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本編6
71 王族の歴史と宿命5
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僕がそう言うと、2人はお互いに顔を見合わせてから頷きあった後、僕を見つめてきた。そしてアンが「私から話すね」と言って話し始めてくれた。
「私の場合はね、王弟であったエド王子から求婚されて私自身もエド王子の事をお慕いしていたからとても幸せだったわ。でも……王子は私との結婚前に他の貴族の御令嬢との不貞現場を目撃してしまったの。
後でその不貞はエド王子が嵌められた事が証明されたけれど、私はとてもショックを受けて侯爵家からは正式に抗議し、婚約解消する事になったの。
それから逃げる様にして隣国に行ったわ。
そこで私の夫に会って私はやっと穏やかで幸せな生活ができる様になったの」
アンにはそんな事があったんだ……エド王子とは思いあって幸せだった筈なのに、まさかその王子の不貞現場なんか見たらいくら王子が嵌められたとしてもアンはショックだったろうな。
「エド王子との事は残念だったけど……アンが隣国で幸せになったのなら本当に良かったよ。素敵な人に巡り会えて子孫の僕も嬉しいけど……その後のアンは呪い殺されたんだよね……この先の話は聞きたく無いかも……」
僕はアンが呪い死ぬ事を先に知ってしまっているので、少し落ち込んでしまう……。でもアンは「もう忘れるくらい昔の話だから大丈夫よ」と言って笑いながら話を続けた。
「それから私は2人の子宝に恵まれてとても幸せに過ごしていたの。
その2人の内、次男はその後私の実家である侯爵家の養子となって侯爵家を引き継いだのよ。アンディのお父さんね。
それでね、そんな穏やかな日々が続いていた時にエド王子から突然、慰謝料としてまだ渡していない品があるといってお届け物が届いたのよ……」
「その時は既に侯爵家と王家との間では婚約解消や慰謝料などの話も解決済みだったのですよね?アンは隣国で新しい家庭を持った訳ですし」
僕がそう言うと、アンは何度も頷いて言った。
「そうよ!!その時にはとっくに解決していたし、王族に対しても私が婚約解消していなかったら今の幸せは無かったのだから許していたのよ。だから品物を確認した後はこれ以上の慰謝料は不要ですと手紙を添えて丁寧にお返ししようとしてね。その品物を確認したのよ。そうしたら……」
「そうしたら……?」
アンが良い所で喉を潤す為にお茶を飲んでしまったので、僕は固唾を飲んでアンが話始めるのを見守ってしまった。
「そのお届け物の箱の中はとても大きな魔石だったの。でも色が……なんていうか濃い血の色をして赤色の魔石で、見た瞬間とても気持ち悪いと思ってしまったわ。だから直ぐに箱の蓋を閉じようと思ったのに、身体の力が抜けて魂が魔石の中に吸い取られていく様な感覚がして意識を失ったわ。
そして……」
「気づいた時にはここにいたと……?」
先に僕がそう言ってしまうとアンはゆっくりと1つ頷いた。
「きっとエド王子は魔石に呪いを込めたのね。何故こんな事になってしまったのか……ずっと1人で泣いて過ごしていた時に私とそっくりの孫のアンディがこの場所にやってきたの。そして私の事や、その後のエド王子の事や王族の話を聞いてようやく私がエド王子の呪いによって魂がこの場所に縛られてしまった事に気がついたのよ」
「そんな……アンは何も悪く無かったじゃないか……エド王子は何て酷い事をアンにしたんだ!!」
アンが僕のご先祖様だったからついアン寄りの目線で考えてしまうけれど、アンは何も悪い事なんて一つも無かったじゃ無いか!!
「エド王子はその後も私との復縁を望んでいたらしいけれど、私は隣国の貴族に嫁いで2人の子宝に恵まれた事で復縁じゃ無い間違った方法を考えだしたのが呪いだったのよ。
呪いって……かける人数や呪いの種類によって差し出す代償があるみたいだからエド王子はどれだけの代償を払ったのかしらね……」
「この場所はエド王子の呪いが影響している場所として……するとアンはこの場所に来てからエド王子には会ったんですか?」
「それがね……一度も無いのよ。呪いのかけられた相手に一度も会えないだなんて何も解決できないわね。でも孫のアンディが居てくれるお陰でこうして自分を見失わないで生活しているわ」
そう言ってアンは明るく笑っているけれど、こんな事は異常だ!!アンディなんかはアンと同じ姿の孫というだけで呪われて死んだんだぞ!!
「そんな事おかしいです!!何も悪くない者がこうして呪われるだ何て!!」
アンの話を聞いていたらつい興奮して叫んでしまった。でも叫ばずにはいられないよこんな事!!
そんな僕を目の前の2人は驚いた顔をしていたけれど、2人とも笑って「アンドルは流石私達の子孫ね!!大好きよ」と言って笑ってくれている。
2人ともこうして笑って過ごせる迄には、色々な葛藤があったかもしれないと思うと居た堪れない気持ちになる。
アンは一通り自分の話ができたようで、「次はアンディの番ね」と言って隣のアンディに話を振った。
アンディは頷いてから話し始めた。
「僕はね、先にも言った通り、王女から何度も王族として婿になって欲しいと打診があったんだ。だけど、王女が僕の事を好きだとも聞いた事がないし、こう言っちゃあれだけど、僕って年の離れた年上の女性か、男の子にやたらモテて、実は僕も男の人の方が好きだったんだよ。それで王女と一度腹を割って話し合う機会を持つことが出来たんだ」
「私の場合はね、王弟であったエド王子から求婚されて私自身もエド王子の事をお慕いしていたからとても幸せだったわ。でも……王子は私との結婚前に他の貴族の御令嬢との不貞現場を目撃してしまったの。
後でその不貞はエド王子が嵌められた事が証明されたけれど、私はとてもショックを受けて侯爵家からは正式に抗議し、婚約解消する事になったの。
それから逃げる様にして隣国に行ったわ。
そこで私の夫に会って私はやっと穏やかで幸せな生活ができる様になったの」
アンにはそんな事があったんだ……エド王子とは思いあって幸せだった筈なのに、まさかその王子の不貞現場なんか見たらいくら王子が嵌められたとしてもアンはショックだったろうな。
「エド王子との事は残念だったけど……アンが隣国で幸せになったのなら本当に良かったよ。素敵な人に巡り会えて子孫の僕も嬉しいけど……その後のアンは呪い殺されたんだよね……この先の話は聞きたく無いかも……」
僕はアンが呪い死ぬ事を先に知ってしまっているので、少し落ち込んでしまう……。でもアンは「もう忘れるくらい昔の話だから大丈夫よ」と言って笑いながら話を続けた。
「それから私は2人の子宝に恵まれてとても幸せに過ごしていたの。
その2人の内、次男はその後私の実家である侯爵家の養子となって侯爵家を引き継いだのよ。アンディのお父さんね。
それでね、そんな穏やかな日々が続いていた時にエド王子から突然、慰謝料としてまだ渡していない品があるといってお届け物が届いたのよ……」
「その時は既に侯爵家と王家との間では婚約解消や慰謝料などの話も解決済みだったのですよね?アンは隣国で新しい家庭を持った訳ですし」
僕がそう言うと、アンは何度も頷いて言った。
「そうよ!!その時にはとっくに解決していたし、王族に対しても私が婚約解消していなかったら今の幸せは無かったのだから許していたのよ。だから品物を確認した後はこれ以上の慰謝料は不要ですと手紙を添えて丁寧にお返ししようとしてね。その品物を確認したのよ。そうしたら……」
「そうしたら……?」
アンが良い所で喉を潤す為にお茶を飲んでしまったので、僕は固唾を飲んでアンが話始めるのを見守ってしまった。
「そのお届け物の箱の中はとても大きな魔石だったの。でも色が……なんていうか濃い血の色をして赤色の魔石で、見た瞬間とても気持ち悪いと思ってしまったわ。だから直ぐに箱の蓋を閉じようと思ったのに、身体の力が抜けて魂が魔石の中に吸い取られていく様な感覚がして意識を失ったわ。
そして……」
「気づいた時にはここにいたと……?」
先に僕がそう言ってしまうとアンはゆっくりと1つ頷いた。
「きっとエド王子は魔石に呪いを込めたのね。何故こんな事になってしまったのか……ずっと1人で泣いて過ごしていた時に私とそっくりの孫のアンディがこの場所にやってきたの。そして私の事や、その後のエド王子の事や王族の話を聞いてようやく私がエド王子の呪いによって魂がこの場所に縛られてしまった事に気がついたのよ」
「そんな……アンは何も悪く無かったじゃないか……エド王子は何て酷い事をアンにしたんだ!!」
アンが僕のご先祖様だったからついアン寄りの目線で考えてしまうけれど、アンは何も悪い事なんて一つも無かったじゃ無いか!!
「エド王子はその後も私との復縁を望んでいたらしいけれど、私は隣国の貴族に嫁いで2人の子宝に恵まれた事で復縁じゃ無い間違った方法を考えだしたのが呪いだったのよ。
呪いって……かける人数や呪いの種類によって差し出す代償があるみたいだからエド王子はどれだけの代償を払ったのかしらね……」
「この場所はエド王子の呪いが影響している場所として……するとアンはこの場所に来てからエド王子には会ったんですか?」
「それがね……一度も無いのよ。呪いのかけられた相手に一度も会えないだなんて何も解決できないわね。でも孫のアンディが居てくれるお陰でこうして自分を見失わないで生活しているわ」
そう言ってアンは明るく笑っているけれど、こんな事は異常だ!!アンディなんかはアンと同じ姿の孫というだけで呪われて死んだんだぞ!!
「そんな事おかしいです!!何も悪くない者がこうして呪われるだ何て!!」
アンの話を聞いていたらつい興奮して叫んでしまった。でも叫ばずにはいられないよこんな事!!
そんな僕を目の前の2人は驚いた顔をしていたけれど、2人とも笑って「アンドルは流石私達の子孫ね!!大好きよ」と言って笑ってくれている。
2人ともこうして笑って過ごせる迄には、色々な葛藤があったかもしれないと思うと居た堪れない気持ちになる。
アンは一通り自分の話ができたようで、「次はアンディの番ね」と言って隣のアンディに話を振った。
アンディは頷いてから話し始めた。
「僕はね、先にも言った通り、王女から何度も王族として婿になって欲しいと打診があったんだ。だけど、王女が僕の事を好きだとも聞いた事がないし、こう言っちゃあれだけど、僕って年の離れた年上の女性か、男の子にやたらモテて、実は僕も男の人の方が好きだったんだよ。それで王女と一度腹を割って話し合う機会を持つことが出来たんだ」
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