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第二章 呪いからの解放編

これで終わり

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 試合が終わり、表彰式が終わると上層部が集まっている王の間に呼び出された。

「クルギスよ。子供たちはお前に面倒をみてもらうことにした」

 国王がなんか言ってる。

「何故?」

「お前以外では決して子供たちを導けぬからだ。同郷の白鴎騎士団団長であるカラスをすら倒す子供たちだ。初めからわかっていたが、どうしようもない。そのことはこの場にいる全ての人間が理解できたようだからな」

 ぼくが周りを見回すと、参謀を含めた重鎮たちが青ざめた顔をしている。

 子供達が化け物だという事実に、ようやく気付いたようだ。

 まさしく、彼等のプライドがバキバキに折られたのだろう。

 トール村の人間でも、子供ならと侮っていたと伺えてしまう顔色だ。

「国民に発表した王の言葉だからな、必ずどこかの騎士団が子供たちを引き取らねばならぬ。だが相応しい団がない以上、お前が新しい騎士団を作り受け入れよ。そして子供たちの主人の権利もお前に渡す。お前の輝石の代わりに得た権利のことだ」

 ぼくは心の中でとても嫌な顔をする。

「騎士団も子供たちも好きに使え。お前なら相応しい行動が出来ると信じているぞ」

 国王が言いたいことを言ってその場が解散した。

 そっちがその気ならこっちも好きにしよう。国王は好きにしていいと言ったのだ。

 子供たちの代表のように、王たちの会議に参加していた白い子が何かを言いたそうにぼくを見ている。

「どうしたの?」

「クルギスがどうするのかと思って」

「さあ、どうしようかな」

 面倒なのは嫌いなので、その足で子供たちの部屋に向かう。

「全員いるよね」

 見渡すが、ちゃんと全員で二十人いる。

「クルギス皇子、流石の実力でした。やはり王国の切り札の名は伊達じゃありませんでした」

「そう、それより話があるんだ」

 茶髪の子の賞賛を無視して、ぼくの唐突な言葉に不安そうな顔をしている子供たちに伝える。

「ぼくが君たちに実力を示した報酬で、国王から君たちの命をもらったんだ」

「……それは、おれたちの主人が皇子になったということですか?」

「そう」

「ああ、そうなんですか。よろしくお願いしますね。」

 情報をまとめようとする茶髪の子。

 あんまりわかってなさそうな、笑顔の子。

「うん、だからぼくは君たちを開放することにしたよ」

 ぼくの言葉をはっきりと告げると、子供たちに動揺が広がった。

 何を言っているのかわからない不安と、一縷の希望を感じる。

「それは、どういう意味でしょうか?」

「国王は子供たちを好きにしろと言った。だが騎士団を作ってそこにいれろとも言った。だから、一度君たちを騎士団に登録して直ぐに解雇する。その後は好きにしてくれ。君たちは自由になったってことだ」

「自由とは?」

「この国を出るなり、村に帰るなり、王都で仕事を探すなり好きにして結構だ。でもその代わりぼくや、国王の庇護は終わりだけどね。とりあえず、君たちには保護金が出るから受け取って行くといいよ」

 この言葉による子供達の気持ちが、手に取るようにわかる。

 半分は心からの希望に満ちているが、半分は隠し切れない不安に溢れている。

「とりあえず、どんな進路をとるのも自由だけど自分で手続きをするように。一応はアサヒが君たちの保護者になるから相談するといいよ」

「アサヒって誰?」

 やはりトール村の人間でも村長以外はアサヒの存在すら知らないのだろうな。

 白い子は特例なのだろう。

「初代の妹だよ。トール村で生き残っていたんだ。ちょっと待って」

 白い子に門を繋げる札を渡し、入り口を開ける。

「話、聞いてたよね。視線を感じてたから魔法で国中を見てたんだろう?」

「……ええ。あなたの実力も、でたらめなやり方もしっかりと見ていました。もちろん子供たちのことも。少々やり方が強引ではないですか?」

「世の中は理不尽なものだよ。君たちがトール村の住人じゃなかったらもっと早くから同じ目にあってたんだ。王族だからと言ってこんな時代に全ての民に手厚い扱いはできないさ。じゃあ話を聞いていたなら君がみんなの相談に乗るように。色々な手続きは明日の昼までには終わるから、あと三日以内に出ていくように。じゃあ」

「待ってください。私の存在が表に出るのは……」

「三日が過ぎたらぼくの部屋の札は外すよ。白い子に預けてある札が王都での入口になるから、君がこれから先を見守ってあげる子に札を持たせればいいさ」

「出来れば全員についてあげたいのですが?」

「悪いけど札は五枚しかない。好きな子にあげるといい」

 白い子に残り四枚も渡しておく。

「じゃあね」
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