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第1章

第9話

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「なかなか見つからないな……」

 錬金術で物を作るには魔石が必要になる。
 前回は運よく冬眠中の蛙の魔物を見つけ、仕留めることで難なく魔石手に入れたが、同じことを期待して今日も転がってる石をどかしてカエルを探すが見つからない。
 釣りに使う餌が増えるだけだ。

「これだけ人の気配がしないってことは、もしかして近くに人は住んでいないのか?」

 魔石を手に入れるため、拠点を中心に少しずつ行動範囲を増やしていっているが、いまだに人の気配が全くない。
 拠点の近くには人が住んでいない可能性が高いようだ。
 冬眠中だから魔物も少なく、もしかしたら住処には適しているのかもしれない。
 ある意味運が良かったのだろうか。
 人や魔物が少ないのは、戦闘力に不安が残る今のケイにはいいことだが、春になったら野草が取れ、食材になる捕まえやすい魔物がいてほしいところだ。
 まあ、それももう2~3週間ぐらいしたら分かることだ。

「従魔がほしいな……」“ビクッ!”

 ケイは独り言のように呟いた。
 それにポケットの中のキュウも反応する。
 先程も言ったように、もう少ししたらここは春。
 今のケイにとっては重要食材のじゃがいもを、拠点の側に畑をつくって植えようと考えている。
 しかし、拠点周辺の探索をもっとしたいし、今メインの食材となっている魚も数日おきに釣りにもいかなくてはならない。
 拠点から離れている内に魔物や動物に掘り返されたら堪ったもんではない。
 その間の見張りをしてくれる従魔が必要だと考えていた。

「あまり強いと俺が危ないし、かといって弱いと他の魔物にすぐやられちゃうだろうし……困ったな」

 前世でも松田家では犬を飼っていた。
 それに、異世界といったら狼系の魔物が出てくる作品が多い。
 モフモフも期待できるし、やっぱり犬や狼系の魔物を従魔にしたい。

「ん?」

“ウルウル……”

 犬や狼系の魔物を従魔にしたいと考えていたケイのポケットの中で、キュウが自分を見上げながら大粒の涙を溜めている姿が見えた。

「どうした?」

 何があったのか分からないケイは、ポケットからだした手のひらの上のキュウに問いかけた。

「…………もしかして捨てられると思ったのか?」

“……コクッ!”

 考えてみたらさっきの独り言を聞いていたのだろうか。
 キュウが泣きそうになることといえば、ケイの保護から外されること。
 そう考えて問いかけると、どうやら正解のようだ。

「大丈夫だよ。お前も大事な家族だ」

「っ!?」

 ケイが軽く撫でながらいうと、キュウは嬉しそうな表情に変わった。

“スリスリ”

 ケイの発言がよっぽど嬉しかったのか、撫でていたケイの指にすり寄って来た。
 精神は18歳、ほぼ成人。
 サバイバル状態の今を楽しんでいる部分もあるが、誰にも頼れない、魔物や人間にいつ命を狙われるか分からない現状に不安も尽きない。
 フワフワな感触のキュウの毛並みは、ケイにとって唯一の心の安らぎになっている。
 だから今更手放すつもりはない。

「……それはそれとして、従魔がほしいな……」“ビクッ!”





◆◆◆◆◆

「っ!?」

 冬眠中の魔物と従魔に出来そうな魔物を探していたが、なかなか見つからないでいたケイの視界に、モゾモゾと動く物が目に入った。

「これがスライム?」

 従魔といったらスライム。
 姿次第で従魔にしようと考えていたケイだったが、はっきり言ってあまり可愛くない。
 ドラ◯エのみたいな姿を期待していたで、F◯に近いの感じの姿にケイの気分は萎える。

「っ!?」

 スライムの方もケイの姿を確認したのか、移動方向を変えてケイに向かって来た。

「わっ!? 思ったより早い!?」

 初めての遭遇は、距離があって良かった。
 大人ならば逃げ切れる速度かもしれないが、子供のケイでは逃げ切れるか怪しいところだ。
 しかし、速いと言っても距離がある。
 十分対処できる速度だ。

「ハッ!」

 スライムが迫るがケイは慌てない。
 毎日の練習を思い出し、しっかり集中して魔力を手に集める。
 液体っぽい肉体のスライムなら火が効くだろう。
 そう判断したケイは魔力を火に変え、火事にならないように、しっかり樹々と距離がある場所まで来たところで火の玉をスライムに発射した。
 スライムもケイがこれほどの魔法を放つとは想っていなかったのか、避ける間もなく着弾した。
 着弾したスライムは、あっという間に蒸発し、あとには小さい魔石が残っていた。

「魔石ゲッツ!」

 スライムの姿は残念だったが、ようやく魔石を1個手に入れられた。
 ケイは嬉しくてテンションが上がった。 



「おわっ!?」

 1日費やして1個ではわりに合わないので、せめてもう1個と冬眠中の蛙を中心に探していたのだが、蛙と同じく冬眠中らしい魔物を発見した。
 セルピエンテと呼ばれる蛇の魔物らしい。
 とぐろを巻いているが、結構でかい。

「……カエルより肉ありそう」

 たった数日でケイもたくましくなっているようで、蛇が完全に食材扱いになっていた。
 蛙と同様に、蛇も冬眠中らしく動かない。

「やっ!」

 寝ていて動かないのを好機とみたケイは、慎重に近付き、頭にナイフを一突きした。
 見事に脳天を突き刺したことで仕留められ、魔法の指輪に収納できた。

「よし! 今日はもう帰ろう」

 冬眠中の魔物とは言っても、あまり欲張って怪我はしたくない。
 今日の所はここまでにして、ケイは拠点に帰ることにした。



「蛇は毒がありそうだからちゃんと鑑定しないとな」

 蛙よりも、蛇の調理は気分的には楽だった。
 魚が捌けるのだから、ケイは蛇をウナギだと思うようにして捌いた。
 鑑定したら毒はないらしく、どうやら食べられるようだ。
 皮と内蔵は、捨てるならとキュウが欲しがったのであげることにした。
 見た感じ、毒はないけど不味そうだ。
 もしかしたら、ケイ同様いつ食事ができるか分からないことを想定して、キュウが何でも食べるようにしているのかと思った。

“モグモグッ!”

 普通に食べてる様子を見ると、キュウは関係なく内臓が好きなのかもしれない。
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