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第二章 呪いからの解放編
その内側に
しおりを挟む「く、クルギス皇子か! 何しに来た、イリスを捕まえに来たのか!」
「場合によってはそうなるかもしれないが、とりあえず事情を聞きに来た。抵抗したり、逃亡しようとしたら容赦なく白い子に攻撃させるから。勝てると思うならご自由に」
「か、勝てるわけねえだろうが」
イリスの兄は抵抗する気力がなくなったかのように、がっくりと座り込んだ。
「他の三人は? 確か六人で旅をしているんだろう?」
「あいつらは村の外で見回りをしてくれているよ。おれたちのせいでアンデットが村に入ってくるから」
イリスの兄が無念そうにそう言った。
「逃げる気なんてないよ。そんなことしても意味がないから」
言葉を継ぐようにイリスは、もう疲れ果てたかのような表情をして小さく言葉を囁いた。
「それで、わたしに何が聞きたいの?」
「ぼくたちは、この村で幽霊の目撃証言があったことによって訪れることになった。原因を知らないか?」
「それはわたしだよ。わたしがこの村に来たからみんなが幽霊を見るようになったんだ」
まあ、予想通りではある。
「君の仲間からある程度話は聞いているよ。君は王都で死者の幽霊をたくさん見てしまったから、王都から逃げて行ったんだろう。その後はどうだったんだ?」
「変わらなかった。確かに王都よりは死者を見る数は減ったけどやっぱりトール村よりはたくさんだった。わたしたちは死者が少ない所に、人が少ない所に行きたいと思ったから旅立って、その途中でこの村に寄ったの。でも、この村の宿屋に泊まったらいつもよりわたしたちを襲ってくるアンデットが増えてしまって。……わたしは疲れちゃったの」
「なぜ、突然アンデットの数が増えたんだ?」
「わからない。今までだって毎日襲われていたけどこの村に入ったらその数が何倍にも増えた。むしろわからないのはトール村でもアンデットに襲われてたのに、王都では幽霊をたくさん見たけどアンデットには襲われなかったことだよ」
「王都でアンデットに襲われなかったのは警備がしっかりしていたからと、強力な結界が張られているからだよ」
「結界? 皇子が張ったの?」
「いや、あれはメテオ国の何代か前の国王が張ったものらしい。ぼくならもっと強力な結界が張れる。まあ十分効果があるから手を出してないけど」
「なら、この村にも頼めない?」
「無理だな、この村だけ特別扱いはできない。それに君たちの旅の最終的な…目的地はこの村じゃないはずだろう。だったらそんなものに意味はない」
「旅の目的地なんてないよ。わたしたちは、わたしはただ死者なんてものを見ないですむ場所に行きたいだけだから。……そうだよ、死者が見えないならわたしも王都にいたかった。皇子は凄かったし、新しい物と凄いものだらけだったから楽しかった。……でも、王都は死者がたくさんいて、体調も悪くなるし、心が壊れてしまいそうだった」
正直、ぼく個人はイリスにはほとんど興味がなかった。
ここに来た理由は幽霊を見ることができる能力と、白い子たちの願いのためだ。……ついでに村の平和のために。
だが今、この場所に来て根本的に理由が変わった。
さっきから右手の人差し指に着けている指輪が死ぬほど痛む。
指輪の効果は、レアアイテムが近くにあると着けている場所が痛むというものだ。
基本的に人間界にはサードまでのアイテムしか存在しないと言われているので、この指輪ではサードまでしか反応しないのだが、その指輪がとても痛むのだ。
アイテムのコレクションはぼくの趣味だ。
大したことがないものから、この世に一つしかない最高のものまで一度は全て手に入れたいと思っている。
つまり、イリスの霊を見る能力はアイテムが由来の物らしい。
「イリス、君は何かアイテムを持っているのか?」
「アイテム? そんなもの私が持っているわけないでしょう。せいぜいが着ている服ぐらいよ」
「そうだよね」
トール村の人間がレアなアイテムを持っているなんて道理がない。
つまり、自分も知らないのか?
自分が知らなくてもずっと持ち続けている。
つまりは体内に持っているのだろう。
「なあ、イリスは大きな怪我とかってしたことある?」
高レアなアイテムは超常的な効果をもたらす。場合によっては体に取り込むことによって怪我や病気を治すことに使えると誰かに聞いたことがある。
「……多分ある。私が六歳の時に両親と戦争に行ったの。そこで両親が死んで私も死にかけたらしいよ。覚えていないのだけど、何か不思議な雰囲気を持つ人に身体を治してもらったらしい」
どこかで聞いた話だ。
前に会った賢者の弟子の一人がそんな話を……。
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