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第7章

第140話

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「ベルトランはどこだ!?」

 城内に忍び込ませた諜報員によって開けられた城門から侵入したケイやリカルドたちは、城内の兵を見つけるたびすぐさま始末していく。
 あらかた始末し終わった頃、リカルドの下に諜報員の一人であるハコボ現れた。

「玉座の間から西に向かったとのことです!」

 リカルドの問いに対し、ハコボは敵兵たちが話していた内容から得た情報をリカルドに話す。
 近衛兵が四六時中ついているので、王であるベルトランには近づけなかったが、むしろそのせいでどちらへ向かったのかは分かりやすかった。

「西に何かあるのか?」

「いえ、そのような話は聞きませんでした」

 攻め込まれ、危機的な状態の今、たいして武力のないベルトランが取る行動と言えば、どこかから逃走を計るはず。
 しかし、この城は攻め込まれることなど考えていなかったらしく、出入り口はケイたちが入って来た南の城門と、使用人が出入りする東の通用口くらいしかないはず。
 西に行ったところに何かあるのだろうか。
 そう疑問に思ったリカルドは、確認の意味でもハコボに尋ねる。
 ただ、ハコボも西に脱出通路があるということは、潜入中に一度も耳にしなかった。

「……いや、お待ちください!」

「んっ?」

 西に脱出路があるということは聞かなかったが、その付近の地下のことで、ある話を聞いたことを思いだした。
 そのため、西の方へと向かおうとしているリカルドへ待ったをかける。

「これは噂と言うか、伝説のようなことなのですが……」

「何だ?」

 この城の西の方に何かあるかと聞かれれば、確かに何かある。
 しかし、それを聞いた時、この襲撃には役に立たない話だと切り捨てたのだが、思い当たるのはこれしかなかった。
 ハコボが何か言いづらそうにしている所から、リカルドも大した情報ではないのだろうという思いをしていた。
 なので、とりあえず聞いておくだけでもと、ハコボに話を促す。

「この城の下には何かを封印したという話がありまして……」

「……ここの王がその封印を解きに行ったと言うのか?」

 この情報を話したメイドも信じていないような感じだったので、リカルドに伝えるのは躊躇うが、この話が本当だった時の事を考えると伝えていた方が良い。
 そう思ったハコボは、この城にある封印のことをリカルドへ説明したのだった。
 それを聞いたリカルドは、ベルトランが西に向かった理由は、それかもしれないと頭をよぎった。

「はい……。もしかしたらのではありますが……」

 それを尋ねると、ハコボも同じように思っていたらしい。
 ハコボは曖昧に返事を返した。

「何が封印されているんだ?」

「……詳しくは分かりません。強力な化け物という風にしか……」

 リカルドは強力な何かが封印されていると聞いて、どれだけ強いのかに興味を持ったらしい。
 少し表情は楽しそうだ。

「その場所は分かるか?」

「西の塔付近の地下牢の更に地下です!」

 その情報を聞いたリカルドは、もう向かう気満々になっていた。
 そのため、すぐにその封印のある場所を聞いたのだった。

「王子の方はどこだ?」

「いつの間にかいなくなってしまい。現在どこにいるのか分かりませんが、まだ城内にいるのかと……」

 気持ちが高ぶり、すぐにでも王の所へ向かいたいところだが、もう一人始末しないといけない者がいる。
 そのもう一人の方である王子の行方も知っておきたい。
 なので、その王子の行方をハコボに聞いたのだが、少し目を離したすきにいなくなってしまったとのことだ。
 しかし、城門と東の通用口は抑えてあるので、外へ逃げようとすれば捕まえることはできる。
 まだ捕まっていないということは、城内のどこかに隠れているという可能性が高い。

「くっ!」

 自分の部下の目を掻い潜るなんて、クズと言われている割には行動が素早い。
 逃げられることはないだろうが、さっさと捕まえてしまいたい。
 城内を探さないといけない手間が増えたことに、リカルドは見たこともないサンダリオのことを苦々しく思った。

「二手に分かれるぞ!」

 王が逃げていないのだから、少なくない人数の城内兵も一緒に地下へと潜っているかもしれない。
 そう考えると、城内の敵兵はそれほど多くないかもしれない。
 それなら、別れて探した方が手っ取り早い。
 そのため、リカルドは連れてきた兵を半分に分けたのだった。

「我らとケイ殿は王の方を追う!! 他の者は城内を探して王子を探せ!!」

「「「「「ハッ!!」」」」」

 危険なのは王の方。
 封印がデマであっても、そうでなくても、自分の身を守るために戦闘力の高い者を側に置いているはず。
 この数なら問題ないだろうが、油断大敵。
 なので、リカルドは念のためケイたちと一緒に行くことにした。
 その封印されている物が何であろうと、自分とケイが揃えば、勝てなないものなど何もないという自信が何故か湧いてくる。
 どちらにしても、さっさと捕まえて首を取らないと、王都に散らばる兵たちに集まられてしまう。
 いくらリカルドが連れてきた獣人たちが、一騎当千の実力の持ち主たちだと言っても、数の暴力には勝てないかもしれない。
 今の所大怪我をしている者はいない。
 このまま作戦を成功させて、さっさとアンヘル島で美味い飯が食いたいものだ。
 そんなことを思いながら、リカルドは西へ向かい動き出した。
 そして、リカルドに付いて行くものと、王子探しに行くものに分かれた兵たちは、それぞれ走り始めたのだった。

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