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第 63 話
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「死ね!!」
この部屋は動き回れるほど広い。
かといって、人同士の距離はそこまで離れていない。
そんな室内で魔法を放てば、すぐさま対象に当たる。
そのため、不意打ちで火球魔法を放ったリーダーらしき男は、他の敵に目を向けていたセラフィーナを仕留めたと思って笑みを浮かべた。
「…………」
火球が迫る中、セラフィーナは特に表情を変化させない。
“フッ!!”
「な、何っ!?」
セラフィーナが表情を変えなかった理由。
それは、火球が自分に当たらないと分かっていたからだ。
その思いの通り、セラフィーナの顔面手前で飛んできていた火球が消失した。
驚いたのは、リーダーらしき男の方だ。
自分の攻撃魔法によって、セラフィーナを仕留められると確信していたのに、予想外の結果になったためだ。
「……返すわ」
「なっ!?」
セラフィーナが小さく呟くと、どこからともなく出現した火球がリーダーらしき男の方へと飛んでいった。
何をしたのか分からない。
そのため、リーダーらしき男は戸惑いの言葉と共にその場から飛び退き、返ってきた火球を回避した。
「こいつっ!!」
魔法攻撃で仕留められると思っていただけに、リーダーらしき男は予想外の結果に怒りの表情を浮かべた。
「っっっ!?」
「……あんた、分析力ないわね……」
リーダーらしき男が戸惑っていると、セラフィーナはもう目の前に迫っていた。
そして、セラフィーナはリーダーらしき男に呟くと共に、握った拳を振りかぶっていた。
「ヌンッ!!」
「うごっ!!」
リーダーらしき男の腹にセラフィーナの拳がめり込む。
その一撃で男は白目をむいて前のめりに倒れ、気を失った。
「闇魔法の使い手を相手に、あの程度の火球で倒せるなんて良く思ったわね……」
埃を払うかのように手を叩きつつ、セラフィーナは倒れたリーダーらしき男に向けて呆れたように呟いた。
気を失っているのは分かっているので、聞こえているとは思えないため、ただの独り言だ
「影収納は生物以外収納できる。魔法だって例外じゃないって分かっているでしょうに……」
セラフィーナがリーダーらしき男に分析力がないと言ったのは、このことからだ。
影収納は生物を入れることができない。
言い換えれば、生物以外はなんでも影の中に入れてしまえる。
魔法もその例外ではないことは、ある程度の戦闘経験があれば理解できることだ。
闇魔法は魔力をかなり消費するため、戦闘で使用する人間は少ないとはいっても、そのことに頭が働いていない時点でセラフィーナの勝利が確定したと言っていいだろう。
「終わったようだな……」
「エル様!!」
部屋にいる者達を全て動けなくして一息吐いたセラフィーナに、どこからともなく現れたエルヴィーノが話しかける。
普通ならそのことに驚きの声くところだが、いつものことなのか、セラフィーナは特に動揺することなく、エルヴィーノに嬉しそうな声を上げた。
「人質は?」
「居た。拘束されていたから、解放して一部屋に集まってもらっている」
「そうですか」
セラフィーナが誘拐犯の討伐を担当したように、エルヴィーノは人質の解放の担当を請け負った。
見張りなどがいた場合、当然抵抗される。
人質のことを守りながら戦うとなると、エルヴィーノの方が手早く見張りなどを仕留めることができると判断しての役割分担だ。
探知で分かっていたこともあり、エルヴィーノが向かった方には3人の見張り役が存在していた。
しかし、たった3人の見張りなど、エルヴィーノからすれば赤ん坊のオルフェオを抱っこしたままでも相手にならない。
そのため、あっという間に見張りを昏倒させ、人質となっている者達を解放したそうだ。
思った通りの結果に、セラフィーナは納得の頷きを返した。
「……ちゃんと生きているよな?」
「……はい。たぶん……」
盗賊を討伐する場合、たとえ殺してしまっても罪に問われないというのがこの世界の常識だ。
今回の場合、人質もいたことから、この者達を殺してしまってもセラフィーナが罪に問われることはないだろう。
しかし、ここにいる者達が、どうして冒険者たちを誘拐をしたのかが分からない。
もしかしたら、背後に指示を出した者がいるかもしれないため、生かして捕らえることが求められた。
そのことはセラフィーナも分かっていたはずなのだが、激しい戦闘が行われたこともあり、部屋の中は血まみれになっている。
その血の量に、エルヴィーノは全員殺してしまったのではないかと思えたため、問いかけたのだ。
その問いに対し、セラフィーナは自信なさげに返答する。
一応手加減をしたのだが、思った以上に血が飛び散っていたためだ。
「……とりあえず、俺がこいつらを縛って集めておく。セラは町に戻って、衛兵や【鷹の羽】のメンバーを呼んできてくれ」
「分かりました!」
洞窟内にいた者の制圧は完了した。
人質のことや、この者たちの護送するためにも人手がいるため、エルヴィーノはセラフィーナに指示を出す。
それを受けたセラフィーナは、元気に返事をしてその場から消え去った。
この部屋は動き回れるほど広い。
かといって、人同士の距離はそこまで離れていない。
そんな室内で魔法を放てば、すぐさま対象に当たる。
そのため、不意打ちで火球魔法を放ったリーダーらしき男は、他の敵に目を向けていたセラフィーナを仕留めたと思って笑みを浮かべた。
「…………」
火球が迫る中、セラフィーナは特に表情を変化させない。
“フッ!!”
