強制的魔王

ほのぼのる500

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強化1

15話

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「はぁ~、やるしかないんだよな」

ラルグの疲れた声が聞こえる。

「そうだね。ほっとくと爆発するし」

仕方ない、どちらを優先するか。
……魔物は選びたくないよな。
敵を自分たちで生み出すって、どんだけひどい世界だよ。
だったら世界の配置か?
ただ意味が分からない。
国を置く場所を決めるのか?
たったそれだけ?
でも、魔物を生み出すよりましだよな。
光と影は魔石の数が足りないし。

「とりあえずガチャの方を回すか?」

「ラルグ、世界の配置の意味が分かったの?」

「いや、まったく」

えっ?
その状態でガチャを回そうとしたの?

「大丈夫?」

「それはなんとも言えないけど、考えて答えが出ると思うか?」

世界の配置の答え?
……無理でしょ。

「そうだね、回そう。回したら何か分かるかもしれないし」

「それに賭けるんだけどな。回すぞ」

これって投げやりという気もしないけど。
仕方ないよ、うん。

さて、よくわからないが俺たちの役に立つもの出ろ!
ガチャ、ガチャ、ガチャ……コロン。

「おめでとう、『開ける』『捨てる』どっち?」

転がる白いカプセル。
ラルグが開けると押したのだろう、ぱかっと開いたと思ったら消えた。

「おめでとう。配置が完了しました」

「「……………」」

え~!
それだけ?
何も分からないんですが!

「終わった~」

アルフェの疲れたような声にため息が出る。
確かに終わったな。
これも意味が分からない状態か。
はぁ~、ハードモードをイージーモードに変えるガチャが欲しい。
だいたい、なんでこんな事に巻き込まれないと駄目なんだ?
生前の俺!
何をやらかしやがった。
くそったれが!

ん?
……ナニコレ?
えっと、私にも見えるんだけど。

「ラルグ」

「なんだ? ちょっとやさぐれ中だからほっといてくれ」

「いや、天井見て、天井! 私にも見えるんだけど! ……これ、もしかして世界の配置?」

「えっ?」

急いで天井を見る。
アルフェの言う通り、天井が変わっていた。
まるで大きなスクリーンに映し出された宇宙に。

「すごい、なんだこれ」

「変化があるとしたら世界の配置だよね」

変化する直前にしていた事は、それのガチャだし。

「あぁ、そうだな。でも、星以外は何も無いな」

星は点在しているが、他には何もない。
配置したって何を配置したんだ?
まさか星?
そう言えば、俺たちは国を持っていたはずだ。
……まさかこの無数にある星のどれかに俺らの国があるとか?
いきなり星を探せ見たいなゲーム変更は、いらないからな。

「ねぇ、ラルグ。まさかとは思うけど、私たちの国があの星に紛れ込んでいるとか、無いよね? ね?」

「漆黒の国と暗黒の国……だよね。無いと思いたいけど」

えっ?

見ていた映像がいきなり変わる。
星空の中を移動したように星が後ろに流れていく。
そして、見えたのは2つの大きな星。

「……星?」

2つの星という事は俺たちの星か?
それにしてもどうして映像が切り替わったんだ?
あっ、俺が国の名前を言ったからか?
後で確かめないとな。

「どちらを確認しますか?」

「ん?」

「確認? 何を確認するの?」

「………………」

まぁ、答えてはくれないよね。
無理だろうなって思ったけどさ。
ちょっとくらいサービスしてくれてもいいと思う!

「どちらを確認しますか?」

こっちの質問は答えないのに、急かすんだ。
ムカつく!

「確認か。なら右だ。…………。無視?」

聞いておいて反応しないってどうなんだ?

「言い方が悪いのか? 右を確認?」

これで反応しなかったら、挫けそう。

「右は漆黒の国を含む……星です」

聞いたくせに星に名前ないとかふざけすぎだ。

「漆黒の国はラルグのだったよね? という事は右はラルグの星って事?」

そう言えば、そうだな。
俺の国だから、俺の星?

「そうなるのか? なら、左がアルフェの星?」

「左を確認」

「左は暗黒の国を含む……星です」

なるほど、ラルグにも私にもそれぞれ星があるのか。
それにしてのこの2つ、えらく近い場所にあるよね。
これにも意味があるのかな?

「吸収した魔石の数 63個! 魔石を使って何をする? 【魔物を出現させる5個】【光と影を産む150個】」

あっ、こっちのゲームを忘れてた。
というか忘れたかった。
だって、どちらにしますかと聞いてるけど1つしか選べないんだもん。
それも、魔物の方!

「ラルグ、これって。襲われるの分かってるのに魔物を出現させないと駄目って事だよね?」

「おそらくな」

選びたくないが、それ以外に選べない
放置していたら、ガチャの方は爆発。
こっちは?
何もないわけが無いよな。
きっと、俺たちが慌てて選ぶよう、何かを仕掛けているはずだ。
正直、知りたくない。

「はぁ、どんな魔物が出てくるんだろうね」

「さぁ、ただやるしかないって事だな」

それに、冷静に考えると悪い事では無いかもしれない。
そう、強くなる方法の1つとして。

「アルフェ、さっきの襲撃で俺たちは少しだが強くなった」

「うん。本当に少しだけどね」

0.1とか微々たるものでも、まぁ成長は成長。
あれ?
そう考えると、もしかして必要な事?
魔石を抜きにしても。

「俺たちが強くなるために必要な事なのかもしれない」

「うん。今、私もそう考えた」

「そうか」

「ただ、強くなるつもりですごい強い魔物が出て死んだら意味ないけどね」

そうなんだよな。
それが不安要素だ。
さっきの戦いだって、アルフェの超音波攻撃が無ければどうなっていたか分からない。
俺は弱った敵にとどめを刺しただけだ。
…………もしかして俺、アルフェより弱い?
えっ?
アルフェって声からして女性だよな。

「これからだよ。うん、これから挽回できるはず!」

挽回?
天井から視線をラルグに向けると、赤い細長い色が立ち上がっているように見えた。
上体をぐっと天井に伸ばしている感じかな?
色でしか判断できないので何をしたいのか不明だが、ちょっと声を掛けずらい。

「吸収した魔石の数 63個! 魔石を使って何をする? 【魔物を出現させる5個】【光と影を産む150個】」

「よしっ、魔物を選ぶぞ」

ラルグの声にぐっと息をのむ。
これしか選べないとわかっているが、やはり怖いものは怖い。
なるべく、出来るだけ弱い魔物になりますように!

「いいよ」

「よしっ」

はぁ、こんな弱っちい状態の時に、魔物を自ら生み出すとか……はぁ、無謀すぎる。
せめて魔法を練習……あっ、発動方法も分からないのに無理か。

「【魔物を出現させる5個】に決定! 魔石の残り58個。魔物は次から選びください【A】【B】【C】」

「はっ? また~? もうヤダ」

ラルグの悲壮な声が届く。
うん、覚悟して選んだらまた選択を迫られるってなんて最悪だ。
それにしてもABCって、何かもっとなかったのかな。
魔物の種類が分かるように名前を見せるとか。

「これだけじゃ分からないし。もうAでいい?」

「迷うだけ無駄か」

「うん」

「よし【A】だ」

「ラビット100匹に決定!」

ラビットってウサギ?
ウサギなら弱い?
いや、魔物のウサギ?

「ラルグ、ラビットは強いの?」

「……この手のゲームはしてこなかったからな。でも無茶苦茶強そうではないよな」

「うん。ただ100匹みたいだけどね」

知識が無いのがつらい。
と言うか、初心者なのだからスライムでいいじゃん。
スライムなら弱い魔物で有名なのに。
そう言えば、ホーンラビットは聞いたことがあるな、確か角のあるウサギだっけ。
あれは小説によっては結構強かったはず。
でも、今回はホーンはついてない。
ただのラビット。
弱い事を期待しよう。

「100匹か」

弱くても100匹、無事でいられるかな?
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