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24.お休みなさいませ

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 姫を攫いに来たどこかの王子ばりに、レオナルドの行動は速かった。ヴィクトルは抵抗することなく衛兵に連れていかれ、両親に無事を伝えるため早馬も走らせる。王宮からの馬車を待っている間、私はヴィクトルの罰を軽くするよう頼んだ。最初は渋っていたレオナルドも、王宮に着いてから、私の診察結果を聞いたのちに渋々了承してくれた。

「なぜかを聞いてもいいかい?」

「彼は国のために働けますから」

「国のために?」

「ええ。でも、この話はまた明日でもよろしいですか? 両親にも会いたいですし、なにぶん疲れておりまして…」

 胸の前で手を組み、上目遣いで頼む。こうすれば男は誰でも許してくれるのだと、アルが言っていた。

 はあ、と大袈裟にため息をついたレオナルドは仕方ないな、と両親のところまで案内した。王宮の客間にいた両親は私を見るなり、抱きしめて無事でよかった、と繰り返す。

「陛下にな、頼まれたのだ。怖い思いをさせたな」

「お父様…」

 ポーカーフェイスの上手いお父様が、私の前では頭上の狼の耳をぺたんとしならせ、尻尾を力なく下げる。お母様に至っては泣きじゃくっているせいで話さえもできないが、きつく抱きしめてくれた。

「今回の誘拐は陛下が計画したものだったのですか?」

「いや、そうではない。ストラテ王国をな、乗っ取ろうとする動きがあったらしい。それに加担した国内外の貴族のあぶり出しのために…頼まれたのだ。言わなかったのは、すまなかった」

「いいえ。お父様。わたくしは自分の価値くらい知っておりますわ。…あぶり出しは、成功したのですか?」

 優しく微笑むお父様の笑顔がすべてを語っていた。逆にうまくいかなかったなら、今頃レオナルドは瀕死状態だろう。それを想像すると、少し可笑しくて笑ってしまう。

 両親とは会話もそこそこに私のために用意された部屋に戻り、アルに寝支度をしてもらった。廊下を歩いているときも、気を抜けば倒れてしまいそうになるほどに疲労がたまってしまっていた。

 それに気づいていたのかアルは、何も言わずに手際よく済ませて、「お休みなさいませ」と一言残して部屋を出て行った。

 目を瞑れば心地よい眠気が襲い、次の日の昼まで泥のように眠った。
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