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本編6
75エディside4
しおりを挟む(エドワードの話を聞いてその魔法陣には覚えがある。何故ならばその魔法陣は歴代の王族達の研究の成果を踏まえて私が構築した魔法陣だからだ)
(えっ……貴方達は……?)
そう言って私に近づいて来たのは2匹の対照的な黒猫達だった。
1匹は生前長生きをしたのか年老いた黒猫と、その黒猫と手を繋いだとても若くて小さな黒猫だった。
(私はこんな姿をしているがエドワルドだ。君の祖父だから生きている間に会っているんだがな。久しぶりだエドワード)
ええっ!!なんと年老いた黒猫は普通に知っている私のお爺様だった!!
(エドワルドお爺様だったんですか!!気づく事に遅れてしまい申し訳ありませんでした。お久しぶりですお爺様!!)
何とっ私の知っているエドワルドお爺様までこの酒場にいるとはっ!!これはいよいよ大変な呪いだと言う事が嫌でも理解出来てきた。
ではそのお爺様と手を繋いでいるこの小さな黒猫は?と、私がその小さな黒猫を見ると、その黒猫は私の気持ちを察したのか自ら自己紹介してくれた。
(私はエドマイヤだ。君と直接会った事は無いが君の叔父にあたるんだよ。エドワルド父さんの息子でエドワードの父上の弟にあたるんだ……今の君より小さいけどね……)
そう言った小さな黒猫は悲しそうな顔をして私を見ていた。
そうか……この方が父上の言っていた弟で私の叔父になるエドマイヤ叔父様か……
(エドマイヤ叔父様初めまして。エドワードです。貴方の事は父上から聞いておりました。弟は多分黒猫になってしまった時に亡くなってしまったのでは無いかと……呪いの話を聞いた時に父上は叔父様の事を話しておりました)
その小さな黒猫の姿からも分かる通り、生きていた時に若くして亡くなったと分かる姿だった。
(そうだよ。私は呪いの事は事前に父上からも先に呪いを経験した兄上からも聞いていたから備えていたんだが……黒猫になった場所が悪くてね……たまたま川遊びをしている時に突然変化してしまってそのまま……ね。残念な人生だったよ)
(そうだったのですか……何と叔父様に言っていいか……父上は叔父様の事を辛そうに話していたのを今でも思い出します)
エドマイヤ叔父様にどう言葉をお掛けしたら良いか分からなかったが、叔父様にとって兄である父上の事を話すと叔父様は涙を流しながら笑って言った。
(私はね、自分が死んだ事を誰も理解されないまま亡くなったから、兄上が私の事を思い出してくれていただけで嬉しく思うよ。私程では無いけれどここにいる数匹の若い黒猫は王族でも誰にも見取られる事なく亡くなった者達なんだ)
すると数匹の若い黒猫達が「ニャー」と小さく鳴いた。
確かに黒猫になっている時に病気や事故を起こしても侯爵家の人間以外は姿が見えないのだから、誰にも気づかれずに死ぬ……なんて事は当たり前にあった事だろう。
だが実際に亡くなったエドマイヤ叔父様達は言葉では言い表せない程の悲しみだったのは容易に想像できる……本人達もだが……残された王族の者達もな……。
エドマイヤ叔父様の話を聞いて父上の顔を思い出していたら、エドワルドお爺様の方が話を続けた。
(息子のエドマイヤの姿が消えてから……望みを託しながら3年が経過してしまった時には私は徐々に希望を無くし塞ぎこんでしまったのだよ。
それでもなんとか国王としての務めを果たしていたが、早々にエドワードの父上である私の長男に国王を譲り、王の相談役をしながら私はこの呪いの研究に没頭していたんだ。そしてついにこの呪いをかけた本人の元へ転移できる魔法陣を構築する事が出来たんだよ)
(えっ?ではここに私がいるという事は……この場所に呪いをかけたエドがいるのですか!!)
凄い!!いきなりの急展開になってきた。
呪いをかけたエドと話ができれば、この呪い自体を解決できるかもしれないじゃないか!!
(エドワード……残念ながらエドはここにはいない)
(えっ?……では魔法陣の構築は失敗だったという事ですか?)
(……いや……それは無い。
その魔法陣が発動するには条件があってな、それは呪いを解く重要なキーパーソンになる人間じゃないと発動しない様になっている。
だから私が生きている間には一度も発動しておらんし、その当時の侯爵家の人間にも騙しながら魔法陣を触らせた事があったが……誰1人として発動しなかったのだ)
(ええっ!!お爺様も騙し討ちみたいな事をされていたのですね……)
しかし実際の所発動条件を考えたら、王族の者か侯爵家の者かどちらかの人間が条件に当てはまる可能性が高いだろう。
私の父上もあの複製本をアンドルに渡したのは騙し討ちじゃないか……父上も呪いを解決する為には手段を選ばないな……。
(発動させた者には悪いとは思っている。
ただ、私も黒猫になり、息子達も呪いにかかり、そして息子の1人であったエドマイヤは消えてから2度と戻って帰っては来なかった。
もう自分に子孫には呪いの苦しみをこれ以上味あわせたくない。
だから騙し討ちになろうとも魔法陣を発動させる者を見つけ、その者に縋りたかったのだ)
(……)
本当に何も言えなくなってしまった。ずっとお爺様は苦しんでおられたのだ。そして手を繋いでいる隣の叔父様も……。
その呪いはこうして孫の私も受け継がれ、黒猫になったのだものな……。
(でもお爺様の魔法陣が発動してこうして私がここにいるんですよ。魔法陣の発動が正常ならばエドはここにいる可能性が高いのではないですか?)
(いや……エドワードの話を聞いていたが、魔法陣が反応したのはエドワードではなくアンドルだろう?そこに君は飛び込んでアンドルと同じ場所に行こうとしたが魔法陣に弾かれてしまったと考えるのが正しい解釈だろうと思う)
そうか!!確かに魔法陣はアンドルが触れた事で発動したんだ!!
するとまさかっ!!
(まさかアンドルは!!)
(ああ……そのまさかだ。今アンドルはエドの元にいるのだろう……)
(なんだって!!だったら今アンドルは危険じゃないか!!)
(危険かは分からないが……私達黒猫メンバーはこの世界に来てから1番呪いの解決に近づいているのは確かなんだ)
目の前にいる私のお爺様と叔父様は繋いだ手を更にギュッと強く握って、私の方を真剣に見つめていた。
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