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ウェイの家

11信じてみる

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それからの俺はどんどん元気になるかと思っていたのに、ずっと微熱が続くようになってしまった。

チェン先生曰く

「やはりハオラン君の身体はずっと悲鳴をあげていたのに、君自身はそれに気づかないで過ごしていたんだよ。やっとそれがわかるようになったんだから熱が出るのは身体が良くなっている証拠だよ」

と言って下さっている。


だから最近の俺は相変わらずベッドに上にいて、調子が良い時はリー様が俺に勉強を教えてくれたり「少し散歩をして体力をつけましょう」と軽くてとても綺麗な服に着替えて一緒に散歩をしてくれるようになった。

こんな綺麗な服を着るのは初めてで、「私が着て良いのでしょうか?」と聞くと、

「それは外出しないので地味な服ですよ。普通はもっと綺麗な服がありますのでね」

とリー様はあたり前ですとでも言わんばかりに言ってくるから少々困る……こんなの見た事もない程綺麗な服だよ。

俺の生い立ちや知識が乏しい事を知っているリー様は散歩をしている時にも色々と俺に教えて下さった。

散歩中に見つけた可愛い野花の名前から、この国の制度まで……、俺の関係していた鎖国の事も出来るだけ分かりやすく話してくれていた。

でもまだ俺には理解できない事が多いけど……それでもリー様は根気良く教えてくれて本当に優しくして貰えていると実感する。


散歩に出るとリー様以外の侍従様達が沢山いて割り当てられている仕事を楽しそうにやりながら、俺に会うとみんな笑顔になってくれた。


たまに俺の顔を見て驚く人もいるけれど、それが普通の反応だしそのまま俺の顔を見て嫌な顔をされると思っていたら、むしろ俺を発見して嬉しそうな笑顔で返されるから不思議だ。

あまり俺は笑顔を向けられると心が舞い上がってしまうのに、どうお返ししたらいいか分からずおどおどしてしまう。

そんな時リー様は俺の心が読めるのか分からないけど、

「笑顔が嬉しいと感じましたら相手にも笑顔で返すと喜びますよ」

とアドバイスをくれたので、少しずつ笑顔に応える練習も始めた。

すると、今度は相手が顔を真っ赤にさせてしまったり、嬉しい顔を隠す事もなく「キャッ笑って下さった!!」と声を出す方もいらっしゃって……

余計混乱してくるけど、リー様は「その調子です。お上手ですよ」と褒める事しかしてくれない。


この家にいる方達って叱る事って知らないんじゃないだろうか……。


とにかく侍従様達も優しいので、きっとお父様が俺の事をちゃんと息子だって言ってくれたんだよな。


全く嫌な顔もされないし、作り笑顔でもないのでここでの生活がとても嬉しくて今迄の俺には考えられない夢の様な……穏やかな生活を送っている。

不意に感謝の気持ち表したくなって散歩中リー様に相談してみた。

「旦那様はハオラン様が何をしても感激すると思いますが……ひとまずここに咲いている野花を摘んでプレゼントしますか?」

そう言ってくれたので、散歩道に咲いていた可愛い野花を摘んでからその1部をリー様に渡した。


「リー様」


「ハオラン様……私に……?」


「いつも有難う御座います」


「…………」


「リー様?」


「……嬉しい……です」


今摘み取ったばかりの野花をリー様に渡してみると、リー様は肩を震わせて小さな声で嬉しいと言ってくれたから…喜んでくれたんだよな?

その後の散歩の続きは終始無言になってしまったけれど……。

お父様にも帰って来た時に渡したら、びっくりする位
大喜びをされて沢山のキスのお返しがあった。


「あの……庭に咲いていた野花ですよ?」


「ハオランから初めて私にプレゼントを!!嬉しく無い訳がないじゃないか!!本当に有難う!!
これっどうする??
ああ……このままだと枯れてしまうなぁ。
鉢植えに入れ直すか?根っこがもう無いぞ。
押し花か?
押し花にしよう!!ずっと眺めている為に家宝にして飾るんだ!!」

お父様は1人で何か盛り上がってしまい、途中からリー様まで一緒に参加して……庭に出ればいくらでも咲いていた野花だけど……でも喜んでくれてよかった。

そしてウェイ様の事はこれからはちゃんとお父様と呼ぶ様にしようと心の中で決めた。


裏切られるのは怖いけれど、お父様に引き取られてからというもの、出会う人達全てがとても優しくしてくれるから……単純に信じてみようかと思ったのだ。


お父様達は何のメリットもない俺に愛情を沢山与えてくれて、それが今後裏切られたって俺は失う物なんか無いじゃないかと結論づけた。


だって俺は最初から何も持ってないんだ。

俺がハオランでいる限りは甘えてしまおう。

そう思ってからの俺は少し我儘になって、自分の感情に我慢が利かなくなってしまい子供の頃より悲しい時は泣き虫になってしまったと思う。
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