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第6章
第99話
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ドワーフ。
モイストの話によると、獣人大陸の北西にある島に住んでいるとのことだった。
そこで1つの国として存在しているらしい。
「じゃあ、ここと同じような感じかな?」
「そうですね。人の数が違いますが……」
島の大きさ的にはここより大きく、100万人近くいるそうだが、ここと似たような物だろう。
その位置から獣人族とは付き合く、彼らの要望に合わせた魔道具の開発を行っているらしい。
「どんな種族なんだ?」
前世の記憶からしたら、150cmくらいの小柄な身長で、技術が高い鍛冶の腕を持っているというイメージだ。
もしかしたら、この世界でも同じとは限らないので、ケイはモイストに普通に尋ねることにした。
「一言で言うと、魔道具開発のスペシャリストですかね」
モイストから帰ってきた答えはこれだった。
手先が器用で、鍛冶も得意なのだが、特に魔道具の開発が好きな種族らしい。
背が低いが肉体は屈強で、もしもの場合は自分たちが作った武器で戦う戦士の面も持ち合わせていて、寿命も人の倍近くある長命の種族なのだそうだ。
「魔道具ってどうやって作るんだ?」
「私は興味が無かったので、詳しくは分からないのですが、錬金術が基本になりますね。それに必要な素材、イメージ、魔法属性、魔力量、これらを細かく分析して、何度もトライアンドエラーを繰り返すそうですよ」
「気が遠くなりそうだな……」
それら全てのバランスが揃うと、イメージ通りの魔道具が作成できるそうだ。
それでも完成ではなく、更に細かく調整することで精度の高い物が作り出せるようになるとのことだった。
素材だけでも作る物によって必要な量が違うだろうし、場合によっては入手することすら困難な場合がある。
それを地道にコツコツ研究するなんて、かなり根気のいる作業だ。
ケイも大工仕事でそういった部分があるが、コツコツを積み上げれば完成する大工仕事とは違い、何か一つでも違えばまた最初からというこちらの方が根気が必要だ。
「なので、新しい商品を生み出すのは、かなり難しいらしいですよ」
モイストが拾い上げたでかい電話のような通信魔道具も、生み出された時にはとても画期的な発明だったとのことだ。
「……何で人族が、ドワーフの作った物を手に入れているんだ?」
人族のどこの国も魔道具を研究している機関を有している。
しかし、先程のモイストの口ぶりだと、この通信魔道具はドワーフが作ったということだ。
どうやって手に入れたのか疑問が出てきた。
「一つを手に入れ、錬金術で模造品を増やしたのでしょう」
「…………あ~、なるほど……」
錬金術は色々なものを作り出せるが、新種の魔道具を作り出すと言うのは先ほども言った通り時間と労力、更には高額な研究費用が必要になる。
それらを使って作り出すより、すでにできているものをコピーした方が、手っ取り早いと考えるのは当然だろう。
どういったルートで手に入れたかは分からないが、物が一つあれば増やすことも可能だろう。
モイストの短い説明で、ケイはそのことに思い至り納得した。
「コピーされて腹立ってるだろうな……」
魔道具を作ったことはないが、色々なものを作り出したからその有用性は理解しているつもりだ。
しかし、苦労して苦労して作り上げたものを勝手にコピーされるなんて、ドワーフたちからしたら腹立たしいことではないだろうか。
ケイはドワーフに同情するような気持で呟いた。
「そのことがあって、ドワーフ王国は人族の侵入は禁止しているようです。無暗に近付こうものなら、問答無用で海に沈められるはずです」
そのスタンスもここと似ている。
話を聞いていると、ケイはドワーフに対して段々と親近感がわいてきた。
「錬金術を使うなら、魔力の多い俺のような存在は重宝されるんじゃないか?」
錬金術は、何を作るにしても大量の魔力を必要とする。
何度も錬成実験するなら、魔力の多いエルフはいいパートナーになれるのではないかと考えた。
「そうですね、……ですが、ケイ殿はここから離れる訳にはいかないでしょう?」
「そうだな……」
人族がまたいつ攻め込んでくるか分からない今、獣人大陸を横断しているような時間はない。
せめて、島の住民が増えて戦える者の人数が多ければいいのだが。
「いつか行ってみたいな……」
前世の記憶というチートを使った魔道具の作成なんて、なかなか面白いものが作れるのではないだろうか。
ケイ自身は、そういった物はこの世界には必要なのか疑問に思えるので作るかは分からないが、ドワーフの作る魔道具がどんなものがあるのか興味が湧く。
ドワーフの国がどういう雰囲気なのかも見てみたい。
そのため、ケイは無意識に考えたことを口から出していた。
「陛下と昵懇の中のケイ殿なら、紹介して頂けるのではないでしょうか?」
「そうかな?」
ケイの言葉に反応したモイストは、もしもこの後行くことがあるならばと付けたうえで提案した。
人族の入国禁止の状態では、ケイももしかしたら入れてもらえないかもしれない。
しかし、ドワーフは獣人の国々とは仲が良いので、紹介でもあれば入れるかもしれない。
いつ行くことになるか分からないが、ケイは取りあえずモイストの言ったことを心に留めておくことにしたのだった。
モイストの話によると、獣人大陸の北西にある島に住んでいるとのことだった。
そこで1つの国として存在しているらしい。
「じゃあ、ここと同じような感じかな?」
「そうですね。人の数が違いますが……」
島の大きさ的にはここより大きく、100万人近くいるそうだが、ここと似たような物だろう。
その位置から獣人族とは付き合く、彼らの要望に合わせた魔道具の開発を行っているらしい。
「どんな種族なんだ?」
前世の記憶からしたら、150cmくらいの小柄な身長で、技術が高い鍛冶の腕を持っているというイメージだ。
もしかしたら、この世界でも同じとは限らないので、ケイはモイストに普通に尋ねることにした。
「一言で言うと、魔道具開発のスペシャリストですかね」
モイストから帰ってきた答えはこれだった。
手先が器用で、鍛冶も得意なのだが、特に魔道具の開発が好きな種族らしい。
背が低いが肉体は屈強で、もしもの場合は自分たちが作った武器で戦う戦士の面も持ち合わせていて、寿命も人の倍近くある長命の種族なのだそうだ。
「魔道具ってどうやって作るんだ?」
「私は興味が無かったので、詳しくは分からないのですが、錬金術が基本になりますね。それに必要な素材、イメージ、魔法属性、魔力量、これらを細かく分析して、何度もトライアンドエラーを繰り返すそうですよ」
「気が遠くなりそうだな……」
それら全てのバランスが揃うと、イメージ通りの魔道具が作成できるそうだ。
それでも完成ではなく、更に細かく調整することで精度の高い物が作り出せるようになるとのことだった。
素材だけでも作る物によって必要な量が違うだろうし、場合によっては入手することすら困難な場合がある。
それを地道にコツコツ研究するなんて、かなり根気のいる作業だ。
ケイも大工仕事でそういった部分があるが、コツコツを積み上げれば完成する大工仕事とは違い、何か一つでも違えばまた最初からというこちらの方が根気が必要だ。
「なので、新しい商品を生み出すのは、かなり難しいらしいですよ」
モイストが拾い上げたでかい電話のような通信魔道具も、生み出された時にはとても画期的な発明だったとのことだ。
「……何で人族が、ドワーフの作った物を手に入れているんだ?」
人族のどこの国も魔道具を研究している機関を有している。
しかし、先程のモイストの口ぶりだと、この通信魔道具はドワーフが作ったということだ。
どうやって手に入れたのか疑問が出てきた。
「一つを手に入れ、錬金術で模造品を増やしたのでしょう」
「…………あ~、なるほど……」
錬金術は色々なものを作り出せるが、新種の魔道具を作り出すと言うのは先ほども言った通り時間と労力、更には高額な研究費用が必要になる。
それらを使って作り出すより、すでにできているものをコピーした方が、手っ取り早いと考えるのは当然だろう。
どういったルートで手に入れたかは分からないが、物が一つあれば増やすことも可能だろう。
モイストの短い説明で、ケイはそのことに思い至り納得した。
「コピーされて腹立ってるだろうな……」
魔道具を作ったことはないが、色々なものを作り出したからその有用性は理解しているつもりだ。
しかし、苦労して苦労して作り上げたものを勝手にコピーされるなんて、ドワーフたちからしたら腹立たしいことではないだろうか。
ケイはドワーフに同情するような気持で呟いた。
「そのことがあって、ドワーフ王国は人族の侵入は禁止しているようです。無暗に近付こうものなら、問答無用で海に沈められるはずです」
そのスタンスもここと似ている。
話を聞いていると、ケイはドワーフに対して段々と親近感がわいてきた。
「錬金術を使うなら、魔力の多い俺のような存在は重宝されるんじゃないか?」
錬金術は、何を作るにしても大量の魔力を必要とする。
何度も錬成実験するなら、魔力の多いエルフはいいパートナーになれるのではないかと考えた。
「そうですね、……ですが、ケイ殿はここから離れる訳にはいかないでしょう?」
「そうだな……」
人族がまたいつ攻め込んでくるか分からない今、獣人大陸を横断しているような時間はない。
せめて、島の住民が増えて戦える者の人数が多ければいいのだが。
「いつか行ってみたいな……」
前世の記憶というチートを使った魔道具の作成なんて、なかなか面白いものが作れるのではないだろうか。
ケイ自身は、そういった物はこの世界には必要なのか疑問に思えるので作るかは分からないが、ドワーフの作る魔道具がどんなものがあるのか興味が湧く。
ドワーフの国がどういう雰囲気なのかも見てみたい。
そのため、ケイは無意識に考えたことを口から出していた。
「陛下と昵懇の中のケイ殿なら、紹介して頂けるのではないでしょうか?」
「そうかな?」
ケイの言葉に反応したモイストは、もしもこの後行くことがあるならばと付けたうえで提案した。
人族の入国禁止の状態では、ケイももしかしたら入れてもらえないかもしれない。
しかし、ドワーフは獣人の国々とは仲が良いので、紹介でもあれば入れるかもしれない。
いつ行くことになるか分からないが、ケイは取りあえずモイストの言ったことを心に留めておくことにしたのだった。
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