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3学年 前期
第177話
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「多いな……」
「そうだね……」
「うん」
近くにいたゴブリンを始末した伸が小さく呟き、綾愛と奈津希がそれに同意する。
「そうですか?」
「これぐらい普通では?」
3人とは違い、正大と麻里は首を傾げる。
今回のような山奥にいる魔物の調査・討伐の仕事は、実家にいる時に参加したことがある。
その経験上、気になるほどの数ではないように思えるからだ。
「気になるのは種類だ」
「「……種類?」」
2人が言うように、仕事を開始して1時間を考えると、倒した魔物の数は気になるほどではない。
しかし、伸たちが違和感を覚えたのは数ではない。
そのことを告げられた正大と麻里は、またも揃って首を傾げた。
「そう言えば……」
「ここまで……」
伸の言葉から、正大と麻里は考えを巡らせる。
そして、
「「っっっ!?」」
少しの間を置き、正大と麻里はほぼ同時に相手の顔を見合る。
互いの呟きから、2人は伸の言いたいことの意味を理解したようだ。
「まさか?」
「ゴブリンのコロニーが?」
「あぁ、その可能性がある」
答えを導き出した正大と麻里の問いに、伸は頷きつつ返答する。
駐車場から移動を開始し、隣の山にいる魔物の調査・討伐をおこなってきたが、ここまでで一番出現しているはゴブリンだ。
よく考えてみれば、その頻度が少々高い。
ここまでとなると、コロニーが形成されている可能性が考えられる。
「ゴブリンに関しては気にしすぎくらいでないとな」
ゴブリンは魔物の中でも特に繁殖力が高いため、見過ごすわけにはいかない。
というのも、ゴブリンはコロニーをつくり大軍勢を形成すると、近くの町や村に襲い掛かるからだ。
ゴブリンに襲われた町の末路は、悲惨としか言いようがない。
老若男女に関わらず、皆殺しにされ食い散らかされる。
若い女性に関しては一番最悪で、生け捕りにされて苗床にされる可能性すらある。
そんなことにならないためにも、他の魔物以上にゴブリンの出現率は気にしなければならないことだ。
「探知してみます!」
「私も!」
これまでも、実家の仕事の手伝いでゴブリン退治は何度かしたことがあるが、コロニーを形成する程ではなかった。
そのためか、少し危険視する意識が低かったかもしれない。
知識を持っていても、それを利用できないのならば意味がないものになってしまう。
そのことを認識し、気を引き締め直した正大と麻里は、周辺にコロニーがないかを魔術を使用して探知してみることにした。
「……近くにはないですね」
「……私も同じく」
探知魔術をおこなった2人は、その結果を口にする。
彼らの探知に、ゴブリンの集団は引っかからなかったようだ。
『2人とも300m前後って所か……』
2人の探知魔術を見ていた伸は、頭の中で感想を述べる。
周囲に広げた魔力に、触れたものを探知する魔術が探知魔術だ。
魔闘士なら当然使えなければならない魔術だが、その範囲が広ければ広い程、その魔術師の実力を示しているといっても良い。
新人の魔闘師の平均が約150m。
それに比べると、正大と麻里の探知範囲は倍近い。
やはり、柊家の綾愛同様、さすが森川家の正大・上長家の麻里といったところだろうか。
「柊は?」
「……あっちの方向に数匹いる」
正大と麻里の答えを聞いた後、伸は綾愛に問いかける。
伸に聞かれる前から探知魔術を発動していた綾愛は、ゴブリンの数が多く存在している方角を指差して返答した。
「ピモ」
「キュッ!」
伸に名前を呼ばれ、ポケットの中にいた従魔のピモが顔を出す。
そして、伸が綾愛と同じ方角を指差すと、ピモは何が言いたいのか理解したらしく、伸の体から降りて、近くの樹から樹へ飛び移りながら伸の指差した方角へ向かって行った。
「あの……何を?」
「あぁ、ピモに先行させた」
ピモを行かせた意味がよく分からず、麻里は伸に問いかける。
それに対し、伸は短い言葉で返答した。
「ピモはピグミーモンキーという種類の魔物だ。従魔であってペットじゃない。あの小さい体で樹々に身を隠せば、ゴブリンに見つかることはない」
伸の手の平に乗るようなサイズの小猿。
そんな弱小で有名のピグミーモンキーを先に行かせたところで、何ができるというのだろうか。
恐らく、麻里はそう思っているのだろう。
そのため、伸はその理由を説明し始めた。
「コロニーがあるとすれば、俺たちが着くことにはピモが見つけてくれているはずだ」
魔力による身体操作を試すために従魔にし、それによって思わぬ結果がピモに付随した。
この世界の全ての生物には、多い少ないに関わらず魔力が備わっているが、それを使いこなしているのは、人間の他には魔人や魔物の一部だ。
それなのに、弱小魔物でしかないピモが、伸の身体操作を受けたことで魔力を使えるようになったのだ。
それならばと、伸はピモに隠密技術を教え込むことにした。
魔力が使えるようになったからと言っても、戦闘面ではたいしたことが無いが、小さい体を利用すれば、大半の魔物に気づかれず、人では入れないようなところに侵入したりもできると考えたからだ。
その能力が生かされる時だ。
これまでの魔物退治でも問題なくできていたので、今回も心配ないだろう。
「なるほど……」
伸の説明を受けた麻里は、ピモが普通のピグミーモンキーではないことを思い出した。
というのも、去年鷹藤家の次男の道康と試合をした時、伸はピモを使って勝利した。
伸が道康の意識を自分に向けているうちに、ピモが密かに接近して勝利したという話だ。
いくら伸が巧に誘導していたとは言っても、場合によっては道康の攻撃に巻き込まれてしまう可能性すらあったというのに、ピモは作戦を成功させた。
道康だって鷹藤家の人間だ。
伸が試合で従魔を使用する可能性を考えていなかったとはいえ、道康に気付かれずに接近することができたということは、それだけ気配を消すことが上手いということだ。
伸がピモを先行させたことに、麻里は納得できた。
「じゃあ、俺たちも向かおう」
「うん」「了解」
「「はい」」
もしもゴブリンのコロニーがあったとしたら、被害が出る前に壊滅しておかなければならない。
そのため、伸はピモの後を追うように向かうことにした。
伸のその言葉に従うように綾愛と奈津希が頷き、正大と麻里も返事をした。
「そうだね……」
「うん」
近くにいたゴブリンを始末した伸が小さく呟き、綾愛と奈津希がそれに同意する。
「そうですか?」
「これぐらい普通では?」
3人とは違い、正大と麻里は首を傾げる。
今回のような山奥にいる魔物の調査・討伐の仕事は、実家にいる時に参加したことがある。
その経験上、気になるほどの数ではないように思えるからだ。
「気になるのは種類だ」
「「……種類?」」
2人が言うように、仕事を開始して1時間を考えると、倒した魔物の数は気になるほどではない。
しかし、伸たちが違和感を覚えたのは数ではない。
そのことを告げられた正大と麻里は、またも揃って首を傾げた。
「そう言えば……」
「ここまで……」
伸の言葉から、正大と麻里は考えを巡らせる。
そして、
「「っっっ!?」」
少しの間を置き、正大と麻里はほぼ同時に相手の顔を見合る。
互いの呟きから、2人は伸の言いたいことの意味を理解したようだ。
「まさか?」
「ゴブリンのコロニーが?」
「あぁ、その可能性がある」
答えを導き出した正大と麻里の問いに、伸は頷きつつ返答する。
駐車場から移動を開始し、隣の山にいる魔物の調査・討伐をおこなってきたが、ここまでで一番出現しているはゴブリンだ。
よく考えてみれば、その頻度が少々高い。
ここまでとなると、コロニーが形成されている可能性が考えられる。
「ゴブリンに関しては気にしすぎくらいでないとな」
ゴブリンは魔物の中でも特に繁殖力が高いため、見過ごすわけにはいかない。
というのも、ゴブリンはコロニーをつくり大軍勢を形成すると、近くの町や村に襲い掛かるからだ。
ゴブリンに襲われた町の末路は、悲惨としか言いようがない。
老若男女に関わらず、皆殺しにされ食い散らかされる。
若い女性に関しては一番最悪で、生け捕りにされて苗床にされる可能性すらある。
そんなことにならないためにも、他の魔物以上にゴブリンの出現率は気にしなければならないことだ。
「探知してみます!」
「私も!」
