16 / 375
第1章
第16話
しおりを挟む
9月に入り中旬に近付くと、南半球のこの島も春になりつつある。
夜はまだ冷えるが、日中は日差しが暖かくなってきた。
探知術の範囲が広がり、ジャガイモを植えたり、銃の弾を増やしたりしながらケイはずっと考えていたことがある。
銃を作れ、逃走用の威嚇手段は整ったが、5歳の体では逃げ足が遅い。
前世では可もなく不可もなくといったぐらいの足の速さだった。
そこまででなくても、もう少し速くないとスライムからも逃げられない。
魚介や海藻と海の物ばかり食べていて栄養的にはバランスが悪いが、それまでの食環境がとんでもなく悪かったため、島に着いた時のガリガリの体から少し痩せている程度までは良くなっている。
「これ、ヨモギっぽい!」
昨日銃を使った戦闘訓練をしていた時、植物の生態系が違うと思うのでヨモギかどうかは分からないが、似たような葉が少量生えていた。
鑑定術をしたら食べられるようなので、ケイはその野草を手に入れた。
植物脂は無かったので昆布だしで煮た吸い物にしたのだが、子供の味覚にはかなり苦く感じた。
銃の訓練は様になって来ており、動きながらでも的に当てることができるようになってきた。
そんなこんなで、橋ができてからもう2週間ほど経っていた。
「橋作った意味ないな……」
西にある陸地は、ケイが拠点にしている島と比べればかなりの大きさ。
野草も果樹も期待ができるのでなるべく行きたいのだが、人や魔物の存在がネックになっている。
どちらが相手でも、逃げ足が遅ければ捕まってしまうかもしれない。
アンヘルは武術の基礎を父や叔父に教わっていたので、魔法同様訓練は欠かさないでやっている。
それに加えて、海岸の砂場を利用した脚力強化もしているが、こればかりは一朝一夕で解決するような問題でもない。
「やっぱ広いな……」
10月に入る少し前、ケイは拠点にしている小島から組み立て式の橋を使って西にある陸地に来た。
目の前に広がる景色は、かなり遠くまで樹木が茂っている。
探知術も毎日の魔法の練習で少しずつ広がっている。
安全を考え、組立式の橋の側から離れず探知術で周囲を見渡す。
「いないな……」
魔物は危険だがメリットが多い。
食材にもなるものもいるし、道具を作るときの錬金術に必要な魔石も手に入る。
それに、分かりにくいが魔物を倒せば肉体も強化される。
一歩間違えば命を失いかねないが、今のケイにはいいことづくめだ。
逃げ足問題は一応解決した。
銃の練習をしていた時に思いついたことだが、魔力を纏うだけでただの銀玉鉄砲が銃並の威力が出る。
それを自分の肉体にやったらどうなるかが気になったため、少し試してみることにした。
最初なので魔力を少量に足に纏わせてみた。
その状態を維持して動いてみたら、移動速度が上がった。
「これは…………使える!」
少量の魔力でこれなら、多くの魔力を纏わせればもっと早く移動できるのではないか。
そう考えたケイは、纏う魔力の量を増やして試す。
思った通り、魔力を増やせば速度はあがった。
最高で前世の時に近いレベルの速度が出せた。
だが、制御が難しく、魔力を足に集めるまで時間が掛かる。
それに、
「使えるけど…………疲れる」
難しい魔力の制御で精神的疲労を伴う上に、使った後には肉体的疲労も伴った。
これまで魔法を使っていた時は、肉体を動かすためではなかったので気が付かなかったが、魔力を使って肉体強化した場合の反動がここまであるとは思わなかった。
技術的にも肉体的にも慣れないせいかどっと疲れた。
「5歳の肉体には負担が大きいのかな?」
肉体的疲労の原因ですぐに思いついたのは、今の自分は5歳の体であるということだ。
5歳で高校生並みの速度が出せるなんて異常なことだ。
その反動が何もないというのは、考えればありえないことだろう。
肉体強化をした翌日、ケイは筋肉痛で足がプルプルして動くのがかなりつらかった。
筋肉痛でヒイヒイ言ってるケイに、キュウも心配そうな顔をしていた。
「よし! 訓練の成果を見せるぞ!」
結果、魔力での肉体強化は逃走時のみ使うことにした。
練習はしているが、魔力を集めるのにまだ少し時間が掛かる。
それは向上した銃の腕でなんとか補うつもりだ。
「あっ! 早速スライムが……」
当然どんな魔物がいるか分からないので、ケイは探知術で周辺を捜索してから進み始めた。
すると、早くもスライムを発見した。
アンヘルの知識から、スライムは世界中どこにでも存在すると言われるほど繁殖力が強いらしい。
頻繁に会うのもそう言ったことからなのかもしれない。
「ハッ!」
“ジュッ!”
探知術でちゃんと距離のある状態で発見したので、これまで通り火魔法を放って蒸発させる。
「前よりかは発動速度が早くなったかな?」
銃や肉体強化をするために魔力を一か所へ集める練習を良くしていたからだろうか。
火魔法を放つまでの速度が上昇したように感じる。
これならスライム位なら2、3匹同時に相手にしてもなんとかなるかもしれない。
ここにはスライムが多いのか、もう一匹スライムを発見して倒し、ケイは拠点に戻っていった。
夜はまだ冷えるが、日中は日差しが暖かくなってきた。
探知術の範囲が広がり、ジャガイモを植えたり、銃の弾を増やしたりしながらケイはずっと考えていたことがある。
銃を作れ、逃走用の威嚇手段は整ったが、5歳の体では逃げ足が遅い。
前世では可もなく不可もなくといったぐらいの足の速さだった。
そこまででなくても、もう少し速くないとスライムからも逃げられない。
魚介や海藻と海の物ばかり食べていて栄養的にはバランスが悪いが、それまでの食環境がとんでもなく悪かったため、島に着いた時のガリガリの体から少し痩せている程度までは良くなっている。
「これ、ヨモギっぽい!」
昨日銃を使った戦闘訓練をしていた時、植物の生態系が違うと思うのでヨモギかどうかは分からないが、似たような葉が少量生えていた。
鑑定術をしたら食べられるようなので、ケイはその野草を手に入れた。
植物脂は無かったので昆布だしで煮た吸い物にしたのだが、子供の味覚にはかなり苦く感じた。
銃の訓練は様になって来ており、動きながらでも的に当てることができるようになってきた。
そんなこんなで、橋ができてからもう2週間ほど経っていた。
「橋作った意味ないな……」
西にある陸地は、ケイが拠点にしている島と比べればかなりの大きさ。
野草も果樹も期待ができるのでなるべく行きたいのだが、人や魔物の存在がネックになっている。
どちらが相手でも、逃げ足が遅ければ捕まってしまうかもしれない。
アンヘルは武術の基礎を父や叔父に教わっていたので、魔法同様訓練は欠かさないでやっている。
それに加えて、海岸の砂場を利用した脚力強化もしているが、こればかりは一朝一夕で解決するような問題でもない。
「やっぱ広いな……」
10月に入る少し前、ケイは拠点にしている小島から組み立て式の橋を使って西にある陸地に来た。
目の前に広がる景色は、かなり遠くまで樹木が茂っている。
探知術も毎日の魔法の練習で少しずつ広がっている。
安全を考え、組立式の橋の側から離れず探知術で周囲を見渡す。
「いないな……」
魔物は危険だがメリットが多い。
食材にもなるものもいるし、道具を作るときの錬金術に必要な魔石も手に入る。
それに、分かりにくいが魔物を倒せば肉体も強化される。
一歩間違えば命を失いかねないが、今のケイにはいいことづくめだ。
逃げ足問題は一応解決した。
銃の練習をしていた時に思いついたことだが、魔力を纏うだけでただの銀玉鉄砲が銃並の威力が出る。
それを自分の肉体にやったらどうなるかが気になったため、少し試してみることにした。
最初なので魔力を少量に足に纏わせてみた。
その状態を維持して動いてみたら、移動速度が上がった。
「これは…………使える!」
少量の魔力でこれなら、多くの魔力を纏わせればもっと早く移動できるのではないか。
そう考えたケイは、纏う魔力の量を増やして試す。
思った通り、魔力を増やせば速度はあがった。
最高で前世の時に近いレベルの速度が出せた。
だが、制御が難しく、魔力を足に集めるまで時間が掛かる。
それに、
「使えるけど…………疲れる」
難しい魔力の制御で精神的疲労を伴う上に、使った後には肉体的疲労も伴った。
これまで魔法を使っていた時は、肉体を動かすためではなかったので気が付かなかったが、魔力を使って肉体強化した場合の反動がここまであるとは思わなかった。
技術的にも肉体的にも慣れないせいかどっと疲れた。
「5歳の肉体には負担が大きいのかな?」
肉体的疲労の原因ですぐに思いついたのは、今の自分は5歳の体であるということだ。
5歳で高校生並みの速度が出せるなんて異常なことだ。
その反動が何もないというのは、考えればありえないことだろう。
肉体強化をした翌日、ケイは筋肉痛で足がプルプルして動くのがかなりつらかった。
筋肉痛でヒイヒイ言ってるケイに、キュウも心配そうな顔をしていた。
「よし! 訓練の成果を見せるぞ!」
結果、魔力での肉体強化は逃走時のみ使うことにした。
練習はしているが、魔力を集めるのにまだ少し時間が掛かる。
それは向上した銃の腕でなんとか補うつもりだ。
「あっ! 早速スライムが……」
当然どんな魔物がいるか分からないので、ケイは探知術で周辺を捜索してから進み始めた。
すると、早くもスライムを発見した。
アンヘルの知識から、スライムは世界中どこにでも存在すると言われるほど繁殖力が強いらしい。
頻繁に会うのもそう言ったことからなのかもしれない。
「ハッ!」
“ジュッ!”
探知術でちゃんと距離のある状態で発見したので、これまで通り火魔法を放って蒸発させる。
「前よりかは発動速度が早くなったかな?」
銃や肉体強化をするために魔力を一か所へ集める練習を良くしていたからだろうか。
火魔法を放つまでの速度が上昇したように感じる。
これならスライム位なら2、3匹同時に相手にしてもなんとかなるかもしれない。
ここにはスライムが多いのか、もう一匹スライムを発見して倒し、ケイは拠点に戻っていった。
10
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
夫が正室の子である妹と浮気していただけで、なんで私が悪者みたいに言われないといけないんですか?
ヘロディア
恋愛
側室の子である主人公は、正室の子である妹に比べ、あまり愛情を受けられなかったまま、高い身分の貴族の男性に嫁がされた。
妹はプライドが高く、自分を見下してばかりだった。
そこで夫を愛することに決めた矢先、夫の浮気現場に立ち会ってしまう。そしてその相手は他ならぬ妹であった…
夢の硝子玉
ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
少年達がみつけた5色の硝子玉は願い事を叶える不思議な硝子玉だった…
ある時、エリオットとフレイザーが偶然にみつけた硝子玉。
その不思議な硝子玉のおかげで、二人は見知らぬ世界に飛ばされた。
そこは、魔法が存在し、獣人と人間の住むおかしな世界だった。
※表紙は湖汐涼様に描いていただきました。
転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい
高木コン
ファンタジー
第一巻が発売されました!
レンタル実装されました。
初めて読もうとしてくれている方、読み返そうとしてくれている方、大変お待たせ致しました。
書籍化にあたり、内容に一部齟齬が生じておりますことをご了承ください。
改題で〝で〟が取れたとお知らせしましたが、さらに改題となりました。
〝で〟は抜かれたまま、〝お詫びチートで〟と〝転生幼女は〟が入れ替わっております。
初期:【お詫びチートで転生幼女は異世界でごーいんぐまいうぇい】
↓
旧:【お詫びチートで転生幼女は異世界ごーいんぐまいうぇい】
↓
最新:【転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい】
読者の皆様、混乱させてしまい大変申し訳ありません。
✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -
――神様達の見栄の張り合いに巻き込まれて異世界へ
どっちが仕事出来るとかどうでもいい!
お詫びにいっぱいチートを貰ってオタクの夢溢れる異世界で楽しむことに。
グータラ三十路干物女から幼女へ転生。
だが目覚めた時状況がおかしい!。
神に会ったなんて記憶はないし、場所は……「森!?」
記憶を取り戻しチート使いつつ権力は拒否!(希望)
過保護な周りに見守られ、お世話されたりしてあげたり……
自ら面倒事に突っ込んでいったり、巻き込まれたり、流されたりといろいろやらかしつつも我が道をひた走る!
異世界で好きに生きていいと神様達から言質ももらい、冒険者を楽しみながらごーいんぐまいうぇい!
____________________
1/6 hotに取り上げて頂きました!
ありがとうございます!
*お知らせは近況ボードにて。
*第一部完結済み。
異世界あるあるのよく有るチート物です。
携帯で書いていて、作者も携帯でヨコ読みで見ているため、改行など読みやすくするために頻繁に使っています。
逆に読みにくかったらごめんなさい。
ストーリーはゆっくりめです。
温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く
ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの…
乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。
乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い!
原作小説?1巻しか読んでない!
暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。
だったら我が道を行くしかないじゃない?
両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。
本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。
※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました)
※残虐シーンは控えめの描写です
※カクヨム、小説家になろうでも公開中です
世界樹を巡る旅
ゴロヒロ
ファンタジー
偶然にも事故に巻き込まれたハルトはその事故で勇者として転生をする者たちと共に異世界に向かう事になった
そこで会った女神から頼まれ世界樹の迷宮を攻略する事にするのだった
カクヨムでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる