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第11章
第268話
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「お久しぶりです。セベリノ殿」
「お久しぶりです。ケイ殿」
リカルドと手荒い再会をした翌日、ケイは今回の目的であるドワーフ王国まで転移した。
そして、王城でドワーフ王国の王太子であるセベリノと挨拶を交わした。
「お父君はお元気ですか?」
王太子のセベリノが対応しているが、この国にはマカリオという王がまだ生存している。
しかし、そのマカリオは、高齢なためにもう最近は安静にしていることが多く、もうほとんどセベリノに王位を譲っているのと同じ状態だ。
王のマカリオには、息子であるセベリノにも教えていない秘密がある。
それは、ケイと同じく、日本の小学生だったという前世を持った転生者だということだ。
その時の記憶を使って、今ではドワーフをこの世界の魔道具開発のトップに立たせている。
ケイも魔道具開発に興味があるが、少し不便なくらいの今が丁度良く感じているので、発明チートをするつもりはない。
前回きた時も体調が優れなかったので、心配なケイはマカリオの調子が気になりセベリノに尋ねた。
「ん~……、元気と言って良いのか……、とりあえず変わりないです」
「そうですか……」
セベリノは何だか奥歯に物が挟まったような言い方で返す。
体調自体は良いのだが、やはり年齢が年齢なだけに横になっていることが多いので何と言って良いか分からないというのが現状らしい。
同じ転生者というのもあり、マカリオには少しでも長く生きてもらいたいものだ。
「早速ですが、何でも魔人族のことで助力を得たいとか?」
「その通りです」
今回のことをゆっくりと話し合うために、ケイは応接室のようなところへと案内された。
因みに、キュウとクウはケイの側でのんびりしている。
飲み物を用意されたタイミングで、ケイは今回の助力要請の話に移った。
状況は薄っすらとだが分かっているが、呼ばれた理由をきちんと聞いておこうと思ったのだ。
「以前からある人族の国が魔人族へちょっかいを出していたのですが、更に怪しい動きを始めていまして……」
「ちょっかいとは?」
魔人族は、人族から追い出されたような形で現在の大陸に移り、魔物のレベルが他の大陸よりも上なところで、なんとか集落をつくり数を増やしてきた。
国と呼べるものは少数で、それもたいした規模ではない。
そんな魔人たちに、人族がどのよううなちょっかいをかけているというのだろうか。
「高レベルの冒険者を雇って、女性や子供の誘拐を繰り返しているようです」
「誘拐……」
ケイには心当たりがあった。
アンヘル島の住人であるシリアコ。
彼は島唯一の魔人で、彼も元は人族の奴隷だった。
今では島の住民の一人として、色々と頑張ってくれている。
実は今回のことで魔人領に行く可能性があるかもしれないことを伝え、彼も連れてくることも考えた。
しかし、彼自身が断ってきた。
「私はもうこの島の住人です。幼少期に連れ去られ、魔人族の記憶は全くありません。それよりも、私はここでケイ様やレイナルド様たちのお役に立てることをしていたいです」
一緒に魔人領に行ってみたくないかと尋ねたら、彼の答えはこれだった。
命を救ってもらったケイに、少しオーバー気味な感謝をしているように思うが、彼自身の気持ちが大事なので連れて来なかった。
彼のように誘拐された者たちが奴隷にされるということが、まだまだ行われているようだ。
「その国が侵略してくると?」
「そう考えております」
思考を戻し、話を続ける。
魔人の国と人族の国では規模が全然違う。
規模にもよるが、魔人たちでは勝てる見込みはないだろう。
「互いに不干渉ということもあり、獣人の国を巻き込むわけにはいかないため、エルフのケイ殿にご協力をお願いした次第です」
ドワーフ王国は獣人の国々と同盟を交わしているが、魔人族の国とも仲がいい。
同盟という程の協力関係にあるという訳ではなく、ドワーフが魔人たちを不憫に思って若干ボランティア気味に助けているというのが正しいだろう。
王であるマカリオの自国のみならず、他の国まで救いの手を伸ばすという器の大きさに、ドワーフの市民は称賛した。
セベリノも今回のことは見過ごすわけにはいかないため、ケイに助力を求めたらしい。
「協力は構わないのですが、私1人では役に立つのか分からないのですが?」
獣人たちの協力は頼めないため、力を貸せるのはケイだけだ。
いくらケイがかなりの実力の持ち主だと言っても、国を相手に1人で勝てるなんて言えない。
そのため、たいして役に立てるか分からない。
「今回ケイ殿にお願いしたいのは、魔人たちの戦闘強化です」
「戦闘強化?」
魔人大陸の魔物は強力なものが多い。
そこで生きているということは、それだけ戦える戦力があると思っていたのだがそうでもないらしい。
ドワーフの作った武器の力に頼っている部分が多く、個人個人の戦闘力は大したことがない状態なのだそうだ。
こんな状態で、訓練を重ねてきた人族の兵を相手にしたらひとたまりもないだろう。
人族が動き出すにしても、大軍で海を渡るには時間と費用と労力がかかる。
その間にこちらもできることをしようとのことで、ケイに白羽の矢が当たったのだ。
「魔人は生まれ育った場所がら、人族よりも魔力が多い種族です。ケイ殿なら強く出来るのではないかと……」
魔素が豊富なため、強力な魔物が出現する魔人大陸。
そこで生まれ育ったからこそ魔人も人族よりも魔力が豊富だ。
数の不利というのがあるが、それだけを聞くと確かに強くできるかもしれない。
「つまり、人族との戦い参加ではなく、戦闘指導をしてほしいということでしょうか?」
「その通りです」
ケイへの頼みは戦いの参加などではなく、魔人たちの戦闘指導だけで良いらしい。
それだけでいいなら、別にケイが断る理由はない。
「とりあえずやってみます」
人族が好き勝手するのは気に入らない。
今回の侵略を阻止できるように、ケイは魔人たちを強化をすることを受け入れたのだった。
「お久しぶりです。ケイ殿」
リカルドと手荒い再会をした翌日、ケイは今回の目的であるドワーフ王国まで転移した。
そして、王城でドワーフ王国の王太子であるセベリノと挨拶を交わした。
「お父君はお元気ですか?」
王太子のセベリノが対応しているが、この国にはマカリオという王がまだ生存している。
しかし、そのマカリオは、高齢なためにもう最近は安静にしていることが多く、もうほとんどセベリノに王位を譲っているのと同じ状態だ。
王のマカリオには、息子であるセベリノにも教えていない秘密がある。
それは、ケイと同じく、日本の小学生だったという前世を持った転生者だということだ。
その時の記憶を使って、今ではドワーフをこの世界の魔道具開発のトップに立たせている。
ケイも魔道具開発に興味があるが、少し不便なくらいの今が丁度良く感じているので、発明チートをするつもりはない。
前回きた時も体調が優れなかったので、心配なケイはマカリオの調子が気になりセベリノに尋ねた。
「ん~……、元気と言って良いのか……、とりあえず変わりないです」
「そうですか……」
セベリノは何だか奥歯に物が挟まったような言い方で返す。
体調自体は良いのだが、やはり年齢が年齢なだけに横になっていることが多いので何と言って良いか分からないというのが現状らしい。
同じ転生者というのもあり、マカリオには少しでも長く生きてもらいたいものだ。
「早速ですが、何でも魔人族のことで助力を得たいとか?」
「その通りです」
今回のことをゆっくりと話し合うために、ケイは応接室のようなところへと案内された。
因みに、キュウとクウはケイの側でのんびりしている。
飲み物を用意されたタイミングで、ケイは今回の助力要請の話に移った。
状況は薄っすらとだが分かっているが、呼ばれた理由をきちんと聞いておこうと思ったのだ。
「以前からある人族の国が魔人族へちょっかいを出していたのですが、更に怪しい動きを始めていまして……」
「ちょっかいとは?」
魔人族は、人族から追い出されたような形で現在の大陸に移り、魔物のレベルが他の大陸よりも上なところで、なんとか集落をつくり数を増やしてきた。
国と呼べるものは少数で、それもたいした規模ではない。
そんな魔人たちに、人族がどのよううなちょっかいをかけているというのだろうか。
「高レベルの冒険者を雇って、女性や子供の誘拐を繰り返しているようです」
「誘拐……」
ケイには心当たりがあった。
アンヘル島の住人であるシリアコ。
彼は島唯一の魔人で、彼も元は人族の奴隷だった。
今では島の住民の一人として、色々と頑張ってくれている。
実は今回のことで魔人領に行く可能性があるかもしれないことを伝え、彼も連れてくることも考えた。
しかし、彼自身が断ってきた。
「私はもうこの島の住人です。幼少期に連れ去られ、魔人族の記憶は全くありません。それよりも、私はここでケイ様やレイナルド様たちのお役に立てることをしていたいです」
一緒に魔人領に行ってみたくないかと尋ねたら、彼の答えはこれだった。
命を救ってもらったケイに、少しオーバー気味な感謝をしているように思うが、彼自身の気持ちが大事なので連れて来なかった。
彼のように誘拐された者たちが奴隷にされるということが、まだまだ行われているようだ。
「その国が侵略してくると?」
「そう考えております」
思考を戻し、話を続ける。
魔人の国と人族の国では規模が全然違う。
規模にもよるが、魔人たちでは勝てる見込みはないだろう。
「互いに不干渉ということもあり、獣人の国を巻き込むわけにはいかないため、エルフのケイ殿にご協力をお願いした次第です」
ドワーフ王国は獣人の国々と同盟を交わしているが、魔人族の国とも仲がいい。
同盟という程の協力関係にあるという訳ではなく、ドワーフが魔人たちを不憫に思って若干ボランティア気味に助けているというのが正しいだろう。
王であるマカリオの自国のみならず、他の国まで救いの手を伸ばすという器の大きさに、ドワーフの市民は称賛した。
セベリノも今回のことは見過ごすわけにはいかないため、ケイに助力を求めたらしい。
「協力は構わないのですが、私1人では役に立つのか分からないのですが?」
獣人たちの協力は頼めないため、力を貸せるのはケイだけだ。
いくらケイがかなりの実力の持ち主だと言っても、国を相手に1人で勝てるなんて言えない。
そのため、たいして役に立てるか分からない。
「今回ケイ殿にお願いしたいのは、魔人たちの戦闘強化です」
「戦闘強化?」
魔人大陸の魔物は強力なものが多い。
そこで生きているということは、それだけ戦える戦力があると思っていたのだがそうでもないらしい。
ドワーフの作った武器の力に頼っている部分が多く、個人個人の戦闘力は大したことがない状態なのだそうだ。
こんな状態で、訓練を重ねてきた人族の兵を相手にしたらひとたまりもないだろう。
人族が動き出すにしても、大軍で海を渡るには時間と費用と労力がかかる。
その間にこちらもできることをしようとのことで、ケイに白羽の矢が当たったのだ。
「魔人は生まれ育った場所がら、人族よりも魔力が多い種族です。ケイ殿なら強く出来るのではないかと……」
魔素が豊富なため、強力な魔物が出現する魔人大陸。
そこで生まれ育ったからこそ魔人も人族よりも魔力が豊富だ。
数の不利というのがあるが、それだけを聞くと確かに強くできるかもしれない。
「つまり、人族との戦い参加ではなく、戦闘指導をしてほしいということでしょうか?」
「その通りです」
ケイへの頼みは戦いの参加などではなく、魔人たちの戦闘指導だけで良いらしい。
それだけでいいなら、別にケイが断る理由はない。
「とりあえずやってみます」
人族が好き勝手するのは気に入らない。
今回の侵略を阻止できるように、ケイは魔人たちを強化をすることを受け入れたのだった。
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