これまでも、実家の仕事の手伝いでゴブリン退治は何度かしたことがあるが、コロニーを形成する程ではなかった。
そのためか、少し危険視する意識が低かったかもしれない。
知識を持っていても、それを利用できないのならば意味がないものになってしまう。
そのことを認識し、気を引き締め直した正大と麻里は、周辺にコロニーがないかを魔術を使用して探知してみることにした。
「……近くにはないですね」
「……私も同じく」
探知魔術をおこなった2人は、その結果を口にする。
彼らの探知に、ゴブリンの集団は引っかからなかったようだ。
『2人とも300m前後って所か……』
2人の探知魔術を見ていた伸は、頭の中で感想を述べる。
周囲に広げた魔力に、触れたものを探知する魔術が探知魔術だ。
魔闘士なら当然使えなければならない魔術だが、その範囲が広ければ広い程、その魔術師の実力を示しているといっても良い。
新人の魔闘師の平均が約150m。
それに比べると、正大と麻里の探知範囲は倍近い。
やはり、柊家の綾愛同様、さすが森川家の正大・上長家の麻里といったところだろうか。
「柊は?」
「……あっちの方向に数匹いる」
正大と麻里の答えを聞いた後、伸は綾愛に問いかける。
伸に聞かれる前から探知魔術を発動していた綾愛は、ゴブリンの数が多く存在している方角を指差して返答した。
「ピモ」
「キュッ!」
伸に名前を呼ばれ、ポケットの中にいた従魔のピモが顔を出す。
そして、伸が綾愛と同じ方角を指差すと、ピモは何が言いたいのか理解したらしく、伸の体から降りて、近くの樹から樹へ飛び移りながら伸の指差した方角へ向かって行った。
「あの……何を?」
「あぁ、ピモに先行させた」
ピモを行かせた意味がよく分からず、麻里は伸に問いかける。
それに対し、伸は短い言葉で返答した。
「ピモはピグミーモンキーという種類の魔物だ。従魔であってペットじゃない。あの小さい体で樹々に身を隠せば、ゴブリンに見つかることはない」
伸の手の平に乗るようなサイズの小猿。
そんな弱小で有名のピグミーモンキーを先に行かせたところで、何ができるというのだろうか。
恐らく、麻里はそう思っているのだろう。
そのため、伸はその理由を説明し始めた。
「コロニーがあるとすれば、俺たちが着くことにはピモが見つけてくれているはずだ」
魔力による身体操作を試すために従魔にし、それによって思わぬ結果がピモに付随した。
この世界の全ての生物には、多い少ないに関わらず魔力が備わっているが、それを使いこなしているのは、人間の他には魔人や魔物の一部だ。
それなのに、弱小魔物でしかないピモが、伸の身体操作を受けたことで魔力を使えるようになったのだ。
それならばと、伸はピモに隠密技術を教え込むことにした。
魔力が使えるようになったからと言っても、戦闘面ではたいしたことが無いが、小さい体を利用すれば、大半の魔物に気づかれず、人では入れないようなところに侵入したりもできると考えたからだ。
その能力が生かされる時だ。
これまでの魔物退治でも問題なくできていたので、今回も心配ないだろう。
「なるほど……」
伸の説明を受けた麻里は、ピモが普通のピグミーモンキーではないことを思い出した。
というのも、去年鷹藤家の次男の道康と試合をした時、伸はピモを使って勝利した。
伸が道康の意識を自分に向けているうちに、ピモが密かに接近して勝利したという話だ。
いくら伸が巧に誘導していたとは言っても、場合によっては道康の攻撃に巻き込まれてしまう可能性すらあったというのに、ピモは作戦を成功させた。
道康だって鷹藤家の人間だ。
伸が試合で従魔を使用する可能性を考えていなかったとはいえ、道康に気付かれずに接近することができたということは、それだけ気配を消すことが上手いということだ。
伸がピモを先行させたことに、麻里は納得できた。
「じゃあ、俺たちも向かおう」
「うん」「了解」
「「はい」」
もしもゴブリンのコロニーがあったとしたら、被害が出る前に壊滅しておかなければならない。
そのため、伸はピモの後を追うように向かうことにした。
伸のその言葉に従うように綾愛と奈津希が頷き、正大と麻里も返事をした。
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