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第2章

第33話

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「外とあまり変わらないのね」

 昨日の約束通り、ケイと美花は島唯一のダンジョンへ向かった。
 入ってしばらく経ち、ここまでに出現した魔物の感想を、美花は率直に述べた。

「魔物とか俺が捨ててるからかな?」

 このダンジョンには、ケイが魔物や魚の内臓や骨をゴミ捨て場のようにしていた。
 それを多く吸収していたからか、外と大差ない魔物ばかりが出現しているのかもしれない。
 ケイは美花の感想に返すように答えた。



「もう5層になるけど準備はいい?」

「えぇ!」

 外と変わり映えのない魔物ばかりだからか、すんなりと5層のボス部屋の前にたどり着いた。
 昨日も言ったが、ここのボス部屋は毎回変化するタイプで、入ると扉が閉まって倒すまで脱出出来なくなる。
 倒せば1日たたないと再出現することはなく、通行自由の状態になる。
 強さに当たりハズレがあるので、注意が必要になる。
 ボス部屋の前でケイが確認すると、美花は元気に返事をした。

「……今回は蛇か」

「でかいわね」

 中に入って2人が出した感想はこれだった。
 外で時折見つける蛇の魔物がボスとして出現した。
 しかし、いつもみる容姿ではあるが、大きさが全然違った。
 いつものが最大でも全長3~4mほどだというのにもかかわらず、このボスは12mはあるのではないかという程にでかい。
 長さもそうだが、肉も厚い。
 いつもは簡単に倒している魔物でも、でかいだけで圧迫感を覚える。

「危なっ!?」

「大きさが違うだけで、いつも通り噛みきと尻尾に気を付けて!」

「なるほど、了解!」

 この手のボス戦は、ケイは経験済み。
 蛇が独特の動きで2人に迫ると、美花に噛みつき、ケイに尻尾を振って攻撃してきた。
 それをケイは危なげなく、美花はちょっと慌てたように躱した。
 大きさが違うだけなら注意点はそれ程変わらない。
 ケイが注意点を言うと、美花は納得した。

 それから噛みつきと尻尾の攻撃を躱していると、ケイが言ったように攻撃パターンが変わらない。
 そうなればでかいだけで、別に脅威ではなくなった。

「ハッ!!」

“ザシュッ!!”

 パターンが読めた美花は、噛みつき攻撃を躱すと共に蛇の脳天に剣を突き刺した。
 その一突きが脳に直撃したのか、巨大蛇はそのまま地面に崩れ落ちて動かなくなった。

「フゥ~……」

 攻撃パターンが分かっていたとしても、その一撃はかなりの威力。
 食らえば一発で瀕死になりかねないと考えると、思ったより体力を披露した。
 ダンジョン初心者の美花は、息を吐くと共に額に掻いていた汗を拭った。

「一息ついたら次へ行こうか?」

「うん」

 ボスの蛇が倒され、次の階層に行く扉が開いた。
 少し疲労した美花のことも考え、ケイはここで軽く休憩をしてから進むことにした。



「今日は10層をクリアしたら帰ろうか?」

「そうね」

 休憩を終え、次の層を探索している途中で、これまで使った時間からケイは美花に拠点に帰る予定を提案した。
 危険だからと置いてきたキュウとマルのことが気になる。
 元々日帰りの予定で来たので、美花も異論はなかった。

「地図はあまり変わっていないみたいね?」

「そうだね」

 ケイはこの島に流れ着いてから数年、島の植物を使って紙が作れないか錬金術で試しまくった。
 その結果、質は悪いが紙と呼べるものは作れるようになった。
 ダンジョンを発見して中を探索するうえで、内部の地図があった方が良い。
 そのため、毎年記録するようにしている。
 美花にも同じ地図を渡し、去年と変化がないか1層から全部調べながら進んできた。
 最短距離ではないので時間がかかるが、危険な目に遭わないためには必要だろう。
 結局、少しだけ変化があったが、去年と大きな差はなかった。

 そして2人は順調に進み、10層のボスに挑むことになった。

「カウチョ(ダンゴムシ)!?」

 中に入って目に入ったボスを見て、美花は驚いた。
 島までは見ないような魔物が出現したからだ。

「俺も見たことないタイプの魔物だ」

 この魔物は、ケイも見たことがなかった。
 だが、島には普通の虫も存在しており、ダンゴムシも存在している。
 偶々入ったダンゴムシを吸収したのだろう。
 大きさは3~4m程の大きさなのは全然違うが……。

“ギュルギュル!!”

「っ!? 横に避けて!!」

「わっ!?」

 ダンゴムシが丸まったと思ったら、高速で回転を始め、一気に2人に向かって転がって来た。
 その攻撃にいち早く気付いたケイは、咄嗟に美花へ指示を出した。
 その指示にすぐ反応した美花は、なんとか躱すことに成功した。

「何あれ!? まともに当たったら潰されちゃう」

 回転による攻撃を躱されたダンゴムシは、そのまま壁へとぶつかった。
 しかし、その速度と重量によって生み出された破壊力はかなりのもので、壁が大規模に凹んだ。
 その威力に、美花は顔を青くした。

「……大丈夫! あの速度で急激に方向転換はできない」

 慌てる美花とは反対に、ケイはすぐにさっきの攻撃の弱点を発見した。
 威力はすごいが、ぶつからなければなんてことはない。

「剣じゃ駄目だ。美花は今回は避けることに集中して!」

「分かった!」

 自分でも分かっていたのか、美花はケイの言いたいことをすぐに理解した。
 回転しているあの相手に攻撃しても、剣が弾かれるだけだ。
 美花は指示通り躱すことに専念した。

「ここだ」

“パンッ!!”

「ギギッ……!?」

 回転しているから正面からの攻撃は通用しない。
 なので、横から銃による攻撃を放つと、ダンゴムシの体に穴を開けた。
 ダンゴムシも痛みでケイを睨みつける。

“パンッ!!”“パンッ!!”

 効くのならそのまま繰り返すだけでいい。
 何発も受けたダンゴムシは、体を穴だらけにして崩れ落ちた。

「やっぱり遠距離攻撃も必要ね……」

 今回は役に立たなかったからか、美花は攻撃の引き出しを増やすことを思案しだした。

「じゃあ、帰ろうか?」

「うん」

 予定通り2人はキュウとマルの待つ拠点に戻っていった。

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