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17 体の変化
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まさか、と思って尻尾を動かしてみるが、やはり4本とも僕の尻尾に間違いはなかった。
「今のヒールで尻尾が増えたのか?」
ロジェが僕に近寄ってきてまじまじと尻尾を眺めている。
「…どうやら、そうみたいだね」
僕は尻尾を振るのを止めて自分の体を見回したが、体自体の大きさはあまり変わっていないように見える。
「シリル。人型の方は成長していないの?」
リーズに問われて僕は人型になってみたが、こちらも変化がないようだ。
「あまり大きさは変わっていないみたいだね。尻尾が増えただけなのかな?」
リーズは少し腰を折って僕と目線を合わせてくれる。
「ちぇ~。しぇめてリーズくりゃいのおっきさになればいいにょににゃ」
まだ少し舌足らずな口調でそう呟いた途端、僕の体が変化した。
気が付けばリーズと同じ大きさになっていたのだ。
「うわっ! シリル?」
屈んていたリーズが仰け反るように後ろに下がる。
ロジェも僕の急激な変化に驚いている。
「シリル? 何でそんなに急に大きくなったんだ?」
僕は正面にいるリーズに目を移すが、視線はほぼ同じ高さになっていた。
これは一体どういう事なんだろう。
まさか、自分の体の大きさを自由に変えられるようになったのか?
もしそうならば、試してみたほうがいいだろう。
【ロジェと同じ位の大きさになれ】
心の中で願うと体が大きくなっていくのが感じられ、気が付けばロジェと同じ位の少年の姿になっていた。
「「…シリル!」」
ロジェとリーズが同時に叫ぶ。
僕はニコリと二人に笑いかけた。
「どうやら人型の体の大きさを変えられるようになったみたいだよ」
二人が呆けているのを尻目に僕は自分の体をあちこち動かしてみた。
急激な変化で動かしにくい所があるかと思ったがそんな事はなかった。
屈伸運動をしたりその場で飛び跳ねたり、辺りを走ってみたりしたが特に何も問題はないようだ。
ひと通り体の動きを確認してからロジェ達の前に戻ると、ようやく二人とも落ち着きを取り戻したようだ。
「本当にシリル…だよね」
「まさか本当に魔法で体の大きさが変えられるようになるなんて…」
ロジェ自身も僕がここまで魔法で体を変化させる事が出来るようになるとは思っていなかったようだ。
僕はもう一つの事を試してみた。
つまり、狐の姿も変化させる事が出来るかどうか、をだ。
僕は人間の姿から狐の姿へと変化させ、更にその大きさをも変えてみた。
子狐から大人の狐へ、更にそれ以上の大きさの狐へと体を変化させる。
ロジェとリーズは僕のその様子を言葉も無く見つめていた。
「見て見て! 狐の姿も自由に大きさを変えられるようになったよ」
まさかこんなにも早く、自分の体を変化させる事が出来るようになるなんて思ってもみなかった。
僕は有頂天になって体を変化させていたが、そんな高揚した気分はリーズの一言で一気にしぼんだ。
「…そっか。体を変化させる事が出来るようになったから、シリルはもう家を出てシリルのお父さん達の所に帰っちゃうって事だよね」
リーズの声は震えていた。
僕は子狐の姿に戻ってリーズの足元に駆け寄る。
リーズは僕を抱き上げるとこらえきれずに泣き出した。
「シリルが大きくなる事が出来て、お父さん達の所に帰れるようになったのは嬉しいけど、…だけど、シリルと離れたくない!」
そんなふうにリーズに泣かれると僕自身もどうしたらいいかわからなくなる。
僕自身も自分の体を成長させることに夢中で、その後がどうなるか、なんて考えてもいなかった。
僕の成長はすなわちリーズ達との別れを意味する事なのだ。
泣きじゃくるリーズの涙をペロリと舌で舐めてやる。
ロジェがリーズの頭を優しくポンポンと叩いた。
「リーズ、そんなに泣いてシリルを困らせるんじゃない。親元に帰れるようになったことを喜んであげないとな」
ロジェはリーズの頭から手を離すと今度は僕の頭を撫でてきた。
「シリル。体を変化させる事が出来るようになってすぐに親元に帰りたいかもしれないが、今のお前の魔法の使い方じゃ、許可は出せないな」
僕が「ん?」と首を傾げると、ロジェは向こうに転がっている黒焦げになったアルミラージの死骸を指差した。
「せっかくの獲物を毎回こんなふうに使い物にならなくさせるのは冒険者として我慢ならんからな。しばらくは家で修業をさせるぞ。シリル、文句はないな」
僕はチラリとアルミラージの残骸に目をやるとロジェの申し出を受け入れた。
「そうだね。まだ魔法の扱いも完璧じゃないからもうしばらくロジェ達のお家で厄介になるよ」
僕が了承するとリーズが嬉しそうに僕の体に頬擦りしてくる。
「嬉しい! シリル。もう少しだけ一緒にいてね」
僕だって今すぐにリーズ達と離れたくはないから、ロジェの申し出は有り難かった。
だけどロジェの修業ってスパルタ教育じゃないよね。
「今のヒールで尻尾が増えたのか?」
ロジェが僕に近寄ってきてまじまじと尻尾を眺めている。
「…どうやら、そうみたいだね」
僕は尻尾を振るのを止めて自分の体を見回したが、体自体の大きさはあまり変わっていないように見える。
「シリル。人型の方は成長していないの?」
リーズに問われて僕は人型になってみたが、こちらも変化がないようだ。
「あまり大きさは変わっていないみたいだね。尻尾が増えただけなのかな?」
リーズは少し腰を折って僕と目線を合わせてくれる。
「ちぇ~。しぇめてリーズくりゃいのおっきさになればいいにょににゃ」
まだ少し舌足らずな口調でそう呟いた途端、僕の体が変化した。
気が付けばリーズと同じ大きさになっていたのだ。
「うわっ! シリル?」
屈んていたリーズが仰け反るように後ろに下がる。
ロジェも僕の急激な変化に驚いている。
「シリル? 何でそんなに急に大きくなったんだ?」
僕は正面にいるリーズに目を移すが、視線はほぼ同じ高さになっていた。
これは一体どういう事なんだろう。
まさか、自分の体の大きさを自由に変えられるようになったのか?
もしそうならば、試してみたほうがいいだろう。
【ロジェと同じ位の大きさになれ】
心の中で願うと体が大きくなっていくのが感じられ、気が付けばロジェと同じ位の少年の姿になっていた。
「「…シリル!」」
ロジェとリーズが同時に叫ぶ。
僕はニコリと二人に笑いかけた。
「どうやら人型の体の大きさを変えられるようになったみたいだよ」
二人が呆けているのを尻目に僕は自分の体をあちこち動かしてみた。
急激な変化で動かしにくい所があるかと思ったがそんな事はなかった。
屈伸運動をしたりその場で飛び跳ねたり、辺りを走ってみたりしたが特に何も問題はないようだ。
ひと通り体の動きを確認してからロジェ達の前に戻ると、ようやく二人とも落ち着きを取り戻したようだ。
「本当にシリル…だよね」
「まさか本当に魔法で体の大きさが変えられるようになるなんて…」
ロジェ自身も僕がここまで魔法で体を変化させる事が出来るようになるとは思っていなかったようだ。
僕はもう一つの事を試してみた。
つまり、狐の姿も変化させる事が出来るかどうか、をだ。
僕は人間の姿から狐の姿へと変化させ、更にその大きさをも変えてみた。
子狐から大人の狐へ、更にそれ以上の大きさの狐へと体を変化させる。
ロジェとリーズは僕のその様子を言葉も無く見つめていた。
「見て見て! 狐の姿も自由に大きさを変えられるようになったよ」
まさかこんなにも早く、自分の体を変化させる事が出来るようになるなんて思ってもみなかった。
僕は有頂天になって体を変化させていたが、そんな高揚した気分はリーズの一言で一気にしぼんだ。
「…そっか。体を変化させる事が出来るようになったから、シリルはもう家を出てシリルのお父さん達の所に帰っちゃうって事だよね」
リーズの声は震えていた。
僕は子狐の姿に戻ってリーズの足元に駆け寄る。
リーズは僕を抱き上げるとこらえきれずに泣き出した。
「シリルが大きくなる事が出来て、お父さん達の所に帰れるようになったのは嬉しいけど、…だけど、シリルと離れたくない!」
そんなふうにリーズに泣かれると僕自身もどうしたらいいかわからなくなる。
僕自身も自分の体を成長させることに夢中で、その後がどうなるか、なんて考えてもいなかった。
僕の成長はすなわちリーズ達との別れを意味する事なのだ。
泣きじゃくるリーズの涙をペロリと舌で舐めてやる。
ロジェがリーズの頭を優しくポンポンと叩いた。
「リーズ、そんなに泣いてシリルを困らせるんじゃない。親元に帰れるようになったことを喜んであげないとな」
ロジェはリーズの頭から手を離すと今度は僕の頭を撫でてきた。
「シリル。体を変化させる事が出来るようになってすぐに親元に帰りたいかもしれないが、今のお前の魔法の使い方じゃ、許可は出せないな」
僕が「ん?」と首を傾げると、ロジェは向こうに転がっている黒焦げになったアルミラージの死骸を指差した。
「せっかくの獲物を毎回こんなふうに使い物にならなくさせるのは冒険者として我慢ならんからな。しばらくは家で修業をさせるぞ。シリル、文句はないな」
僕はチラリとアルミラージの残骸に目をやるとロジェの申し出を受け入れた。
「そうだね。まだ魔法の扱いも完璧じゃないからもうしばらくロジェ達のお家で厄介になるよ」
僕が了承するとリーズが嬉しそうに僕の体に頬擦りしてくる。
「嬉しい! シリル。もう少しだけ一緒にいてね」
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