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エピソード2【天才科学者の兄妹】

【7】

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そして近藤はネクタイの乱れを直し『フ~……』っと、ため息を1つつき始めた。

 眉間にシワを寄せて、かなり険しい表情になっている。


 「また地震ですね。近頃本当に多いですね」

 「…………」


その時──


大臣の顔は、真っ青になっていた。

 何も目に入らず、何も耳に聞こえてこない。

 大臣の表情は、そんな感じだった。


 「大臣、どうかされましたか?」


もちろん近藤は、自分の上司の異変にすぐに気がついた。

そして、近藤が大臣の肩にそっと手を添えると、


 「あっ、いや……」


その感触で、やっと我に返ることができた。


 「いや~、すまんすまん、わしは地震が苦手なんじゃ~」


ひげを触り、少しふざけたように笑う大臣。

 近藤もつられたように、少し笑みを浮かべる。


 「そうだったんですか。確かに、今の地震は大きかったですね」

 「本当に地震が多くなったのう……いや~、恐い恐い。情けない姿を見せてしまって、恥ずかしいわい」


キャスター付の黒い椅子を、部屋の大きな窓に向け、皆に背を向ける大臣。

 少しビクビクしたように話すその姿を見ると、本当に地震が恐ろしいのだろう。


そして、ハルトは、そんな大臣に遠慮がちに尋ね始めた


「あの、大臣……1つお願いがあるんですけど……」

 「なんじゃ?」

 「実は……僕の担当している工場でやってみたいことが……」

 「ああ……あの設計図のことか」

 「は、はい! 以前お渡しした、あの設計図です! ど、どうでした……?」


ハルトは目を見開いて、大臣の返答を待っている。

 緊張と胸の高鳴りを、抑え切れない。

しかし、レイナは、


 (えっ? 設計図……?)


 2人が話している内容が、まるで理解できていないのだろう。

 会話から取り残されたように、きょとんとしている。

そして大臣は、1回咳払いをすると、ゆっくりと口を開いた。


 「ハルトくん、あの設計図だが……それを見た感想は……」

 「は、はい……」


ハルトは不安そうな顔を浮かべ、心臓の鼓動がどんどんと早くなるのを感じていた。


だが、その瞬間、大臣の口から出た言葉は――


「感動した! 資金を出そう!! 君達のチームで宇宙船を作りたまえ!!」


 大臣は右手を突き上げて、恍惚とした表情を浮かべ感慨にふけっていた。


そしてハルトの中の嬉しさは、全て爆発し始めた。


 「本当ですか!? ありがとうございます! やったぞ、レイナ!」

 「え? え??」


だが、レイナは全く予想していない突然の出来事に、


 (う、宇宙船!?)


あっけに取られポカーンとしていた。


 「ほっほっほっ!」


しかし、大臣は、おかまいなしに続けて上機嫌で喋り始める。


 「さすが、あれだけのアンドロイドを作り出すだけのことはあるな。これで宇宙の隅々まで旅行が可能になるのう! ほっほっほっ! 資金はいくらでも出す。素晴らしい宇宙船を作ってくれ」

 「はい!」


 (やった! やったぞ!)


 手の震えが止まらないほど興奮するハルト。

 科学者の血が抑えられないのだろう。

そして、大臣はそんなハルトの肩をポンポンと叩き、気持ちを落ち着かせると、


 「いいかい、ハルトくん」


 少し真面目な顔つきで言った。


 「ただし、条件がある」

 「条件……? 何ですか?」

 「出来るだけ大きな宇宙船を作ってくれ。そして出来るだけ早く。その2つだ」

 「任せてください!」


ハルトは、力強く言った。


 「全人口を乗せられるくらいの宇宙船を作っちゃいますよ!」

 「ほっほっほっ、頼もしいの。天才科学者と呼ばれるにふさわしい宇宙船を作ってくれたまえ」


ハルトの自信満々な言葉を聞いて、さらに上機嫌になる大臣。

 自慢のヒゲを触りながら、実に楽しそうだ。



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