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3学年 前期
第216話
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【またしても魔人出現!!】
ニュースでは、またもこの話題でもちきりだ。
柊家・鷹藤家を狙い、またも魔人が出現したことが話されている。
その魔人たちを撃退したことも報道されているため、両家はまたも名をあげることになった。
「やっぱり、どこもこの話だな……」
「そうだね」
テレビでもネットでもこのニュースばかり。
予想通りの反応に、伸はテレビの電源を消して呟く。
その呟きに、綾愛も同意の返答を返した。
その声のトーンからして、2人とも暇を持て余している様子だ。
というのも、伸たちが泊まってホテルの前には、昨日の魔人討伐に関する話を聞こうと多くの記者たちが集まっており、とても外に出られる状態ではないためだ。
伸たちには今日も魔物討伐の仕事があったのだが、この状況なので他の柊家の魔闘師たちに任せることになった。
せめて何か面白い情報でもないかと思って付けたテレビも、昨日の話では辟易する気持ちも分からなくはない。
「……それにしても、文康が攫われるなんてな」
自分たちが魔人に襲われたことも予想外だったが、同時刻に鷹藤家の者たちも襲われていたなんて予想外だった。
去年まで八郷学園に通っていた次男の道康は別荘地で、長男の文康は自宅にいるところを襲われたという話だ。
道康の方は、鷹藤家に潜入していた魔人に気付き、計画を知ることに成功した当主の康義のお陰で助かることができたが、文康の方はオレガリオの転移魔術による奇襲によって連れ去られてしまったそうだ。
綾愛だけでなく文康や道康を狙ったところを見ると、柊家・鷹藤家当主の俊夫や康義に心理的ダメージを与えるつもりだったのではないだろうか。
結果は柊家は失敗、鷹藤家は半分成功といった形になったのかもしれない。
祖父である康義にもだが、文康の父である康則の方が大きな心理的ダメージを受けているように画面からは受け取れた。
「誘拐犯が誘拐されるなんて書いてる奴もいるね」
「特になんとも思っていない相手だけど、間違ってないとはいえ笑えないな」
綾愛の隣に座っている奈津希が、スマホのSNSを見ながら話す。
文康は、この大和皇国で大人気の年末イベントである対抗戦で、セコンドである伸を誘拐して綾愛を脅し、不正に勝利を得ようと企てたことが明るみになり、逮捕されることに至った。
鷹藤家の長男がおこなった誘拐事件ということもあり、大々的に報道されたため、今回魔人に攫われたことを擁護する人間が少なく、中には面白おかしくディスる投稿があるようだ。
自業自得とはいえ、こうなると若干だがかわいそうとも思えなくはない。
「魔人たちも攫って何を考えてるんだろ……?」
「……良くない想像しかできないな」
魔人が人間を攫う理由なんて、食べるためだろうという考えが一番最初に来る。
しかし、当主の康義に精神的ダメージを与えるためだったとしても、殺さないで連れ去った理由が思いつかない。
もしかしたら、他に何か企んでいる可能性があるが、魔人が何を考えているかなんて思いつかないため、伸は綾愛の疑問に返答した。
「鷹藤家は捜索をしているようだけど、どこにいるのかわからないからね……」
「あぁ……」
奈津希が言うように、文康を攫い、鷹藤家から転移したオレガリオの行方なんてわかるわけがない。
そもそも、まだ大和皇国にいるのかも分からないのだから、捜索しても手がかりが掴めるとは思えない。
言いたくないが、鷹藤家の捜索もただの徒労で終わることだろう。
「可能性があるとすれば?」
「……魔人島だな」
文康が生きているとして、今どこにいるのか。
伸は、それに心当たりが全くないわけではない。
そのため、綾愛の問いかけに対して、伸は自分の考えを述べた。
魔人が潜んでいると言われている太平洋上の小島。
通称魔人島だ。
「それは……」
「助けに行くのは無理ね……」
確かに、伸の言うように魔人島に連れ去ったというのなら、国内で見つかるわけがない。
しかし、それが正しかったとしても、どれほどの魔人が潜んでいるのかもわからないような島に乗りこむなんて、鷹藤家の魔闘師を総動員しても文康を連れ戻すことなんてできないだろう。
成功したにしても、どれほどの命が失われるか分かったものではない。
文康一人の命のために、そんなことをしたら鷹藤家の名は完全に地に落ちること間違いなしだ。
「結局、また柊家だけが評価を受けることになったわね」
「特に綾愛ちゃんの、評価がね」
今回も、伸が魔人を倒したということは秘密にすることにした。
綾愛と一緒に戦った森川家の正大と、上長家の麻里にも口裏を合わせるように言い含めている。
彼らも、魔人の集団に遭遇して生き残ったのは伸のお陰であるということが分かっているため、伸の頼みを断ることはなかった。
じゃあ、誰が魔人を倒したのかとなると、一番説得力があるのは綾愛だ。
伸たちの援護を受けて、綾愛が魔人集団を倒したということにすることにした。
そのため、奈津希が言うように、またも柊家、対抗戦2連覇中である綾愛の評価が上がったということだ。
「何にしても、次にオレガリオとかいう魔人が現れたら始末しないとな」
転移魔術を使える魔人なんて厄介極まりない。
いつ、どこへでも奇襲をかけられるということと同義だからだ。
そんなのを放置しておくわけにはいかないため、伸は次にオレガリオに会った時は必ず始末することに決めたのだった。
ニュースでは、またもこの話題でもちきりだ。
柊家・鷹藤家を狙い、またも魔人が出現したことが話されている。
その魔人たちを撃退したことも報道されているため、両家はまたも名をあげることになった。
「やっぱり、どこもこの話だな……」
「そうだね」
テレビでもネットでもこのニュースばかり。
予想通りの反応に、伸はテレビの電源を消して呟く。
その呟きに、綾愛も同意の返答を返した。
その声のトーンからして、2人とも暇を持て余している様子だ。
というのも、伸たちが泊まってホテルの前には、昨日の魔人討伐に関する話を聞こうと多くの記者たちが集まっており、とても外に出られる状態ではないためだ。
伸たちには今日も魔物討伐の仕事があったのだが、この状況なので他の柊家の魔闘師たちに任せることになった。
せめて何か面白い情報でもないかと思って付けたテレビも、昨日の話では辟易する気持ちも分からなくはない。
「……それにしても、文康が攫われるなんてな」
自分たちが魔人に襲われたことも予想外だったが、同時刻に鷹藤家の者たちも襲われていたなんて予想外だった。
去年まで八郷学園に通っていた次男の道康は別荘地で、長男の文康は自宅にいるところを襲われたという話だ。
道康の方は、鷹藤家に潜入していた魔人に気付き、計画を知ることに成功した当主の康義のお陰で助かることができたが、文康の方はオレガリオの転移魔術による奇襲によって連れ去られてしまったそうだ。
綾愛だけでなく文康や道康を狙ったところを見ると、柊家・鷹藤家当主の俊夫や康義に心理的ダメージを与えるつもりだったのではないだろうか。
結果は柊家は失敗、鷹藤家は半分成功といった形になったのかもしれない。
祖父である康義にもだが、文康の父である康則の方が大きな心理的ダメージを受けているように画面からは受け取れた。
「誘拐犯が誘拐されるなんて書いてる奴もいるね」
「特になんとも思っていない相手だけど、間違ってないとはいえ笑えないな」
綾愛の隣に座っている奈津希が、スマホのSNSを見ながら話す。
文康は、この大和皇国で大人気の年末イベントである対抗戦で、セコンドである伸を誘拐して綾愛を脅し、不正に勝利を得ようと企てたことが明るみになり、逮捕されることに至った。
鷹藤家の長男がおこなった誘拐事件ということもあり、大々的に報道されたため、今回魔人に攫われたことを擁護する人間が少なく、中には面白おかしくディスる投稿があるようだ。
自業自得とはいえ、こうなると若干だがかわいそうとも思えなくはない。
「魔人たちも攫って何を考えてるんだろ……?」
「……良くない想像しかできないな」
魔人が人間を攫う理由なんて、食べるためだろうという考えが一番最初に来る。
しかし、当主の康義に精神的ダメージを与えるためだったとしても、殺さないで連れ去った理由が思いつかない。
もしかしたら、他に何か企んでいる可能性があるが、魔人が何を考えているかなんて思いつかないため、伸は綾愛の疑問に返答した。
「鷹藤家は捜索をしているようだけど、どこにいるのかわからないからね……」
「あぁ……」
奈津希が言うように、文康を攫い、鷹藤家から転移したオレガリオの行方なんてわかるわけがない。
そもそも、まだ大和皇国にいるのかも分からないのだから、捜索しても手がかりが掴めるとは思えない。
言いたくないが、鷹藤家の捜索もただの徒労で終わることだろう。
「可能性があるとすれば?」
「……魔人島だな」
文康が生きているとして、今どこにいるのか。
伸は、それに心当たりが全くないわけではない。
そのため、綾愛の問いかけに対して、伸は自分の考えを述べた。
魔人が潜んでいると言われている太平洋上の小島。
通称魔人島だ。
「それは……」
「助けに行くのは無理ね……」
確かに、伸の言うように魔人島に連れ去ったというのなら、国内で見つかるわけがない。
しかし、それが正しかったとしても、どれほどの魔人が潜んでいるのかもわからないような島に乗りこむなんて、鷹藤家の魔闘師を総動員しても文康を連れ戻すことなんてできないだろう。
成功したにしても、どれほどの命が失われるか分かったものではない。
文康一人の命のために、そんなことをしたら鷹藤家の名は完全に地に落ちること間違いなしだ。
「結局、また柊家だけが評価を受けることになったわね」
「特に綾愛ちゃんの、評価がね」
今回も、伸が魔人を倒したということは秘密にすることにした。
綾愛と一緒に戦った森川家の正大と、上長家の麻里にも口裏を合わせるように言い含めている。
彼らも、魔人の集団に遭遇して生き残ったのは伸のお陰であるということが分かっているため、伸の頼みを断ることはなかった。
じゃあ、誰が魔人を倒したのかとなると、一番説得力があるのは綾愛だ。
伸たちの援護を受けて、綾愛が魔人集団を倒したということにすることにした。
そのため、奈津希が言うように、またも柊家、対抗戦2連覇中である綾愛の評価が上がったということだ。
「何にしても、次にオレガリオとかいう魔人が現れたら始末しないとな」
転移魔術を使える魔人なんて厄介極まりない。
いつ、どこへでも奇襲をかけられるということと同義だからだ。
そんなのを放置しておくわけにはいかないため、伸は次にオレガリオに会った時は必ず始末することに決めたのだった。
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