105 / 196
騎士の魔法
しおりを挟む
「…分かりました。公女様の言葉を信じます。…出過ぎた真似を致しまして申し訳ございませんでした」
「…私も、悪かったわ」
いや本当は全部私が悪いんだけどね…アーグレンはただ純粋に気になって聞いただけなんだろうから。なんで逆ギレしてるのって話よね、ホント…。
恐らくだけど…私はリティシアとしての生活に慣れすぎてそれ以上の待遇を求めてしまっているんでしょうね。
人間というのは一つ手に入れるとまたその上を手に入れたくなるものだから。私みたいな悪役令嬢は望んじゃいけないって初めから分かっていたはずなのに。
アーグレンやアレクと関わっているとどうしても別の未来があるんじゃないかって…そう思えてきてしまう。
ないのよ。ここは小説なんだから。変な期待なんかしちゃダメ。アレクが不幸になって私だけが幸せになる未来なら絶対にいらない。
周りの人全員を不幸にして私一人が幸せになる未来もいらない。
だったら私一人が喜んで悪役を演じて不幸になってやるわよ。
悪役を倒せば主人公は幸せになれる。それが…物語というものなんだから。
「公女様…」
「気にしないで。さっき本当はこんなことを聞くつもりじゃなかったって言ってたけど…何か他に用があったの?」
「はい。公女様がご招待されたティーパーティが近日中に開かれるのであれば、ご一緒することができなくなりそうです。陛下からの呼び出しがありまして…騎士団の様子と溜まった業務をこなしてきますので数週間は確実に帰れなくなりそうだと…そうお伝えしに来たんです。」
なるほどね…アーグレンはそれを伝えに来たのね。
王様がわざわざ呼び出すなんて一体どんな用事なのかしら?まぁ彼は騎士団長だし直接呼び出しがあってもおかしくはないか。
「では失礼します。公女様、改めて…申し訳ございませんでした。」
言うや否やさっさと部屋を去ろうとするアーグレンを引き留める為に私は必死に頭を回転させる。
このまま帰したら一人反省会とかしていつまでも引きずりそうだからね。何か違う話題を振らなきゃ。
「待って。私からも一つ聞かせてよ」
「…はい」
彼は足を止め、振り返ると私の言葉を待っている。
よし、とりあえず引き留めるのには成功したわ。でも質問なんて考えてなかったわ…。私がアーグレンに聞きたいことねぇ…うーん…あぁ、これ、聞いてみようかな。
「アーグレン、貴方…貴方の属性は何?よく考えたら貴方が魔法を使うところなんて一度も見たことがないわ」
その言葉に彼は驚くと少し悩んだ様子を見せる。そして彼は衝撃の事実を口にする。
「…私の属性は炎ですが…生まれてから一度も魔法を使ったことがありません」
「へぇ使ったことがな…」
私は彼の言葉を繰り返しかけたが、驚いて目を見開く。
「えっ!?」
驚く私とはよそに彼はあくまでも平然としてその事実を語っていた。彼にとってはそれが当たり前で、別に驚くべきことではないのだろう。
だがこの世界では魔力の高さが重視されるはず…そんな世界で魔法が使えないと色々大変なのでは…?
「公女様は知らないのが当然だと思うのですが、実は平民は魔力の高い人の方が少ないんですよ。運良く魔力が高く生まれていればもうとっくに魔術師か何かになっているでしょう。なので魔力が極端に高くない限りは魔力が話題に登ることはありません。皆魔力が低いことを隠そうとしますからね。」
なるほどね…貴族や王族基準だと魔力が高い人が多いから余計に魔力が重視されているってことね。
「そうだったのね。でも…魔法を使ったことがないのに自分の属性が何か分かってるなんておかしいじゃない?」
そうよ。それに私と同じ炎属性なんて初めて聞いたわよ。
別に公爵家のみに与えられた属性ではないから同じ属性の人間がいてもおかしくはないけどまさかこんなに身近にいるとはね。
「私の両親もその先祖も皆炎属性でしたから…恐らく私も炎属性かと…」
アーグレンは自信がなさそうに言葉を紡いでいき、私から視線を逸らす。
…確信がないのね。まぁそりゃそうか。使ったことないんだから。
なんか…ついこの前まで魔法が使えなかった私と同じね。これは…ほっとけないわ。
「アーグレン。貴方の魔力、私が見てあげるわ」
「それは…魔道具ですか?」
私は部屋に置かれていた眼鏡を手に取るとアーグレンが興味深そうにそれを眺めてくる。
ひょっとしたら平民出身の彼は見たことすらないのかもしれない。魔道具というのは普通の道具よりもずっと価値のあるものだから。
「えぇ。アレクに貰ったの。これでその人の属性だけじゃなく魔力の強さも分かるのよ」
騎士団長と魔道具ってあんまり関係なさそうだしその立場になってからもなかなか目にしないものなのかしらね。
そこで私は素朴な疑問が浮かんだので彼に一つ問いかけてみる。
「…というかアレクが持ってるんだから聞けばすぐに分かったことじゃない。魔法だって教えてもらえたはずなのに…どうして聞かなかったの?」
