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3学年 後期
第270話
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「……勝つ? お前が? 私に?」
「その通りだ!」
伸から発せられた言葉に、バルタサールは首を傾げつつ問いかける。
言っている意味は分かるが、とてもではないが現実的な話ではないため、受け入れることに少しの間が必要のようだ。
そんなバルタサールの問いかけに、伸は力強く返事をした。
「ハハッ、冗談が過ぎるな……」
人型の姿での勝負なら、もしかしたら伸が勝利する可能性はあるだろう。
しかし、魔人としての本性を現したことで力の差が生まれてしまったため、伸が自分に勝利できることはありえない。
それでも、自分の攻撃に対応する伸との戦いは面白い。
それなのに、伸のハッタリを受けて折角の気分が台無しになり、バルタサールは乾いた笑いと共に呟く。
「冗談じゃないさ」
“ピキッ!!”
ハッタリにしてはつまらない。
そんな様子のバルタサールの呟きに、伸は自信満々に返答する。
その言葉を受け、バルタサールのこめかみに血管が浮き上がった。
「なおさら不愉快だ!」
少し前までの笑みは完全に消え去り、バルタサールは怒りと共に一気に殺気を撒き散らす。
相当お冠のようだ。
「勝てるわけがないだろ!? 逃げ回っているだけのくせに!」
接近戦に持ち込んでもパワーが違う。
距離をとっても、強力な魔力弾の攻撃に晒される。
自分よりも僅かに上回るスピードを駆使し、逃げ回っているだけに過ぎない。
そんな伸が、どうして勝てると言えるのか。
不愉快なバルタサールは、語気を強めて伸に問いかける。
「あぁ、ここまではな!」
バルタサールの問いかけに対し、伸は強気の返答をする。
その表情は、真剣そのものだ。
「……そこまで言うなら、やってみろよ!」
「っっっ!?」
伸のハッタリが気にくわないが、その表情も気にくわない。
何か策でもあるのか、本当に勝つつもりでいるような表情だからだ。
気に入らないが、伸がどう動くのか興味がわく。
その思いから、バルタサールは伸に向かって左手を向ける。
「ハーーッ!!」
「くっ!!」
バルタサールの左手から巨大魔力球を放たれる。
その攻撃を躱すため、伸は横に跳んで躱す。
躱された巨大魔力球は、穴が開いた部分を通り抜け、隣の会場の観客席にぶつかって場大爆発を起こす。
「予想通りだな!」
「っっっ!!」
巨大魔力球を躱した伸を先回りするように、バルタサールが距離を詰めてきた。
わざと躱しやすいようにすることで、伸の避ける方向を限定したのかもしれない。
もう振りかぶった状態のバルタサールは、伸を袈裟斬りにするように刀を振り下ろした。
“フッ!!”
「っっっ!? 消えたっ!?」
袈裟斬りにする瞬間、伸の姿が一瞬にして消える。
何が起きたのか分からず、バルタサールは戸惑いの声を上げる。
「っ!! まさか……転移魔術かっ!?」
周囲を見渡したバルタサールは、伸が少し離れた背後にいることに気が付く。
目にもとまらぬ速さで移動したという訳ではない。
そうなると、思い浮かぶ魔術がある。
使用できる魔闘師は世界でも数え切れるほどしかいない、オレガリオが得意としている転移魔術だ。
「オレガリオ以外にも転移魔術が使える者がいるなんてな……」
転移魔術が使えるため、バルタサールはオレガリオを重宝していた。
今後の世界征服のことを考えると、伸も使えるというのは喜ばしい。
バルタサールとしては、何としても伸を配下に加えたいと思い始めた。
そのためにも、伸に少し痛い思いをしてもらわなければと、伸に向かって刀を構えた。
「っっっ!? な、なんだ……?」
刀を構えるために一歩踏み出した瞬間、バルタサールは自分に起きた異変に気が付く。
「う、動け……」
足が張りつけられたかのように動かない。
どんなに力を込めても動けないため、バルタサールは戸惑いの声を上げる。
「貴様だな!? 伸っ!! 何をした!?」
何が起きているのか分からないが、自分にこんなことができるのは伸以外いない。
そのため、バルタサールは伸に答えを求める。
「そこだよ。そこに来るのを待ってたんだ」
「魔法陣っ!? 魔力を隠蔽していたか!?」
問いに答えるように、伸は種明かしをする。
バルタサールを中心として、魔法陣が浮かび上がったのだ。
片膝をついて両手を地面につけている伸が用意していたことは明白。
しかも、魔法陣を描く魔力を見えづらくしていたため、自分が気付かなかったのだとバルタサールは気付く。
「ただ逃げ回っていただけじゃないってわけさ!」
伸が勝機を見出した理由。
それは、バルタサールが細かいことに意識を向けないという癖を感じ取ったからだ。
どんな攻撃を受けようとも、自分に致命傷を負わせるだけの攻撃を加えられる生物が存在しているなんて毛頭になかったのだろう
自分が魔力を隠蔽していることなんて、全く注意を向けていなかった。
それを利用し、逃げ回りながら密かに準備を進めてきた。
バルタサールの動きを止め、全力攻撃を加えるチャンスを作り出すことを。
「くらえ!!」
魔法陣にて動けなくなったバルタサール。
そのチャンスを利用し、伸は自身の全魔力を使用してバルタサールへと攻撃を計る。
“ズドーーーンッ!!”
「グッ、グアーーー!!」
伸の発言の後、巨大な火柱が上がり爆発を起こす。
魔法陣による大爆発だ。
その直撃を受けたバルタサールは、大きな悲鳴を上げた。
「その通りだ!」
伸から発せられた言葉に、バルタサールは首を傾げつつ問いかける。
言っている意味は分かるが、とてもではないが現実的な話ではないため、受け入れることに少しの間が必要のようだ。
そんなバルタサールの問いかけに、伸は力強く返事をした。
「ハハッ、冗談が過ぎるな……」
人型の姿での勝負なら、もしかしたら伸が勝利する可能性はあるだろう。
しかし、魔人としての本性を現したことで力の差が生まれてしまったため、伸が自分に勝利できることはありえない。
それでも、自分の攻撃に対応する伸との戦いは面白い。
それなのに、伸のハッタリを受けて折角の気分が台無しになり、バルタサールは乾いた笑いと共に呟く。
「冗談じゃないさ」
“ピキッ!!”
ハッタリにしてはつまらない。
そんな様子のバルタサールの呟きに、伸は自信満々に返答する。
その言葉を受け、バルタサールのこめかみに血管が浮き上がった。
「なおさら不愉快だ!」
少し前までの笑みは完全に消え去り、バルタサールは怒りと共に一気に殺気を撒き散らす。
相当お冠のようだ。
「勝てるわけがないだろ!? 逃げ回っているだけのくせに!」
接近戦に持ち込んでもパワーが違う。
距離をとっても、強力な魔力弾の攻撃に晒される。
自分よりも僅かに上回るスピードを駆使し、逃げ回っているだけに過ぎない。
そんな伸が、どうして勝てると言えるのか。
不愉快なバルタサールは、語気を強めて伸に問いかける。
「あぁ、ここまではな!」
バルタサールの問いかけに対し、伸は強気の返答をする。
その表情は、真剣そのものだ。
「……そこまで言うなら、やってみろよ!」
「っっっ!?」
伸のハッタリが気にくわないが、その表情も気にくわない。
何か策でもあるのか、本当に勝つつもりでいるような表情だからだ。
気に入らないが、伸がどう動くのか興味がわく。
その思いから、バルタサールは伸に向かって左手を向ける。
「ハーーッ!!」
「くっ!!」
バルタサールの左手から巨大魔力球を放たれる。
その攻撃を躱すため、伸は横に跳んで躱す。
躱された巨大魔力球は、穴が開いた部分を通り抜け、隣の会場の観客席にぶつかって場大爆発を起こす。
「予想通りだな!」
「っっっ!!」
巨大魔力球を躱した伸を先回りするように、バルタサールが距離を詰めてきた。
わざと躱しやすいようにすることで、伸の避ける方向を限定したのかもしれない。
もう振りかぶった状態のバルタサールは、伸を袈裟斬りにするように刀を振り下ろした。
“フッ!!”
「っっっ!? 消えたっ!?」
袈裟斬りにする瞬間、伸の姿が一瞬にして消える。
何が起きたのか分からず、バルタサールは戸惑いの声を上げる。
「っ!! まさか……転移魔術かっ!?」
周囲を見渡したバルタサールは、伸が少し離れた背後にいることに気が付く。
目にもとまらぬ速さで移動したという訳ではない。
そうなると、思い浮かぶ魔術がある。
使用できる魔闘師は世界でも数え切れるほどしかいない、オレガリオが得意としている転移魔術だ。
「オレガリオ以外にも転移魔術が使える者がいるなんてな……」
転移魔術が使えるため、バルタサールはオレガリオを重宝していた。
今後の世界征服のことを考えると、伸も使えるというのは喜ばしい。
バルタサールとしては、何としても伸を配下に加えたいと思い始めた。
そのためにも、伸に少し痛い思いをしてもらわなければと、伸に向かって刀を構えた。
「っっっ!? な、なんだ……?」
刀を構えるために一歩踏み出した瞬間、バルタサールは自分に起きた異変に気が付く。
「う、動け……」
足が張りつけられたかのように動かない。
どんなに力を込めても動けないため、バルタサールは戸惑いの声を上げる。
「貴様だな!? 伸っ!! 何をした!?」
何が起きているのか分からないが、自分にこんなことができるのは伸以外いない。
そのため、バルタサールは伸に答えを求める。
「そこだよ。そこに来るのを待ってたんだ」
「魔法陣っ!? 魔力を隠蔽していたか!?」
問いに答えるように、伸は種明かしをする。
バルタサールを中心として、魔法陣が浮かび上がったのだ。
片膝をついて両手を地面につけている伸が用意していたことは明白。
しかも、魔法陣を描く魔力を見えづらくしていたため、自分が気付かなかったのだとバルタサールは気付く。
「ただ逃げ回っていただけじゃないってわけさ!」
伸が勝機を見出した理由。
それは、バルタサールが細かいことに意識を向けないという癖を感じ取ったからだ。
どんな攻撃を受けようとも、自分に致命傷を負わせるだけの攻撃を加えられる生物が存在しているなんて毛頭になかったのだろう
自分が魔力を隠蔽していることなんて、全く注意を向けていなかった。
それを利用し、逃げ回りながら密かに準備を進めてきた。
バルタサールの動きを止め、全力攻撃を加えるチャンスを作り出すことを。
「くらえ!!」
魔法陣にて動けなくなったバルタサール。
そのチャンスを利用し、伸は自身の全魔力を使用してバルタサールへと攻撃を計る。
“ズドーーーンッ!!”
「グッ、グアーーー!!」
伸の発言の後、巨大な火柱が上がり爆発を起こす。
魔法陣による大爆発だ。
その直撃を受けたバルタサールは、大きな悲鳴を上げた。
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