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第1章
第6話
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“ポフポフッ!”
「ん~っ? あぁ、キュウか?」
ここに辿り付いて3日目の朝、頬に弾むような感触を感じて目を覚ますと、黒い毛玉が視界に入った。
昨日ケイが従魔にしたケセランパサランという種類の魔物だ。
「おはよう」
“ピョン! ピョン!”
ケイが起きて挨拶すると、キュウは元気に飛び跳ねた。
どうやらキュウは、口はあるが鳴き声などは出せないようだ。
ケイの言葉には体を動かして反応してくれるので、それで判断している。
「今日も魚で良いか?」
“コクコクッ!”
食べ物がもらえるのが嬉しいからか、キュウは小さい体を縦に動かし頷いた。
昨日釣った魚しか食べる物はないのでしょうがないのだが、キュウは気にした様子はないようだ。
魚を焼いている間にケイは顔を洗ったりしていたが、キュウは楽しそうに少しずつ焼ける魚を眺めていた。
昨日のうちにエルフの禁忌を全部破ったことで、ケイは何か体に異変が起きていないか確認したのだが、特に何も起きていない。
それどころか、ちゃんと食事ができたからか調子はいい方だ。
「はいよ! 熱いから気を付けろよ」
体調確認を終えたケイは、ちょうど焼けた魚をキュウに差し出した。
それを元気に食べだしたキュウを眺めながら、ケイも魚を食べ始めた。
「よしっ! 魔法の練習しよう!」
焼いた魚で朝食を終えたケイは、寝床にしている洞窟の側で魔法の練習を始めた。
これも単純に食料調達のためというのが大きい。
昨日、一昨日とケイはキュウ以外の魔物に会うことはなかった。
8月とは言っても南半球に位置するここは冬で、どこかで冬眠でもしているのだろうか。
とはいえ、人も含めていつ遭遇するか分からない。
昨日釣った魚があるので少しは余裕が出来た。
今のうちに魔法の練習しておこうと考えたのだ。
それに、魚ばかりでは栄養が気になる。
冬に野草や木の実などは期待はあまりできないが、何かしらは見つかるはずだ。
探している時に魔物や人間に遭遇した時、攻撃・逃走の手段にもなるだろう。
魔法を使えることにワクワクしているのも大きいかもしれない。
「魔法の書……あった」
魔法の指輪の中には魔法の書が入っていた。
書といっても羊皮紙に手書きで書かれた物を束にしているだけの物だが、アンヘルにとってはとても大切なものだ。
人族に追われる脅威から逃げながら、エルフたちが自ら集めた知識だ。
どうやらアンヘルは基礎的なことは練習してできるようになっていたようだ。
エルフの禁忌があるからか、魔法で攻撃するという練習はしていないらしく、どれほどの魔法がどこまで使えるかはわかっていない。
「まずはどれだけの種類が使えるんだろ?」
これまでは焚火をするための着火で火魔法を、飲み水や洗顔、体を拭くために水魔法を、寝床の作成に土魔法を使った。
しかし、それ以外の魔法が使えるかは検証していない。
そのため、よくある雷や氷、風なんかを試してみることにした。
「……全部使えそうだな。……まぁ、そうか」
近くの樹を的にして軽めに試して見たが、どれも問題なく使用できた。
あまりにあっさりできることから、拍子抜けした感覚だ。
よく考えてみると、アンヘルが魔力のコントロールという基礎を練習していたからできたことなので、自分の実力とは言い難いことに気付いた。
“モゾモゾッ!”
「ん? あぁ、お昼か?」
ケイが検証している間、ポケットの中に入って大人しくしていたキュウが動き出したので何事かと思ったが、太陽が高くなっていることに気付いた。
集中していたとはいえ、時間が経つのは早いものだ。
「あっ! 鑑定の仕方が載ってる」
またも焼き魚を昼食にし、休憩がてら魔法の書を見ていたらケイにとって重要な技術が載っていた。
食べられる野草と食べられない野草は、アンヘルの頭にはある程度入っている。
とはいっても5歳の知識、しかも地理的にいままでいた人族の大陸とは植物の生態系も異なるだろう。
間違って毒草を口に入れる可能性もある。
しかし、この技術を使えるようになればその可能性がなくなる。
「まずはこれができるようにならないとな」
食料確保にこれは必須。
そう判断したケイは、早速鑑定術の練習を開始した。
「これでも食うか?」
ケイが鑑定術を練習していた頃、キュウがポケットの中で暇そうにしていたので、昨日取って置いた魚の骨をおやつ代わりに与えてみた。
“ピョン! ピョン!”
キュウは骨まで食べるのでいつも何も残さないが、ちゃんと味覚があるらしく身の方が好きだ。
だが、骨や頭も嫌いではないらしく、キュウは嬉しそうに体を弾ませた。
「…………今日はもう終わりにしよう」
一日練習したことで少し時間が掛かるが鑑定術の方は使えるようになった。
日も暮れ始めたことだし、もう今日は終了することにした。
「そうだ! 最後に一発思いっきり魔法を放ったらどれくらいの威力があるか試してみよう」
細かい魔力の制御で、ケイは少々ストレスが溜まっていた。
なので、全力の一撃がどうなるのか試してスッキリしたかった。
「ハァ~……」
まだ魔力のコントロールに慣れていないからか、魔力を手に集めるのに少し時間が掛かるが、ケイは魔力を集めることに集中する。
「ハッ!!」
燃え広がったら困るので放つ魔法は水属性。
集めた魔力を水に変え、高速で発射するように魔法を放った。
“ボカン!!”
「………………えっ?」
5歳児が放つ水魔法だから、大した威力が出るとはケイは思わなかった。
しかし、放たれた水の球が的にした樹に当たると樹はへし折れ、その後方の樹にも当たって爆発するように散った。
予想位以上の威力を目の当たりにし、ケイは目を見開いて固まった。
“プルプル……”
その後ろでのんびり眺めていたキュウも、主人の魔法にビックリし過ぎて震えていた。
「ん~っ? あぁ、キュウか?」
ここに辿り付いて3日目の朝、頬に弾むような感触を感じて目を覚ますと、黒い毛玉が視界に入った。
昨日ケイが従魔にしたケセランパサランという種類の魔物だ。
「おはよう」
“ピョン! ピョン!”
ケイが起きて挨拶すると、キュウは元気に飛び跳ねた。
どうやらキュウは、口はあるが鳴き声などは出せないようだ。
ケイの言葉には体を動かして反応してくれるので、それで判断している。
「今日も魚で良いか?」
“コクコクッ!”
食べ物がもらえるのが嬉しいからか、キュウは小さい体を縦に動かし頷いた。
昨日釣った魚しか食べる物はないのでしょうがないのだが、キュウは気にした様子はないようだ。
魚を焼いている間にケイは顔を洗ったりしていたが、キュウは楽しそうに少しずつ焼ける魚を眺めていた。
昨日のうちにエルフの禁忌を全部破ったことで、ケイは何か体に異変が起きていないか確認したのだが、特に何も起きていない。
それどころか、ちゃんと食事ができたからか調子はいい方だ。
「はいよ! 熱いから気を付けろよ」
体調確認を終えたケイは、ちょうど焼けた魚をキュウに差し出した。
それを元気に食べだしたキュウを眺めながら、ケイも魚を食べ始めた。
「よしっ! 魔法の練習しよう!」
焼いた魚で朝食を終えたケイは、寝床にしている洞窟の側で魔法の練習を始めた。
これも単純に食料調達のためというのが大きい。
昨日、一昨日とケイはキュウ以外の魔物に会うことはなかった。
8月とは言っても南半球に位置するここは冬で、どこかで冬眠でもしているのだろうか。
とはいえ、人も含めていつ遭遇するか分からない。
昨日釣った魚があるので少しは余裕が出来た。