「…私も、悪かったわ」
いや本当は全部私が悪いんだけどね…アーグレンはただ純粋に気になって聞いただけなんだろうから。なんで逆ギレしてるのって話よね、ホント…。
恐らくだけど…私はリティシアとしての生活に慣れすぎてそれ以上の待遇を求めてしまっているんでしょうね。
人間というのは一つ手に入れるとまたその上を手に入れたくなるものだから。私みたいな悪役令嬢は望んじゃいけないって初めから分かっていたはずなのに。
アーグレンやアレクと関わっているとどうしても別の未来があるんじゃないかって…そう思えてきてしまう。
ないのよ。ここは小説なんだから。変な期待なんかしちゃダメ。アレクが不幸になって私だけが幸せになる未来なら絶対にいらない。
周りの人全員を不幸にして私一人が幸せになる未来もいらない。
だったら私一人が喜んで悪役を演じて不幸になってやるわよ。
悪役を倒せば主人公は幸せになれる。それが…物語というものなんだから。
「公女様…」
「気にしないで。さっき本当はこんなことを聞くつもりじゃなかったって言ってたけど…何か他に用があったの?」
「はい。公女様がご招待されたティーパーティが近日中に開かれるのであれば、ご一緒することができなくなりそうです。陛下からの呼び出しがありまして…騎士団の様子と溜まった業務をこなしてきますので数週間は確実に帰れなくなりそうだと…そうお伝えしに来たんです。」
なるほどね…アーグレンはそれを伝えに来たのね。
王様がわざわざ呼び出すなんて一体どんな用事なのかしら?まぁ彼は騎士団長だし直接呼び出しがあってもおかしくはないか。
「では失礼します。公女様、改めて…申し訳ございませんでした。」
言うや否やさっさと部屋を去ろうとするアーグレンを引き留める為に私は必死に頭を回転させる。
このまま帰したら一人反省会とかしていつまでも引きずりそうだからね。何か違う話題を振らなきゃ。
「待って。私からも一つ聞かせてよ」
「…はい」
彼は足を止め、振り返ると私の言葉を待っている。
よし、とりあえず引き留めるのには成功したわ。でも質問なんて考えてなかったわ…。私がアーグレンに聞きたいことねぇ…うーん…あぁ、これ、聞いてみようかな。
「アーグレン、貴方…貴方の属性は何?よく考えたら貴方が魔法を使うところなんて一度も見たことがないわ」
その言葉に彼は驚くと少し悩んだ様子を見せる。そして彼は衝撃の事実を口にする。
「…私の属性は炎ですが…生まれてから一度も魔法を使ったことがありません」
「へぇ使ったことがな…」
私は彼の言葉を繰り返しかけたが、驚いて目を見開く。
「えっ!?」
驚く私とはよそに彼はあくまでも平然としてその事実を語っていた。彼にとってはそれが当たり前で、別に驚くべきことではないのだろう。
だがこの世界では魔力の高さが重視されるはず…そんな世界で魔法が使えないと色々大変なのでは…?
「公女様は知らないのが当然だと思うのですが、実は平民は魔力の高い人の方が少ないんですよ。運良く魔力が高く生まれていればもうとっくに魔術師か何かになっているでしょう。なので魔力が極端に高くない限りは魔力が話題に登ることはありません。皆魔力が低いことを隠そうとしますからね。」
なるほどね…貴族や王族基準だと魔力が高い人が多いから余計に魔力が重視されているってことね。
「そうだったのね。でも…魔法を使ったことがないのに自分の属性が何か分かってるなんておかしいじゃない?」
そうよ。それに私と同じ炎属性なんて初めて聞いたわよ。
別に公爵家のみに与えられた属性ではないから同じ属性の人間がいてもおかしくはないけどまさかこんなに身近にいるとはね。
「私の両親もその先祖も皆炎属性でしたから…恐らく私も炎属性かと…」
アーグレンは自信がなさそうに言葉を紡いでいき、私から視線を逸らす。
…確信がないのね。まぁそりゃそうか。使ったことないんだから。
なんか…ついこの前まで魔法が使えなかった私と同じね。これは…ほっとけないわ。
「アーグレン。貴方の魔力、私が見てあげるわ」
「それは…魔道具ですか?」
私は部屋に置かれていた眼鏡を手に取るとアーグレンが興味深そうにそれを眺めてくる。
ひょっとしたら平民出身の彼は見たことすらないのかもしれない。魔道具というのは普通の道具よりもずっと価値のあるものだから。
「えぇ。アレクに貰ったの。これでその人の属性だけじゃなく魔力の強さも分かるのよ」
騎士団長と魔道具ってあんまり関係なさそうだしその立場になってからもなかなか目にしないものなのかしらね。
そこで私は素朴な疑問が浮かんだので彼に一つ問いかけてみる。
「…というかアレクが持ってるんだから聞けばすぐに分かったことじゃない。魔法だって教えてもらえたはずなのに…どうして聞かなかったの?」
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる