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おまけ

初恋は叶わないって言うのに、おかしいじゃないか

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 無事に湧いた湯でみんなと珈琲を飲みながらのどかは言った。

「なんで、さっき、キライから始めたんですか? 社長」

「いや、俺は恐ろしいものや嫌なものを後に残しとくのが嫌なんだ」

 まあ、ちょっとわかる気はしますが。

 花びらを引きちぎりながら、いきなり、キライとか言われると、私の方がどきりとしてしまうんですが……。

 みんな、八神が何処からか拾ってきた丸太に腰掛けて飲んでいたのだが、綾太が、

「お前、なんで、そんなに自信がないんだ。
 いっそ、腹立ってくるぞ、ラブラブなのに」
と貴弘に文句をつけ始める。

「俺は――
 女を好きになったのは、のどかが初めてな気がするんだ」

 そう語り出した貴弘に、

 うーむ。
 言いたいことはわかるのだが。
 その言い方だと、男はある、みたいに聞こえてしまうんだが……、
と思いながらも、せっかく貴弘が語ってくれているので、のどかは黙って聞いていた。

「初恋は叶わないって言うのに、おかしいじゃないか。
 全部夢なんじゃないかってときどき思ってな」
と言う貴弘に、

 いや、違う理由により、私はときどき夢なんじゃないかって思いますけどね、とのどかは思う。

 生きてそこに居る泰親とか。

 まだ降ってくる呪いのイケメン部屋とか――。

 でも、確かに。

 そんなあやかし絡みの怪異の数々よりも。

 社長とあの日、バーで出会ったことと。
 こうして二人で一緒に居られることが、一番奇跡的で、信じられないことのような気はしている。

「だが、ラブラブなときは人生のなかで、そう長くはないぞ。
 不安になるより、その幸せをたっぷり味わった方がいいんじゃないのか」
と珍しく綾太が貴弘にアドバイスらしきことを言っていた。

「お前らがラブラブなせいで、俺は不幸だがな」
と言いながら、綾太は猫にまとわりつかれ、膝に乗られ、至福の表情を浮かべていた。

 ……ところで、綾太、ずっと此処に居るんだが、政略結婚はいいのか。

 

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