28 / 40
催事場フロア
ポンポンポン
しおりを挟む「ポンポン、なにで作るのがいいですかね?
櫛とか剣山とか、ハサミとか、掃除機とか?
昔、誰が一番細かく裂けるかとかやってたんですけど。
あんまり細かく裂くと、静電気がすごかったような……」
とあげはが呟く。
「掃除機?」
「掃除機で吸うと裂けるらしいんですよ」
近くの百均でまた道具を買ってきて、それぞれがいろいろな方法で作ってみた。
当然ながら、バラバラの仕上がりになる。
「統一性がないな」
と細かい奪が言う。
「まあ、いいじゃないですか。
ところで、これで、なにを応援するんです?」
とあげはが訊くと、男は考え、
「じゃあ、とりあえず、この左遷された課長さんを」
と言い出した。
「……やめろ。
同情はいらない。
それに、俺はもう、元に戻りたいなんて思わない。
俺は今の部署をナンバーワン部署にする!」
あんまり仕事ないのにですか、と思った瞬間、
「だから、お前も頑張れよ、新人っ」
とあげはは振り返られる。
ひっ。
気のせいだろうか。
なんか永遠に新人と呼ばれ、罵られそうな気がするんだが……。
「で、では、あやかしの百貨店にとり憑かれている(?)エンさんを応援してみては?」
とあげはは、エンに向かって静電気のすごいポンポンを振ってみたが、やはり、払われてしまった。
「ここはやはり、過去の栄光にすがるしかないお前を応援すべきだろう」
と奪が男に言う。
「あの……課長の発言、応援する以上に突き落としている気がするんですが……」
そうあげはは言った。
「よし、材料はそろったな。
いよいよ、入場門を作るか。
……大変そうだな」
と言う奪に、男も同意する。
「そうですね、大変そうですね」
「喫茶室と廊下をつなぐ扉の上にとりあえず、つけてみたらどうですか?」
とあげはは提案してみる。
「……この店のイメージが」
とエンは呟いていたが、こういうときは連携がとれているあげはと奪がさっさと花をくっつけてしまった。
というか、何故か彼も入場門を一から作るのは嫌らしく、
……彼のために作っているはずなのだが、と思いながら、あげはたちは頑張った。
「やった。
できましたよっ。
さあ、走りながら、くぐり抜けてみてください」
ありがとう、と男は微笑み、一度花で飾られた扉をくぐって、またこちらに走って戻ってきた。
「すごい茶番じみている……」
と奪が呟き、
「成仏しそうにないですね」
とあげはが言った。
「いや、殺さないでください……」
男はそう怯えたあとで、ちょっと笑顔になって言ってきた。
「でもなんか楽しかったです。
みんなでこんな風に、いろいろ話しながら作業するのって学生時代以来で」
「まあ、職場だと楽しくおしゃべりしながらって感じではないよな」
うん、いい気分転換になりました。
ありがとうございます、と男は頭を下げてくる。
「そうだ。
えーと……名前はなんだったっけな?
学生時代はヒーローだった奴。
お前、それこそ気分転換に、今からでも、なんか出てみたらどうだ? 徒競争的なものに」
「いや~、最近は危ないからって、社内の運動会も地域の運動会もありませんしね」
「じゃあ、子どもを作って幼稚園の運動会に出ろ。
……いや、そいつは駄目だ。
やっと挨拶を教えたところだなんだから」
どういう繋がりなのか、男があげはを見、奪がそれを止めた。
エンは、
「そんな部下は手放していいのでは……」
と呟いていたが。
「でもまあ、なにかで煌めけたら、気分的に違いますよね」
とあげはが言うと、
「じゃあ、今度、メンバー集めて駅伝に出てみます」
応援に来てください、と言って、男は、あげはの手を握ってきた。
「いや、俺たちにも言え……」
と奪たちが後ろで言っていたが。
11
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
好きになるには理由があります ~支社長室に神が舞い降りました~
菱沼あゆ
キャラ文芸
ある朝、クルーザーの中で目覚めた一宮深月(いちみや みつき)は、隣にイケメンだが、ちょっと苦手な支社長、飛鳥馬陽太(あすま ようた)が寝ていることに驚愕する。
大事な神事を控えていた巫女さん兼業OL 深月は思わず叫んでいた。
「神の怒りを買ってしまいます~っ」
みんなに深月の相手と認めてもらうため、神事で舞を舞うことになる陽太だったが――。
お神楽×オフィスラブ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる