァッ!!!”ということは歓声が挙がり、シェリルが巧に駆け寄って来る。
「タクミィッ❤❤❤❤❤」
「うわっと。シェリルッ!!?」
そのままの勢いで彼氏に抱き着いた彼女は涙ながらにその無事と勝利を喜んでくれていたのだが、対する巧はと言うと。
改めてシェリルの体の感触にドギマギしていた、柔らかくて華奢な腰回りと言い、マシュマロのようにフワフワで豊満なバストと言い本当に可憐なレディになったな、と思わざるを得ない。
「ああぅっ!!?シェリル、ちょっと照れ臭いよ。だけど良かった、君が無事でいてくれて。僕だけのモノでいてくれて・・・っ!!!」
「うん、うんっ!!!タクミッ。私は、シェリルはあなただけのモノだよ・・・っ❤❤❤❤❤」
2人が何とか“愛の試練を乗り越えられた”と安堵すると同時に喜びを分かち合っているとー。
「う、うぐううぅぅぅっ!!?ゲホッ、ゴホッ。ぐあああああ・・・っ!!!」
医療班に救助されていたアスビョルンが目を覚まし、呻きながらも上体をゆっくりと起こして辺りを見渡している。
「な、なんだよこりゃあ。一体、何が・・・?」
「気が付いたか?アスビョルン、決闘の決着は着いたよ。君は負けたんだ!!!」
「・・・・・っ。う、嘘だっ。そんなバカな、有り得ねぇっ!!!」
審判役の教師の宣告に、驚愕と困惑の面持ちとなってアスビョルンが絶叫するが、徐々に意識がハッキリとしてくるに従って彼にも自分がカウンターを喰らって吹っ飛ばされた記憶がまざまざと浮かび上がって来た。
「ぐっ、ぐ・・・っ。汚えぞ?タクミ。卑怯な手を使いやがって!!!」
「勝負は正々堂々としたモノだった。君達は真正面から戦って巧は勝ち、君は敗れたんだ。それなのに何を言うんだ!!?」
「うるせぇっ。こんな勝負は無効だっ、俺はシェリルを諦める気はねえからな!!?」
「それじゃあ約束が違うだろう?アスビョルン・・・」
それを聞いていた巧がシェリルを庇うようにして自らズイッと前に出る。
「お前は俺が勝ったなら、シェリルを諦めるとハッキリと宣告したじゃないか。約束も守れない男だったのか?お前は・・・」
「うるせぇっ。てめぇなんかに何も言われる筋合いはねえぞ?シェリルは俺の女だっ、誰がどう言っても、何と言われようともてめぇの事なんか認めねえからな!!!」
そう叫ぶとアスビョルンは再び立ち上がり、巧へと向けて相対した、そして。
「もう一度だ、タクミ。もう一度俺と勝負しろ!!!」
そうのたまったが、当の巧はそんなアスビョルンに対して非常に冷めた眼差しを送って言い返した。
「お前は信用に足る男じゃない。自分で言った事も守れない程度の、ちっぽけな存在だ。それじゃこちらとしても、なんのためにお前と勝負をしなければいけないのか解らないよ・・・」
「う、ぐ・・・っ!!!」
“クソがあああぁぁぁぁぁっ!!!”と叫ぶと同時にアスビョルンは再び筋肉をムキムキに滾らせた状態で巧に突っ込んできた、今回は直ぐ側に教師やシェリルが居る為に、躱す事が出来ないだろうと踏んでの突進であったが、しかし。
巧は特に戸惑う事も無く、そして構えすら取らずにそれを真正面から肉体だけで受けた、パンチが自分の体の中央部分に着弾する瞬間、両脚を地面に踏ん張り、息を整えて平然とアスビョルンを見据えていたが、一方で。
攻撃が決まった刹那、アスビョルンは自分よりも小柄で細身な筈の巧の肉体に驚愕していた、“なんて良いガタイをしていやがるんだ”と思い、“まるで重くて分厚いタイヤをぶん殴っているようだ”と感じたが、それは強ち間違いでは無かった。
巧の肉体は極限まで凝縮された良質な筋肉の層が幾重にも連なって形作られており、骨格も太くて頑健そのもの、かてて加えて神経系節も各筋繊維も、著しく発達していた。
それだけではない、頭脳や心臓、内臓等も最大限にまで活性化されており、見た目以上に強靱でアスビョルンの渾身の打撃にも微塵も揺るがなかったのである。
「・・・・・っ!?!?!?」
「・・・気は済んだか?」
それでも油断無く自身の体から衝撃波を地面に受け流しつつも巧が問うと、アスビョルンは苦い顔を見せて無言のままその場から立ち去っていった、あのままもし、真正面からの殴り合いをやっていたとしても恐らく自分は勝てなかっただろう、と言う事を感覚として理解した為であった。
「・・・・・」
「・・・ね、ねえタクミ。大丈夫なの?」
心配そうな顔付きとなって尋ねて来る恋人王女に、巧は“ああ大丈夫”、“何でも無いよ”とにべも無く応えて言い放った、これ位の負荷ならば鍛錬中に散々味あわされたし、特に今の彼にとっては有効な攻撃には成り得ない代物であったのだ。
「先生、僕達はこれで帰りますけど。特に何か、まだやらなくてはならない事は無いですか?」
「・・・ああ、君達がやるべき事は特には無いよ?帰ってゆっくり休むが良い。改めて言うが見事な勝利だったよ?タクミ君。君はあのアスビョルンに勝ったのだから、胸を張って良いよ!!!」
「有り難う御座います、先生・・・」
「ところで、それと・・・。シェリル王女との交際についてなのだが、あれは事実なのかね?」
「はい、事実です」
「私達、真剣に愛し合っているんです。先生!!!」
「・・・それは国王陛下は御存知なのですか?シェリル王女」
「あ、いえ。それは・・・」
「はい、先生。既に父も知っています、私から父に話して“彼と将来を共にしても良い”と言う許可をもらっていますから!!!」
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
これには教師のみならず、巧自身も驚いた、彼もそんな話は聞いていなかったのでシェリルに近寄ると“ほ、本当なの・・・?”と恐る恐る耳打ちして確認した程だったのだ。
すると。
「勿論よ、タクミ。私が大事な事に関しては、特に隠し事や嘘が嫌いなのは知っているわよね?それにお父様が病気になった事も話したと思うけど、あの時に私はちゃんとあなたとの事に付いてもお父様と話し合ったの。そしたらお父様が“そんなに真剣な思いがあるならお前の好きにしなさい”って言ってくれたんだから!!!」
「・・・・・っ!!!」
“マジか!!?”と巧は改めてビックリしてしまっていた、確かにシェリルは大切な事に関しては、嘘偽りを述べ立てる女の子ではないし、それにこう言う場で冗談を口にする程軽い女性でもない。
「そうか、ようやく合点が行ったよ。それで自分の元に国王様から直々の手紙と共に、この“王立セントヘレナ学院”への入学許可証が届けられたのか・・・!!!」
「そうよ?お父様が私達の為に動いてくれたのよ、間違いないわ!!!」
「・・・・・っ。ま、まあそれは良いとして。シェリル王女、しかし貴女にはどうしても“立場”と言うモノがあります。それをお忘れ無きように」
“それから”と教師は念を押して彼等に告げた、“本校は不純異性交遊禁止ですからね?”とそう言って。
「くれぐれも卒業までは清く正しいお付き合いをなさって下さい、2人とも。以上です!!!」
それだけ言うと教師は去って行き、後には観客と巧達だけが残された。
「さてと・・・。僕らも帰ろうか?シェリル・・・」
「う、うん。だけど大丈夫なの?タクミ。どこも怪我をしてない・・・?」
「ああ、全然大丈夫だよ。これならお父さんに殴られた時の方が応えたからね・・・。さ、帰ろう?シェリル・・・」
「あ・・・」
そう言うと巧は恋人王女の事を“ヒョイ”と抱き抱えてその場を後にした、その腕の中でシェリルは青年の逞しさに改めて惚れ直していた、だってあれだけ激しく動き回っていたと言うのに巧ときたら汗一つ掻いておらず、また息一つ上がってはいないのだ、それはつまり今の巧がそれだけとんでもない程のタフさとスタミナを誇っており、まだまだ余裕を保っている状態にある、と言えたのである。
(タクミ、凄いな。本当に強くなっちゃったんだね、まともな力比べだったらもう私なんか足下にも及ばないかも・・・!!!)
そんな事を考えながら、シェリルは巧の逞しい肉体に己が肢体をスリスリと、何度も何度も擦り寄わせていった。
ちなみに巧が調べた所、この“決闘”と言うのは定期的に行われており、それはつまりはそれだけこの学院に於いて起こる問題が多いことを意味していた。
「タクミ、頑張ってね!!?」
高等部と中等部の校舎のちょうど中央部分に位置している闘技場へと続く長い階段の中ほどに存在していた、出場者の控え室の一つで巧のセコンドを買って出てくれたシェリルが縋り付くような眼差しを送りながら彼氏にそう訴える。
「お願いだから無事でいて。そして勝って?私はアスビョルンのモノなんかになるのは嫌・・・!!!」
「当たり前じゃないか!!!」
そんな恋人からの励ましと切なる願いとに、“決闘者の服”に着替えて家から持ってきた守り刀の太刀を腰に差した巧は力強く応じて見せた。
「絶対に勝つよ、例え何があったとしてもね。大丈夫だよ、僕はちゃんと修業をして来たんだから!!!」
そう言って彼は一瞬だけ、神々や両親達にしごかれ続けて来た鍛錬の日々を思い出していた、昨日感じた事が正しければ決して油断のならない相手ではあるけれども、それでもアスビョルンは巧の敵では無い。
その証拠にあっさりと“支配の能力”に屈してしまっており、つまりはそれだけ両者の間に実力差がある事が伺えたが、さて。
「・・・時間だな、じゃあ行って来るよ!!!」
「本当に気を付けてね!!?」
“必ず勝って”、“無事に帰って来てね!!?”と言うシェリルの声援を受けながらも、巧が一歩ずつ闘技場へと続く階段を踏み締めながら昇っていくとー。
頂上に出た瞬間、強い日差しに包まれた外界へと彼は至り、そこでは大勢の生徒からの歓声に包まれる事となった、席は埋まっていない所の方が多いがこれは帰省中の生徒が多い為であり、夏期休暇中も寮に残っている高等部の生徒達の大多数がこの場に集まっている様子である。
「・・・・・」
(聞いた所によれば、この“決闘”と言うのは凄い人気のあるエンターテインメントらしいからな。こっちは命と誇りと大切なモノを賭けてこの場に来ている、と言うのにみんないい気なもんだ・・・!!!)
巧が周囲を見渡しながら、そんな事を考えているとー。
「良く来たな、タクミ・・・!!!」
彼とは反対側の出入り口から入場して来たアスビョルンが巧へと近付いて来る。
「良く逃げなかったじゃないか、その度胸は認めてやるよ!!!」
「・・・・・」
「今日でシェリルは俺のもんだ、お前はむしろその切っ掛けを与えてくれたのだから感謝してる位だぜ?」
「お前がシェリルに触れられる日は永遠に来ない。良い機会だからお前は徹底的に今日、ここで俺が叩き潰してやるよ」
「・・・ああん?」
「断っておくが。俺が勝ったらシェリルには金輪際二度と近付くなよ、解ったな?アスビョルン・・・!!!」
「・・・くっ、くっくっくっくっ。はっはっはっはっ!!!なんだよお前、マジで俺に勝つ気でいやがるのか?」
「・・・・・」
「良いぜ?別に。その条件飲んでやるよ、俺が負けたら二度とシェリルには近付かねえから」
そう言うとアスビョルンは巧のセコンドとして、彼と同じ出入り口を使って後から入場して来た灼熱煌姫を遠目に見た、“良い女だ”とアスビョルンは呟いた、ああ言う女はこの俺にこそ相応しい、と。
「お前をボロ雑巾のようにして、シェリルに突き付けてやるぜ。そうすりゃアイツだって考えが変わるだろうぜ?」
「地べたに這い蹲るのはお前の方だ。第一お前は既に俺に1回、負けているじゃないか・・・」
「あんなの勝負の内に入らねぇっ。ちょっと油断しただけだっ!!!」
昨日の教室での一件を蒸し返されてアスビョルンは恥ずかしいと思うと同時に腹立たしくなり、ムキになって否定するが、どうやらかなりの動揺を誘う事が出来た様子でありその分だけ巧に取っては戦う前から優勢さを勝ち取る事が出来た模様である。
「両者、そろそろ準備は良いか?それではこれより、タクミ・ハヤサカ対アスビョルン・ヨハンソンの決闘を執り行う。ルールと騎士道精神に基づいて正々堂々、決着を着けること。それでは始めっ!!!」
「ぬおうりゃっ!!!」
審判の教師の掛け声と同時にアスビョルンが気合いを込めて、体内で密かに練り上げていたオーラを全身へと伝達させるが、するとその途端に。
何と彼の体と四肢の筋肉がムキムキに膨れ上がって行き、服の上からでもハッキリと解る程にまで増強されていった。
身長は一回りは大きくなって放たれる攻撃的意志もより一層、分厚くて濃密なモノとなるが、その直後。
「そりゃあああああっ!!!」
一気呵成に巧へと向けて飛び掛かって来るモノの、それを巧は軽々と躱して宙に逃げ、彼の攻撃の特性とその威力とを見極める事としたのだが、直後に。
ドゴオオオォォォォンッ!!!!!と言う強烈な衝撃音が周囲に響き渡り、頑丈に造られている筈の闘技場の地面が大きくへこんで巨大な罅が走っていた。
「・・・・・」
(肉体を増強させての突進。からの衝撃波を身に纏っての攻撃か・・・!!!)
油断無く相手を分析しつつも巧が着地して体勢を整えると、次の瞬間アスビョルンは再び太くなった腕を振り上げつつも突撃をかまして来た。
「うおりゃあああああっ!!!」
「・・・・・」
それも宙に飛んで巧は躱すが、するとその直後には、彼の元居た場所は大きく抉れて歪み、そこには無数の罅が走っていたのだ。
「・・・・・」
「くそぅっ、このっ。ちょこまかと!!!」
せっかくの渾身の一撃を二度までも躱されて悔しがるアスビョルンに対して“掛かって来いよ、このノロマ!!!”と巧はわざと挑発を行った、今のままでもアスビョルンを撃破する手を持ってはいるが、彼は敢えて1番地味で楽な手を使って勝ち越そうと考えていたのである。
それは。
「ぬっぐぐぐぐっ。コイツがあああぁぁぁぁぁっ!!!」
アスビョルンの頭に血を昇らせて自分に対しての攻撃を連発させ、体力を早く消耗させた後で止めの一撃を彼に与える、そう言う作戦である。
「死ねええぇぇぇっ。死ね死ね死ね死ね死ね死ねえええーーーっっっ!!!!!」
ドスドスドスドスドスッ!!!と言う振動と共にアスビョルンが大地を駆けて巧に肉薄して来るモノの、対照的に巧は全く慌てる気配が無い。
今までの二連撃でアスビョルンの動きやその癖等を充分に見切っていた巧は至って冷静に繰り出される彼の攻撃に対処していった。
「チェストオオオォォォォォーーーッッッ!!!!!」
そう叫び様に己へと向けて振り下ろされる拳の連打を、巧はギリギリで、しかし苦もなく躱して捌き、いなしていった、単に相手の衝撃力を受け流すだけでは無くて身を捩り、軌道をずらし、終いにはアスビョルンの巨大化した太腿や肩等を蹴って飛んだり、高速で自分の立ち位置を入れ換えたりする。
「はあはあ、はあはあ・・・っ!!!」
(はあはあ・・・っ。ク、クソッ。コイツ、ちょこまかと・・・っ!!!)
ハイパワーのパンチを遮二無二繰り出し続けるアスビョルンだったが巧にはかすり傷一つでも負わせる事が出来ず、それ以前に彼の動きを捉える事が出来ずにいた、“当たった”と思った途端に巧はもう、その場所にはおらず回避の体勢に入ってしまっている。
まるで一瞬早くに未来を予知しているかのような、そんな体の動かし方だがアスビョルンはそれと気付かず悪戯に力を浪費する愚行をいつまでもいつまでも繰り返していった。
「はぁーっ、はぁーっ。はあはあ、はあはあ・・・っ!!!」
(ぐっ、ぐ・・・っ。コイツ、早えぇっ。なんて身のこなしをしてやがるんだ、まるで纏わり付いた猿みたいな動きをしやがる・・・!!!)
中々にダメージを与えられないアスビョルンには次第に焦りが出て来ていた、決闘が開始されてからおよそ30分、通常の状態ならばともかく、不用意に膨れ上がった筋肉は彼から容赦なく体力と気力とを削り取っていったのである。
体中からは大粒の汗が溢れ出して来て容赦なく服を濡らした、四肢が重くて立っている事さえ億劫になって来てしまっていたのだ。
一方で。
「・・・・・」
その様子を間近で見ていた巧は“そろそろかな・・・?”と思い立ち、次のアスビョルンの動作を待った、狙っていたのは攻撃の瞬間であり、その時にカウンターで鳩尾に“発勁”を打ち込もうとしていたのだ、果たして。
「クソがあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」
狙い通り、とでも言うべきか、アスビョルンが自身の憤怒を乗せたパンチを巧へと打ち込もうとした刹那、巧の方が素早く動いて練り上げた波動球を拳に纏わせ、彼の急所に正確に打ち込んだのだ。
その瞬間、鋭い衝撃エネルギーの奔流が筋肉の鎧を貫通して行き、アスビョルンの内臓に直にダメージを与えていった、それは真っ直ぐ彼の体を抜けて向こう側に出るとそのまま直進して行き、闘技場の壁に大穴を開けて四散していった。
「グホアガァ・・・ッ!!?」
「・・・・・」
(かなり手加減したんだけどな・・・!!!)
“いけない、いけない”と巧は思った、対戦者同士は勿論、万が一にも観客に死者や重傷者を出した場合は彼等に申し訳無いし、何より反則負けとなってしまうルールである、気を付けなくてはならなかった。
(威力の調節は、今後の課題としようか。だけど・・・)
“取り敢えずは勝ったな・・・”と感じて巧が、それでも油断をせずに“残心”を取りつつ様子を見ていると。
口から唾液ともども多量の胃液までをも噴出させたアスビョルンが立ったまま白眼を向いてその場にドウッと崩れ落ちた、それだけ巧によってもたらされたダメージは大きくて、また確かなるモノだったのである。
「そこまでだ!!!」
倒れ伏したアスビョルンに駆け寄って容態を見た教師の制止で巧は一旦、それ以上の追撃を止めた。
「アスビョルンはもうこれ以上は戦闘を継続出来る状況にないな。この勝負はタクミ・ハヤサカの勝ちとする!!!」
その判定と同時に生徒達から“ワアアァァァッ!!!”ということは歓声が挙がり、シェリルが巧に駆け寄って来る。
「タクミィッ❤❤❤❤❤」
「うわっと。シェリルッ!!?」
そのままの勢いで彼氏に抱き着いた彼女は涙ながらにその無事と勝利を喜んでくれていたのだが、対する巧はと言うと。
改めてシェリルの体の感触にドギマギしていた、柔らかくて華奢な腰回りと言い、マシュマロのようにフワフワで豊満なバストと言い本当に可憐なレディになったな、と思わざるを得ない。
「ああぅっ!!?シェリル、ちょっと照れ臭いよ。だけど良かった、君が無事でいてくれて。僕だけのモノでいてくれて・・・っ!!!」
「うん、うんっ!!!タクミッ。私は、シェリルはあなただけのモノだよ・・・っ❤❤❤❤❤」
2人が何とか“愛の試練を乗り越えられた”と安堵すると同時に喜びを分かち合っているとー。
「う、うぐううぅぅぅっ!!?ゲホッ、ゴホッ。ぐあああああ・・・っ!!!」
医療班に救助されていたアスビョルンが目を覚まし、呻きながらも上体をゆっくりと起こして辺りを見渡している。
「な、なんだよこりゃあ。一体、何が・・・?」
「気が付いたか?アスビョルン、決闘の決着は着いたよ。君は負けたんだ!!!」
「・・・・・っ。う、嘘だっ。そんなバカな、有り得ねぇっ!!!」
審判役の教師の宣告に、驚愕と困惑の面持ちとなってアスビョルンが絶叫するが、徐々に意識がハッキリとしてくるに従って彼にも自分がカウンターを喰らって吹っ飛ばされた記憶がまざまざと浮かび上がって来た。
「ぐっ、ぐ・・・っ。汚えぞ?タクミ。卑怯な手を使いやがって!!!」
「勝負は正々堂々としたモノだった。君達は真正面から戦って巧は勝ち、君は敗れたんだ。それなのに何を言うんだ!!?」
