99 / 375
第6章
第99話
しおりを挟む
ドワーフ。
モイストの話によると、獣人大陸の北西にある島に住んでいるとのことだった。
そこで1つの国として存在しているらしい。
「じゃあ、ここと同じような感じかな?」
「そうですね。人の数が違いますが……」
島の大きさ的にはここより大きく、100万人近くいるそうだが、ここと似たような物だろう。
その位置から獣人族とは付き合く、彼らの要望に合わせた魔道具の開発を行っているらしい。
「どんな種族なんだ?」
前世の記憶からしたら、150cmくらいの小柄な身長で、技術が高い鍛冶の腕を持っているというイメージだ。
もしかしたら、この世界でも同じとは限らないので、ケイはモイストに普通に尋ねることにした。
「一言で言うと、魔道具開発のスペシャリストですかね」
モイストから帰ってきた答えはこれだった。
手先が器用で、鍛冶も得意なのだが、特に魔道具の開発が好きな種族らしい。
背が低いが肉体は屈強で、もしもの場合は自分たちが作った武器で戦う戦士の面も持ち合わせていて、寿命も人の倍近くある長命の種族なのだそうだ。
「魔道具ってどうやって作るんだ?」
「私は興味が無かったので、詳しくは分からないのですが、錬金術が基本になりますね。それに必要な素材、イメージ、魔法属性、魔力量、これらを細かく分析して、何度もトライアンドエラーを繰り返すそうですよ」
「気が遠くなりそうだな……」
それら全てのバランスが揃うと、イメージ通りの魔道具が作成できるそうだ。
それでも完成ではなく、更に細かく調整することで精度の高い物が作り出せるようになるとのことだった。
素材だけでも作る物によって必要な量が違うだろうし、場合によっては入手することすら困難な場合がある。
それを地道にコツコツ研究するなんて、かなり根気のいる作業だ。
ケイも大工仕事でそういった部分があるが、コツコツを積み上げれば完成する大工仕事とは違い、何か一つでも違えばまた最初からというこちらの方が根気が必要だ。
「なので、新しい商品を生み出すのは、かなり難しいらしいですよ」
モイストが拾い上げたでかい電話のような通信魔道具も、生み出された時にはとても画期的な発明だったとのことだ。
「……何で人族が、ドワーフの作った物を手に入れているんだ?」
人族のどこの国も魔道具を研究している機関を有している。
しかし、先程のモイストの口ぶりだと、この通信魔道具はドワーフが作ったということだ。
どうやって手に入れたのか疑問が出てきた。
「一つを手に入れ、錬金術で模造品を増やしたのでしょう」
「…………あ~、なるほど……」
錬金術は色々なものを作り出せるが、新種の魔道具を作り出すと言うのは先ほども言った通り時間と労力、更には高額な研究費用が必要になる。
それらを使って作り出すより、すでにできているものをコピーした方が、手っ取り早いと考えるのは当然だろう。
どういったルートで手に入れたかは分からないが、物が一つあれば増やすことも可能だろう。
モイストの短い説明で、ケイはそのことに思い至り納得した。
「コピーされて腹立ってるだろうな……」
魔道具を作ったことはないが、色々なものを作り出したからその有用性は理解しているつもりだ。
しかし、苦労して苦労して作り上げたものを勝手にコピーされるなんて、ドワーフたちからしたら腹立たしいことではないだろうか。
ケイはドワーフに同情するような気持で呟いた。
「そのことがあって、ドワーフ王国は人族の侵入は禁止しているようです。無暗に近付こうものなら、問答無用で海に沈められるはずです」
そのスタンスもここと似ている。
話を聞いていると、ケイはドワーフに対して段々と親近感がわいてきた。
「錬金術を使うなら、魔力の多い俺のような存在は重宝されるんじゃないか?」
錬金術は、何を作るにしても大量の魔力を必要とする。
何度も錬成実験するなら、魔力の多いエルフはいいパートナーになれるのではないかと考えた。
「そうですね、……ですが、ケイ殿はここから離れる訳にはいかないでしょう?」
「そうだな……」
人族がまたいつ攻め込んでくるか分からない今、獣人大陸を横断しているような時間はない。
せめて、島の住民が増えて戦える者の人数が多ければいいのだが。
「いつか行ってみたいな……」
前世の記憶というチートを使った魔道具の作成なんて、なかなか面白いものが作れるのではないだろうか。
ケイ自身は、そういった物はこの世界には必要なのか疑問に思えるので作るかは分からないが、ドワーフの作る魔道具がどんなものがあるのか興味が湧く。
ドワーフの国がどういう雰囲気なのかも見てみたい。
そのため、ケイは無意識に考えたことを口から出していた。
「陛下と昵懇の中のケイ殿なら、紹介して頂けるのではないでしょうか?」
「そうかな?」
ケイの言葉に反応したモイストは、もしもこの後行くことがあるならばと付けたうえで提案した。
人族の入国禁止の状態では、ケイももしかしたら入れてもらえないかもしれない。
しかし、ドワーフは獣人の国々とは仲が良いので、紹介でもあれば入れるかもしれない。
いつ行くことになるか分からないが、ケイは取りあえずモイストの言ったことを心に留めておくことにしたのだった。
モイストの話によると、獣人大陸の北西にある島に住んでいるとのことだった。
そこで1つの国として存在しているらしい。
「じゃあ、ここと同じような感じかな?」
「そうですね。人の数が違いますが……」
島の大きさ的にはここより大きく、100万人近くいるそうだが、ここと似たような物だろう。
その位置から獣人族とは付き合く、彼らの要望に合わせた魔道具の開発を行っているらしい。
「どんな種族なんだ?」
前世の記憶からしたら、150cmくらいの小柄な身長で、技術が高い鍛冶の腕を持っているというイメージだ。
もしかしたら、この世界でも同じとは限らないので、ケイはモイストに普通に尋ねることにした。
「一言で言うと、魔道具開発のスペシャリストですかね」
モイストから帰ってきた答えはこれだった。
手先が器用で、鍛冶も得意なのだが、特に魔道具の開発が好きな種族らしい。
背が低いが肉体は屈強で、もしもの場合は自分たちが作った武器で戦う戦士の面も持ち合わせていて、寿命も人の倍近くある長命の種族なのだそうだ。
「魔道具ってどうやって作るんだ?」
「私は興味が無かったので、詳しくは分からないのですが、錬金術が基本になりますね。それに必要な素材、イメージ、魔法属性、魔力量、これらを細かく分析して、何度もトライアンドエラーを繰り返すそうですよ」
「気が遠くなりそうだな……」
それら全てのバランスが揃うと、イメージ通りの魔道具が作成できるそうだ。
それでも完成ではなく、更に細かく調整することで精度の高い物が作り出せるようになるとのことだった。
素材だけでも作る物によって必要な量が違うだろうし、場合によっては入手することすら困難な場合がある。
それを地道にコツコツ研究するなんて、かなり根気のいる作業だ。
ケイも大工仕事でそういった部分があるが、コツコツを積み上げれば完成する大工仕事とは違い、何か一つでも違えばまた最初からというこちらの方が根気が必要だ。
「なので、新しい商品を生み出すのは、かなり難しいらしいですよ」
モイストが拾い上げたでかい電話のような通信魔道具も、生み出された時にはとても画期的な発明だったとのことだ。
「……何で人族が、ドワーフの作った物を手に入れているんだ?」
人族のどこの国も魔道具を研究している機関を有している。
しかし、先程のモイストの口ぶりだと、この通信魔道具はドワーフが作ったということだ。
どうやって手に入れたのか疑問が出てきた。
「一つを手に入れ、錬金術で模造品を増やしたのでしょう」
「…………あ~、なるほど……」
錬金術は色々なものを作り出せるが、新種の魔道具を作り出すと言うのは先ほども言った通り時間と労力、更には高額な研究費用が必要になる。
それらを使って作り出すより、すでにできているものをコピーした方が、手っ取り早いと考えるのは当然だろう。
どういったルートで手に入れたかは分からないが、物が一つあれば増やすことも可能だろう。
モイストの短い説明で、ケイはそのことに思い至り納得した。
「コピーされて腹立ってるだろうな……」
魔道具を作ったことはないが、色々なものを作り出したからその有用性は理解しているつもりだ。
しかし、苦労して苦労して作り上げたものを勝手にコピーされるなんて、ドワーフたちからしたら腹立たしいことではないだろうか。
ケイはドワーフに同情するような気持で呟いた。
「そのことがあって、ドワーフ王国は人族の侵入は禁止しているようです。無暗に近付こうものなら、問答無用で海に沈められるはずです」
そのスタンスもここと似ている。
話を聞いていると、ケイはドワーフに対して段々と親近感がわいてきた。
「錬金術を使うなら、魔力の多い俺のような存在は重宝されるんじゃないか?」
錬金術は、何を作るにしても大量の魔力を必要とする。
何度も錬成実験するなら、魔力の多いエルフはいいパートナーになれるのではないかと考えた。
「そうですね、……ですが、ケイ殿はここから離れる訳にはいかないでしょう?」
「そうだな……」
人族がまたいつ攻め込んでくるか分からない今、獣人大陸を横断しているような時間はない。
せめて、島の住民が増えて戦える者の人数が多ければいいのだが。
「いつか行ってみたいな……」
前世の記憶というチートを使った魔道具の作成なんて、なかなか面白いものが作れるのではないだろうか。
ケイ自身は、そういった物はこの世界には必要なのか疑問に思えるので作るかは分からないが、ドワーフの作る魔道具がどんなものがあるのか興味が湧く。
ドワーフの国がどういう雰囲気なのかも見てみたい。
そのため、ケイは無意識に考えたことを口から出していた。
「陛下と昵懇の中のケイ殿なら、紹介して頂けるのではないでしょうか?」
「そうかな?」
ケイの言葉に反応したモイストは、もしもこの後行くことがあるならばと付けたうえで提案した。
人族の入国禁止の状態では、ケイももしかしたら入れてもらえないかもしれない。
しかし、ドワーフは獣人の国々とは仲が良いので、紹介でもあれば入れるかもしれない。
いつ行くことになるか分からないが、ケイは取りあえずモイストの言ったことを心に留めておくことにしたのだった。
0
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
強制無人島生活
デンヒロ
ファンタジー
主人公の名前は高松 真。
修学旅行中に乗っていたクルーズ船が事故に遭い、
救命いかだで脱出するも無人島に漂着してしまう。
更に一緒に流れ着いた者たちに追放された挙げ句に取り残されてしまった。
だが、助けた女の子たちと共に無人島でスローライフな日々を過ごすことに……
果たして彼は無事に日本へ帰ることができるのか?
注意
この作品は作者のモチベーション維持のために少しずつ投稿します。
1話あたり300~1000文字くらいです。
ご了承のほどよろしくお願いします。
【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。
うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。
まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。
真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる!
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界召喚されたのは、『元』勇者です
ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。
それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる