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そう、それが発端だった。いや、ここは出会いと言った方がぴったりなのかもしれない。それからもう一年になろうかとしている。もう一度胸に耳をあてて、ドクドクと力強く拍打つ音に聞き入る。これがもう少しで、自分のタイミングで止まってしまうのかと思うと少し怖くて、言いようのないほどに昂奮した。
ふたたび刃を霧生の首に当てる。さすがは最高級品の包丁といったところか、当てる力が強かったのか、一筋の赤い線ができる。その線に沿って雫は大きく育ち、シーツへと滑り落ちていく。もったいない。さっきまで聞いていた霧生の心臓がまるで耳のすぐそばにあるように感じ、昂揚を抑えきれない三島はすぐさま刃先を視点に真横に刃を下ろした。
ぷしゅっ、としぶきは噴水のように吹き出し、瞬く間に辺りを染める。あるいは三島の眼球を紅く染める。ぷち、ぷちと静脈、動脈、食道、気道と切れていく。手先に伝わるその感覚がとても生々しく、愛おしい。さすがに頸椎には刃が通らず、そこで包丁を引いた。ささくれのない、きれいな傷口から真っ赤な血が流れてシーツに染みて、放射状に飛び散ったものは床を濡らし、早々に乾き始めている肌のそれに三島は口づける。続いて刃に滴る雫を飲んで、その刃をしゃぶった。切れた口腔内は霧生の血液と三島のそれが混じり、喉を通る。飲み干した三島は高ぶる屹立に血まみれの手を伸ばし、潤滑剤代わりとばかりに塗りたくり扱いた。瞬く間に吐精し、真っ赤な中に白濁が散る。それでも収まることはなく、何度も、何度も快楽を貪った。
白濁も透明で薄くなるようなころ、朝日は高く昇り、唯一の窓のカーテンの隙間から光は刺しこむ。光を浴びたところから真っ赤な床、シーツは乾き、パリパリになったそれを剥いでまた口にふくむ。苦みの増したそれに、絶頂を感じ、三島は身体を震わせて霧生の身体の上に倒れ込んだ。冷たくなった身体は、興奮で火照る三島の身体にはひどく心地よかった。
おはよう、と微睡みの中で遠くに聞き慣れた声が聞こえる。夢とうつつの狭間で三島は自分を、霧生を探す。空をかく手は暖かなものに当たり、まぶしすぎる光に目を細めながらそれを見る。虚ろな感覚の腰に重たい衝撃を受けた。「うっ…!」
「おはよう。眠りすぎではないかい? 死んでしまったかと思ったよ」
「そうなれたら…どれだけよかったでしょうね。…僕のは、切れてしまってます?」
「いや? 私がそんな乱暴な抱き方をすると思うかい? これは私の血だよ。君と同じように潤滑剤代わりに使ったんだ。奥、抜いてもいいかい?」
「え…あれは、苦手なんですけど…」
「どうしても、ダメ、かい?」
5歳も年上であるはずの霧生が、犬耳の生えた小さな子供に思えて、かわいくて仕方ない。三島は苦しくなる胸に霧生の頭を抱く。「手加減、してくださいね?」
「ああ! もちろん!」
力をぬいて、と耳元で言われ、意図せず腰が抜けて力も抜けた。トントン、と何度か霧生の亀頭が腰の奥のくぼみを叩き、緩んだ瞬間に滑り込んで来る。
「…っ!」
可能な限りの、霧生の考えうる最大の手加減だったのだろうが、それでも衝撃はすさまじい。圧迫感がまず桁違いで、腹の下あたりが霧生のそれでいっぱいになっていた。
「動いていいかい?」
こんな優しすぎるが故の臆病な男のお願いを、無下にできる人などいるだろうか。もっとも、ほかの誰にもこんな顔を見せてやるつもりはないが。
こくこく、と頷いてシーツをぎゅっと握る。最初のうちはどんなに肌を重ねようと痛みは避けられない。快楽を拾えるまでの辛抱だと、三島はぐっと目を閉じた。
内臓が引き出されるかと思った。
寝ている間にも抽挿を繰り返されていたのだろう。熟れた肉壁には過ぎた刺激で、じんじんと腫れたそこはしびれた中に気持ちのいい悦が潜んでいる。それらひとつひとつを丁寧に掬い上げていけば、痛みなど、どこかへと消えていった。