「な、何っ!?」
セラフィーナが表情を変えなかった理由。
それは、火球が自分に当たらないと分かっていたからだ。
その思いの通り、セラフィーナの顔面手前で飛んできていた火球が消失した。
驚いたのは、リーダーらしき男の方だ。
自分の攻撃魔法によって、セラフィーナを仕留められると確信していたのに、予想外の結果になったためだ。
「……返すわ」
「なっ!?」
セラフィーナが小さく呟くと、どこからともなく出現した火球がリーダーらしき男の方へと飛んでいった。
何をしたのか分からない。
そのため、リーダーらしき男は戸惑いの言葉と共にその場から飛び退き、返ってきた火球を回避した。
「こいつっ!!」
魔法攻撃で仕留められると思っていただけに、リーダーらしき男は予想外の結果に怒りの表情を浮かべた。
「っっっ!?」
「……あんた、分析力ないわね……」
リーダーらしき男が戸惑っていると、セラフィーナはもう目の前に迫っていた。
そして、セラフィーナはリーダーらしき男に呟くと共に、握った拳を振りかぶっていた。
「ヌンッ!!」
「うごっ!!」
リーダーらしき男の腹にセラフィーナの拳がめり込む。
その一撃で男は白目をむいて前のめりに倒れ、気を失った。
「闇魔法の使い手を相手に、あの程度の火球で倒せるなんて良く思ったわね……」
埃を払うかのように手を叩きつつ、セラフィーナは倒れたリーダーらしき男に向けて呆れたように呟いた。
気を失っているのは分かっているので、聞こえているとは思えないため、ただの独り言だ
「影収納は生物以外収納できる。魔法だって例外じゃないって分かっているでしょうに……」
セラフィーナがリーダーらしき男に分析力がないと言ったのは、このことからだ。
影収納は生物を入れることができない。
言い換えれば、生物以外はなんでも影の中に入れてしまえる。
魔法もその例外ではないことは、ある程度の戦闘経験があれば理解できることだ。
闇魔法は魔力をかなり消費するため、戦闘で使用する人間は少ないとはいっても、そのことに頭が働いていない時点でセラフィーナの勝利が確定したと言っていいだろう。
「終わったようだな……」
「エル様!!」
部屋にいる者達を全て動けなくして一息吐いたセラフィーナに、どこからともなく現れたエルヴィーノが話しかける。
普通ならそのことに驚きの声くところだが、いつものことなのか、セラフィーナは特に動揺することなく、エルヴィーノに嬉しそうな声を上げた。
「人質は?」
「居た。拘束されていたから、解放して一部屋に集まってもらっている」
「そうですか」
セラフィーナが誘拐犯の討伐を担当したように、エルヴィーノは人質の解放の担当を請け負った。
見張りなどがいた場合、当然抵抗される。
人質のことを守りながら戦うとなると、エルヴィーノの方が手早く見張りなどを仕留めることができると判断しての役割分担だ。
探知で分かっていたこともあり、エルヴィーノが向かった方には3人の見張り役が存在していた。
しかし、たった3人の見張りなど、エルヴィーノからすれば赤ん坊のオルフェオを抱っこしたままでも相手にならない。
そのため、あっという間に見張りを昏倒させ、人質となっている者達を解放したそうだ。
思った通りの結果に、セラフィーナは納得の頷きを返した。
「……ちゃんと生きているよな?」
「……はい。たぶん……」
盗賊を討伐する場合、たとえ殺してしまっても罪に問われないというのがこの世界の常識だ。
今回の場合、人質もいたことから、この者達を殺してしまってもセラフィーナが罪に問われることはないだろう。
しかし、ここにいる者達が、どうして冒険者たちを誘拐をしたのかが分からない。
もしかしたら、背後に指示を出した者がいるかもしれないため、生かして捕らえることが求められた。
そのことはセラフィーナも分かっていたはずなのだが、激しい戦闘が行われたこともあり、部屋の中は血まみれになっている。
その血の量に、エルヴィーノは全員殺してしまったのではないかと思えたため、問いかけたのだ。
その問いに対し、セラフィーナは自信なさげに返答する。
一応手加減をしたのだが、思った以上に血が飛び散っていたためだ。
「……とりあえず、俺がこいつらを縛って集めておく。セラは町に戻って、衛兵や【鷹の羽】のメンバーを呼んできてくれ」
「分かりました!」
洞窟内にいた者の制圧は完了した。
人質のことや、この者たちの護送するためにも人手がいるため、エルヴィーノはセラフィーナに指示を出す。
それを受けたセラフィーナは、元気に返事をしてその場から消え去った。
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