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エピソード2【天才科学者の兄妹】
【10】
しおりを挟む「フフフッ」
してやったりといった顔で笑っているメガネの女性の姿があった。
(また、花梨さんだ! ハア……ほんと、おしゃべりな人だな……)
どうやら、犯人は花梨のようだ。
「い、いや、そんなことは……あ、ハハハ……」
ごまかすように笑うハルト。
その間も、チラチラと花梨に恨めしい視線を送るが、メガネ美人は気にもとめずに、にこやかな顔で笑うばかり。
ハルトは、その姿を横目で見つめながら、
(花梨さんに、あんまりペラペラ喋っちゃダメだな……)
と、固く心に誓っていた。
すると、慌てるハルトの姿を見た大臣は、にっこりと目を細め、大きな声で笑い始めた。
「ほっほっほっ、まあ、気にしとらんわ。 年寄りに加齢臭はつきもんじゃからのう」
「す、すみません……」
(ハア……つ、疲れた……)
ホッと息を吐き、落ち着きを取り戻すハルト。
大臣の心の広さに救われたようだ。
そして、笑い声がおさまり始めた時、
「いいか……」
大臣の表情が、国のトップの顔に変わり始めた。
「1つ約束してくれ……何百年か前の科学者が、地球から脱出した時の宇宙船を越えるような……最高の宇宙船を作ってくれ。同じ天才科学者として……」
「ええ……」
大臣の気持ちが伝わったのか、ハルトも真面目に答える。
──しかし。
無意識に頷いたハルトの一言を、レイナは見逃さない。
「あっ! 今、自分のこと天才って認めた!」
「え!?」
顔を真っ赤にして取り乱し始めるハルト。
「ち、違うよ! 今のは、その、天才じゃなくて、て、てんぷらって聞こえたんだよ! は、ははは!」
おぉぉぉ~~~~!!
かなり苦しい言い訳だ~~~~!!
そして、ハルトの言い訳をさらに見逃さない人物が!
それは、近藤だ!
ゆっくりとハルトの側に近づき、右手の甲でポンと胸を叩くと──
「なんでやねん」
つっこんだ~~~~!!
部屋の空気が、一瞬にして凍りついた。
しかし、近藤は、かなり満足そうな表情を浮かべている。
「吸収した知識は、活用していかないと意味がないので」
得意気に、そう言い放つ近藤。
そこには、1つの仕事をやり遂げたような凛々しい男の顔があった。
全員、唖然とただ、ただ、近藤を見つめている。
──しかし。
大臣だけは、表情が緩んでいない。
椅子から立ち上がると、
「実は……」
ハルトの肩に手を添えながら言った。
「今日来てもらったのは、1つ頼みたい事があるんじゃ……」
「なんですか?」
「アンドロイドの製造のことなんだが……」
「あぁ、順調ですよ」
嬉しそうに話し始めるハルト。
「目標だった人間に近いアンドロイドの製造に成功してからは、いろんなタイプのアンドロイドも開発できています」
さらに、テンションが上がり始める。
「本当に彼らはいい奴らで、それによく働いてくれるんですよ。でもなんかあいつらといると、人間と話しているような感覚になるんですよ。やはり感情システムを上手に成長させるには、人間の接し方が左右するように思いますね」
ハルトは、笑いながら楽しそうに喋っていた。
アンドロイドの話になると止まらない。
好きで好きでたまらない。
誰の目にも、明らかにそう映っていた。
しかし、大臣はその姿を見て、さらに話しづらそうに険しい表情を浮かべていた。
やがて、小さく息を吐き出すと──
「そのことなんだが……」
ゆっくりと口を開き始める。
「これからは、感情システムを搭載しているような高度なアンドロイドは作らないでくれ……働くだけのアンドロイドを作ってくれればいい」
「え?」
何だ?
何を言ってるんだ?
ハルトは耳を疑った。
聞き間違い?
軽いジョーク?
『なんでやねん』とつっこむ所?
そういう考えも頭をよぎる。
──だが。
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