何かを我慢して漏れる吐息がそのまま三島の耳朶にかかる。そこから感触で、音で脳さえも愛撫されているような気がして、みるみるうちに真っ赤に染まった。
霧生にはそれがよく熟れたリンゴのように思えて、ふわふわとした頭のまま、「おいしそ」と呟きその耳朶を食んだ。コリコリとしたそれをいろんな液に濡れた唇で弄び、官能的な水音が三島をしびれさせる。
もちろん、腰の奥を叩かれるたびに喜悦の波は三嶋を濡らし、もはや白濁ともいえない透明なそれが自身の腹に水たまりをつくっている。鍛えられた腹筋のそのくぼみに、雫は流れて汗と混じる。愛おしそうに腹を撫でる三島の手を、霧生は捕まえてその口に含む。ただひたすらにしょっぱくて、なるほど人間の水分のほとんどは塩かと勝手に納得した。
「不味いでしょ、口直しどうですか」霧生のその姿を見ていた三島は、自身の唇を指で叩く。
「別に不味くはないけどね。いただこうか」
ついばむようなその唇は、しばらくもしないうちに口腔を貪る。余すところなく堪能する勢いの霧生は伸びてきた舌を思いっきり吸ってやった。びくびくと身体は震えて、こわばって、弛緩する。三島の兆したものは硬いままで、出さずに達したのかと霧生は満足げに笑った。
その笑みに安心を覚えた三島はしかし、少しばかり悔しくて、その唇にかみつく。容赦なく噛んだ薄い皮膚からは真っ赤な血液が流れ出てきて、歯を伝い口腔に溜まる。堪らずゴク、と嚥下した。
「ふふ、悪い人。美味しいかい? 私の血は」
「もちろん。至高ですよ」
「…世辞がうまいね。さて、そろそろにしないとまた何日も寝込んでしまうね。すこし、乱暴にするよ」
「お気に召すままに」
悪い人だ、と霧生はつぶやき今まで以上に重い抽揷を繰り返す。
乾いた肌のぶつかる音に、息をつめた嬌声が混じる。声を抑えるその手を取られてしまえば、三島は我慢する手立てを失い、思うがまま叫んだ。
「あぁ、いい声だね」
霧生の低いその言葉と頭を撫でる手は、さながら子守歌のようで三島は睡魔を避けることはできなかった。深い深い闇へと意識は落ちていく。
ふたたび刃を霧生の首に当てる。さすがは最高級品の包丁といったところか、当てる力が強かったのか、一筋の赤い線ができる。その線に沿って雫は大きく育ち、シーツへと滑り落ちていく。もったいない。さっきまで聞いていた霧生の心臓がまるで耳のすぐそばにあるように感じ、昂揚を抑えきれない三島はすぐさま刃先を視点に真横に刃を下ろした。
ぷしゅっ、としぶきは噴水のように吹き出し、瞬く間に辺りを染める。あるいは三島の眼球を紅く染める。ぷち、ぷちと静脈、動脈、食道、気道と切れていく。手先に伝わるその感覚がとても生々しく、愛おしい。さすがに頸椎には刃が通らず、そこで包丁を引いた。ささくれのない、きれいな傷口から真っ赤な血が流れてシーツに染みて、放射状に飛び散ったものは床を濡らし、早々に乾き始めている肌のそれに三島は口づける。続いて刃に滴る雫を飲んで、その刃をしゃぶった。切れた口腔内は霧生の血液と三島のそれが混じり、喉を通る。飲み干した三島は高ぶる屹立に血まみれの手を伸ばし、潤滑剤代わりとばかりに塗りたくり扱いた。瞬く間に吐精し、真っ赤な中に白濁が散る。それでも収まることはなく、何度も、何度も快楽を貪った。
白濁も透明で薄くなるようなころ、朝日は高く昇り、唯一の窓のカーテンの隙間から光は刺しこむ。光を浴びたところから真っ赤な床、シーツは乾き、パリパリになったそれを剥いでまた口にふくむ。苦みの増したそれに、絶頂を感じ、三島は身体を震わせて霧生の身体の上に倒れ込んだ。冷たくなった身体は、興奮で火照る三島の身体にはひどく心地よかった。
おはよう、と微睡みの中で遠くに聞き慣れた声が聞こえる。夢とうつつの狭間で三島は自分を、霧生を探す。空をかく手は暖かなものに当たり、まぶしすぎる光に目を細めながらそれを見る。虚ろな感覚の腰に重たい衝撃を受けた。「うっ…!」
「おはよう。眠りすぎではないかい? 死んでしまったかと思ったよ」
「そうなれたら…どれだけよかったでしょうね。…僕のは、切れてしまってます?」
「いや? 私がそんな乱暴な抱き方をすると思うかい? これは私の血だよ。君と同じように潤滑剤代わりに使ったんだ。奥、抜いてもいいかい?」
「え…あれは、苦手なんですけど…」
「どうしても、ダメ、かい?」
5歳も年上であるはずの霧生が、犬耳の生えた小さな子供に思えて、かわいくて仕方ない。三島は苦しくなる胸に霧生の頭を抱く。「手加減、してくださいね?」
「ああ! もちろん!」
力をぬいて、と耳元で言われ、意図せず腰が抜けて力も抜けた。トントン、と何度か霧生の亀頭が腰の奥のくぼみを叩き、緩んだ瞬間に滑り込んで来る。
「…っ!」
可能な限りの、霧生の考えうる最大の手加減だったのだろうが、それでも衝撃はすさまじい。圧迫感がまず桁違いで、腹の下あたりが霧生のそれでいっぱいになっていた。
「動いていいかい?」
こんな優しすぎるが故の臆病な男のお願いを、無下にできる人などいるだろうか。もっとも、ほかの誰にもこんな顔を見せてやるつもりはないが。
こくこく、と頷いてシーツをぎゅっと握る。最初のうちはどんなに肌を重ねようと痛みは避けられない。快楽を拾えるまでの辛抱だと、三島はぐっと目を閉じた。
内臓が引き出されるかと思った。
寝ている間にも抽挿を繰り返されていたのだろう。熟れた肉壁には過ぎた刺激で、じんじんと腫れたそこはしびれた中に気持ちのいい悦が潜んでいる。それらひとつひとつを丁寧に掬い上げていけば、痛みなど、どこかへと消えていった。
何かを我慢して漏れる吐息がそのまま三島の耳朶にかかる。そこから感触で、音で脳さえも愛撫されているような気がして、みるみるうちに真っ赤に染まった。
霧生にはそれがよく熟れたリンゴのように思えて、ふわふわとした頭のまま、「おいしそ」と呟きその耳朶を食んだ。コリコリとしたそれをいろんな液に濡れた唇で弄び、官能的な水音が三島をしびれさせる。
もちろん、腰の奥を叩かれるたびに喜悦の波は三嶋を濡らし、もはや白濁ともいえない透明なそれが自身の腹に水たまりをつくっている。鍛えられた腹筋のそのくぼみに、雫は流れて汗と混じる。愛おしそうに腹を撫でる三島の手を、霧生は捕まえてその口に含む。ただひたすらにしょっぱくて、なるほど人間の水分のほとんどは塩かと勝手に納得した。
「不味いでしょ、口直しどうですか」霧生のその姿を見ていた三島は、自身の唇を指で叩く。
「別に不味くはないけどね。いただこうか」
ついばむようなその唇は、しばらくもしないうちに口腔を貪る。余すところなく堪能する勢いの霧生は伸びてきた舌を思いっきり吸ってやった。びくびくと身体は震えて、こわばって、弛緩する。三島の兆したものは硬いままで、出さずに達したのかと霧生は満足げに笑った。
その笑みに安心を覚えた三島はしかし、少しばかり悔しくて、その唇にかみつく。容赦なく噛んだ薄い皮膚からは真っ赤な血液が流れ出てきて、歯を伝い口腔に溜まる。堪らずゴク、と嚥下した。
「ふふ、悪い人。美味しいかい? 私の血は」
「もちろん。至高ですよ」
「…世辞がうまいね。さて、そろそろにしないとまた何日も寝込んでしまうね。すこし、乱暴にするよ」
「お気に召すままに」
悪い人だ、と霧生はつぶやき今まで以上に重い抽揷を繰り返す。
乾いた肌のぶつかる音に、息をつめた嬌声が混じる。声を抑えるその手を取られてしまえば、三島は我慢する手立てを失い、思うがまま叫んだ。
「あぁ、いい声だね」
霧生の低いその言葉と頭を撫でる手は、さながら子守歌のようで三島は睡魔を避けることはできなかった。深い深い闇へと意識は落ちていく。
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