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〜王子side〜4

52エドワード王子の呪い2

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「お、おいエドワード!!エドワード!!なんて事だ!!こんな時に呪いかっ!!まだお前に呪いの事を伝えていない!!私には見えないが、エドワード、今まだそこにいるんだろう!!」



「グワァァァ……ァァァ……」



 父上から呪いの詳細を聞こうとした時、何となく身体に違和感があった。
   そして自分の身体がどんどん縮んでいるのに気づいて驚くと、突然全身に稲妻の様な痛みが走り、痛みがなくなったと思ったら地べたに這いつくばっていた。



 父上は私の姿が見えないのか、私の言った言葉も聞こえないようで、口を開けたままキョロキョロと辺りを見渡している。


「ニャン、ニャンニャンニャン」
(父上!!ここです!!私はさっきと同じ場所にいます!!)


 なんと!!私は見えなくなってしまったのか……
 父上は最初こそ取り乱していたが、直ぐに冷静になり私がいたソファに向かって話し始めた。


「エドワード!!今そこにいるな??
 呪いの話を手短に話すからそのまま聞いて欲しい。王族の直系は昔呪いがかけられていてな。15才を過ぎれば発動しないという。
 お前は偶然今、発動してしまったのだ。
 そして昔、私も呪いを受けた1人だから今お前が見えなくなったのは理解できる。
 私の場合は翼が生えた黒猫に変化してしまったんだよ。
 しかも誰にも姿が見えなくなる呪いなんだ。
 ただしアンドルのいる侯爵家の人間を除いてな」


 陛下は遠い記憶を呼び起こす様に遠い目をして言った。


「私の場合は事前に父上から話を聞いていたから準備はしていた。誰にも見えない上に突然弱い生き物になったまま……何とか侯爵家にたどり着くと現当主に気に入られ、そこで3年間生活し元の姿に戻る事が出来たんだ。可能性としては侯爵家の人間にはお前の姿が見えるはずだ。そこで気に入られて何とか生き延びて欲しい」


「ニャンニャンニャン」
(私はこれからどうなるんですか?これからまだ学ぶ事も沢山あるでしょうし、学校は?)



 父上に聞こえないと分かっていてもつい質問してしまう。しかし聞こえたとしても「ニャンニャン」しか聞こえないかも知れない。


「エドワード、まず生き残る事を第一に考えるんだ!!お前は急遽私の一存で他国に留学した事にしておこう。
 そして明日にでも侯爵家に使者を送る馬車を出すから、その馬車に乗って侯爵家にいけ!!
 もうこの王宮には私も他の者もお前の姿を見える者がいない。
 とにかく明日馬車に乗って侯爵家に助けを請え。
 それしか何年も生き抜く方法は無いだろう。
 私の弟も実はな……突然何処かで呪いが発動して行方不明になったが、弟はそのまま侯爵家にたどり着く事なく姿を見せないままになってしまったんだ。多分亡くなったのだろうと思っている」

「ニャンニャン!!」
(そんな!!父上の行方不明になったという叔父様はそうだったのですか!!)

 私が生まれた頃には既に行方不明になっていてお会いした事は無かったが、私にとっては叔父にあたる方だ。

 他国へ留学中に行方不明となり、当時はまだ若くて身代金の誘拐事件が発生したと噂になったらしい。

 しかし身代金の要求なども無く、前代未聞の摩訶不思議な事件として王国が大騒ぎになったと聞いた事がある。
 その叔父がまさか呪いの発動中に誰にも見えなくなり、何処かで亡くなってしまうなんて何と無念だった事だろう。


 そして父上は部屋に1人しかいない所で侍従を呼び、携帯用の水と小腹が減ったからと小さなビスケットを用意して貰っていた。


「エドワード、まだそこにいるんだろう……ここに水とビスケットを用意した。これから食べられ無いかも知れないからここで少し食べておけ」


 父上が見えてない私に向かってそう言った。
 私はとにかく今の状況を整理するだけでいっぱいいっぱいになり、とても食べられる様な気持ちになれなかった。


「エドワード、とにかく何とか生き延びろ!!そして元の姿に戻った時には、また王宮に戻って来るんだよ。それ迄はアンドルとの婚約解消はさせないし、婚約者のアンドルには大きめの服もたまには贈っておくからな」


 そう言って父上は「エドワード、安全なここで1日過ごせ。明日の朝この書斎に迎えに来る」と言って、書斎を出ていってしまった。


 やはりこれは現実なのか……これからいつ呪いが解けるのかわからないが、父上の話からすると約3年位はこの這いつくばった姿なのだろう……これからどうすればいいのだ。


 とにかく、明日侯爵家に行く馬車に乗らなければならない。

 こうして私は父上の書斎で眠れない夜を過ごした。


 次の日、父上は朝にまた書斎にやって来てくれた。父上は少し疲れた様子だった。


「エドワードいるか?ビスケットと水が無くなっている……いるんだな。昨日は書斎を出てからお前を留学させた事にして関係各所に連絡をしておいたぞ。
   正直私は今とても辛くて苦しいのだ……昔私の父上もこんな気持ちで私や弟の事を考えていたのかと今ようやく実感しているよ……。
  もうすぐ侯爵家へ向かう馬車の用意が整うから私の背中に乗れ!!馬車迄私が見送ってやろう」


「ニャンニャン」
(父上……忙しい父上が自ら……有難う御座います)


 父上には聞こえないだろうが、そうお礼を伝えて背中に登る。そういえば父上の背中なんかおぶって貰った記憶もないな。初めての経験だが、これがこんな年になって経験するとは……。


 父上は「もう乗ったか?」と聞いていて、どうやら私の重さも感じない様だった。本当に姿だけではなく、突然存在も消えてしまったようでとても心細い。今はこの世で父上1人しかすがる者がいないのだ。


 父上は多分私を肩に乗せた気持ちになりながら(実際に私は父上に乗っているのだが)、王宮から出て侯爵家に向かう馬車に向かってゆっくり歩いた。


 すると、長年私の世話をしてくれた侍従長が焦った表情で「陛下ー!!」と呼んで近づいて来る。


 侍従長は父上の前で跪き、「陛下、失礼を承知でお聞きしたい事があります!!」と言っている。他の護衛が侍従長を止めようとしているが、父上は「良い良い」と制していた。


「侍従長、この度はエドワードの進学の事で突然の変更にはすまなかったな」


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