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何を、したのかちゃんとした答えをもらえていないから、その話題を引っ張ってしまう。丸山さんは暖房が暑すぎるのか額に玉の汗を浮かべながら、
「ほ、ホントは……週に三回くらい……」
と、今度は蚊の鳴くような声。
肝心な、何を、に答えてもらっていないんだけどなー。依然私がはてなマークを頭の上に浮かべたままでいたら、
「ちょっ……まだ陽が高いっていうのに何言わせんのよ」
って、怒られてしまった。
「……実は仕事が立て込んでいるの。今、思い出したわ。そうっ、私忙しいの。忙しいから先に帰る。じゃぁね」
そそくさと店を出て行ってしまった丸山さん。
私、何か悪いこと言ったかなー。
訳のわかっていない私が憮然としていると、
「お待たせしましたぁ」
目の前にするりとナポリタンとホットケーキの皿が置かれた。
えーと……、目顔でさっきまで丸山さんが座っていた席を指し示しつつ女の子と目を合わせる。
「……お連れ様の分、下げますか」
と、気の毒そうに言われた。
「あのぉ、会計は私が食べる分だけとかって」
「すみません、オーダー後の取り消しはできないので……」
つまり、会計は発生するってことか。
ガクッとなりつつ財布の中を確認した。大体コンビニのコーヒーを買ってお釣りが出るくらいしか持ってきていない。五百円のナポリタン消費税込で、ギリいけるかなって程度だったんだ。だめだ、払えない。会社近いのに、いや近くなくてもお店で飲み食いした後、払えませんでしたっていうのは恥ずかしすぎる。
ほかほか湯気を立てている料理を前に青ざめていると、ぽん、と誰かが私の両肩に手を置いてきた。
昼休みが終わり、社員たちがそれぞれの部署に吸い込まれるように戻っていく中、私は営業部の一角で、
「ほんっとに、助かりました。ありがとうございます。あの、お金は後日ちゃんと返しますので」
と私は何度も頭を下げた。
「ほ、ホントは……週に三回くらい……」
と、今度は蚊の鳴くような声。
肝心な、何を、に答えてもらっていないんだけどなー。依然私がはてなマークを頭の上に浮かべたままでいたら、
「ちょっ……まだ陽が高いっていうのに何言わせんのよ」
って、怒られてしまった。
「……実は仕事が立て込んでいるの。今、思い出したわ。そうっ、私忙しいの。忙しいから先に帰る。じゃぁね」
そそくさと店を出て行ってしまった丸山さん。
私、何か悪いこと言ったかなー。
訳のわかっていない私が憮然としていると、
「お待たせしましたぁ」
目の前にするりとナポリタンとホットケーキの皿が置かれた。
えーと……、目顔でさっきまで丸山さんが座っていた席を指し示しつつ女の子と目を合わせる。
「……お連れ様の分、下げますか」
と、気の毒そうに言われた。
「あのぉ、会計は私が食べる分だけとかって」
「すみません、オーダー後の取り消しはできないので……」
つまり、会計は発生するってことか。
ガクッとなりつつ財布の中を確認した。大体コンビニのコーヒーを買ってお釣りが出るくらいしか持ってきていない。五百円のナポリタン消費税込で、ギリいけるかなって程度だったんだ。だめだ、払えない。会社近いのに、いや近くなくてもお店で飲み食いした後、払えませんでしたっていうのは恥ずかしすぎる。
ほかほか湯気を立てている料理を前に青ざめていると、ぽん、と誰かが私の両肩に手を置いてきた。
昼休みが終わり、社員たちがそれぞれの部署に吸い込まれるように戻っていく中、私は営業部の一角で、
「ほんっとに、助かりました。ありがとうございます。あの、お金は後日ちゃんと返しますので」
と私は何度も頭を下げた。
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