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3学年 前期
第211話
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「ハァッ!!」
「ぐっ!」
カサンドラとの距離を一気に詰めるように、伸が踏み込む。
そして構えていた刀で薙ぎ払いを放つ。
その攻撃を、カサンドラは両手に持つブーメランを十字にクロスさせるようにして防いだ。
『っ!! 重くなった!?』
伸の攻撃を防いだカサンドラだったが、その後の押し合いで若干の違和感を覚える。
というのも、伸の押す力が上がっているように感じたからだ。
「……くっ!」
自分は両手だというのに、伸は片手でこの力。
身体強化している魔人以上の力を持っているなんて、やはり化け物と言わざるを得ない。
とても力比べをして勝てるような相手ではない。
そう判断したカサンドラは、バックステップをしてしんから距離を取る。
「むっ!?」
『私は元々速度による戦闘の方が得意! 当たらなければ、どんなに力があろうと無意味よ!』
距離を取ったカサンドラは、軽いステップをした後に高速移動を開始した。
縦横無尽に動くことで、伸が攻撃するタイミングを外すのが狙いなのだろう。
魔人でも人の姿の時は男女で得意な能力は分かれ、男は力、女は速度が高い傾向にある。
カサンドラの場合、本性のウングル姿の時はその利点が消えてしまう。
それを回避するために、人と魔物の中間の姿で戦うことが自分にとって一番力を発揮できると考え、今の姿に至っている。
速度自慢だったチーター魔人のティベリオにも引けを取らないと、カサンドラは自負している。
その自慢の速度全開で伸へ攻めかかった。
『死ね!!』
伸の視線から逃れるように動き回り、とうとうカサンドラは背後に回り、死角から声を出すことなく斬りかかった。
“キンッ!!”
「っと!」
「っっっ!?」
金属同士が当たったような甲高い音が鳴る。
伸がカサンドラの攻撃を刀で防いだ音だ。
完全に視界から外れ、探知を使っているとしても、反応できるような速度ではないはず。
それなのに、伸はノールックで自分の攻撃を防いだ。
信じられないことに、カサンドラは目を見開くしかなかった。
「速度自慢なら、止まっちゃダメだろ?」
「うぐっ!?」
自信の一撃をあまりにもあっさりと攻撃を防がれ、カサンドラは驚きで思わず足が止まる。
そんな隙を逃すわけもなく、伸は体を回転させ、回し蹴りを打ち込んだ。
横っ腹に攻撃を受けたカサンドラは、呻き声を上げて吹き飛んで行った。
『やっぱり難しいな……』
かなり強めに蹴り込んだというのに、カサンドラは気を失っていない。
捕縛するためには気を失わせるのが一番手っ取り早いのだが、魔人の場合人間以上に耐久力が高いせいで加減調整が分からない。
そのため、伸は心の中でどうするべきか悩んでいた。
「このっ!!」
「っ!」
蹴りを食らい距離を取ることになったカサンドラは、着地と共にすぐさま地を蹴る。
そして、またも最高速度で動き回り、手に持つブーメランで背後から斬りかかるが、伸は今度はしゃがみ込むことでカサンドラの攻撃を回避した。
「フンッ!!」
「うっ!!」
攻撃を躱されて隙のできたカサンドラの腹へ、伸は左拳を打ち込んだ。
「無理か……」
腹へのダメージで気を失わせようと考えていた伸だったが、その考えは無理だと考えるようになっていた。
半分魔物化しているカサンドラの体の表面は、鱗に覆われていて打撃はあまり通用しないように思える。
その中でも腹の部分はその鱗がないため、強力な打撃を与えれば気を失うかもしれないと思っていた。
しかし、腹の部分もかなり硬く、打撃の感触からいまいちダメージを与えられていないように感じたからだ。
『相手が魔人だからと言ってあまり気分の良いやり方ではないが、斬るしかないようだな……』
打撃によるダメージで気を失わせることは難しい。
それならば、刀で深手を負わせることで戦意を失わせるしかない。
カサンドラを捕縛するために、伸は戦い方を変えることにした。
「クッ!! なんで……!?」
派手に吹き飛ばされているが、ダメージ自体は大したことはない。
肉体よりも心のダメージの方が強いかもしれない。
自慢のスピードも伸には全く通用しないからだ。
またも死角から斬りかかっているというのに、伸は刀で防いでしまう。
どうしてこんなことになっているのか理解できず、カサンドラは戸惑いの言葉が口から出ていた。
「シッ!!」
「ぐっ!!」
攻撃を防がれたら、すぐに伸からの攻撃が来る。
それを数回の攻防で理解したからか、カサンドラはすぐさまその場から飛び退く。
その反応が正しかったためか、伸の攻撃はカサンドラの腕を僅かに斬るだけに留まった。
「くそっ! くそっ!」
大した怪我でないため、カサンドラはすぐさま体勢を当てなおして伸へと斬りかかる。
自分は両手持ちだが、伸は刀を一本しか持っていない。
それならば、攻撃の回転速度も上げて手数を増やせば対処しきれないはず。
そう考えたカサンドラは、両手のブーメランを振り回した。
「……ハッ!!」
「っっっ!! そん…な……」
高速移動に加えての高速連撃。
伸はそれを無言で防ぎ続け、僅かに大振りになったところを狙って刀を滑りこませることで、カサンドラの腹部を深く斬った。
「ぐっ!」
カサンドラとの距離を一気に詰めるように、伸が踏み込む。
そして構えていた刀で薙ぎ払いを放つ。
その攻撃を、カサンドラは両手に持つブーメランを十字にクロスさせるようにして防いだ。
『っ!! 重くなった!?』
伸の攻撃を防いだカサンドラだったが、その後の押し合いで若干の違和感を覚える。
というのも、伸の押す力が上がっているように感じたからだ。
「……くっ!」
自分は両手だというのに、伸は片手でこの力。
身体強化している魔人以上の力を持っているなんて、やはり化け物と言わざるを得ない。
とても力比べをして勝てるような相手ではない。
そう判断したカサンドラは、バックステップをしてしんから距離を取る。
「むっ!?」
『私は元々速度による戦闘の方が得意! 当たらなければ、どんなに力があろうと無意味よ!』
距離を取ったカサンドラは、軽いステップをした後に高速移動を開始した。
縦横無尽に動くことで、伸が攻撃するタイミングを外すのが狙いなのだろう。
魔人でも人の姿の時は男女で得意な能力は分かれ、男は力、女は速度が高い傾向にある。
カサンドラの場合、本性のウングル姿の時はその利点が消えてしまう。
それを回避するために、人と魔物の中間の姿で戦うことが自分にとって一番力を発揮できると考え、今の姿に至っている。
速度自慢だったチーター魔人のティベリオにも引けを取らないと、カサンドラは自負している。
その自慢の速度全開で伸へ攻めかかった。
『死ね!!』
伸の視線から逃れるように動き回り、とうとうカサンドラは背後に回り、死角から声を出すことなく斬りかかった。
“キンッ!!”
「っと!」
「っっっ!?」
金属同士が当たったような甲高い音が鳴る。
伸がカサンドラの攻撃を刀で防いだ音だ。
完全に視界から外れ、探知を使っているとしても、反応できるような速度ではないはず。
それなのに、伸はノールックで自分の攻撃を防いだ。
信じられないことに、カサンドラは目を見開くしかなかった。
「速度自慢なら、止まっちゃダメだろ?」
「うぐっ!?」
自信の一撃をあまりにもあっさりと攻撃を防がれ、カサンドラは驚きで思わず足が止まる。
そんな隙を逃すわけもなく、伸は体を回転させ、回し蹴りを打ち込んだ。
横っ腹に攻撃を受けたカサンドラは、呻き声を上げて吹き飛んで行った。
『やっぱり難しいな……』
かなり強めに蹴り込んだというのに、カサンドラは気を失っていない。
捕縛するためには気を失わせるのが一番手っ取り早いのだが、魔人の場合人間以上に耐久力が高いせいで加減調整が分からない。
そのため、伸は心の中でどうするべきか悩んでいた。
「このっ!!」
「っ!」
蹴りを食らい距離を取ることになったカサンドラは、着地と共にすぐさま地を蹴る。
そして、またも最高速度で動き回り、手に持つブーメランで背後から斬りかかるが、伸は今度はしゃがみ込むことでカサンドラの攻撃を回避した。
「フンッ!!」
「うっ!!」
攻撃を躱されて隙のできたカサンドラの腹へ、伸は左拳を打ち込んだ。
「無理か……」
腹へのダメージで気を失わせようと考えていた伸だったが、その考えは無理だと考えるようになっていた。
半分魔物化しているカサンドラの体の表面は、鱗に覆われていて打撃はあまり通用しないように思える。
その中でも腹の部分はその鱗がないため、強力な打撃を与えれば気を失うかもしれないと思っていた。
しかし、腹の部分もかなり硬く、打撃の感触からいまいちダメージを与えられていないように感じたからだ。
『相手が魔人だからと言ってあまり気分の良いやり方ではないが、斬るしかないようだな……』
打撃によるダメージで気を失わせることは難しい。
それならば、刀で深手を負わせることで戦意を失わせるしかない。
カサンドラを捕縛するために、伸は戦い方を変えることにした。
「クッ!! なんで……!?」
派手に吹き飛ばされているが、ダメージ自体は大したことはない。
肉体よりも心のダメージの方が強いかもしれない。
自慢のスピードも伸には全く通用しないからだ。
またも死角から斬りかかっているというのに、伸は刀で防いでしまう。
どうしてこんなことになっているのか理解できず、カサンドラは戸惑いの言葉が口から出ていた。
「シッ!!」
「ぐっ!!」
攻撃を防がれたら、すぐに伸からの攻撃が来る。
それを数回の攻防で理解したからか、カサンドラはすぐさまその場から飛び退く。
その反応が正しかったためか、伸の攻撃はカサンドラの腕を僅かに斬るだけに留まった。
「くそっ! くそっ!」
大した怪我でないため、カサンドラはすぐさま体勢を当てなおして伸へと斬りかかる。
自分は両手持ちだが、伸は刀を一本しか持っていない。
それならば、攻撃の回転速度も上げて手数を増やせば対処しきれないはず。
そう考えたカサンドラは、両手のブーメランを振り回した。
「……ハッ!!」
「っっっ!! そん…な……」
高速移動に加えての高速連撃。
伸はそれを無言で防ぎ続け、僅かに大振りになったところを狙って刀を滑りこませることで、カサンドラの腹部を深く斬った。
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