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第10章

第260話

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「……………………」「……………………」

“バッ!!”“バッ!!”

 2丁拳銃スタイルのケイと、居合の構えをする綱泉佐志峰の姿をした魔族。
 お互い無言のまま、少しの間睨み合う。
 そして、何が合図になったのか分からないが、お互いが同時に動きを見せる。
 地を蹴り、お互い相手との距離を詰める。

「フッ!」

 武器の特性上、佐志峰の剣の方がいち早く間合いに入る。
 小さく息を吐くことに合わせて佐志峰は剣を抜く。
 その剣は、ケイの首目掛けて高速で迫る。

“ガキンッ!!”

「チッ!!」

 自分の剣がケイの首を斬り飛ばすと思った佐志峰だが、そうはいかずに手前で止まった。
 迫り来る剣を、ケイが左手に持っている銃で防御したからだ。
 攻撃を防がれ、佐志峰は舌打ちをする。

「っ!!」

“パンッ!!”

 剣を止められた佐志峰は、そのままその場にいることはできない。
 ケイは両手に武器を持っている。
 片手で止たのなら、もう片方は空いている。
 右手の拳銃が佐志峰の眉間へと向けられる。
 それに気付いた佐志峰は、すぐさま首を横に弾丸を回避する。
 そして、ケイからの攻撃が更に飛んで来るのを避けるため、一気に後方へと飛び下がる。

「おかしな武器を使うな……」

 後方へ下がったさ佐志峰は、剣を鞘へと収納して、またも居合の体勢へと入る。
 そして、衝突して感じたことを小さく呟く。
 弾を飛ばすだけとは言っても、その威力はかなり強力だ。
 武器の形状から、至近距離なら自分に利があると思っていた。
 しかし、至近距離でもキッチリ反撃してくるところをみると、それもたいした利にならないようだ。

「特注品でね。それよりもいいのか?」

 ケイの武器が面倒そうな代物だと思われたのなら、それは別に構わない。
 それよりも、距離を取ってもらった方が戦いやすい。

「何がだ?」

 佐志峰はケイの言葉に首を傾げる。
 何が言いたいか分からなかったためだ。

「この武器相手に距離を開けることがだ!!」

“パンッ!! パンッ!!”

「っ!?」

 距離があった方が、ケイにとっては戦いやすい。
 機動力を削ぐためなのか、佐志峰の足へ向かって飛んで来る
 両手の拳銃を刺身尾根へ向けて、連射攻撃を開始した。
 慌てて佐志峰はその攻撃を避けるが、ケイとの距離はドンドンと離れて行く。

「くっ! チッ! 言い直そう。厄介な武器だ……」

 居合の攻撃ができる距離になかなか近付けず、佐志峰はイラ立つようにケイの攻撃を躱していく。
 このままでは避けることを続けるしかできず、体力を消耗することしかできない。

「だろ?」

 自分の間合いに敵を釘付けさせることは、ケイにとっては普通のこと。
 その場にとどまるような攻撃をして躱させる。
 動き回るようなら、攻撃せずに銃口を向けるだけで敵は近付いてこれない。
 ケイからしたら、とても戦いやすい相手だ。





“キンッ!!”

「っ!?」

 ケイの攻撃に悪戦苦闘していた佐志峰だったが、その状況も次第に変化が起きていた。
 佐志峰が、次第にケイとの距離を縮めて来たのだ。
 そして、とうとう佐志峰の剣が届きそうな距離まで近付いてきた。
 近付きさえできれば、剣による攻撃ができる。
 銃での攻撃が通用しないとでも言うように、佐志峰は居合による攻撃を繰り出す。
 ケイはそれを難なく後方へと飛ぶことで躱す。

「いつまでも通じると思うなよ! 速いとはいえ直線的な攻撃だ。ならば避けるなり弾けば済む話だ!」

 下がったことで、またもケイとの距離がケイとの離れてしまう。
 しかし、佐志峰は大したことではないように呟く。
 それもそのはず、ケイの武器から放たれる攻撃はたしかに速く、なかなか近付けなかった。
 しかし、その特性に気付けば、対処法を導き出すのは簡単なことだ。
 銃口の直線状にいないようにするのと、たとえ攻撃されようとも、弾き、躱すことで距離を縮めていけば良いだけのこと。
 それができるようになった今では、もうケイの武器への苦手は克服できた。

「少しは楽しませてもらった。が、もう死んでもらおう」

 後は攻撃を当てるだけで勝利を得られる。
 他にも周囲を囲む兵たちの相手をしなければならないため、佐志峰はケイを殺すことにした。
 そして、またも居合の体勢に入り、ケイが動くのを待った。

「……随分剣技を磨いているんだな?」

「……何だ? 何かの時間稼ぎか?」

 ケイが攻撃をしてくれば、今度は間合いに入って斬り殺すだけ。
 そんな佐志峰に、ケイは突如関係ないような話を投げかける。
 あまりにも突拍子もない話に、佐志峰も何かあるのかと勘繰る。

「違う。単純な疑問だ」

 言葉の通り、ケイはただ単純に佐志峰の剣技の高さが気になっていた。
 隠れて訓練していたにしては、ケイが見た日向の剣士たちと比べてもトップレベルの鋭さだ。
 佐志峰に成り代わるまでに、相当な訓練をしてきたのだということが窺え知れる。

「長いこと生きてきたのでな……」

 今の姿は人間でも、元々は魔物。
 いつ生まれたのなんて、覚えていないほど大昔だ。

「そこまでなるには、長生きしてるって理由だけでなく、日向の人間に師事したのだろう?」

「左様。まぁ、その時はこの顔ではなかったがな……」

 佐志峰の剣を見ていると、とてもしっかりとした型ができている。
 とても我流で訓練したようには思えない。
 そうなると、もしかしたら誰かに教わったのだろうと思ったが、返事を聞く限り思った通りだった。

「だからか……」

「何がだ?」

 この質問の答えを聞いて、ケイが佐志峰へ持っていた疑問はほぼ解消された。
 佐志峰は、ケイが思っていた最悪の存在ではなかった。
 そのためか、安心したケイは笑みを浮かべたのだった。

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