今のうちに魔法の練習しておこうと考えたのだ。
それに、魚ばかりでは栄養が気になる。
冬に野草や木の実などは期待はあまりできないが、何かしらは見つかるはずだ。
探している時に魔物や人間に遭遇した時、攻撃・逃走の手段にもなるだろう。
魔法を使えることにワクワクしているのも大きいかもしれない。
「魔法の書……あった」
魔法の指輪の中には魔法の書が入っていた。
書といっても羊皮紙に手書きで書かれた物を束にしているだけの物だが、アンヘルにとってはとても大切なものだ。
人族に追われる脅威から逃げながら、エルフたちが自ら集めた知識だ。
どうやらアンヘルは基礎的なことは練習してできるようになっていたようだ。
エルフの禁忌があるからか、魔法で攻撃するという練習はしていないらしく、どれほどの魔法がどこまで使えるかはわかっていない。
「まずはどれだけの種類が使えるんだろ?」
これまでは焚火をするための着火で火魔法を、飲み水や洗顔、体を拭くために水魔法を、寝床の作成に土魔法を使った。
しかし、それ以外の魔法が使えるかは検証していない。
そのため、よくある雷や氷、風なんかを試してみることにした。
「……全部使えそうだな。……まぁ、そうか」
近くの樹を的にして軽めに試して見たが、どれも問題なく使用できた。
あまりにあっさりできることから、拍子抜けした感覚だ。
よく考えてみると、アンヘルが魔力のコントロールという基礎を練習していたからできたことなので、自分の実力とは言い難いことに気付いた。
“モゾモゾッ!”
「ん? あぁ、お昼か?」
ケイが検証している間、ポケットの中に入って大人しくしていたキュウが動き出したので何事かと思ったが、太陽が高くなっていることに気付いた。
集中していたとはいえ、時間が経つのは早いものだ。
「あっ! 鑑定の仕方が載ってる」
またも焼き魚を昼食にし、休憩がてら魔法の書を見ていたらケイにとって重要な技術が載っていた。
食べられる野草と食べられない野草は、アンヘルの頭にはある程度入っている。
とはいっても5歳の知識、しかも地理的にいままでいた人族の大陸とは植物の生態系も異なるだろう。
間違って毒草を口に入れる可能性もある。
しかし、この技術を使えるようになればその可能性がなくなる。
「まずはこれができるようにならないとな」
食料確保にこれは必須。
そう判断したケイは、早速鑑定術の練習を開始した。
「これでも食うか?」
ケイが鑑定術を練習していた頃、キュウがポケットの中で暇そうにしていたので、昨日取って置いた魚の骨をおやつ代わりに与えてみた。
“ピョン! ピョン!”
キュウは骨まで食べるのでいつも何も残さないが、ちゃんと味覚があるらしく身の方が好きだ。
だが、骨や頭も嫌いではないらしく、キュウは嬉しそうに体を弾ませた。
「…………今日はもう終わりにしよう」
一日練習したことで少し時間が掛かるが鑑定術の方は使えるようになった。
日も暮れ始めたことだし、もう今日は終了することにした。
「そうだ! 最後に一発思いっきり魔法を放ったらどれくらいの威力があるか試してみよう」
細かい魔力の制御で、ケイは少々ストレスが溜まっていた。
なので、全力の一撃がどうなるのか試してスッキリしたかった。
「ハァ~……」
まだ魔力のコントロールに慣れていないからか、魔力を手に集めるのに少し時間が掛かるが、ケイは魔力を集めることに集中する。
「ハッ!!」
燃え広がったら困るので放つ魔法は水属性。
集めた魔力を水に変え、高速で発射するように魔法を放った。
“ボカン!!”
「………………えっ?」
5歳児が放つ水魔法だから、大した威力が出るとはケイは思わなかった。
しかし、放たれた水の球が的にした樹に当たると樹はへし折れ、その後方の樹にも当たって爆発するように散った。
予想位以上の威力を目の当たりにし、ケイは目を見開いて固まった。
“プルプル……”
その後ろでのんびり眺めていたキュウも、主人の魔法にビックリし過ぎて震えていた。
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