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第10章
第218話
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「お~い! 終わったぞ!」
【わ~い!】「ワウッ!」
猪の群れを壊滅させたケイは、善貞を守っているキュウたちの下へと戻ってきた。
手には、大繁殖の元凶だと思われるうり坊の死骸を持っている。
戻ってきたことに喜び、キュウとクウはケイの周りを走り回る。
「んっ? どうした?」
キュウたちがはしゃいでいる中、善貞はボーッとした様子でケイを見つめながら立ち尽くしていた。
その様子に気付いたケイは、善貞へ向かって問いかけた。
「す、すげ~!」
善貞から返って来たのは感嘆の声だった。
「お前、めちゃめちゃ強ぇんだな!?」
善貞は、まるで感動したようにケイを見つめる。
ケイの戦いに何か感じることがあったらしく、かなりテンションが上がっている。
「見てて何か掴めたか?」
魔闘術を覚えたいと言っていた善貞へ、別に何か教えるために戦ったわけではないが、少しでも何か感じる所でもあればそれでいい。
そう思い、ケイは善貞へ問いかける。
「…………何かよく分かんないけど、魔力を操るのが上手くないといけなさそうだな?」
「まぁ、それが分かれば十分だ」
魔闘術は、善貞が言うように魔力の操作が最も重要な技術だ。
それを行なうためには、体内の魔力を自由自在に動かせるようにならなければならない。
好きに動かせるようになれば、魔闘術も使えるようになるだろう。
「こいつが原因だったのか?」
「あぁ」
ケイが手に持つうり坊を見て、善貞は意外そうに問いかけてくる。
それに対して、ケイは頷きを返す。
「こんな姿だが、知能と魔力の使い方が他より優れていたようだ。それに繁殖力も高かったんじゃないか? 魔物も動物も、繁殖力の高い雄に自然と惹きつけられるものだし」
魔物も動物同様、次世代へと繋いでいくということが本能的に備わっている。
そうなると、魔物の種類によって見た目や強さなどを求める場合もあるが、一番は繁殖力を優先する傾向が強い。
このうり坊は恐らく突然変異のような個体で、知能と繁殖力で群れを作っていたのだろう。
「……念話が使えただけで女を侍らせられるなんて、なんだか羨ましいな……」
「……確かにな」
顔立ちはなかなか整っているため、善貞もモテないようには見えない。
しかし、ケイの話を聞いた善貞は、もっともなことを言う。
ちょっと頭が良いだけの奴に女性が群がるなんて、男の立場からしたらこんな羨ましいことはない。
「善貞、まだ魔法の指輪に入るんだったら選別して解体するぞ?」
「おぉ、頼む。どっかの肉屋に持って行けば金になる」
大半の猪が焼けて消し炭のようになっているが、銃殺したのは解体すればかなりの量の肉が取れる。
大容量の魔法の指輪を持つ善貞へ、ケイは持って行くのか尋ねる。
すると、装備品も買えないほどに資金不足な善貞は、あっさりと猪の解体を頼んで来た。
「……………………」
「んっ? どうした?」
短いやり取りをして黙ったケイを、善貞は疑問に思った。
何か困った事があったのだろうか。
「お前、それだけの容量の魔法の指輪なんて、まともな身分じゃ手に入らないぞ」
「…………あっ!」
ケイに言われて、善貞はようやく自分の失敗に気付いたようだ。
日向最初の町である反倉の港町でも、魔法の指輪は販売されていた。
しかし、そこで売られていたのは、ケイが今装着しているのと同じくらいの量しか入らないような魔法の指輪だった。
それ以上の容量の魔法の指輪を手に入れようとする場合、かなりの大金を積み、信頼できる商人を大陸まで行かせるしかなくなってくる。
積むための大金も所持していなければならないし、商人に動いてもらうとなると、身分が高くないとできることではない。
そうやって手に入れなければならない魔法の指輪を持っていて、平民ですは通用するはずがない。
「……………………」
「……まぁ、お前がどんな身分何だか俺は知らないし、知るつもりもない」
失敗をやらかしたことで、顔をうつ向かせる善貞。
そんな善貞に対して、ケイは興味なさげに話す。
善貞の身分を知っても別にケイには関係ないが、抱えている面倒事の規模が気にかかる。
この国に来て間もないのにもかかわらず、国に追われるようなことになったら話にならない。
「身分隠すんだったら、しっかり隠せよ。俺にまで被害が及ぶだろ」
「わ、分かった」
流石にこんな若者のことで、国に追われるようになるとは思わないが、相手次第では見捨てしまおうかとケイは思っている。
あっさり身分を隠していると気付いたのにもかかわらず、興味無さそうなケイの様子に善貞は安堵したように返事をする。
「魔法の指輪だけじゃないぞ。刀の拵えがそんなに見事なら誰だって気付くと思うぞ」
「そ、そうか!」
そして、ケイはそのあと善貞が身分バレバレな原因を伝えた。
刀の拵えは、身分が高い程豪華にしがちだ。
見栄や威厳を示すためだろうが、善貞の物は下級の武士とは思えない程の豪華さだ。
ケイでも目が行くような物に、他の者が気付かなはずがない。
「そっちは仕舞って、この鞘でも使え!」
「あぁ、分かった」
他に持っていないようなので、ケイは錬金術を使ってそこら辺に落ちている木を使った鞘を作り出す。
そして、打刀用と脇差用の鞘を受け取った善貞は、早速言われたように鞘を入れ替える。
「もしかして、顔が知られているってことはないよな?」
「…………多分」
これだけバレバレなことを平気でしていた善貞だ。
顏が知られているという可能性もある。
そう思ってケイが尋ねると、善貞からは曖昧な返事が来た。
「……しょうがない」
大陸横断中、追われる橘ために変装技術がレベルアップしたケイ。
その経験を利用して、ケイは善貞の顔を変えるために、錬金術でマスクを作り出す。
「な、何だこれ!?」
「それを付ければ、あら不思議! 見た目全くの別人へと変われる仮面のような物だ」
即席で作ったマスクだが、結構な出来だ。
しかし、こんなものを見たことがない善貞は、渡されたマスクに戸惑う。
そんな善貞に、ケイは簡単にマスクの使用法を説明する。
「やっぱお前スゲエな……」
「だろ?」
こんなものをあっさり作れるなんて、善貞は改めてケイの凄さを感じる。
そして、ふと出た感想に対して、ケイは軽口で答える。
「それを外すな……とは言い過ぎだが、寝る時と俺以外の人間がいる所では外さないようにしろよ」
「分かった!」
1日中マスクを着けていると、少し蒸れて不快な気分になる時がある。
それはケイ自身の経験談だ。
なので、他の人間がいる時は当然だめだが、寝る時ぐらいは外してもいいだろう。
「早速着けろよ」
「あぁ…………」
これから東へ向けて山越えを目指すのだが、街道でだれと会うかも分からない。
バレても困るので、ケイは早速マスクを装着してもらうことにした。
「どうした?」
マスクの装着を促したのにもかかわらず、善貞はなかなか着けようとしない。
その様子に疑問を持ったケイは、理由を尋ねる。
「これ獣臭いな?」
「……作りたてだからな」
材料は手に入れたばかりの猪の皮。
形状のことばかり考えていたので、臭いのことは完全に頭から消え去っていた。
たしかに、このまま装着するのは気が引ける。
仕方がないので、ケイは錬金術を使って臭いを消す。
猪の群れとの戦いに加えて、魔力食いでおなじみの錬金術を数回。
ケイの魔力は残り少なくなってしまう。
そのため、ケイたちはこの場でもう一泊することになってしまった。
「さぁ、奧電へ向かおう」
「おう!」【うん!】「ワウッ!」
猪の死骸の始末は、キュウたちに手伝ってもらい昨日のうちに終了した。
ゆっくりしたので魔力も回復した。
ケイたちは目的の奧電へと向かって街道を進むことにしたのだった。
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猪の群れを壊滅させたケイは、善貞を守っているキュウたちの下へと戻ってきた。
手には、大繁殖の元凶だと思われるうり坊の死骸を持っている。
戻ってきたことに喜び、キュウとクウはケイの周りを走り回る。
「んっ? どうした?」
キュウたちがはしゃいでいる中、善貞はボーッとした様子でケイを見つめながら立ち尽くしていた。
その様子に気付いたケイは、善貞へ向かって問いかけた。
「す、すげ~!」
善貞から返って来たのは感嘆の声だった。
「お前、めちゃめちゃ強ぇんだな!?」
善貞は、まるで感動したようにケイを見つめる。
ケイの戦いに何か感じることがあったらしく、かなりテンションが上がっている。
「見てて何か掴めたか?」
魔闘術を覚えたいと言っていた善貞へ、別に何か教えるために戦ったわけではないが、少しでも何か感じる所でもあればそれでいい。
そう思い、ケイは善貞へ問いかける。
「…………何かよく分かんないけど、魔力を操るのが上手くないといけなさそうだな?」
「まぁ、それが分かれば十分だ」
魔闘術は、善貞が言うように魔力の操作が最も重要な技術だ。
それを行なうためには、体内の魔力を自由自在に動かせるようにならなければならない。
好きに動かせるようになれば、魔闘術も使えるようになるだろう。
「こいつが原因だったのか?」
「あぁ」
ケイが手に持つうり坊を見て、善貞は意外そうに問いかけてくる。
それに対して、ケイは頷きを返す。
「こんな姿だが、知能と魔力の使い方が他より優れていたようだ。それに繁殖力も高かったんじゃないか? 魔物も動物も、繁殖力の高い雄に自然と惹きつけられるものだし」
魔物も動物同様、次世代へと繋いでいくということが本能的に備わっている。
そうなると、魔物の種類によって見た目や強さなどを求める場合もあるが、一番は繁殖力を優先する傾向が強い。
このうり坊は恐らく突然変異のような個体で、知能と繁殖力で群れを作っていたのだろう。
「……念話が使えただけで女を侍らせられるなんて、なんだか羨ましいな……」
「……確かにな」
顔立ちはなかなか整っているため、善貞もモテないようには見えない。
しかし、ケイの話を聞いた善貞は、もっともなことを言う。
ちょっと頭が良いだけの奴に女性が群がるなんて、男の立場からしたらこんな羨ましいことはない。
「善貞、まだ魔法の指輪に入るんだったら選別して解体するぞ?」
「おぉ、頼む。どっかの肉屋に持って行けば金になる」
大半の猪が焼けて消し炭のようになっているが、銃殺したのは解体すればかなりの量の肉が取れる。
大容量の魔法の指輪を持つ善貞へ、ケイは持って行くのか尋ねる。
すると、装備品も買えないほどに資金不足な善貞は、あっさりと猪の解体を頼んで来た。
「……………………」
「んっ? どうした?」
短いやり取りをして黙ったケイを、善貞は疑問に思った。
何か困った事があったのだろうか。
「お前、それだけの容量の魔法の指輪なんて、まともな身分じゃ手に入らないぞ」
「…………あっ!」
ケイに言われて、善貞はようやく自分の失敗に気付いたようだ。
日向最初の町である反倉の港町でも、魔法の指輪は販売されていた。
しかし、そこで売られていたのは、ケイが今装着しているのと同じくらいの量しか入らないような魔法の指輪だった。
それ以上の容量の魔法の指輪を手に入れようとする場合、かなりの大金を積み、信頼できる商人を大陸まで行かせるしかなくなってくる。
積むための大金も所持していなければならないし、商人に動いてもらうとなると、身分が高くないとできることではない。
そうやって手に入れなければならない魔法の指輪を持っていて、平民ですは通用するはずがない。
「……………………」
「……まぁ、お前がどんな身分何だか俺は知らないし、知るつもりもない」
失敗をやらかしたことで、顔をうつ向かせる善貞。
そんな善貞に対して、ケイは興味なさげに話す。
善貞の身分を知っても別にケイには関係ないが、抱えている面倒事の規模が気にかかる。
この国に来て間もないのにもかかわらず、国に追われるようなことになったら話にならない。
「身分隠すんだったら、しっかり隠せよ。俺にまで被害が及ぶだろ」
「わ、分かった」
流石にこんな若者のことで、国に追われるようになるとは思わないが、相手次第では見捨てしまおうかとケイは思っている。
あっさり身分を隠していると気付いたのにもかかわらず、興味無さそうなケイの様子に善貞は安堵したように返事をする。
「魔法の指輪だけじゃないぞ。刀の拵えがそんなに見事なら誰だって気付くと思うぞ」
「そ、そうか!」
そして、ケイはそのあと善貞が身分バレバレな原因を伝えた。
刀の拵えは、身分が高い程豪華にしがちだ。
見栄や威厳を示すためだろうが、善貞の物は下級の武士とは思えない程の豪華さだ。
ケイでも目が行くような物に、他の者が気付かなはずがない。
「そっちは仕舞って、この鞘でも使え!」
「あぁ、分かった」
他に持っていないようなので、ケイは錬金術を使ってそこら辺に落ちている木を使った鞘を作り出す。
そして、打刀用と脇差用の鞘を受け取った善貞は、早速言われたように鞘を入れ替える。
「もしかして、顔が知られているってことはないよな?」
「…………多分」
これだけバレバレなことを平気でしていた善貞だ。
顏が知られているという可能性もある。
そう思ってケイが尋ねると、善貞からは曖昧な返事が来た。
「……しょうがない」
大陸横断中、追われる橘ために変装技術がレベルアップしたケイ。
その経験を利用して、ケイは善貞の顔を変えるために、錬金術でマスクを作り出す。
「な、何だこれ!?」
「それを付ければ、あら不思議! 見た目全くの別人へと変われる仮面のような物だ」
即席で作ったマスクだが、結構な出来だ。
しかし、こんなものを見たことがない善貞は、渡されたマスクに戸惑う。
そんな善貞に、ケイは簡単にマスクの使用法を説明する。
「やっぱお前スゲエな……」
「だろ?」
こんなものをあっさり作れるなんて、善貞は改めてケイの凄さを感じる。
そして、ふと出た感想に対して、ケイは軽口で答える。
「それを外すな……とは言い過ぎだが、寝る時と俺以外の人間がいる所では外さないようにしろよ」
「分かった!」
1日中マスクを着けていると、少し蒸れて不快な気分になる時がある。
それはケイ自身の経験談だ。
なので、他の人間がいる時は当然だめだが、寝る時ぐらいは外してもいいだろう。
「早速着けろよ」
「あぁ…………」
これから東へ向けて山越えを目指すのだが、街道でだれと会うかも分からない。
バレても困るので、ケイは早速マスクを装着してもらうことにした。
「どうした?」
マスクの装着を促したのにもかかわらず、善貞はなかなか着けようとしない。
その様子に疑問を持ったケイは、理由を尋ねる。
「これ獣臭いな?」
「……作りたてだからな」
材料は手に入れたばかりの猪の皮。
形状のことばかり考えていたので、臭いのことは完全に頭から消え去っていた。
たしかに、このまま装着するのは気が引ける。
仕方がないので、ケイは錬金術を使って臭いを消す。
猪の群れとの戦いに加えて、魔力食いでおなじみの錬金術を数回。
ケイの魔力は残り少なくなってしまう。
そのため、ケイたちはこの場でもう一泊することになってしまった。
「さぁ、奧電へ向かおう」
「おう!」【うん!】「ワウッ!」
猪の死骸の始末は、キュウたちに手伝ってもらい昨日のうちに終了した。
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