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3学年 前期
第187話
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「ありがとう! 伸! 通ったよ!」
期末試験が終了し、了は嬉しそうに伸に話しかけてきた。
その様子から、どうやら期末テストで赤点を取らなくて済んだようだ。
「そうか……」
嬉しそうな了とは違い、伸は疲労困憊といった様子で返答する。
というのも、ほとんど全教科を赤点取らないように了を指導することに苦労したからだ。
「俺も!」
「俺もだ!」
石と吉も話に乗っかってくる。
伸が苦労したのは、何も了に勉強を教えただけだからではない。
了だけでも大変だったというのに、石と吉の2人も泣きついてきたからだ。
泣きついてくるのなら、もう少し早く来てくれと言いたいところだ。
「3位かよ……」
伸の成績は、1位綾愛、2位奈津希に次ぐ3位だった。
結局、3人の勉強を見てやることになり、自分の勉強をする時間が減ったことが良くなかったのかもしれない。
「もしかして、1位狙ってた?」
いつものように、成績50位以内は掲示板に張り出される。
自分の名前が3位に書かれていることに満足していない伸に気付いたのか、奈津希がふと問いかけてきた。
「うっ、まあな……」
内心を読まれた質問に、伸は若干渋い表情に変わる。
そして、正直に返答した。
「これまでテストの点も抑えてきたからな。今年は1位を取りに行こうと思っていたんだよ」
「なるほど……」
入試の時もそうだが、伸は鷹藤家の関係を考え、これまで成績も目立たないようにしてきた。
しかし、柊家の後ろ盾ができた今では、そこを気にする必要はなくなったため、今年からはできる限り実力を出していくつもりでいた。
その一端が、以前のゴブリンの巣の壊滅だし、今回のテストの成績だ。
どうせいい点を取るのなら中途半端な点ではなく、学年1位の座を密かに狙っていたのだが、それが3位に終わってしまったことが少し悔しいのだ。
「中間でも5位だったし、今回は密かに狙っていたんだけどな……」
前期の中間テストの時も上位を狙っていたが、そこまで本気で1位を狙ってはいなかった。
しかし、その時は5位だったので、どうせなら次は1位を取ろうと目標にしていたのだが、結果がこれだ。
「フッフッフ……」
「…………」
悔しがっている伸を見て、綾愛が不敵な笑みを浮かべて近づいてきた。
その表情を見て、伸は言葉が出ない。
「私に土を付けようと?」
「あぁ……」
伸が1位を狙おうと思った理由。
それは、綾愛が関係している。
これまで、綾愛は入試からずっと学年1位を取り続けている。
その連勝記録を止めてやろうと伸は考えていたのだが、その思いがまたも潰れることになってしまった。
伸のそんな思いを知らなかったが、知ってしまったらなんだか優越の気分になる。
そのため、綾愛は笑みを浮かべているのだ。
戦いでは勝てる気はしないが、勉強なら自分が伸に勝っていると分かって嬉しいからかもしれない。
「まだまだね!」
「うっ……」
調子に乗った綾愛は、どや顔で伸に上から目線の言葉をかける。
そういう資格を有しているだけに、伸は反論することができない。
“チョン! チョン!”
「んっ?」
綾愛の態度に悔しそうにしていた伸に、奈津希が軽く服を引っ張ってきた。
何か言いたげな様子のため、伸は奈津希に問いかける。
「まだまだね!」
「ぐぅ……」
先程の綾愛と同じことを奈津希にも言われる。
綾愛がずっと1位なように、奈津希もずっと2位を取り続けている。
つまり、伸は奈津希をも1度も超えられていないということで、彼女も同じように上から目線でいう資格があるということだ。
良くぐうの音も出ないというが、伸の口からは思わず出てしまった。
「でも、1位だったとしても、対抗戦の代表に選ばれる可能性は低いよ」
「あぁ、それは期待していない」
学歴と魔術は関係ないとも言い切れない。
成績1位となれば、魔術もかなり使えるというのが普通だ。
各校が魔闘師としての実力がある生徒を出場させる対抗戦。
その八郷校の3年代表を選出する校内戦において、重要なのはこれまでの成績だ。
その校内戦において教師に選出されるのは、学歴よりも戦闘能力だ。
今回、伸がテストで1位を取っていたとしても、校内戦に選出される可能性は低い。
そのことに気付いた綾愛は、躊躇いがちに指摘する。
しかし、そのことは最初からしていたため、伸は何ともないように返答した。
「えっ? でも……」
伸の返答があまりにもあっさりしすぎて、綾愛としては面食らったような思いだ。
戦闘能力において、この学校どころかこの国の魔闘師としてもトップに立つ伸が、世間に一気に名を売るには対抗戦に出ることだ。
綾愛としても、最後の年には出てもらいたいという思いがある。
しかし、伸はそんなこと気にも留めていない様子だ。
「俺が出たら優勝が決定しちゃうからな」
「……ウン」
「ソウダネ……」
あまりにも当たり前のこととして発言する伸。
それが、自分の実力に溺れて天狗になっているが故の発言ではないことを知っているだけに、今度は綾愛と奈津希は反論することができなかった。
期末試験が終了し、了は嬉しそうに伸に話しかけてきた。
その様子から、どうやら期末テストで赤点を取らなくて済んだようだ。
「そうか……」
嬉しそうな了とは違い、伸は疲労困憊といった様子で返答する。
というのも、ほとんど全教科を赤点取らないように了を指導することに苦労したからだ。
「俺も!」
「俺もだ!」
石と吉も話に乗っかってくる。
伸が苦労したのは、何も了に勉強を教えただけだからではない。
了だけでも大変だったというのに、石と吉の2人も泣きついてきたからだ。
泣きついてくるのなら、もう少し早く来てくれと言いたいところだ。
「3位かよ……」
伸の成績は、1位綾愛、2位奈津希に次ぐ3位だった。
結局、3人の勉強を見てやることになり、自分の勉強をする時間が減ったことが良くなかったのかもしれない。
「もしかして、1位狙ってた?」
いつものように、成績50位以内は掲示板に張り出される。
自分の名前が3位に書かれていることに満足していない伸に気付いたのか、奈津希がふと問いかけてきた。
「うっ、まあな……」
内心を読まれた質問に、伸は若干渋い表情に変わる。
そして、正直に返答した。
「これまでテストの点も抑えてきたからな。今年は1位を取りに行こうと思っていたんだよ」
「なるほど……」
入試の時もそうだが、伸は鷹藤家の関係を考え、これまで成績も目立たないようにしてきた。
しかし、柊家の後ろ盾ができた今では、そこを気にする必要はなくなったため、今年からはできる限り実力を出していくつもりでいた。
その一端が、以前のゴブリンの巣の壊滅だし、今回のテストの成績だ。
どうせいい点を取るのなら中途半端な点ではなく、学年1位の座を密かに狙っていたのだが、それが3位に終わってしまったことが少し悔しいのだ。
「中間でも5位だったし、今回は密かに狙っていたんだけどな……」
前期の中間テストの時も上位を狙っていたが、そこまで本気で1位を狙ってはいなかった。
しかし、その時は5位だったので、どうせなら次は1位を取ろうと目標にしていたのだが、結果がこれだ。
「フッフッフ……」
「…………」
悔しがっている伸を見て、綾愛が不敵な笑みを浮かべて近づいてきた。
その表情を見て、伸は言葉が出ない。
「私に土を付けようと?」
「あぁ……」
伸が1位を狙おうと思った理由。
それは、綾愛が関係している。
これまで、綾愛は入試からずっと学年1位を取り続けている。
その連勝記録を止めてやろうと伸は考えていたのだが、その思いがまたも潰れることになってしまった。
伸のそんな思いを知らなかったが、知ってしまったらなんだか優越の気分になる。
そのため、綾愛は笑みを浮かべているのだ。
戦いでは勝てる気はしないが、勉強なら自分が伸に勝っていると分かって嬉しいからかもしれない。
「まだまだね!」
「うっ……」
調子に乗った綾愛は、どや顔で伸に上から目線の言葉をかける。
そういう資格を有しているだけに、伸は反論することができない。
“チョン! チョン!”
「んっ?」
綾愛の態度に悔しそうにしていた伸に、奈津希が軽く服を引っ張ってきた。
何か言いたげな様子のため、伸は奈津希に問いかける。
「まだまだね!」
「ぐぅ……」
先程の綾愛と同じことを奈津希にも言われる。
綾愛がずっと1位なように、奈津希もずっと2位を取り続けている。
つまり、伸は奈津希をも1度も超えられていないということで、彼女も同じように上から目線でいう資格があるということだ。
良くぐうの音も出ないというが、伸の口からは思わず出てしまった。
「でも、1位だったとしても、対抗戦の代表に選ばれる可能性は低いよ」
「あぁ、それは期待していない」
学歴と魔術は関係ないとも言い切れない。
成績1位となれば、魔術もかなり使えるというのが普通だ。
各校が魔闘師としての実力がある生徒を出場させる対抗戦。
その八郷校の3年代表を選出する校内戦において、重要なのはこれまでの成績だ。
その校内戦において教師に選出されるのは、学歴よりも戦闘能力だ。
今回、伸がテストで1位を取っていたとしても、校内戦に選出される可能性は低い。
そのことに気付いた綾愛は、躊躇いがちに指摘する。
しかし、そのことは最初からしていたため、伸は何ともないように返答した。
「えっ? でも……」
伸の返答があまりにもあっさりしすぎて、綾愛としては面食らったような思いだ。
戦闘能力において、この学校どころかこの国の魔闘師としてもトップに立つ伸が、世間に一気に名を売るには対抗戦に出ることだ。
綾愛としても、最後の年には出てもらいたいという思いがある。
しかし、伸はそんなこと気にも留めていない様子だ。
「俺が出たら優勝が決定しちゃうからな」
「……ウン」
「ソウダネ……」
あまりにも当たり前のこととして発言する伸。
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