52 / 52
52 この先は?
しおりを挟む
お父様とお兄様に恋人を斡旋した事で、二人に邪魔されずにエイブラムさんとデート出来ると思っていたのに、現実は甘くなかったわ。
まず、エイブラムさんが騎士団長という立場なのが問題よね。
魔物や盗賊が出たら真っ先に討伐に向かわされる立場の人だもの。
先日も二人でお茶を飲んでいたら、近郊の森で魔物の群れが現れたと知らせが入って、そのまま討伐に向かってしまったし…。
無事に帰って来てくれたけれど、流石にその後のお休みの日に会って欲しいなんて言えなかったわ。
セアラ、いえ、お義母様はお父様と結婚をするために今は王妃教育をしているのだけれど、元々お母様に仕えていたからそれなりに対応出来ているみたい。
今までは王宮の使用人棟で生活をしていたけれど、今は王妃の部屋に移動しているの。
食事も私達と一緒に取るようになったのはいいけれど、お父様とイチャイチャしているように見えるのは気の所為かしら。
お兄様はお兄様で、毎日のようにステファニー様を王宮に呼び出しては二人きりで会っているみたい。
私が焚き付けた事とはいえ、何だか釈然としないわね。
私とエイブラムさんの仲が進展していないのに、お父様とお兄様が恋人と上手くいっているなんて納得出来ないわ。
なんて怒りをぶつけてみてもしょうがないってわかっているのにね。
そうこうしているうちに、国内の情勢も落ち着いてきて久しぶりにエイブラムさんからお誘いを頂いたわ。
「アリス様。よろしければ明日、観劇に行きませんか?」
今王都で話題の歌劇に誘って頂いたのよ。
きっとジェンクス侯爵夫人から私を誘うように言われたんでしょうけど、それを断る理由なんてないわね。
「ありがとうございます。勿論ご一緒させていただきますわ」
翌日はありったけのおめかしをしてエイブラムさんとお出かけをしたわ。
ジェンクス侯爵夫人が選んだだけあって、王道の恋愛物だったわね。
観劇が終わって王宮に戻ると、エイブラムさんは私の手を取って庭園へといざなったわ。
月明かりの中、庭園を歩いていると、不意にエイブラムさんは立ち止まって私の前に膝をついたの。
この流れってもしかして…
ドキドキと高鳴る心臓を抑えていると、エイブラムさんは跪いたまま、私の手を取ったわ。
「アリス様、どうか私と結婚を前提にお付き合いをしていただけませんか?」
やったわ!
これで一歩前身ね!
「はい、私で良ければ喜んで…」
ちょっと躊躇った方がいいかと思ったけれど、以前私の方からお付き合いしてくださいって言っているから、今更そんな駆け引きはいらないわよね。
本当はそこでキスの一つでもしてもらいたかったけれど、流石に性急過ぎるかしら。
エイブラムさんはそっと私の身体を抱きしめただけで離れていってしまったわ、残念!
明日、登城した際にお父様に報告をすると言われて、その場でお別れしたの。
翌日、二人揃ってお父様に報告に行ったのだけれど、まさかあんな事になるなんてね。
「エイブラム殿、今日は一体何用だ? それに何故アリスがそなたと一緒にいるのだ?」
セアラと結婚が決まってニコニコ顔だったお父様の影が微塵もないわ。
「はい、私エイブラムはこの度、アリス様と結婚を前提にお付き合いさせていただきたいと思っております。陛下にはその許可をいただきたいと存じます」
「アリスと結婚を前提に、だと? とんでもない! アリスはまだまだ何処にも嫁になどやらんぞ!」
えっ!?
そこで否定しちゃう?
ワタワタしていると、バンッと扉が開いてお兄様が姿を現した。
「エイブラムがアリスと結婚を前提に付き合うだと? そんな事は断じて許さんぞ! アリスはまだ私の側にいるんだからな!」
お父様だけでなくお兄様まで?
一体、どういう事?
するとそこにセアラとステファニー様がいらして私の手を取ったのよ。
「アリス様、いえ、アリス。せっかくあなたの母親になるのですから、もうしばらくは私の娘としてここで過ごしましょう」
「アリス様。まだあなたの義姉として過ごしてもいないのにお嫁にいかれては困りますわ。女同士、仲良くしましょうね」
…私、何か失敗したの?
私の恋を邪魔するお父様とお兄様を排除するどころか、余計な妨害者を増やしたみたい!
エイブラムさんもお父様とお兄様に囲まれて目を泳がせているし…。
あと何年、この状態が続くのかしら?
誰が助けて!
助けを求めた所で、そんな救世主が現れるわけもなく、私は泣く泣くこの状況を受け入れた。
そして今日もまた、保護者同伴のデートをしている最中です。
私の春はまだまだ遠いのね。
ー 完 ー
まず、エイブラムさんが騎士団長という立場なのが問題よね。
魔物や盗賊が出たら真っ先に討伐に向かわされる立場の人だもの。
先日も二人でお茶を飲んでいたら、近郊の森で魔物の群れが現れたと知らせが入って、そのまま討伐に向かってしまったし…。
無事に帰って来てくれたけれど、流石にその後のお休みの日に会って欲しいなんて言えなかったわ。
セアラ、いえ、お義母様はお父様と結婚をするために今は王妃教育をしているのだけれど、元々お母様に仕えていたからそれなりに対応出来ているみたい。
今までは王宮の使用人棟で生活をしていたけれど、今は王妃の部屋に移動しているの。
食事も私達と一緒に取るようになったのはいいけれど、お父様とイチャイチャしているように見えるのは気の所為かしら。
お兄様はお兄様で、毎日のようにステファニー様を王宮に呼び出しては二人きりで会っているみたい。
私が焚き付けた事とはいえ、何だか釈然としないわね。
私とエイブラムさんの仲が進展していないのに、お父様とお兄様が恋人と上手くいっているなんて納得出来ないわ。
なんて怒りをぶつけてみてもしょうがないってわかっているのにね。
そうこうしているうちに、国内の情勢も落ち着いてきて久しぶりにエイブラムさんからお誘いを頂いたわ。
「アリス様。よろしければ明日、観劇に行きませんか?」
今王都で話題の歌劇に誘って頂いたのよ。
きっとジェンクス侯爵夫人から私を誘うように言われたんでしょうけど、それを断る理由なんてないわね。
「ありがとうございます。勿論ご一緒させていただきますわ」
翌日はありったけのおめかしをしてエイブラムさんとお出かけをしたわ。
ジェンクス侯爵夫人が選んだだけあって、王道の恋愛物だったわね。
観劇が終わって王宮に戻ると、エイブラムさんは私の手を取って庭園へといざなったわ。
月明かりの中、庭園を歩いていると、不意にエイブラムさんは立ち止まって私の前に膝をついたの。
この流れってもしかして…
ドキドキと高鳴る心臓を抑えていると、エイブラムさんは跪いたまま、私の手を取ったわ。
「アリス様、どうか私と結婚を前提にお付き合いをしていただけませんか?」
やったわ!
これで一歩前身ね!
「はい、私で良ければ喜んで…」
ちょっと躊躇った方がいいかと思ったけれど、以前私の方からお付き合いしてくださいって言っているから、今更そんな駆け引きはいらないわよね。
本当はそこでキスの一つでもしてもらいたかったけれど、流石に性急過ぎるかしら。
エイブラムさんはそっと私の身体を抱きしめただけで離れていってしまったわ、残念!
明日、登城した際にお父様に報告をすると言われて、その場でお別れしたの。
翌日、二人揃ってお父様に報告に行ったのだけれど、まさかあんな事になるなんてね。
「エイブラム殿、今日は一体何用だ? それに何故アリスがそなたと一緒にいるのだ?」
セアラと結婚が決まってニコニコ顔だったお父様の影が微塵もないわ。
「はい、私エイブラムはこの度、アリス様と結婚を前提にお付き合いさせていただきたいと思っております。陛下にはその許可をいただきたいと存じます」
「アリスと結婚を前提に、だと? とんでもない! アリスはまだまだ何処にも嫁になどやらんぞ!」
えっ!?
そこで否定しちゃう?
ワタワタしていると、バンッと扉が開いてお兄様が姿を現した。
「エイブラムがアリスと結婚を前提に付き合うだと? そんな事は断じて許さんぞ! アリスはまだ私の側にいるんだからな!」
お父様だけでなくお兄様まで?
一体、どういう事?
するとそこにセアラとステファニー様がいらして私の手を取ったのよ。
「アリス様、いえ、アリス。せっかくあなたの母親になるのですから、もうしばらくは私の娘としてここで過ごしましょう」
「アリス様。まだあなたの義姉として過ごしてもいないのにお嫁にいかれては困りますわ。女同士、仲良くしましょうね」
…私、何か失敗したの?
私の恋を邪魔するお父様とお兄様を排除するどころか、余計な妨害者を増やしたみたい!
エイブラムさんもお父様とお兄様に囲まれて目を泳がせているし…。
あと何年、この状態が続くのかしら?
誰が助けて!
助けを求めた所で、そんな救世主が現れるわけもなく、私は泣く泣くこの状況を受け入れた。
そして今日もまた、保護者同伴のデートをしている最中です。
私の春はまだまだ遠いのね。
ー 完 ー
1
お気に入りに追加
93
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
【完結】一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
リュシエンヌ・ソワイエは16歳の子爵令嬢。皆が憧れるマルセル・クレイン伯爵令息に婚約を申し込まれたばかりで幸せいっぱいだ。
しかしある日を境にリュシエンヌは眠りから覚めなくなった。本人は自覚が無いまま12年の月日が過ぎ、目覚めた時には父母は亡くなり兄は結婚して子供がおり、さらにマルセルはリュシエンヌの親友アラベルと結婚していた。
突然のことに狼狽えるリュシエンヌ。しかも兄嫁はリュシエンヌを厄介者扱いしていて実家にはいられそうもない。
そんな彼女に手を差し伸べたのは、若きヴォルテーヌ公爵レオンだった……。
『残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました』『結婚前日に友人と入れ替わってしまった……!』に出てくる魔法大臣ゼインシリーズです。
表紙は「簡単表紙メーカー2」で作成しました。
公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる