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パーティ編 その3
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「ちょ、ちょっとリティシア…!」
私が歩き始めると、焦ったようなアルターニャ王女の声が背後から聞こえたので、私は振り返り、真顔で言葉を返す。
「一国の王女様が私を見てくださることは大変光栄に思いますが…他の方々も王女の目に止まりたいのではないでしょうか。私だけではなく皆様とどうぞお関わりになってくださいませ」
私に関わるなと言う意味も多少は…いや相当籠もってるけど、でも悪役令嬢リティシアにしては丁寧…よね?
できるだけ論理的に言えたはず…これでアルターニャが諦めるといいんだけど。
幸いな事に、アルターニャがそれ以上私を深追いすることはなかった。
その理由は単純で、彼女は一国の王女である為、隣国との結びつきをなんとか作ろうと集まってきた沢山の人に囲まれていたからだ。
その取り巻きの令嬢は多すぎる人々に困惑した顔をしていただけであったが、アルターニャだけは私を無言でじっと睨みつけていた。
…おかしいわね、一応丁寧な口調で伝えたはずなんだけど。きっとまだ話したいことがあったのかもね。でも何を言われても私はアレクシスをヒロイン…主人公以外に譲る気はないわ。
その後も誰かと話すことを積極的に試みたがやっぱりすぐに避けられてしまう為、隅の方で用意されていた飲み物に手を出す。
しかしそれがワインであることに気づき、未成年の私はとても飲む気が起きなかった。
周りの同年齢くらいの令嬢を見たところ、この世界では未成年は飲んではいけないというルールがそこまで厳しくなさそうだが、かといって飲もうとも思えない。
手に取ったからには戻すのはマナー違反かと思い一人で悩んでいると、同じくワインを片手にした男が、令嬢を口説く姿が目に飛び込んできた。
「ねぇ、パーティを抜け出して…これから俺と遊びに行かない?」
「や、やめてください、困ります…」
絡まれた令嬢は涙目でふるふると首を横に振っている。男はそんな彼女の手を強引に掴み、外へ連れ出そうと引っ張り続ける。
「えぇ?良いじゃん!ワインを溢したお詫びに奢るからさ」
よく見ると令嬢の黄色い鮮やかなドレスには大きな染みが出来ていた。濃いワインの色はとても隠し通せるようなものではなく、綺麗に落とせなければもう着ることは出来なさそうだ。
「け、結構です。着替えてきますので道を開けてください…」
「着替えてからでいいからさ、これから俺と…」
「やめてください…お願いします」
これは、リティシアのイメージを少し挽回するチャンスなのでは?と思いつつも、やはり悪役令嬢らしさを貫いて無視するべきなのか…二択で揺れていたのだが、令嬢の辛そうな瞳を見て全てが吹っ飛んだ。
アレクシスならきっと、無条件に…彼女の事を助けるわ。それに私も、彼女を助けたい。
見てなさい、これが悪役令嬢リティシアの恐ろしさよ。
「あら、手が滑った」
手が滑ったとは到底思えない程の速度…最早ワインを投げつけたとしか言いようのないスピードで男に思い切りぶつける。
真っ白なタキシードに瞬く間に染みが出来、投げ捨てられたグラスが豪快に割れる音をたてる。
その破裂音に一気に空気が静まり、私に視線が集中する。…本当は、注目されたくないのだけど…仕方ない。困ってる人を見捨てたくはないもの。
男は自身の礼装が汚れた事に怒り、ワインをぶつけた主にその怒りをぶつけようとしたのだが…私を見た途端怒りの表情が驚きに変わり、そして言葉を失う。
「それじゃぁワインを溢したお詫びに私が奢るわ。さぁ、行きましょう?」
にやりと意地悪く笑ってみせると、男は震えながら笑みを浮かべる。全然上手く笑えてないわよ。
「い、いや、リティシア様とは…その、自分なんか身分が釣り合わないと言いますか…」
私は更に極上の笑みを浮かべるとひっ、と男から情けない声が溢れる。
「あらそう?遠慮しなくていいのに。じゃぁ代わりにその子と出掛けようかしら。さぁ、その子を渡してくれる?」
驚いて固まっている令嬢の手を取ろうとするも、諦めの悪い男が私の前に強引に立ちはだかる。だが、威勢が良かったのは立ちはだかったその瞬間まで。私を見るや否やボソボソとか細い声で反論を加えてくる。
「いえ、それは…この子は、俺と出掛ける、予定で…」
「何?私の言うことが聞けないの?折角私の誘いを断ったことを見逃してあげたのに…。そう、どうしても罰を受けたいのね。良いわ。何をしてほしい?私の魔法で…火炙りにする?」
「い、やその…申し訳ありませんでした!」
火炙りは言いすぎたかしら…髪を燃やしてアフロにするくらいにした方が良かったかな…。ってそんなことはどうでもいいわ。
無様に土下座をする男を私は冷たく見下ろし、低い声で呟く。
「私の前で不愉快な行為をするんじゃないわよ。もう二度としないと誓える?あぁ、聞く必要なかったわね」
そこで息を吸い、本当は緊張していて今にも上ずりそうになる声を飲み込み、どうにか整える。
「誓いなさい。今ここで。そして謝罪なさい」
リティシアってこんな怖い声も出るのね。流石としか言いようがないわ…。
できるだけ問題は起こしたくないけど…まぁ仕方ない、この子を守るためだもの。
この子を無視したら、きっと私は後悔するわ。
私が歩き始めると、焦ったようなアルターニャ王女の声が背後から聞こえたので、私は振り返り、真顔で言葉を返す。
「一国の王女様が私を見てくださることは大変光栄に思いますが…他の方々も王女の目に止まりたいのではないでしょうか。私だけではなく皆様とどうぞお関わりになってくださいませ」
私に関わるなと言う意味も多少は…いや相当籠もってるけど、でも悪役令嬢リティシアにしては丁寧…よね?
できるだけ論理的に言えたはず…これでアルターニャが諦めるといいんだけど。
幸いな事に、アルターニャがそれ以上私を深追いすることはなかった。
その理由は単純で、彼女は一国の王女である為、隣国との結びつきをなんとか作ろうと集まってきた沢山の人に囲まれていたからだ。
その取り巻きの令嬢は多すぎる人々に困惑した顔をしていただけであったが、アルターニャだけは私を無言でじっと睨みつけていた。
…おかしいわね、一応丁寧な口調で伝えたはずなんだけど。きっとまだ話したいことがあったのかもね。でも何を言われても私はアレクシスをヒロイン…主人公以外に譲る気はないわ。
その後も誰かと話すことを積極的に試みたがやっぱりすぐに避けられてしまう為、隅の方で用意されていた飲み物に手を出す。
しかしそれがワインであることに気づき、未成年の私はとても飲む気が起きなかった。
周りの同年齢くらいの令嬢を見たところ、この世界では未成年は飲んではいけないというルールがそこまで厳しくなさそうだが、かといって飲もうとも思えない。
手に取ったからには戻すのはマナー違反かと思い一人で悩んでいると、同じくワインを片手にした男が、令嬢を口説く姿が目に飛び込んできた。
「ねぇ、パーティを抜け出して…これから俺と遊びに行かない?」
「や、やめてください、困ります…」
絡まれた令嬢は涙目でふるふると首を横に振っている。男はそんな彼女の手を強引に掴み、外へ連れ出そうと引っ張り続ける。
「えぇ?良いじゃん!ワインを溢したお詫びに奢るからさ」
よく見ると令嬢の黄色い鮮やかなドレスには大きな染みが出来ていた。濃いワインの色はとても隠し通せるようなものではなく、綺麗に落とせなければもう着ることは出来なさそうだ。
「け、結構です。着替えてきますので道を開けてください…」
「着替えてからでいいからさ、これから俺と…」
「やめてください…お願いします」
これは、リティシアのイメージを少し挽回するチャンスなのでは?と思いつつも、やはり悪役令嬢らしさを貫いて無視するべきなのか…二択で揺れていたのだが、令嬢の辛そうな瞳を見て全てが吹っ飛んだ。
アレクシスならきっと、無条件に…彼女の事を助けるわ。それに私も、彼女を助けたい。
見てなさい、これが悪役令嬢リティシアの恐ろしさよ。
「あら、手が滑った」
手が滑ったとは到底思えない程の速度…最早ワインを投げつけたとしか言いようのないスピードで男に思い切りぶつける。
真っ白なタキシードに瞬く間に染みが出来、投げ捨てられたグラスが豪快に割れる音をたてる。
その破裂音に一気に空気が静まり、私に視線が集中する。…本当は、注目されたくないのだけど…仕方ない。困ってる人を見捨てたくはないもの。
男は自身の礼装が汚れた事に怒り、ワインをぶつけた主にその怒りをぶつけようとしたのだが…私を見た途端怒りの表情が驚きに変わり、そして言葉を失う。
「それじゃぁワインを溢したお詫びに私が奢るわ。さぁ、行きましょう?」
にやりと意地悪く笑ってみせると、男は震えながら笑みを浮かべる。全然上手く笑えてないわよ。
「い、いや、リティシア様とは…その、自分なんか身分が釣り合わないと言いますか…」
私は更に極上の笑みを浮かべるとひっ、と男から情けない声が溢れる。
「あらそう?遠慮しなくていいのに。じゃぁ代わりにその子と出掛けようかしら。さぁ、その子を渡してくれる?」
驚いて固まっている令嬢の手を取ろうとするも、諦めの悪い男が私の前に強引に立ちはだかる。だが、威勢が良かったのは立ちはだかったその瞬間まで。私を見るや否やボソボソとか細い声で反論を加えてくる。
「いえ、それは…この子は、俺と出掛ける、予定で…」
「何?私の言うことが聞けないの?折角私の誘いを断ったことを見逃してあげたのに…。そう、どうしても罰を受けたいのね。良いわ。何をしてほしい?私の魔法で…火炙りにする?」
「い、やその…申し訳ありませんでした!」
火炙りは言いすぎたかしら…髪を燃やしてアフロにするくらいにした方が良かったかな…。ってそんなことはどうでもいいわ。
無様に土下座をする男を私は冷たく見下ろし、低い声で呟く。
「私の前で不愉快な行為をするんじゃないわよ。もう二度としないと誓える?あぁ、聞く必要なかったわね」
そこで息を吸い、本当は緊張していて今にも上ずりそうになる声を飲み込み、どうにか整える。
「誓いなさい。今ここで。そして謝罪なさい」
リティシアってこんな怖い声も出るのね。流石としか言いようがないわ…。
できるだけ問題は起こしたくないけど…まぁ仕方ない、この子を守るためだもの。
この子を無視したら、きっと私は後悔するわ。
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