「うるせぇっ。こんな勝負は無効だっ、俺はシェリルを諦める気はねえからな!!?」
「それじゃあ約束が違うだろう?アスビョルン・・・」
それを聞いていた巧がシェリルを庇うようにして自らズイッと前に出る。
「お前は俺が勝ったなら、シェリルを諦めるとハッキリと宣告したじゃないか。約束も守れない男だったのか?お前は・・・」
「うるせぇっ。てめぇなんかに何も言われる筋合いはねえぞ?シェリルは俺の女だっ、誰がどう言っても、何と言われようともてめぇの事なんか認めねえからな!!!」
そう叫ぶとアスビョルンは再び立ち上がり、巧へと向けて相対した、そして。
「もう一度だ、タクミ。もう一度俺と勝負しろ!!!」
そうのたまったが、当の巧はそんなアスビョルンに対して非常に冷めた眼差しを送って言い返した。
「お前は信用に足る男じゃない。自分で言った事も守れない程度の、ちっぽけな存在だ。それじゃこちらとしても、なんのためにお前と勝負をしなければいけないのか解らないよ・・・」
「う、ぐ・・・っ!!!」
“クソがあああぁぁぁぁぁっ!!!”と叫ぶと同時にアスビョルンは再び筋肉をムキムキに滾らせた状態で巧に突っ込んできた、今回は直ぐ側に教師やシェリルが居る為に、躱す事が出来ないだろうと踏んでの突進であったが、しかし。
巧は特に戸惑う事も無く、そして構えすら取らずにそれを真正面から肉体だけで受けた、パンチが自分の体の中央部分に着弾する瞬間、両脚を地面に踏ん張り、息を整えて平然とアスビョルンを見据えていたが、一方で。
攻撃が決まった刹那、アスビョルンは自分よりも小柄で細身な筈の巧の肉体に驚愕していた、“なんて良いガタイをしていやがるんだ”と思い、“まるで重くて分厚いタイヤをぶん殴っているようだ”と感じたが、それは強ち間違いでは無かった。
巧の肉体は極限まで凝縮された良質な筋肉の層が幾重にも連なって形作られており、骨格も太くて頑健そのもの、かてて加えて神経系節も各筋繊維も、著しく発達していた。
それだけではない、頭脳や心臓、内臓等も最大限にまで活性化されており、見た目以上に強靱でアスビョルンの渾身の打撃にも微塵も揺るがなかったのである。
「・・・・・っ!?!?!?」
「・・・気は済んだか?」
それでも油断無く自身の体から衝撃波を地面に受け流しつつも巧が問うと、アスビョルンは苦い顔を見せて無言のままその場から立ち去っていった、あのままもし、真正面からの殴り合いをやっていたとしても恐らく自分は勝てなかっただろう、と言う事を感覚として理解した為であった。
「・・・・・」
「・・・ね、ねえタクミ。大丈夫なの?」
心配そうな顔付きとなって尋ねて来る恋人王女に、巧は“ああ大丈夫”、“何でも無いよ”とにべも無く応えて言い放った、これ位の負荷ならば鍛錬中に散々味あわされたし、特に今の彼にとっては有効な攻撃には成り得ない代物であったのだ。
「先生、僕達はこれで帰りますけど。特に何か、まだやらなくてはならない事は無いですか?」
「・・・ああ、君達がやるべき事は特には無いよ?帰ってゆっくり休むが良い。改めて言うが見事な勝利だったよ?タクミ君。君はあのアスビョルンに勝ったのだから、胸を張って良いよ!!!」
「有り難う御座います、先生・・・」
「ところで、それと・・・。シェリル王女との交際についてなのだが、あれは事実なのかね?」
「はい、事実です」
「私達、真剣に愛し合っているんです。先生!!!」
「・・・それは国王陛下は御存知なのですか?シェリル王女」
「あ、いえ。それは・・・」
「はい、先生。既に父も知っています、私から父に話して“彼と将来を共にしても良い”と言う許可をもらっていますから!!!」
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
これには教師のみならず、巧自身も驚いた、彼もそんな話は聞いていなかったのでシェリルに近寄ると“ほ、本当なの・・・?”と恐る恐る耳打ちして確認した程だったのだ。
