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エピソード2【天才科学者の兄妹】

【6】

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「ほっほっほっ、にぎやかじゃのう」


 自慢の口ひげを手で触りながら現れる姿は威厳たっぷりだ。

 大きく出っ張ったお腹とスキンヘッドに近い頭が、さらに大臣としてのオーラを作り出しているように見える。

そして、そのオーラにハルトは少し飲まれかけていた。

 初対面でないとはいえ、やはり国のトップに位置する人物だからだろう。

 一気に体中に緊張が走り始め、頭の先から足の先までカチコチに固まってしまった。


 「あっ! だ、大臣、お久しぶりです!」


 出てくる言葉も、普段より1オクターブ上がっているようにうわづっている。


 「お~、ハルトくん、元気じゃったか?」

 「はい!」

 「すまんな、わざわざ来てもらったのに待たせてしまって。先客がいてな」

 「あっ、いえ、僕たちのことならお構いなく」


ハルトは、まるで借りてきた猫のように小さくなっている。

そして大臣が革張りの黒い椅子に腰をかけ、用件を話し出そうとしたその時、


ゴゴゴゴォォ……――――


地響きをうねらせながら、地震が襲ってきた。

 天井のシャンデリアの揺れ具合を見ても、かなりの震度があるのは間違いない。


 「きゃぁぁぁぁ!!」


 一際、恐怖に怯える声を張り上げたのはレイナだった。

もはや自分の足では立っていられない。

その証拠に、ハルトの肩にしがみつきブルブルと震えだしていた。


 「レイナ!」


そんな妹を、ハルトは包み込むようにそっと抱きしめる。

 『大丈夫だ、安心しろ』とばかりに、悪魔が去りゆくまでやさしく抱きしめる。


 大丈夫だ!――

大丈夫だから!――


やがて、恐ろしい悪魔は満足したのだろう。

 思う存分暴れると、再び深い眠りについていった。

その空間は何もなかったように、徐々に静けさを取り戻していく。


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