上 下
334 / 375
第13章

第334話

しおりを挟む
「ハアァーー!!」

「「っ!?」」

 一言呟くと、サンティアゴの魔力が膨れ上がる。
 すると、その姿が変化しだした。
 顏の形が変わり、見えている肌の部分に鱗が生えだした。

「……龍?」

 変化し終えたサンティアゴの姿を見て、ケイの息子のカルロスは小さく呟く。
 最終的な姿は竜というより龍といった感じで、2足歩行の青い龍といった姿だ。
 全身に纏っている魔力は先程の人型の時よりも増えていて、これまで以上に手強い相手になったことは容易に想像できた。

「それがお前の本性って奴か?」

「その通りだ」

 魔族には人の姿と、魔物の姿が存在している。
 当然魔族の王であるサンティアゴも変化した姿を持っていると考えていたが、どうやら龍の姿が本性だったようだ。

“スッ!”

 本性である龍人と化したサンティアゴは、ケイとカルロスに向かって構えを取る。
 纏う魔力の上昇によって、これまでとは違うくらいのプレッシャーがケイたちに襲い掛かる。

「気を付けろよ」

「あぁ……」

 これまでよりも危険になったことは間違いないため、ケイは構えを取ったサンティアゴの方へ顔を向けたままカルロスへ警戒するよう忠告した。 
 カルロスも圧しかかるプレッシャーから危険度を感じているので、頷きと共に短い返事をした。

「ハッ!!」

「っ!?」

 先に動いたのはサンティアゴだった。
 魔闘術の魔力が増えたことにより、人型の時以上の速度でケイへと襲い掛かる。
 変身前の時と同様に、どこからか出した剣でケイへと斬りかかってきたため、ケイはそれを両手に持つ銃で受け止めた。

「速っ!!」

 側で見ていたカルロスは、サンティアゴの速度に驚きの声をあげる。
 見えはしたが、自分に向かって来ていたら対応が遅れていたかもしれない。
 そんな速度の攻撃を、初見で受け止めてしまう父はさすがだ。
 だが、いつまでも感心している場合ではないため、カルロスはケイの援護に向かった。

「シッ!!」

「ッ!!」

 鍔迫り合いのような状態になっているケイとサンティアゴ。
 動けないでいるサンティアゴに対足、カルロスは刀を振る。
 ケイと膠着状態だったサンティアゴは、脳天へ振り下ろされる攻撃をバックステップして躱す。

「ハッ!!」

「フンッ!!」

 後退したサンティアゴに対し、カルロスは左手の銃で魔法を放つ。
 飛んできた数発の魔力弾を、サンティアゴは剣で弾き飛ばして防ぐ。
 その様子を見る限り、相当体勢を崩さない限りこの攻撃を当てることはできそうにないようだ。

「土魔法で急造した割には頑丈な剣だな……」

「そうだね……」

 短いやり取りにより、ケイは思ったことを口にする。
 手ぶらのはずのサンティアゴが、いつの間にか剣を持っている理由。
 それは、戦闘中地面に触れた時、サンティアゴは魔力を流していつでも武器を作り出せるようにしていたのだ。

「それにしても、あの姿になったことでだいぶ動きが速くなったね?」

「あぁ、あの姿になったのは耐久力を上げるためだ」

「耐久力? ……あぁ」

 肉体を変化させたことで、サンティアゴの動きが格段に速くなった。
 そのことを告げると、ケイから答えのようなものが返ってきたが、カルロスはその中の言葉に首を傾げる。
 しかし、すぐにケイが何が言いたいのかを理解した。
 魔闘術は纏う魔力が多い程身体強化をおこなうことができるが、魔力を増やすとなると体に相当な負担がかかってコントロールすることは難しい。
 魔闘術で使える魔力量は、地味に毎日の魔力操作訓練の積み重ねによって増やしていくのが体には負担の少ない方法だ。
 使用できる魔力量を上げる方法は他にもある。
 肉体を強化することで、多少の負荷を受けつつも使用するという方法だ。
 獣人でありながら魔闘術を使えるリカルドがいい例だ。
 高い身体能力により、負担を受けつつも動き回っているというのが彼の魔闘術だ。
 これは身体能力の低いエルフには無理な方法のため、ケイたちにはできない方法だ。
 息子のレイナルドやカルロスにも、地道に鍛えるように教えている。
 そのため、肉体の耐久度といわれてもしっくりこなかったのかもしれない。
 サンティアゴがとったのはリカルドの使う魔闘術と同じで、身体能力の高い本性によって魔闘術の使用魔力を増やしたのだ。

「ハーッ!!」

「チッ!」

「父さん!?」

 ケイたちが話をしているのを無視するように、サンティアゴはまたも襲い掛かってきた。
 もう少し戦うための分析をしたかったケイは、思わず舌打をする。
 そして、後手に回るわけにはいかないため、自らも前へと出た。

「援護頼む!」

「わかった!」

 本性を現して戦闘力を強化したサンティアゴは、カルロスでは手に余るかもしれない。
 なんとかなるかもしれないが、対応できるようになるには少しの時間が必要だろう。
 そのため、まずは自分がサンティアゴの相手をすることで、動きに慣れてもらうことにした。

「フンッ!!」

「クッ!! なかなか重いな……」

 魔闘術の魔力量を増やしたことにより、速度だけではなくパワーも上がっている。
 速度は何とかなるようだが、その攻撃を防いだ時の振動が強い。

「でも……ハッ!!」

「っ!?」

 振り下ろされた剣を右手の銃で防ぎ、空いている左手で反撃をしようと、ケイは銃口をサンティアゴの腹へと向ける。
 再生するとは言っても、攻撃を食らうと痛みを感じる。
 そのため、サンティアゴは反射的に体を捻って攻撃をさせない。

「セイッ!」

「っと!!」

 体を捻る動作を利用し、サンティアゴはケイへ裏拳を放ってくる。
 その裏拳を、ケイはダッキングをする事で回避した。

「この……、っ!?」

 ダッキングしたケイに対し、サンティアゴはそのまま蹴りを放とうと足を振り上げようとした。
 しかし、それをする前に横へと跳び退く。
 先程までサンティアゴが立っていた場所を、魔力弾が通り抜けた。
 ケイの背後から、カルロスが放った魔力弾だ。

「ハッ!!」

「クッ!! ガッ!!」

 横へと跳び退いたことで、自分との距離が少しできた。
 その機会を利用し、ケイは両手の銃をサンティアゴへと向けて発射する。
 離れた位置からなら恐れるに値しない攻撃だが、近い距離からの攻撃に対応しきれない。
 放たれた2発の弾丸のうち、片方は剣で防がれたが、もう片方がサンティアゴの右肩を貫いた。
 狙ったのは頭部だったので、躱したことで当たったと言った方が良いかもしれない。

「ガンガン行くぞ!!」

「おうっ!」

 1発当てようと、どうせすぐに回復してしまう。
 しかし、再生には魔力を要する。
 2人の攻撃で魔力を削り、動きが鈍った所で脳天に攻撃を加える。
 そんな狙いを頭に入れつつ、ケイとカルロスの連携による攻撃がおこなわれていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

【R18】World after 1 minute 1分後の先読み能力で金貨100万枚稼いだ僕は異世界で奴隷ハーレムを築きます

ロータス
ファンタジー
死んだでもなく、女神に誘われたでもなく、気づいたときには異世界へと転移された僕こと小川 秀作。 鑑定もなければ、ステータスも開かない、魔法も使えなければ、女神のサポートもない。 何もない、現代でも異世界でもダメダメな僕が唯一使えるスキル。 World after 1 minute。 1分後の未来をシミュレーションできるスキルだった。 そして目の前にはギャンブルが出来るコロセウムとなぜか握られている1枚の金貨。 運命というにはあまりにあからさまなそこに僕は足を踏み入れる。 そして僕の名は、コロセウムに轟くことになる。 コロセウム史上最大の勝ち金を手に入れた人間として。

私の愛する人は、私ではない人を愛しています

ハナミズキ
恋愛
代々王宮医師を輩出しているオルディアン伯爵家の双子の妹として生まれたヴィオラ。 物心ついた頃から病弱の双子の兄を溺愛する母に冷遇されていた。王族の専属侍医である父は王宮に常駐し、領地の邸には不在がちなため、誰も夫人によるヴィオラへの仕打ちを諫められる者はいなかった。 母に拒絶され続け、冷たい日々の中でヴィオラを支えたのは幼き頃の初恋の相手であり、婚約者であるフォルスター侯爵家嫡男ルカディオとの約束だった。 『俺が騎士になったらすぐにヴィオを迎えに行くから待っていて。ヴィオの事は俺が一生守るから』 だが、その約束は守られる事はなかった。 15歳の時、愛するルカディオと再会したヴィオラは残酷な現実を知り、心が壊れていく。 そんなヴィオラに、1人の青年が近づき、やがて国を巻き込む運命が廻り出す。 『約束する。お前の心も身体も、俺が守るから。だからもう頑張らなくていい』 それは誰の声だったか。 でもヴィオラの壊れた心にその声は届かない。 もうヴィオラは約束なんてしない。 信じたって最後には裏切られるのだ。 だってこれは既に決まっているシナリオだから。 そう。『悪役令嬢』の私は、破滅する為だけに生まれてきた、ただの当て馬なのだから。

強引に婚約破棄された最強聖女は愚かな王国に復讐をする!

悠月 風華
ファンタジー
〖神の意思〗により選ばれた聖女、ルミエール・オプスキュリテは 婚約者であったデルソーレ王国第一王子、クシオンに 『真実の愛に目覚めたから』と言われ、 強引に婚約破棄&国外追放を命じられる。 大切な母の形見を売り払い、6年間散々虐げておいて、 幸せになれるとは思うなよ……? *ゆるゆるの設定なので、どこか辻褄が 合わないところがあると思います。 ✣ノベルアップ+にて投稿しているオリジナル小説です。 ✣表紙は柚唄ソラ様のpixivよりお借りしました。 https://www.pixiv.net/artworks/90902111

私はあなたの母ではありませんよ

れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。 クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。 アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。 ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。 クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。 *恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。 *めずらしく全編通してシリアスです。 *今後ほかのサイトにも投稿する予定です。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

ミュージカル小説 ~踊る公園~

右京之介
現代文学
集英社ライトノベル新人賞1次選考通過作品。 その街に広い空き地があった。 暴力団砂猫組は、地元の皆さんに喜んでもらおうと、そこへ公園を作った。 一方、宗教団体神々教は対抗して、神々公園を作り上げた。 ここに熾烈な公園戦争が勃発した。 ミュージカル小説という美しいタイトルとは名ばかり。 戦いはエスカレートし、お互いが殺し屋を雇い、果てしなき公園戦争へと突入して行く。

清純Domの献身~純潔は狂犬Subに貪られて~

天岸 あおい
BL
※多忙につき休載中。再開は三月以降になりそうです。 Dom/Subユニバースでガラの悪い人狼Sub×清純な童顔の人間Dom。 子供の頃から人に尽くしたがりだった古矢守流。 ある日、公園の藪で行き倒れている青年を保護する。 人狼の青年、アグーガル。 Sub持ちだったアグーガルはDomたちから逃れ、異世界からこっちの世界へ落ちてきた。 アグーガルはすぐに守流からDomの気配を感じるが本人は無自覚。しかし本能に突き動かされて尽くそうとする守流に、アグーガルは契約を持ちかける。 自分を追い詰めたDomへ復讐するかのように、何も知らない守流を淫らに仕込み、Subに乱れるDomを穿って優越感と多幸感を味わうアグーガル。 そんな思いを肌で感じ取りながらも、彼の幸せを心から望み、彼の喜びを自分の悦びに変え、淫らに堕ちていく守流。 本来の支配する側/される側が逆転しつつも、本能と復讐から始まった関係は次第に深い絆を生んでいく――。 ※Dom受け。逆転することはなく固定です。 ※R18パートは話タイトルの前に『●』が付きます。なお付いていない話でも、キスや愛撫などは隙あらば挟まります。SM色は弱く、羞恥プレイ・快楽責めメイン。

処理中です...