すると。
「勿論よ、タクミ。私が大事な事に関しては、特に隠し事や嘘が嫌いなのは知っているわよね?それにお父様が病気になった事も話したと思うけど、あの時に私はちゃんとあなたとの事に付いてもお父様と話し合ったの。そしたらお父様が“そんなに真剣な思いがあるならお前の好きにしなさい”って言ってくれたんだから!!!」
「・・・・・っ!!!」
“マジか!!?”と巧は改めてビックリしてしまっていた、確かにシェリルは大切な事に関しては、嘘偽りを述べ立てる女の子ではないし、それにこう言う場で冗談を口にする程軽い女性でもない。
「そうか、ようやく合点が行ったよ。それで自分の元に国王様から直々の手紙と共に、この“王立セントヘレナ学院”への入学許可証が届けられたのか・・・!!!」
「そうよ?お父様が私達の為に動いてくれたのよ、間違いないわ!!!」
「・・・・・っ。ま、まあそれは良いとして。シェリル王女、しかし貴女にはどうしても“立場”と言うモノがあります。それをお忘れ無きように」
“それから”と教師は念を押して彼等に告げた、“本校は不純異性交遊禁止ですからね?”とそう言って。
「くれぐれも卒業までは清く正しいお付き合いをなさって下さい、2人とも。以上です!!!」
それだけ言うと教師は去って行き、後には観客と巧達だけが残された。
「さてと・・・。僕らも帰ろうか?シェリル・・・」
「う、うん。だけど大丈夫なの?タクミ。どこも怪我をしてない・・・?」
「ああ、全然大丈夫だよ。これならお父さんに殴られた時の方が応えたからね・・・。さ、帰ろう?シェリル・・・」
「あ・・・」
そう言うと巧は恋人王女の事を“ヒョイ”と抱き抱えてその場を後にした、その腕の中でシェリルは青年の逞しさに改めて惚れ直していた、だってあれだけ激しく動き回っていたと言うのに巧ときたら汗一つ掻いておらず、また息一つ上がってはいないのだ、それはつまり今の巧がそれだけとんでもない程のタフさとスタミナを誇っており、まだまだ余裕を保っている状態にある、と言えたのである。
(タクミ、凄いな。本当に強くなっちゃったんだね、まともな力比べだったらもう私なんか足下にも及ばないかも・・・!!!)
そんな事を考えながら、シェリルは巧の逞しい肉体に己が肢体をスリスリと、何度も何度も擦り寄わせていった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
完堕ち女子大生~愛と哀しみのナポリタン~
ミロ
恋愛
うぶだったが故に騙され
奥手だったが故に堕とされる
父親よりも年上のセックスモンスターに
十九歳のしなやかな肉体は
なす術なく開発されていく
快楽の底なし沼に引きずり込まれていく
暴走する歪んだ愛に翻弄される女子大生が
辿り着いた先にあるのは絶望か
それともーー
インピオ
ハイパーキャノン
恋愛
神奈川県緑区在住の一条透と宮下柚希。
二人は幼馴染だった、そして柚希は重度の匂いフェチだった。
透はエッチの時は人が変わったように求めて来るが、それでも柚希は彼を拒まなかった。
互いに相手が大好きで、ちょっと粘着質な二人は子供のころからズブズブな関係を築き上げて行く。
イラストの投入を開始しました、イラストレーターは“望月なお”様です。
どうもありがとうございます。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
もし学園のアイドルが俺のメイドになったら
みずがめ
恋愛
もしも、憧れの女子が絶対服従のメイドになったら……。そんなの普通の男子ならやることは決まっているよな?
これは不幸な陰キャが、学園一の美少女をメイドという名の性奴隷として扱い、欲望の限りを尽くしまくるお話である。
※【挿絵あり】にはいただいたイラストを載せています。
「小説家になろう」ノクターンノベルズにも掲載しています。表紙はあっきコタロウさんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる