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本編5

63弟が甘い

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   僕が驚いてアンジュをみると、アンジュは微笑んで答える。


「ふふっ早くに婚約者がいた兄上はそうだろうと思っていました。
   だから余計にそそりますけどね。
   僕の方がまだ身体は小さいですが、貴族の会合でその手の話をする事がありますから、嗜みとして詳しくなくてはなりません。
   ……あっでも僕は誰かと深いお付き合いはしてませんよ。
    本当の触れ合いは兄上だけでいいす」


「アンジュ……」

「シャアアーーーー!!」

「エディ!!暴れないの!!」



「兄上……ッチュ」



 本当の触れ合いは僕だけと言ったアンジュは僕の頬と額と……最後にまた唇にチュッとキスをして今度は顔を合わさずにダイニングルームから出て行ってしまった……。


   また僕はエディを抱き締める為に両手が塞がっていたので最後迄アンジュにされるがままだった。



「はあ……ハアハア……なんでこんな事になっちゃったんだ」



 それにしてもアンジュが……僕を愛していると……。


 何も考えられずに頭がボーとしてしまっていた。
   
    
    エディを強く抱き締めていた手も緩んでしまい、素早くエディが僕の顔まで登ってきて何度も何度も唇をペロペロされてしまう。


「ニャンニャンニャー」



 それでもさっきのアンジュとの出来事が頭をグルグル回ってしまって、さっきからエディにペロペロされっぱなしになってしまっているけと僕は抵抗する気力もなかった。


「アンジュ……」


「ニャンニャンニャンニャン」


 ダイニングには1人しかいないのにそう呟くと、エディが鳴いて僕の唇をずっとペロペロし続けていた。



    頭が追いつかなくてその後どうやって自分の部屋に戻ったか分からない……




   とにかく今はエディの事よりアンジュの事ばかり考えながら、寝る準備を整えてエディにミルクも飲ませるのも忘れて寝てしまった。



「ニャー……」




ーーーー





次の日……




 これからアンジュとどう顔を合わせればいいか分からなかったけど……次の日は案外いつもと変わらないアンジュの様子に僕の方が動揺してしまっていた。


「兄上、そんなに意識してくれるのは嬉しいですが、兄上は王子の婚約者のままですし、昨日の事は頭に片隅にでもしまって普段通りでお願いします」


「あ、ああ……分かった」


   でも……今までのアンジュとは違っていた。


「おやっ?兄上、髪の毛が少し跳ねてますよ。僕が直しますからちょっと此方に頭を寄せて下さい」

「あれ本当かい?後ろの髪の毛でも跳ねてる?直した筈なんだけどなあ……アンジュ有難う」


 そうしてアンジュに頭を寄せるとそのまま僕の首に両手を回され、耳元で「ふふっ嘘です。髪は跳ねて無いです。兄上は今日も綺麗ですよ」と甘く囁いてきたりする。


「ア、アンジュ!!」


「ふふっ僕は素直になる事にしたんです」


「シャャアアアー!!」


「ああっいたの?本当にうっさいなー……この黒猫」


 アンジュはエディに悪態をつきつつもニコっと俺に笑う。

 そんな今までと真逆の対応のアンジュに心臓が痛くなる……むしろ今までの憎まれ口の方が慣れていた分、この甘い対応には全く慣れない。


 そしてアンジュとエディの仲はいよいよお互いが嫌っているようで、アンジュも「お前嫌い」と大人気なくエディに言うし、エディもアンジュに会う度に威嚇しているからもう本当に相性が悪いとしか言えない。



   それにしても本当にアンジュは僕の事が好きだったんだ……昔程嫌われてはいないとは思っていたけれど。


   アンジュは婚約解消の現実味を帯びてきたと言っていたけれど、でも正直、本当に婚約解消ってできるのだろうか……?


    だって呪いによっては僕も死ぬらしいし、王族だって呪われているんだぞ……。
    

    王族は呪いを恐れているはずだ。
    だからこそ王家の呪いが解消出来る可能性がある僕を王子の婚約者にしたのは間違いない。
    だから絶対に解決したいと思っているはず。

    父上もアンジュも王家には余り良いイメージを持ってないけど、とにかく侯爵家も王族も呪いについては解決したいというのが共通認識なんだ。

    呪いの解決は今は会えないエドワード王子のお役にも立てる筈……僕も呪いついて真剣に調べてみよう。





ーーー
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