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保証人様のご依頼 3
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仕事場に戻ると、父がたらいに水を張って待っていた。
買ってきた生地を、地なおしするのである。
地なおしというのは、布の折り目をそろえるための作業だ。
生地の種類によって方法は、一律ではないけれど、たいていは、生地を一度、水にさらしたのち、乾かして、丁寧にアイロンをかける。
本当は、ゆっくり自然乾燥させたいけれど、今日のところは、風の魔術で水気を飛ばして、アイロンで乾かし、少しでも作業工程を早めたい。
水に布を落としていく作業を父に任せ、私はアイロンの準備をしようとした。
「アリサ、魔道起動のアイロンで魔力付与してみるか?」
「何? それ」
通常の作業の場合は、まず、炭火をおこし、アイロンストーブという鉄の容器に火のついた炭を入れる。その鉄の天板に重い魔道具の鉄のコテを置いて、熱を入れていき、鉄ごてが熱くなったら、布地のしわを伸ばしつつ、生地そのものに私の魔力を付与していくのだ。
「その三段目のコンテナ、あけてみな」
私は父に言われたとおりの場所に、真新しい魔道起動のアイロンを見つけた。
「これで魔力付与、できるの?」
魔道起動アイロンというのは、魔力を消費することで熱をいれることができるもので、それ程珍しいものではない。
むしろ炭を使うアイロンのほうが前時代的で、一般的ではない。
ただ、魔力を付与する魔道具と魔道起動の魔道具は同じ魔道具という呼び名であっても、性質は全く違う。
魔道起動のアイロンで魔力付与できれば、作業工程はかなり楽になる。ただし、魔力は余分にかかるけど。
「もちろん。ただし、通常のアイロンの三倍くらい疲れるな」
「え?」
「でも、仕上がりは二倍くらい綺麗にできる」
微妙だ。
仕上がりが二倍綺麗でも、三倍疲れるって、使うのにためらいを感じる。
そういえば。
このアイロン、おそらく借金が発覚する前、つまり三年以上前に購入したもののはずなのに、使った気配がほとんどない。
一緒に仕事をしているのに、こんなものがあるなんて、今日の今日まで知らなかった。
「父よ」
私は、じろりと父をにらみつける。
「このアイロン、あまり使ってないよね?」
「ええと。さすがに三倍疲れると締め切りとか考えるとキツくてね」
父は急に落ち着かない顔になる。
「いくらしたの?」
ふつふつと怒りが込み上げてきた。
「金額? 確か、五十万Gくらいしたかな」
ごじゅうまん。
父の借金は二百万G近くあった。ということは、このアイロンはその四分の一として立派な一角を担っている代物。
それを使わずに、箪笥の肥やしにしているとは。
「使わないなら、売ってしまえばいいでしょう!」
思わず、怒りが爆発してしまう。
「そうはいっても、仕上げは二倍綺麗なんだ。しかも、たぶん、これ、限定品でもう売ってないし」
父は、手放す気は全くないらしい。未練たっぷりの目で、アイロンを見つめている。
仕上がりが綺麗と言うのは、確かに魅力ではある。
それに、この手の製品は、買ってくれるひとも少ないという問題もあり、売りさばいても半値もつかない可能性が高い。
私は、新品同様の魔道起動のアイロンを見つめる。
あまりのピカピカ加減に、むらむらと憎しみが込み上げた。
金額分の仕事をさせなくては、割に合わない。
私は、アイロンを手に取った。
使いだして分かったのは、生地の糸目が面白いように整うことだ。魔力ののりもいい。
「確かに……すごい」
使わないくせに捨てたくないという父の気持ちもわかる。
アイロン作業は通常の三倍の疲労感はあったが、作業効率も上がった。
いつもなら、一定時間たつと冷えてしまう鉄ごてを熱する待ち時間が全くない。
また、父の言う通り、熱ムラのないアイロン作業は仕上がりが美しかった。
さすが、五十万。
私は父のコレクションに、初めて感動を覚えた。
「ほぉ。まんべんなく魔力が載っていて、いいじゃないか。よくできている」
父がアイロンのかけ終わった生地を見て、褒める。
仕事に関しては厳しく、滅多に褒めることのない父だ。
ちょっとうれしい。
「俺のほうは、もう少しかかりそうだ。飯食って、少し休め」
父は魔力付与の必要がない、布地にはさむ中綿の準備と生地の裁断をしてくれている。
「でも――」
「三日で仕上げると約束したのだろう?」
父の言う通り、期日に仕上げるためには、休む必要がある。
私は、素直に仮眠をとることにした。
プールポワン製作における魔力付与は、実に地味だ。
魔道具である針に糸を通して、ひたすら念を込めて縫い続ける。
魔力を付与しながら縫うので、目が疲れるとか肩がこるだけではなく、力が確実に吸い取られていく作業だ。
半日くらい作業に没頭したら、知らない間に気絶をしていた。
おそらく気づいていただろうけれど、父は私を起こしはしなかった。
もっとも、起こされたところで、完全な魔力切れでひと針も縫えなかったとは思う。
それから少し作業しては、気絶するというようなことを繰り返した。
「魔力の付与は、おまえ、天才的だな――縫製そのものは、もう少しだが」
ようやく仕上げが近づいてきたところで、父が褒めてくれる。
疲労困憊の状態だけれど、その言葉に勇気づけられて、私は、胸元に楓の葉の刺繍を入れ始めた。
楓の葉は、我が仕立屋ラムシードのブランドの証だ。
胸元に入れることによって、魔力強化も兼ねている。
「よくやったな。及第点の出来だと思うぞ」
「イシュタルトさまが、そう思って下さればいいけど」
頑張ったし、父に褒めてはもらったものの、父のものに比べるとやっぱり見劣りがする。
改めて、父がすごい職人なのだと思う。
果たして、父の顧客であるイシュタルトは、満足してくれるだろうか。
せめて、未払い利息の半額免除くらいはしてもらいたい。
乙女の睡眠時間を削って作っているのだ。肌はボロボロだし、目の下にはたぶんクマができている。
そういえば、作業を始めてから、風呂にも入っていない。
「刺繍が終わったら、飯食って、風呂入って少し寝ろ。ボタンは俺がつけておいてやる」
「でも――」
「その状態だと、仕上げのアイロンかけたら気絶するぞ。だいたい、イシュタルト様が受け取りにみえた時に、そんな面で応対するのは失礼だ」
父は私の顔を見て、ため息をつく。
「はじめて、お前を指名してくれた客だぞ。最後まで自分で応対しろ」
「はい」
私は頷く。
好きで受けた仕事ではないけれど、職人としての栄誉ある初仕事だ。
その結果を良くも悪くも、私は受け止めなければならない。
「しかし、イシュタルト様にも困ったものだ。俺だって、三日で作るのは無謀だぞ」
苦笑しながら、父は、私の為にスープを温めるべく、火元に立つ。
「俺に頼むなら、そこまで無茶は言わないだろうがな」
それはそんな気がする。
「私への、嫌がらせですか?」
「たぶん、おまえが使えるかどうか、試したかったのだろうよ」
「そうでしょうか?」
父が現役である以上、私を指名する意味は嫌がらせとしか思えない。
日々仕えている弟のロバートの苦労がしのばれる。
「イシュタルト様は目立つ。店に来て下さるだけでうちの店の宣伝になるからな。失礼のないように」
目立つのは確かだけれど、宣伝になるのだろうか。
父がお屋敷に出向いて商品のやり取りをしたほうが、ご近所の平和のためだと思う。
近所の娘たちが美形のイシュタルトに色めき立ったところで、うちの製品が売れるとは思えない。
刺繍の針を刺し終えると、香り立つシチューの匂いに、私の腹が音を立てた。
買ってきた生地を、地なおしするのである。
地なおしというのは、布の折り目をそろえるための作業だ。
生地の種類によって方法は、一律ではないけれど、たいていは、生地を一度、水にさらしたのち、乾かして、丁寧にアイロンをかける。
本当は、ゆっくり自然乾燥させたいけれど、今日のところは、風の魔術で水気を飛ばして、アイロンで乾かし、少しでも作業工程を早めたい。
水に布を落としていく作業を父に任せ、私はアイロンの準備をしようとした。
「アリサ、魔道起動のアイロンで魔力付与してみるか?」
「何? それ」
通常の作業の場合は、まず、炭火をおこし、アイロンストーブという鉄の容器に火のついた炭を入れる。その鉄の天板に重い魔道具の鉄のコテを置いて、熱を入れていき、鉄ごてが熱くなったら、布地のしわを伸ばしつつ、生地そのものに私の魔力を付与していくのだ。
「その三段目のコンテナ、あけてみな」
私は父に言われたとおりの場所に、真新しい魔道起動のアイロンを見つけた。
「これで魔力付与、できるの?」
魔道起動アイロンというのは、魔力を消費することで熱をいれることができるもので、それ程珍しいものではない。
むしろ炭を使うアイロンのほうが前時代的で、一般的ではない。
ただ、魔力を付与する魔道具と魔道起動の魔道具は同じ魔道具という呼び名であっても、性質は全く違う。
魔道起動のアイロンで魔力付与できれば、作業工程はかなり楽になる。ただし、魔力は余分にかかるけど。
「もちろん。ただし、通常のアイロンの三倍くらい疲れるな」
「え?」
「でも、仕上がりは二倍くらい綺麗にできる」
微妙だ。
仕上がりが二倍綺麗でも、三倍疲れるって、使うのにためらいを感じる。
そういえば。
このアイロン、おそらく借金が発覚する前、つまり三年以上前に購入したもののはずなのに、使った気配がほとんどない。
一緒に仕事をしているのに、こんなものがあるなんて、今日の今日まで知らなかった。
「父よ」
私は、じろりと父をにらみつける。
「このアイロン、あまり使ってないよね?」
「ええと。さすがに三倍疲れると締め切りとか考えるとキツくてね」
父は急に落ち着かない顔になる。
「いくらしたの?」
ふつふつと怒りが込み上げてきた。
「金額? 確か、五十万Gくらいしたかな」
ごじゅうまん。
父の借金は二百万G近くあった。ということは、このアイロンはその四分の一として立派な一角を担っている代物。
それを使わずに、箪笥の肥やしにしているとは。
「使わないなら、売ってしまえばいいでしょう!」
思わず、怒りが爆発してしまう。
「そうはいっても、仕上げは二倍綺麗なんだ。しかも、たぶん、これ、限定品でもう売ってないし」
父は、手放す気は全くないらしい。未練たっぷりの目で、アイロンを見つめている。
仕上がりが綺麗と言うのは、確かに魅力ではある。
それに、この手の製品は、買ってくれるひとも少ないという問題もあり、売りさばいても半値もつかない可能性が高い。
私は、新品同様の魔道起動のアイロンを見つめる。
あまりのピカピカ加減に、むらむらと憎しみが込み上げた。
金額分の仕事をさせなくては、割に合わない。
私は、アイロンを手に取った。
使いだして分かったのは、生地の糸目が面白いように整うことだ。魔力ののりもいい。
「確かに……すごい」
使わないくせに捨てたくないという父の気持ちもわかる。
アイロン作業は通常の三倍の疲労感はあったが、作業効率も上がった。
いつもなら、一定時間たつと冷えてしまう鉄ごてを熱する待ち時間が全くない。
また、父の言う通り、熱ムラのないアイロン作業は仕上がりが美しかった。
さすが、五十万。
私は父のコレクションに、初めて感動を覚えた。
「ほぉ。まんべんなく魔力が載っていて、いいじゃないか。よくできている」
父がアイロンのかけ終わった生地を見て、褒める。
仕事に関しては厳しく、滅多に褒めることのない父だ。
ちょっとうれしい。
「俺のほうは、もう少しかかりそうだ。飯食って、少し休め」
父は魔力付与の必要がない、布地にはさむ中綿の準備と生地の裁断をしてくれている。
「でも――」
「三日で仕上げると約束したのだろう?」
父の言う通り、期日に仕上げるためには、休む必要がある。
私は、素直に仮眠をとることにした。
プールポワン製作における魔力付与は、実に地味だ。
魔道具である針に糸を通して、ひたすら念を込めて縫い続ける。
魔力を付与しながら縫うので、目が疲れるとか肩がこるだけではなく、力が確実に吸い取られていく作業だ。
半日くらい作業に没頭したら、知らない間に気絶をしていた。
おそらく気づいていただろうけれど、父は私を起こしはしなかった。
もっとも、起こされたところで、完全な魔力切れでひと針も縫えなかったとは思う。
それから少し作業しては、気絶するというようなことを繰り返した。
「魔力の付与は、おまえ、天才的だな――縫製そのものは、もう少しだが」
ようやく仕上げが近づいてきたところで、父が褒めてくれる。
疲労困憊の状態だけれど、その言葉に勇気づけられて、私は、胸元に楓の葉の刺繍を入れ始めた。
楓の葉は、我が仕立屋ラムシードのブランドの証だ。
胸元に入れることによって、魔力強化も兼ねている。
「よくやったな。及第点の出来だと思うぞ」
「イシュタルトさまが、そう思って下さればいいけど」
頑張ったし、父に褒めてはもらったものの、父のものに比べるとやっぱり見劣りがする。
改めて、父がすごい職人なのだと思う。
果たして、父の顧客であるイシュタルトは、満足してくれるだろうか。
せめて、未払い利息の半額免除くらいはしてもらいたい。
乙女の睡眠時間を削って作っているのだ。肌はボロボロだし、目の下にはたぶんクマができている。
そういえば、作業を始めてから、風呂にも入っていない。
「刺繍が終わったら、飯食って、風呂入って少し寝ろ。ボタンは俺がつけておいてやる」
「でも――」
「その状態だと、仕上げのアイロンかけたら気絶するぞ。だいたい、イシュタルト様が受け取りにみえた時に、そんな面で応対するのは失礼だ」
父は私の顔を見て、ため息をつく。
「はじめて、お前を指名してくれた客だぞ。最後まで自分で応対しろ」
「はい」
私は頷く。
好きで受けた仕事ではないけれど、職人としての栄誉ある初仕事だ。
その結果を良くも悪くも、私は受け止めなければならない。
「しかし、イシュタルト様にも困ったものだ。俺だって、三日で作るのは無謀だぞ」
苦笑しながら、父は、私の為にスープを温めるべく、火元に立つ。
「俺に頼むなら、そこまで無茶は言わないだろうがな」
それはそんな気がする。
「私への、嫌がらせですか?」
「たぶん、おまえが使えるかどうか、試したかったのだろうよ」
「そうでしょうか?」
父が現役である以上、私を指名する意味は嫌がらせとしか思えない。
日々仕えている弟のロバートの苦労がしのばれる。
「イシュタルト様は目立つ。店に来て下さるだけでうちの店の宣伝になるからな。失礼のないように」
目立つのは確かだけれど、宣伝になるのだろうか。
父がお屋敷に出向いて商品のやり取りをしたほうが、ご近所の平和のためだと思う。
近所の娘たちが美形のイシュタルトに色めき立ったところで、うちの製品が売れるとは思えない。
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