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第9話:魔王と裸のお付き合い

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「琥太郎、遅い!余は待ちわびたぞ」

 そこにいたのは衣服の乱れた魔王、窓越しに夜風を受けて酒を飲んでいた。
 ”もうすでに飲んでる!?”
 魔王の帯びる甘い酒気は離れた俺のところまで漂ってきた。これでは持ってきた安酒も形無しだ。

「魔王様って護衛とかつけないんですね?命狙われる立場なのに大丈夫なんですか?」
「余に敵はいないからな、だから護衛をつける必要もない。それよりも琥太郎、もっとちこうよれ」
「あ、はい!」

 刺すなら今しかない、俺はそう思った。

「のう琥太郎、余を見てどう思う?」
「どうと言われても・・・とても綺麗だと思いますよ」
「世事なら殺す!」
「いやいや、ホントですって。魔王ってのがもったいないくらいお美しい!」
「それは余の裸を見た上で言っておるのか?」
「えぇ~、裸ですか?」
「余は完璧ぞ、知性においても、力においても、権力においても余の右に出るものはいない。だがそんな余にも唯一欠点がある」
「まさか魔王様に弱点が!」
「そうだ、ソチにだけ打ち明けよう」

 そう言うと魔王は窓から降りて服を脱ぎだす。
 ”魔王様どうなされました!ご乱心ですか!?”
 『刺すなら今っス!』、そう耳元で悪魔が囁いた。
 ”いや、まだだ、まだ早い”

「余には・・・余には圧倒的に胸が足りない!」
「・・・」
「魔族も人間もなぜ衣服をまとうのか?それは自身の体にコンプレックスがあるからではないのか?余は余の胸にコンプレックスを持っている。この絶壁ともいえるこの胸がたまらなく恥ずかしい。だがそんな事配下に聞けるはずもなく、だから余の裸を見たソチに聞いたのだ。この体を見てどう思う、正直に答えよ」

 ”分からねぇ~!魔王の地雷が一体何なのか全く分からねぇ~!!”

「完璧です」
「何と?」
「パーフェクトと申しております」
「意味が分からん?」
「新雪の如く繊細せんさいな肌も、なまめかしいくびれも、安産型の腰も、どれも所詮は体の一部、全てそろっての体です。ただ大きさを求めるのは原始人の考えです、より進化した現代っ子はバランスを求めるものなのです!」

『なに意味不明な事言ってるっスか?とっとと刺すっス!』とまた悪魔が囁く。俺も全く同感だ。

「そ、そうかの?そんなものかの?」

 ”魔王がデレた!!”
 顔を赤らめもじもじする魔王、こんなに魔王が可愛いなんて知らなかった。なんかもう世界救うとかどうでもよくなってきた。

「よし琥太郎、ソチも脱げ」
「へ?」
「ソチにばかり見てもらっては悪い。余もソチを見て評価してやるぞ」
「いや、俺は結構です。恥ずかしいし」
「何ぞ?余も恥ずかしいのを我慢して見せたと言うのにソチも見せんか?」
「いや、あんたが勝手に見せたんでしょ?」
「死にたくなければ脱げ!」
「はい・・・」

 脱ぎ脱ぎ・・・

「これでいいですか?」
「琥太郎、下もだ」
「ぱ、パンツだけは勘弁してください!」
「良いではないか、良いではないか」

 魔王は抵抗する俺を強引に押し倒す。流石魔王、なんて馬鹿力。どこにでもいる普通の高校生の力じゃ太刀打ちできない!

 コンコン・・・

「魔王様、失礼いたします?」
「アブラギ!?」

 ”ちょっと待ってアブラギさん!今は色々と不味い”



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