70 / 124
本編6
70 王族の歴史と宿命4
しおりを挟むーーーーーーーー
アンドルside
トッペルゲンガー
世の中には自分と同じ姿の人が自分を含めて3人いるらしい。
そして自分以外の2人を自分が見てしまうと自分は死んでしまうとか……
僕はそのトッペルゲンガーと言われる自分以外の同じ姿である2人を目の前で眺めつつ何故か今一緒にお茶をしている……。
先ほど大きな木の上で出会ったのは僕ではなくて、ちゃんと人間で名前は「アン」という女性の方だった。
アンと出会った時はお互いがびっくりしたけれど、アンは直ぐに何かを察して僕を大きな木の幹にある家に招いてくれた。
そして今、その隣にいるのが「アンディ」
木の幹には木の扉があってアンに招かれるままに中に入ると、小さくても温かい雰囲気の部屋が広がっていた。
そこには短い髪の人がもう1人いて、それがアンディだった。
僕が部屋に招かれた時は丁度クッキーを焼いていたらしく、
「アンおばあちゃん!!木の実のクッキーが焼けたからお茶にしよう!!って!!えっ!!君は僕?」
と言って僕と同じ反応をして驚いていた。
そしてアンディは見えないけれど何と男性でびっくりした。
僕とほぼ同じ姿なのにそう思ったんだから、きっと僕の事も女性と間違えてしまうだろうと思っていたら案の定
「えっ!!アンドルって男の子だったの??絶対女の子だと思ったのに!!」
とアンとアンディから言われてしまった。ははは……
3人ともプラチナブロンドで緑の瞳も同じだし、少し痩せててシュッとしているのも似ている。
違うと言えば、髪の長さ位だ。
アンが1番長くて腰の位置迄ウエーブがかった髪がある。そしてアンディは耳が半分位隠れる程の長さしか無い。
ちなみに僕は肩につくかつかないかの長さだ。この長さは寒い時は暖かいし、暑い日にはゴムで縛れば涼しいから気に入っている長さなんだ。手入れもしやすいし。
「急にお2人のお茶にご一緒させて貰い有難うございます。でも僕は今の状況がよく分かってなくて……僕の話を聞いて貰えませんか?」
「そんな事勿論よ!!それに随分と2人っきりでの生活をしていたから、新しい子が来てくれて本当に嬉しいわ!!貴方はきっと私達の子孫だとは思うけれど、どんな人物なのか知りたいし。ねぇ?アンディ?」
「そうだね。アンドルば僕達の子孫なのは分かっているけど……ちなみに僕からみるとアンは祖母なんだよ。だからアンおばあちゃんって普段は呼んでいるんだ」
「えっ!!アンとアンディは祖母と孫の関係なの?!今の見た目じゃあ……僕も含めて3人とも同じ位の年齢に見えてしまうからびっくりです!!」
「ふふっ有難う。でも私はね2人の子供を産んでからすぐにエドっていう元婚約者の呪いによって殺されてしまったから、生きている時にはアンディと会えなかったのよね……」
そう言って少し遠い目をしながらアンは伝えてくれた。自分が呪いによって殺されたなんてとんでも無い事だと思うのだけれど、「随分昔の御伽話よ」と言ってアンは笑っている。
アン……は多分、あの複製本に出てくる物語の登場人物なんだと確信した。
と、言う事はこの2人はやっぱり僕のご先祖様達なんだろう。
見た目もこんなによく似ているせいか、何の証拠も無いけれどこの答えがスッと僕の心に収まってしっくりいった。
だから僕は素直に僕の生い立ちから……王族の婚約者がいる事や、王族から頂いた複製本の中に魔法陣が書いてあり、その魔法陣に吸い込まれて気づいたらこの場所にいた事、直前でエディという黒猫も一緒に来た筈なのに居なかった事等を全て話してしまった。
アンとアンディの2人はそんな不思議な話にも真剣に耳を傾けてくれて、僕が話し終わった後は一緒に今の状況の整理をしてくれた。
「私はね、最初アンドルを見た時に私達と同じ姿だし、てっきり呪い死んでここに来たのかと思っていたけれど違うみたいね……王族から貰った本の魔法陣が影響しているとは……」
アンは魔法陣が気になっている様だ。アンディも僕の状況を整理しながらもアンディ自身の生きていた頃の話を少しずつ聞かせてくれる。
「僕も生きている時は……王族の王女から結婚の打診が何度もあったんだよ。だけどおかしいんだ。王女が僕の侯爵家にお嫁に来てくれるんじゃなくて僕が王女の婿として王族に入って欲しいってさ。それに隣国の嫁いで行ったアンおばあちゃんの話は僕の家では可哀想なアンおばあちゃんとして話を聞いていたから王族の事が嫌いだったんだよ」
2人の話からすると……あの複製本の存在や魔法陣の事はご存じ無いらしい。
そして2人とも王族から求婚された経験があってアンの時にエドの呪いで亡くなってしまったとしたら、その孫にあたるアンディも呪い殺されたのだろうか……じゃあ僕は?
「あの……アンディも呪い殺されたのですか?こんな事を聞いたら不謹慎かもしれませんが、お2人はどんな呪いで亡くなってしまったのか教えて貰えませんか?」
27
お気に入りに追加
704
あなたにおすすめの小説
【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
魔王なんですか?とりあえずお外に出たいんですけど!
ミクリ21
BL
気がつけば、知らない部屋にいた。
生活に不便はない知らない部屋で、自称魔王に監禁されています。
魔王が主人公を監禁する理由………それは、魔王の一目惚れが原因だった!
記憶喪失の君と…
R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。
ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。
順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…!
ハッピーエンド保証
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる