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⑦
しおりを挟む──3日後。
「あ~あ、牛丼にもあきたな~」
今日は仕事は休み。
昼に牛丼を買ってきた俺は、まず、炊飯器でご飯だけを炊き、牛丼の具を半分ずつ昼と夜で分けることにした。
全く困ったことに、最近のスローガンは『動くな、腹が減る』って感じになってしまっている。
とにかく、お金もなければ出かけるところもない。
夕方まで一眠りするか。
俺はそう思い、ベッドに向かった。
すると、その時、
「ねえねえ、えいじちゃん」
ジェリックが話しかけてきた。
「そろそろ、貯金箱使ってみたら?」
「ああ、また今度な」
俺はゴロンとベッドに横たわり、軽く受け流した。
慣れっていうのは恐ろしい。
3日前に初めて、このニューハーフ幽霊、ジェリックに出会ってから、この部屋で普通に日常を過ごしているんだから。
だって、幽霊といっても、全く恐くはないもんな。
逆に、話し相手ができて楽しいぐらいだ。
「ねえねえ」
ジェリックは俺の肩をトントンと叩いた。
「早く、貯金箱活用してよ~」
「ていうか、ほんとに効果あるのかよ?」
「当たり前でしょ!」
ジェリックは声を荒げた。
「あたしはそんじょそこらの幽霊じゃないのよ! すっごい魔法を使えるって言ったでしょ!」
「う~ん」
実は、この3日間、まだこの貯金箱を使っていない。
正直言うと、入れるお金がもったいないというのが本音だ。
毎日の食事にも困っているのに、そんな余裕は生まれなかった。
「う~ん……」
でも、まあ……常にジェリックも催促してくるしな……貯金箱に入れても無くなるわけじゃないし……少しぐらいならいいか。
「じゃあ……」
俺は、貯金箱を手元にたぐりよせ言った。
「1回ぐらいは、使ってみようかな……」
「そうよ! お金を貯めることによって何かが変わるかもしれないわよ!」
「う~ん……」
確かに、ジェリックの言っていることも一理ある。
もしかしたら、これはきっかけかもしれない。
浪費癖のある俺が倹約家タイプに変わることができるかもしれない。
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