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第14章

第367話

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「玄武鎚!」

“ドスンッ!”

 一言呟くと共に、巨大な鎚が出現する。

「っ!!」

 出現した鎚は、1.5mほどの長さをしており、金属部分と棘が生えたような形の鎚をしている。
 その武器を玄武は軽々と持っているが、地面に触れた時の音がただ事ではないことから、相当な重量をしていることが窺える。
 もしも直撃をくらえば一撃で戦闘不能もあり得えると悟り、ケイはピクリと眉を動かした。

「ハッ!!」

「っ!!」

“ドガンッ!!”

 鎚を構えた玄武は、すぐさまケイへと襲い掛かる。
 とても重量のある武器のように見えないような速度で、振り下ろされた鎚がケイに迫りくる。
 それを、ケイはバックステップをする事で躱した。
 躱された鎚はそのまま地面を打ち付け、大きな音を立てて小さなクレーターを作り出した。

「すごい威力だ」

 一撃の重さを見て、ケイは感嘆の言葉を呟く。

『だが、重量ある武器を使っているにしては速いが、俺には躱せる範囲だ』

 威力があっても当たらなければ意味がない。
 そういった意味では、あの鎚はケイにとって脅威になり得ない。
 速いと言っても、充分躱せる範囲の速度だからだ。

「ハーッ!!」

「シッ!!」

 後退したケイを追いかけるように、玄武は追撃を加える。
 再度振り下ろされた鎚を横に跳んで躱し、ケイは銃の引き金を引いて反撃に出る。

“カンッ!!”

 ケイの放った弾丸が、玄武に迫る。
 しかし、その弾丸が玄武に傷をつけることはなかった。
 装着している鎧によって、弾かれてしまったからだ。

「堅いな……」

 人化する前の時と同じように、防御力が高いようだ。
 玄武が装着している鎧は、ケイの弾丸を弾いても傷1つ付いていない状態だ。

「でも……」

「くっ!!」

 鎧に覆われているため、ダメージを与えられそうなところは少ない。
 装着していない顔・首・手・足の部分ぐらいだろうか。
 玄武を中心として円を描くように動きながら、ケイはそれらの部分を狙って、2丁拳銃による攻撃を開始する。
 連射して攻撃してくるケイの攻撃に、玄武は武器と鎧を使って必死に防御した。

「いつまで耐えられるかな?」

 ケイの攻撃は、少しでも反応が遅れれば確実に怪我を負う。
 ケイに攻撃をさせないために、自ら攻撃に出ようにも武器による攻撃は通用しない。
 そのため、玄武は防御に徹し隙を窺うことを選択したようだ。
 そんな玄武に対し、ケイは持久戦を覚悟した。

「くっ!! このままでは……」

「ムッ!?」

 ケイの攻撃が開始されて少し経つと、玄武の反応が遅れ始める。
 防御のための集中力が途切れ始めたのかもしれない。
 それにより、ケイの攻撃が掠るようになり、玄武の鎧を付けていない部分に傷がつき始めた。
 このままでは、銃弾がクリーンヒットしてしまうかもしれない。
 そう考えた玄武は、思いついた策を行動に移すことにした。
 
「ヌンッ!!」

「……土魔法か?」

 玄武は右足で地面を打ちつける。
 それによって地面が隆起し、石の壁が玄武を覆い隠した。 
 土魔法による防御のようだ。

「しかし、その程度の壁なんて意味がない!」

 休憩をさせるつもりはない。
 ケイは足を止めて、玄武の作り出した石壁に銃口を向けた。

「ハッ!!」

 ケイは、ここまでの速度を求めた攻撃ではなく、威力を高めた攻撃を放つ。
 石壁の中の玄武ごと消し去るのが狙いだ。

“ボンッ!!”

 ケイの2丁拳銃から放たれた強力な魔力弾が石壁に直撃し、大爆発を起こして土煙が舞い上がった。
 先程まで会った石壁は、強力な一撃により跡形もなく吹き飛んだ。

「……消えた?」

 いくら強力な一撃だと言っても、玄武の防御力を考えるならば死んでいない可能性が高い。
 そのため、舞い上がった土煙が治まってくると、ケイは玄武の姿を探した。
 しかし、その姿が跡形もなくなっている。
 そのことにおかしいと思ったケイは、周囲に意識を向けた。

「っ!!」

 ある直感が浮かぶ。
 その直感に従い、ケイはその場から前方に飛び込んだ。
 その行動が正解だった。
 いなくなった玄武は、いつの間にかケイの背後へと回っていたのだ。
 音もなく近付いた玄武は、そのまま鎚による攻撃をケイに放ってきていたのだ。
 飛び込んだことにより、ケイはその攻撃を躱すことになったのだ。

「くそっ! 反応が速いな……」

 奇襲攻撃に成功したと思ったのだが、上手く躱されてしまった。
 そのため、玄武はいら立ちの言葉を呟いた。

「影移動か……?」

「ご名答」

 どうやってあの石壁の中から移動したのか。
 それを考えると、ケイはその方法に思い至った。
 闇魔法のなかにある影移動。
 それを使えば可能だ。
 玄武が作りだした石壁のなかは、暗闇に覆われていたはずだ。
 その闇を利用して、陰から蔭へ移動したのだろう。
 ケイがその推察を尋ねると、玄武は隠し通せると思えず頷いた。

「この……」

「おっと!」

 闇魔法を使ったにしろ、姿を現したのならまたその場に釘付けにするだけだ。
 そう思って、ケイは拳銃をまた玄武へと向ける。
 しかし、そうはさせまいと、玄武はまたも土壁を作り出した。 
 先程と違うのは、ドーム状ではなく、その名の通り直立した石壁を作り出したのだ。

「またか?」

 石壁の影を使い、またも別の場所へと移動するつもりなのかとケイは考える。
 影移動中は、どういう訳か探知から外れる。
 恐らく、移動中は異次元空間を移動しているからなのだろう。
 そのため、突如別の場所に移動されても気付きにくいが、周囲に意識を向けていれば対応できる。
 ケイは探知に頼らず、周囲に意識を向けた。

「ハッ!!」

「っっっ!!」

 石壁を使っての影移動をおこなうとケイは思ったようだが、玄武の狙いはそれではない。
 鎚をフルスイングして、自分が作り出した石壁を破壊することが狙いだ。
 玄武のその行動により、石壁が破壊される。
 そして、破壊された石壁の破片が、ケイに向かって飛んで行った。

「くっ!」

 大量の破片が、マシンガンのように襲い掛かる。
 その攻撃を、ケイは風魔法で吹き飛ばした。

「なっ!?」

「オラオラッ!!」

 石の破片を吹き飛ばし、玄武の姿を確認するケイ。
 しかし、その姿を見て驚く。
 ケイが破片を吹き飛ばしている間に、玄武はまたも土壁を作り出していた。
 そして、鎚を構えた所を見ると、またも石壁破壊による破片攻撃をおこなうつもりらしい。

「っ!?」

「ハッ!!」

 再度石壁を破壊して攻撃をしてくる玄武。
 しかし、その破片がケイに届くことはない。
 何故ならケイの姿が、その場から消えていたからだ。
 それに気付いた玄武は、その場から移動する。
 すると、先程まで玄武退いた場所に、魔力弾が通っていった。

「あぶねえ、あぶねえ……」

「目には目をってな」

 ケイがやったのは、玄武と同様に影移動をして別の場所に移動し、魔法攻撃を放ったとというだけだ。
 冷や汗を掻いた玄武に対し、ケイはしたり顔で呟いたのだった。

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