26 / 55
第二章 呪いからの解放編
価値
しおりを挟む「単純に国の役に立つようにしただけだよ。やる気がある方が役に立つからね」
表向き、子供たちにはあっさりと説明しておく。
出来るだけぼくに恩を感じるように。
「それだけですか?」
茶髪の子は疑わしげにぼくに尋ねる。
「うん、それと話しついでにもう一つ聞きたいんだけどさ、君たちは騎士団に入ってほしいと言われたんだろう。もう少し詳しい説明はなかったか?」
「数日後に入団試験をすると言われました。実力を試したいのでおれたちと団体戦をして倒した団に入れと」
「なるほどね」
子供達はとても簡単な説明しかされていないらしい。
「正直、乗り気ではありませんけど」
「なんで?」
「だって、どう考えてもこの国の人間ではおれたちに勝てないですよね?」
「そうだね」
子供達は自分たちの実力をちゃんと把握しているらしい。
トール村の人間に常人が勝てるわけがないのだ。
「わざと負けるのもどうかと思うし」
「この話にはどんな意図があると思う?」
「え?」
「別に、君たちには入団試験なんていらないだろう?実力はあるに決まっているんだから」
「ではなぜおれたちと戦いたいんですかね?」
「きみはどう思う?少しは事情に精通しているだろう?」
白い子に話を振ってみる。子供たちの中で一番優秀なのは当然ながら彼女だからだ。
「どう考えても新人いびりでしょう?最強の村出身の私たちの心を折って自分たちに服従させようとしてる。カッコ悪い」
白い子があまりにもはっきりと言う。
「騎士団の人間に勝算はあるのかな?」
茶髪の子が、白い子に尋ねる。
「あると思っているとしたらただの勘違いよ。はっきりと私たちとの実力差を知らないから希望を持っているだけよ。だって王国の基準はあのカラスよ?」
「カラス?あの落ちこぼれの?」
「ええ、どうしようもないわよ」
「カラス?誰それ?」
ぼくは子供達の会話に口を挟む。
いや、大体の流れでわかるのだが。思い当る節もあるし、でも印象が大分違う。
「なんとかって騎士団の団長よ」
「白鴎騎士団の団長のあの人か。一応あの人はこの国の最強の騎士で団長だと言われているんだけど」
「まあ、村の外の世界では凄く強いんだろうけど、私たちの村では最低レベルの強さしか持たない大人よ」
「きみたちのほうが強いんだ?」
そうは見えないが。
あまり団長に接触したことはないが、ぼくから見ると割と強そうに感じたのだ。
なんとなくだが、白い子は戦いや強さと言うものにとても厳しい考えを持っている印象を受ける。
「ううん、一対一なら私たち子供よりかなり強いわ。でも十人でかかれば十分倒せるレベルね」
「それって弱いのか?」
「私たちの村の強さって、子供と大人で話にならないほどの実力差が存在するの。基本的に子供では絶対に何があっても大人には勝てないのが当たり前の話なのよ。それがたった十人で勝てるなんてあまりにも弱いわ」
「へえ」
「それに、私たちの村の大人が外に出て何らかの職業に就くっていうのは、それだけで村の人間から落ちこぼれって言われるの。それはつまり群れなければいけないほど弱いってことだからね」
「やっぱり小さな村には独特のルールがあるんだね」
「ええ。小さいは余計だけど」
細かいことを。
「まあ、とにかくあまりにも強すぎる君たちをボコボコにして絶対服従にしてやろうってのが、上層部の意図だと思ってくれていいよ」
「全ての騎士団をおれたちが倒してしまったらどうなるんでしょうか?」
やはりリーダー格は茶髪の子なのか、ぼくに積極的に質問をしてくる。
いい傾向だと思う。
こういう人間が世の中を長生きすると、ぼくは思うからだ。
「色々と考えなしになるんだろうさ。とりあえず予定は未定になって、それと君たちがとても強いということが上層部に理解してもらえるんじゃないか?」
「あの、それなら第十皇子は騎士団を持っているのでしょうか?」
「持っていないよ、それにぼくはあらゆる意味で国のどこにも所属してはいない」
「そうなんですか。なら万が一にもおれたちが負けることはなさそうですね」
あまりにも狭い枠組みで物事を考えているようだ。
一々指摘をする気なんてないけど。
何故、今の段階で全ての物事を判断できるのだろうか。
今の世の中では強さぐらいいくらでもひっくり返せるのに。
「それじゃあ、おれたちはどうしたらいいんでしょうか?」
「そんなことは自分たちで相談すればいいさ。確かに国という枠組みでは味方だけど、言ってしまえばこれは味方同士のじゃれあいだろう」
これは、そういうものだ。
「そんなものに口を挟む気はない。ぼくは君たちに最低限の情報を与えただけでそこから先は成功しようが失敗しようが自由にすればいい。これだけ情報をもらって上手くいかないならきみたちは所詮はそれだけの存在だというだけだしね。まあ、個人的感情で物事を話すのならどうでもいいし」
ぼくは、興味がないのだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる