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おまけ

お前はこの店、流行らせる気はあるのか

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 店が一段落した頃。

 庭を片付けていたのどかが、一息ついて、月を見上げていると、貴弘が帰ってきた。

「あ、お帰りなさい。
 ……どうしたんですか?」

 ちょっと離れた位置から自分を見ている貴弘が微笑ましげで、つい、そう訊くと、

「いや、なんかいいなと思って」
と貴弘は言う。

「帰ってきたら、お前が笑って、お帰りって出迎えてくれるの。
 当たり前のことなんだが、なんかいいなって、今、思ったんだ。

 ……まあ、なんか鬱蒼とした森みたいなところにホウキ持って立ってるから、ちょっと魔女みたいだと思わなくもなかったんだが」

 一言余計なことを付け加えながらも、ただいま、と言って、キスしてこようとした貴弘だったが。

 一旦、やめ、確認するように周囲を見回したあとで、もう一度、
「ただいま」
と言って、キスしてきた。

「……何処に人目があるからわからんからな、この家は」
と言う。

 それでもマンションに引き上げようとは言わずに、みんなと一緒に此処に住んでいるのだから。

 気に入っているのだろうな、此処の暮らしが、とのどかは思っていた。

 そのとき、足許にいつの間にか忍び寄っていたミヌエットにり寄られた貴弘が、その姿を確認して、びくりとする。

「いやそれ、泰親さんじゃなくて、泰親二号さんですから」
とのどかが笑って言うと、あ、ああ、そうか……と貴弘はまだ怯えながら言ってきた。

 泰親に見られたと思ったのだろう。

 そのまま二人で、店に向かい、歩き出す。

「今日は軽く雑草チャーハンでいいかな」

「好きなんですか? 雑草チャーハン」

「ああ、雑草のちょっと苦味が効いてるところが段々癖になってきたんだ」

「そういえば、苦味って毒の味だから、子どもは嫌いらしいですね」

「……お前はこの店、流行らせる気はあるのか」

 玄関扉を開けながら、貴弘が言う。


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