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思いの綴り
始まりのクラスメイト達
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巧は表面上は16歳の少年だが神と共に神界に於いて1年と半年ほど修業を重ねて居たために(それでもこっちの時間軸では1日と経っていなかったが)、実際の年齢は17歳と半年であり元来が2歳差のシェリルとはそれほど年が変わらなくなっていたのだ。
もっとも現時点でそれを知っているのは、神々を除けば巧本人だけなので、周囲の人間はそれと気付かずに彼に接し続けていたのだが特にここ、北欧では人種的に背が高くて大柄な者達が多いせいだろう、身長180・5cmの巧は日本では頭一つ抜けていたモノのコーラッド王国内では一般的な体格であり、それほど目立つ存在ではなかったのである。
ただし。
別の意味で彼は注目を集める事となった、転入初日に暴走車を生身でぶっ飛ばした挙げ句、学院の中でも麗しい美人かつ高嶺の花で有名なシェリルと皆の面前で熱い抱擁を交わしてしまった事が、その契機となってしまったのだ。
「こんな時期だが転入生を紹介する」
シェリルとの再会と告白を経て、無事に恋人としてのお付き合いをスタートさせた巧であったが、それから一夜明けた今日、ちょっとした騒動に巻き込まれる事となった。
既に一学期は終わってしまっており、学生らの大半は寮から実家へと帰省を果たしていたのだが、それでも何名かはそのまま寮に滞在していて、臨時に彼等を集めた担任でもある女性教諭の“カルロッテ・アベニウス”が1年のクラスメイト達に巧を紹介してくれる事になったのである。
「日本からの留学生だ、皆仲良くしてもらいたい」
「うわっ、マジかよ!!?」
「彼って確か、猛スピードで突っ込んできたランボルギーニを素手でぶっ飛ばした張本人よね?」
「しかもその後、シェリル王女と抱き締め合っていたぜ?くうぅ~っ。羨ましいっ!!!」
「だけどあの二人ってどう言う関係なんだろうね?あの“灼熱煌姫のシェリル”とあんなに親しげにしているなんて・・・」
「・・・・・」
生徒達がザワザワとザワめいている中で、一人だけムスッとした顔で腕を組みつつ巧を睨み付けている人物がいた、このクラスの番長的存在にして学年でもトップクラスの腕前を誇る“魔攻闘士”の“アスビョルン・ヨハンソン”だ。
短髪で目付きは鋭く、険しい表情を浮かべている彼は身長が195cm程もある色白な、しかし筋肉質の肉体をしておりそこから繰り出される大振りな攻撃は大抵の相手を一発でKOしてしまうほどに強烈で、かつ素早かった。
ちなみに“魔攻闘士”とはこの王国内での退魔士の一種であり、魔法を扱える格闘家の事を指していたのだが彼はその腕前を買われて故郷からここ、“王立セントヘレナ学院”へと転入を果たした、と言う次第であったのである。
「君の席はまだ決まっていないが・・・。まあでも、今日に限っては空いている場所ならばどこにでも好きに座ってくれて構わないよ?」
「・・・はい、有り難う御座います」
「・・・随分、流暢なコーラッド語を話しているね。どこでそんなに勉強したんだい?」
「あ、これは・・・。父の仕事の都合で幼い頃に、この国に滞在していた事があるんですよ。その時に自然と覚えました」
「ほう?そんな経歴が・・・。しかしそれならば普段の会話は問題なさそうだね!!!」
「へえぇ。って言う事は、コミュニケーションは十二分に取れるって事だよね?」
「頭は悪く無さそうね?単なる肉体バカ、と言う訳でも無いみたいだけど・・・」
「そりゃそうだろ。なんたってこの“セントヘレナ学院”は名門中の名門なんだぜ?頭が悪けりゃそもそも入る事なんか出来ない筈だ・・・!!!」
「ち・・・っ!!!」
クラスメイト達がまたもや口々にそう述べ立てる中、アスビョルンはハッキリと聞こえる声で舌打ちを行った、それは喧騒の中でもハッキリと巧に届いたが、初日から目立ってしまった彼はもうそれ以上の揉め事は勘弁とばかりにアスビョルンがいる位置とは正反対の席へと歩いて行き、腰を降ろした。
「今日は特に授業は無い。ホームルームが終わったら、各自帰ってくれて構わないが・・・。何か話しておきたい事がある者はいるか?」
「先生、俺は転校生に話しがあるんだ!!!」
するとその言葉を待っていたかのようにアスビョルンは立ち上がると巧を睨み付けながら口を開いた。
「おいジャップ。何者かは知らねえがあまり調子に乗るんじゃねえぞ?お前程度の攻撃力を捻り出すなんざ、俺には朝飯前だ。・・・それと特に警告しておくが、今後シェリルには近付くな。解ったな!!?」
「・・・・・」
(なんなんだ?コイツ・・・)
するとそれを聞いた巧は初めてアスビョルンへと目をやって、彼の姿をマジマジと観察してみた、練り上げられた闘気に頑健な肉体美、そして全身を覆う分厚いオーラと豊富な魔法力。
(・・・なるほど。“人間にしては”)
“コイツは出来るな”等と巧は思いはしたモノの、しかしさりとてそれ以上の感慨は持たずに面倒臭そうに視線を逸らした、すると。
「おいジャップ。貴様は今、俺にガンを飛ばしただろう?ただじゃ済まさねえぞ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「お、おいアスビョルン。止めろよ!!!」
「お前はこの前の停学が開けたばかりだろうが。今度揉め事を起こしたら、下手すりゃ退学になるぞ!!?」
クラスメイト達の言葉に“うるせぇっ!!!”と返すとアスビョルンはズイズイと巧に向かって迫って行くモノの、一方の巧は全く動じる事も無く、冷めた目で相手を見据えて指先一つとして身動がない。
「・・・・・っ!!?」
(コイツ・・・ッ!!!)
“なめやがって”とアスビョルンは思ったが同時に“ただのド素人だ”とも判断していた、昨日の一件はアスビョルンも目撃しており、その体捌きと攻撃の鋭さから“さては何某かの武術を嗜んでいるな?”等と見て取って内心、警戒をしていたのだがこの時の巧はもうすぐ相手の間合いに入ろうか、と言う状況に至っても構える所か立ち上がる事すらしない。
ただ平然と倚子に座ったまま面倒臭そうな瞳をこちらに向けて不用心に、ただ様子を窺っているだけだ、これではおよそ勝負にはならない。
(ちっとは期待したが・・・。単なるビギナーズラックの賜物でしかなかったのか、あのランボルギーニの一件は・・・!!!)
そう思って、しかし“良い機会だから”とアスビョルンはこの目の前の日本人を軽くシメる事にした、彼はシェリルにある種の憧れにも似た密かな思いを寄せており、それを刺激された為に憂さ晴らしをしようとしていたのである。
要するに巧に嫉妬心と反感とを覚えたのであったが、しかし。
彼が巧の目の前まで来た時には、既に勝負は決していた、彼は自分の精神が、その本質諸共巧の意識に飲み込まれた挙げ句に屈服させられてしまっていた事に全く気が付いていなかったのだ。
「・・・・・」
「・・・・・」
巧を己のパンチの射程圏内に収めたアスビョルンはすぐに“それ”を現実のモノとするべく攻撃態勢を取ろうとしたのだが、その直前で。
静かに、しかし目にも止まらぬスピードで巧は彼の眼前に自分の手を翳し、アスビョルンにこう“命令”した、“俺に構わず寮に帰れ”、“一人になってゆっくりと自分自身を見つめ直せ”と、その途端に。
アスビョルンの眼から光が消えたかと思うと表情から攻撃的な意志が失せて行き、夢遊病患者のような風体となってゆっくりと後ろを向いて、そのまま教室を出て行ってしまったのである。
「・・・・・」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「・・・え、えっ?何今のっ!!!」
アスビョルンが出て行ってから僅か10秒と経たない内にクラスメイト達が響めき出し、“訳が解らない”と言った面持ちで互いに見つめ合う。
「え、なに今の。一体何が起きたんだ・・・?」
「えっと・・・。確か“タクミ”って言ったけ、今のってあんたがやったの!!?」
「・・・まあね」
そんなクラスメイト達に対して、巧は相変わらず面倒臭そうな顔付きのままそう応えるが、その直後に彼は一躍“時の人”となってしまった、当たり前であろう、あの学年最強を誇るアスビョルンを攻撃一つ加える事無く宥め賺して大人しくさせてしまったのだから。
「すげぇっ!!!」
「信じられない!!!」
「凄いね、タクミッ。あんた滅茶苦茶強いじゃん!!!」
「いや、まあ。そんな事は無いけどさ・・・」
それまでとは打って変わって歓迎ムード一色となったクラスメイト達に戸惑いながらも巧は、気が付けば彼等に対応せざるを得なくなってしまっていたのだ。
「ねえねえ、さっきのって一体なに?どんな魔法を使ったの!!?」
「瞬間的に自分に従わせていたよな。強力な催眠術の一種か何かか・・・?」
「・・・“支配”の能力だよ、こちらの言葉では“クエストのパワー”と言った方が良いかも知れないけれど」
そう言って巧が己のした事について丁寧に説明を始めようとした瞬間、彼はある一人の女性の気配を感じて突如として後ろを振り返り、廊下側にある出入り口へと目をやると、そこにはー。
「・・・シェリル!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「シェリルだって!!?」
巧が声を発して立ち上がると、思わずクラスメイト達全員がそちらへと向き直るが、すると確かにそこには“灼熱煌姫”こと“シェリル・フィル・コーラッド”の姿があって、心配そうな表情を浮かべたまま巧の事を凝視していた。
「・・・・・」
「うぉい、マジかよ!!?」
「あの“灼熱煌姫”が、わざわざ1年の教室を覗きに来るなんて・・・!!!」
「タクミ、あんたシェリルと一体どう言う関係が・・・!!?」
クラスメイト達がまたもやザワザワとザワめき始めた時だった、“静粛に!!!”と言う鋭い声が教室中に響いてカルロッテが教壇から全員に訴え掛けて来る。
「本日のホームルームは、これにて終了する。タクミ、君は多分みんなに受け入れられたぞ・・・?」
「・・・・・」
「これから2年半、共にする仲間だ。みんな改めてタクミとよろしくしてやって欲しい。・・・以上!!!」
カルロッテの号令一下、その日の行事は全て終了となった、巧の初顔合わせは何とか成功に終わったのであり、この日を以て後に親友となるクラスメイト達と巧との付き合いが幕を開けたのであった。
もっとも現時点でそれを知っているのは、神々を除けば巧本人だけなので、周囲の人間はそれと気付かずに彼に接し続けていたのだが特にここ、北欧では人種的に背が高くて大柄な者達が多いせいだろう、身長180・5cmの巧は日本では頭一つ抜けていたモノのコーラッド王国内では一般的な体格であり、それほど目立つ存在ではなかったのである。
ただし。
別の意味で彼は注目を集める事となった、転入初日に暴走車を生身でぶっ飛ばした挙げ句、学院の中でも麗しい美人かつ高嶺の花で有名なシェリルと皆の面前で熱い抱擁を交わしてしまった事が、その契機となってしまったのだ。
「こんな時期だが転入生を紹介する」
シェリルとの再会と告白を経て、無事に恋人としてのお付き合いをスタートさせた巧であったが、それから一夜明けた今日、ちょっとした騒動に巻き込まれる事となった。
既に一学期は終わってしまっており、学生らの大半は寮から実家へと帰省を果たしていたのだが、それでも何名かはそのまま寮に滞在していて、臨時に彼等を集めた担任でもある女性教諭の“カルロッテ・アベニウス”が1年のクラスメイト達に巧を紹介してくれる事になったのである。
「日本からの留学生だ、皆仲良くしてもらいたい」
「うわっ、マジかよ!!?」
「彼って確か、猛スピードで突っ込んできたランボルギーニを素手でぶっ飛ばした張本人よね?」
「しかもその後、シェリル王女と抱き締め合っていたぜ?くうぅ~っ。羨ましいっ!!!」
「だけどあの二人ってどう言う関係なんだろうね?あの“灼熱煌姫のシェリル”とあんなに親しげにしているなんて・・・」
「・・・・・」
生徒達がザワザワとザワめいている中で、一人だけムスッとした顔で腕を組みつつ巧を睨み付けている人物がいた、このクラスの番長的存在にして学年でもトップクラスの腕前を誇る“魔攻闘士”の“アスビョルン・ヨハンソン”だ。
短髪で目付きは鋭く、険しい表情を浮かべている彼は身長が195cm程もある色白な、しかし筋肉質の肉体をしておりそこから繰り出される大振りな攻撃は大抵の相手を一発でKOしてしまうほどに強烈で、かつ素早かった。
ちなみに“魔攻闘士”とはこの王国内での退魔士の一種であり、魔法を扱える格闘家の事を指していたのだが彼はその腕前を買われて故郷からここ、“王立セントヘレナ学院”へと転入を果たした、と言う次第であったのである。
「君の席はまだ決まっていないが・・・。まあでも、今日に限っては空いている場所ならばどこにでも好きに座ってくれて構わないよ?」
「・・・はい、有り難う御座います」
「・・・随分、流暢なコーラッド語を話しているね。どこでそんなに勉強したんだい?」
「あ、これは・・・。父の仕事の都合で幼い頃に、この国に滞在していた事があるんですよ。その時に自然と覚えました」
「ほう?そんな経歴が・・・。しかしそれならば普段の会話は問題なさそうだね!!!」
「へえぇ。って言う事は、コミュニケーションは十二分に取れるって事だよね?」
「頭は悪く無さそうね?単なる肉体バカ、と言う訳でも無いみたいだけど・・・」
「そりゃそうだろ。なんたってこの“セントヘレナ学院”は名門中の名門なんだぜ?頭が悪けりゃそもそも入る事なんか出来ない筈だ・・・!!!」
「ち・・・っ!!!」
クラスメイト達がまたもや口々にそう述べ立てる中、アスビョルンはハッキリと聞こえる声で舌打ちを行った、それは喧騒の中でもハッキリと巧に届いたが、初日から目立ってしまった彼はもうそれ以上の揉め事は勘弁とばかりにアスビョルンがいる位置とは正反対の席へと歩いて行き、腰を降ろした。
「今日は特に授業は無い。ホームルームが終わったら、各自帰ってくれて構わないが・・・。何か話しておきたい事がある者はいるか?」
「先生、俺は転校生に話しがあるんだ!!!」
するとその言葉を待っていたかのようにアスビョルンは立ち上がると巧を睨み付けながら口を開いた。
「おいジャップ。何者かは知らねえがあまり調子に乗るんじゃねえぞ?お前程度の攻撃力を捻り出すなんざ、俺には朝飯前だ。・・・それと特に警告しておくが、今後シェリルには近付くな。解ったな!!?」
「・・・・・」
(なんなんだ?コイツ・・・)
するとそれを聞いた巧は初めてアスビョルンへと目をやって、彼の姿をマジマジと観察してみた、練り上げられた闘気に頑健な肉体美、そして全身を覆う分厚いオーラと豊富な魔法力。
(・・・なるほど。“人間にしては”)
“コイツは出来るな”等と巧は思いはしたモノの、しかしさりとてそれ以上の感慨は持たずに面倒臭そうに視線を逸らした、すると。
「おいジャップ。貴様は今、俺にガンを飛ばしただろう?ただじゃ済まさねえぞ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「お、おいアスビョルン。止めろよ!!!」
「お前はこの前の停学が開けたばかりだろうが。今度揉め事を起こしたら、下手すりゃ退学になるぞ!!?」
クラスメイト達の言葉に“うるせぇっ!!!”と返すとアスビョルンはズイズイと巧に向かって迫って行くモノの、一方の巧は全く動じる事も無く、冷めた目で相手を見据えて指先一つとして身動がない。
「・・・・・っ!!?」
(コイツ・・・ッ!!!)
“なめやがって”とアスビョルンは思ったが同時に“ただのド素人だ”とも判断していた、昨日の一件はアスビョルンも目撃しており、その体捌きと攻撃の鋭さから“さては何某かの武術を嗜んでいるな?”等と見て取って内心、警戒をしていたのだがこの時の巧はもうすぐ相手の間合いに入ろうか、と言う状況に至っても構える所か立ち上がる事すらしない。
ただ平然と倚子に座ったまま面倒臭そうな瞳をこちらに向けて不用心に、ただ様子を窺っているだけだ、これではおよそ勝負にはならない。
(ちっとは期待したが・・・。単なるビギナーズラックの賜物でしかなかったのか、あのランボルギーニの一件は・・・!!!)
そう思って、しかし“良い機会だから”とアスビョルンはこの目の前の日本人を軽くシメる事にした、彼はシェリルにある種の憧れにも似た密かな思いを寄せており、それを刺激された為に憂さ晴らしをしようとしていたのである。
要するに巧に嫉妬心と反感とを覚えたのであったが、しかし。
彼が巧の目の前まで来た時には、既に勝負は決していた、彼は自分の精神が、その本質諸共巧の意識に飲み込まれた挙げ句に屈服させられてしまっていた事に全く気が付いていなかったのだ。
「・・・・・」
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巧を己のパンチの射程圏内に収めたアスビョルンはすぐに“それ”を現実のモノとするべく攻撃態勢を取ろうとしたのだが、その直前で。
静かに、しかし目にも止まらぬスピードで巧は彼の眼前に自分の手を翳し、アスビョルンにこう“命令”した、“俺に構わず寮に帰れ”、“一人になってゆっくりと自分自身を見つめ直せ”と、その途端に。
アスビョルンの眼から光が消えたかと思うと表情から攻撃的な意志が失せて行き、夢遊病患者のような風体となってゆっくりと後ろを向いて、そのまま教室を出て行ってしまったのである。
「・・・・・」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「・・・え、えっ?何今のっ!!!」
アスビョルンが出て行ってから僅か10秒と経たない内にクラスメイト達が響めき出し、“訳が解らない”と言った面持ちで互いに見つめ合う。
「え、なに今の。一体何が起きたんだ・・・?」
「えっと・・・。確か“タクミ”って言ったけ、今のってあんたがやったの!!?」
「・・・まあね」
そんなクラスメイト達に対して、巧は相変わらず面倒臭そうな顔付きのままそう応えるが、その直後に彼は一躍“時の人”となってしまった、当たり前であろう、あの学年最強を誇るアスビョルンを攻撃一つ加える事無く宥め賺して大人しくさせてしまったのだから。
「すげぇっ!!!」
「信じられない!!!」
「凄いね、タクミッ。あんた滅茶苦茶強いじゃん!!!」
「いや、まあ。そんな事は無いけどさ・・・」
それまでとは打って変わって歓迎ムード一色となったクラスメイト達に戸惑いながらも巧は、気が付けば彼等に対応せざるを得なくなってしまっていたのだ。
「ねえねえ、さっきのって一体なに?どんな魔法を使ったの!!?」
「瞬間的に自分に従わせていたよな。強力な催眠術の一種か何かか・・・?」
「・・・“支配”の能力だよ、こちらの言葉では“クエストのパワー”と言った方が良いかも知れないけれど」
そう言って巧が己のした事について丁寧に説明を始めようとした瞬間、彼はある一人の女性の気配を感じて突如として後ろを振り返り、廊下側にある出入り口へと目をやると、そこにはー。
「・・・シェリル!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
「シェリルだって!!?」
巧が声を発して立ち上がると、思わずクラスメイト達全員がそちらへと向き直るが、すると確かにそこには“灼熱煌姫”こと“シェリル・フィル・コーラッド”の姿があって、心配そうな表情を浮かべたまま巧の事を凝視していた。
「・・・・・」
「うぉい、マジかよ!!?」
「あの“灼熱煌姫”が、わざわざ1年の教室を覗きに来るなんて・・・!!!」
「タクミ、あんたシェリルと一体どう言う関係が・・・!!?」
クラスメイト達がまたもやザワザワとザワめき始めた時だった、“静粛に!!!”と言う鋭い声が教室中に響いてカルロッテが教壇から全員に訴え掛けて来る。
「本日のホームルームは、これにて終了する。タクミ、君は多分みんなに受け入れられたぞ・・・?」
「・・・・・」
「これから2年半、共にする仲間だ。みんな改めてタクミとよろしくしてやって欲しい。・・・以上!!!」
カルロッテの号令一下、その日の行事は全て終了となった、巧の初顔合わせは何とか成功に終わったのであり、この日を以て後に親友となるクラスメイト達と巧との付き合いが幕を開けたのであった。
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